住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴

住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴

住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

Aさん(男性)は、既婚者であるVさん(女性・妻)と不倫関係にあり、二人は、Bさん(男性・夫)の不在時に、夫婦が住む愛知県名古屋市西区内の自宅で会っていた。
Aさんは、Vさんに、夫と離婚するように迫ったが、ある日、Vさんが夫との間の子を妊娠したことが発覚した。
そこで、Aさんは、胎児が離婚の妨げになると考え、Bさんの不在時に、Vさんに無断で夫婦の自宅に忍び込んだ上、Vさんに気付かれないようVさんの飲み物に点鼻薬を注入した。
その後、投薬物を飲んだVさんの分娩時期は早まらなかったが、生まれてきた子に障害があることが発覚したため、夫のBさんが、愛知県警西警察署に告訴した。
愛知県警西警察署の警察官による任意の取り調べを受けたAさんは、自分がどのような罪を犯したことになるのか分からず困惑していた。
(事例はフィクションです。)

住居侵入罪の成立

正当な理由がないのに、人の住居に侵入した者には、住居侵入罪が成立します(刑法130条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3年以上の懲役又は10万円以下の罰金です。

住居侵入罪における「住居」(刑法130条)とは、人が寝食のために日常生活に使用している場所をいい、ケースにおける夫婦の自宅はその典型例です。
また、住居侵入罪における「侵入」(刑法130条)とは、「住居に誰を立ち入らせ、誰の滞留を許すか」という居住者(住居権者)の意思に反して、住居に立ち入ることをいうとされています。
これは、住居侵入罪を規定することによって守られるべき利益(法益)が、個人的利益であると考えられており、居住者(住居権者)の意思を尊重するべきであると考えられるからです。

そして、住居権とは、住居に対する現実の支配・管理をいうとされています。
住居に複数人が住んでいる場合,誰の承諾があれば住居侵入罪に当たらないかという点については見解が分かれています。
裁判例の中には,夫婦の住居において妻のみの承諾があった場合について,住居侵入罪の成立を否定したものがあります(尼崎簡裁昭和43年2月29日判決)。
ケースにおいて、AさんとVさんは、不倫行為の場所として夫婦が住む自宅を利用しています。
そうすると,Vさんには、不倫行為時にはAさんを住居に立ち入らせる意思があったと言え,したがって住居侵入罪は成立しないように思えます。
しかし、犯行当時、Aさんは専ら投薬行為を目的としてVさんに無断で住居に侵入しており、Vさんはこのような目的・態様による立ち入りは承諾していなかったと考えられます。
このような場合、Vさんの住居権を侵害しているとして、Aさんには住居侵入罪が成立すると考えられます。

妊婦への投薬と堕胎罪

刑法212条から216条にかけて、刑法は堕胎罪を規定しています。
この堕胎とは、自然の分娩期に先立って人工的に胎児を母体内から排出させることを含みます。
ケースでは、点鼻薬入りの飲み物を飲んだVさんの分娩時期は早まっていないので、堕胎罪は成立しないと見込まれます。

胎児への投薬と傷害罪

刑法204条は、人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立するとしています。
法律に定められた刑(法定刑)は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

傷害罪における「人」(刑法204条)には、胎児は含まれないと考えられています。
傷害罪における「人」(刑法204条)であるというためには、母体から、胎児の身体が一部でも露出していなければならないと考えられているからです。

今回のケースでは,Aさんの投薬行為によりVさんの子が胎児である間に障害の原因が形成されたと考えられます。
先述した「人の」定義によればAさんの投薬行為が傷害罪にならないように思えますが、裁判例に従う限りそうではありません。
胎児は母体の一部であると考えられ、胎児への傷害行為は母という人に対する傷害行為であり、さらに、その傷害行為の結果が生まれてきた子という人に生じていると考えられるからです。
母という人に向けられた行為により、生まれてきた子という人が傷害を負ったのだから、結局、人を病変させて人に傷害の結果をもたらす傷害罪が成立することになるのです。

ケースでは、Aさんは、妊婦であるVさんの飲み物に点鼻薬を注入しそれを飲ませることで、生まれてきた子に障害を発生させています。
障害を負わせることは,人の生理的機能を害するものとして「傷害」に当たりうることから, Aさんには傷害罪が成立すると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件のみ専門とする弁護士を擁し、住居侵入罪や傷害罪を含む刑事事件の弁護活動を多数行ってきました。
Aさんのように、刑事事件に関して不安をお持ちの方にも、分かり易くご説明させて頂きます。
住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご連絡ください。

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