貨幣損傷等取締法で刑事事件なら
~ケース~
北名古屋市在住の手品師であるAさんはある日,手品の小道具として10円玉の内側を削り取り薄くしたものや,内部に薄くした硬貨を隠せるようにした500円玉などを作成した。
ある日Aさんが北名古市内のデパートの催し会場で手品を披露していたところ,たまたま客としてきていた愛知県警察西枇杷島警察署の警察官であるXが硬貨が本物でるかどうかを尋ねた。
Aさんはもちろん本物であると答えたところ,Xは「硬貨を加工することは罪になる可能性があるので後日,愛知県警察西枇杷島警察署で話を聞かせて欲しい」とAさんに任意での出頭を求めた。
逮捕されてしまうのではないかと不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用した。
(フィクションです)
~硬貨を加工したら罪になる?~
硬貨を削ったり2つに割るなどする行為は貨幣損傷等取締法という法律違反となる可能性が高いです。
1条のみからなる短い法律ですので以下に全文を掲載します。
貨幣損傷等取締法
1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
2項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
3項 第一項又は前項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
この法律でいう「貨幣」とは通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律に定める貨幣をいい,同法5条1項に定める五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類および同法5条3項の定める記念貨幣が規制対象となります。
したがって,外国の貨幣は貨幣損傷等取締法の対象とならないため手品師の方は外国の貨幣を加工して使用することが多いようです。
なお,外国には該当する法律がない場合も多く,アメリカの観光地には硬貨を記念メダルに加工するスーベニアメダルマシンという機械がよく設置されています。
日本の観光地でも同じ様な機械が設置されていることがありますが,基本的にはすぐ傍に設置されている自動販売機などで専用のメダルを買う形態となります。
また,刑法148条1項の通貨偽造罪となる可能性も僅かながらあります。
しかし,通貨偽造罪は行使の目的で通貨を偽造した場合に成立します。
行使の目的とは真正な硬貨として流通に置く目的をいいますが,今回のケースでAさんはあくまでも手品の小道具として使用したものであり,真正な硬貨として流通に置く目的はなかったと考えられます。
したがって,Aさんに通貨偽造罪が成立する可能性は低いでしょう。
~弁護活動~
貨幣損傷等取締法はあまり検挙される事件ではありません。
また統計を見ても,検挙数が多い年度もある一方,全く検挙されていない年度もあります。
起訴と起訴猶予の割合も検挙された件数のほとんどが起訴されている年度もある一方でほとんど起訴されていない年度もあります。
そのため,貨幣損傷等取締法違反として検挙された場合に起訴されてしまうか起訴猶予となるかの判断が少しつきにくいでしょう。
しかし,前科がなく違法性も自身の手品に使うために数枚を加工したというような違法性が低い場合には起訴猶予となることも十分に考えられます。
逆に,自身ので使用する目的ではなく,手品用として販売するために大量に加工した場合には起訴された事案もあります。
起訴されてしまった場合でも,前科がなければよほど悪質な事案でなければ略式手続きによって罰金刑となると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強い法律事務所です。
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