食い逃げで強盗罪に問われたら
~食い逃げで強盗罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します~
~ケース~
名古屋市中川区のAさんは飲食店Vで食事をし,代金を支払う際に翻意し,代金を支払わずにいわゆる食い逃げをしようと考えた。
Aさんはたまたま持っていたカッターナイフを店員Xに突きつけ「金は払わねないからな」とXを脅し,Xが畏怖した隙に店外へと逃げ出した。
その際,Aさんは別の店員Yからカラーボールを投げられておりAさんは気づかなかったがズボンに塗料が付着していた。
その後,V店から通報を受けた愛知県警察中川警察署の警察官がAさんを発見しAさんは逮捕された。
(フィクションです)
~食い逃げとは~
食い逃げは無銭飲食とも呼ばれ,後払いの飲食店で飲食代を支払わずに逃げる行為をいいます。
食い逃げが違法な行為であることは明確ですが,刑法上の何罪に該当するのでしょうか。
まず食い逃げ=泥棒ということで窃盗罪が成立することが考えられます。
しかし窃盗罪の条文は「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」となっています。
食事が財物に当たることは問題なさそうですが,食い逃げ行為が窃取に当たるかは問題となるでしょう。
窃取とは,「不法領得の意思で,占有者の意思に反してその占有を侵害し,目的物を自己の占有に移す」ことをいいます。
今回のケースで,提供された食事は財物に当たるといえますが,注文を受けた飲食店が自己の意思に基づいて提供していますので「占有者の意思に反して」いたとはいえないでしょう。
また,窃盗罪の財物とは民法と同様に有体物に限られると解されています。
したがって,飲食代を免れる食い逃げは原則として窃盗罪とはならないといえます。
食い逃げのように何らかの債務から逃れる行為を利益窃盗と呼ぶ場合がありますが,利益窃盗は刑法で処罰の対象となっていません。
これは,利益窃盗で生じるのはあくまでも債務不履行関係であり,これを罰する場合,民事上の債務不履行がすべて刑罰の対象となってしまい妥当ではないと考えられているためです。
~食い逃げと詐欺罪・強盗罪~
食い逃げは原則窃盗罪とはなりませんが詐欺罪(246条)もしくは強盗罪(236条)となる可能性があります。
これら2つの罪は窃盗罪と異なり,債権債務関係の場合でも成立します(詐欺利得罪・強盗利得罪)。
代金を支払う意思がないにもかかわらず料理を注文した時点で店に対する欺罔行為となります。
店側は客は代金を支払ってくれると信じているので錯誤も認められ,料理の提供をもって詐欺罪の成立が考えられます。
また,財布を忘れた等何らかの嘘をついて代金の支払いを免れた場合も詐欺罪(2項詐欺)の成立が考えられます。
一方で,注文時には代金支払い意思があったが,途中で支払う意思が無くなったという場合には理論上,詐欺罪は成立しません。
加えて,暴行・脅迫を用いて代金の支払いを免れた場合には強盗罪(2項強盗)の成立が考えられます。
今回のAさんの場合,カッターナイフを突きつけ食い逃げをしたことになりますので強盗罪が成立してしまう可能性が高いでしょう。
~食い逃げじけんにおける弁護活動~
食い逃げは意思が生じたタイミングによって犯罪の成否が変わります。
しかし,途中で食い逃げの意思が生じたと主張してもなかなか認められないでしょう。
また,現金を持っていなかったなどの事情があった場合には当初から代金を払う意思がなかったとして詐欺罪が認められてしまう可能性が高いです。
また逃げる際に暴行や脅迫を加えた場合には強盗罪となってしまう場合もあります。
詐欺罪や強盗罪となってしまった場合,罰金刑が規定されていないので起訴された場合正式裁判を受けることになります。
食い逃げであればどちらの場合も執行猶予付きの判決となると考えられます。
執行猶予付きといっても前科となってしまいますので可能な限り刑事裁判が開かれなし,すなわち不起訴を獲得することを目指します。
窃盗罪・強盗罪や詐欺罪の場合,行為の態様や被害額などにもよりますが示談を成立させることが出来れば不起訴となる可能性は高くなります。
ただし,金銭を強取するような世間一般でいう「強盗行為」の場合には示談が成立しても不起訴とはならない可能性もあります。
なお,示談交渉は在宅事件であれば被疑者自らすることも可能ですが勾留されてしまった場合には物理的に不可能です。
また,加害者自身による示談の申入れそのものを受け入れてもらえないケースが多いです。
そのため、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
食い逃げをしてしまい,詐欺罪や強盗罪に問われてしまったような場合,まずは0120-631-881までご相談ください。
無料法律相談や初回接見のご予約を24時間365日受け付けています。