傷害致死事件と保釈
傷害致死事件と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、愛知県名古屋市中村区内のマンションにおいて、Vさんと同棲をしていました。
ある日、AさんとVさんは些細なことから喧嘩となり、AさんはVさんに風呂場でシャワーの熱湯を浴びせるなどして全身にやけどを負わせました。
AさんはVさんに怪我をさせるつもりで熱湯を浴びせましたが、Vさんを殺害するつもりはありませんでした。
しかし、Vさんはこのやけどを原因として死亡するに至りました。
その後、Aさんは傷害致死罪の容疑で愛知県中村警察署に逮捕され、今後起訴されるだろうと伝えられました。
(2021年1月4日にMBSNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【傷害致死罪とは】
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する(刑法205条)。
傷害致死罪は、刑法学上では「結果的加重犯」であるといわれています。
この傷害致死罪を含む「結果的加重犯」とは、ある犯罪を犯した際に、犯人が認識していた犯罪以上の重い結果が生じてしまった場合に、その重い結果についても責任を負わせることを規定した犯罪のことをいいます。
傷害致死罪についていえば、傷害致死罪は暴行罪と傷害罪の結果的加重犯であると考えられています。
すなわち、犯人が暴行罪・傷害罪に該当する行為を行った結果、犯人が認識していた暴行罪・傷害罪以上の重い結果(被害者の方の死亡)が生じてしまった場合、その重い結果(被害者の方の死亡)についても「傷害致死罪」として責任を負うということになります。
刑事事件例では、Aさんは、Vさんに怪我をさせるつもりで熱湯を浴びせており、殺害するつもりはありませんでした。
このとき、傷害罪の故意(認識・認容)はあったが、殺人罪の故意(認識・認容)はなかったといいます。
しかし、このAさんの行為によりVさんはやけどにより死亡しています。
この場合、Aさんが傷害罪に該当する行為を行った結果、Aさんが認識していた暴行罪・傷害罪以上の重い結果(被害者の方の死亡)が生じてしまった場合に該当し、その重い結果(被害者の方の死亡)についても「傷害致死罪」として責任を負うことになります。
以上より、Aさんは傷害致死罪の罪責を負うことになります。
【傷害致死事件の刑事弁護活動】
傷害致死事件の刑事弁護活動のひとつとして、保釈を求める活動が挙げられます。
保釈は、検察官による起訴がされた後、被告人の段階における身柄解放活動です。
今回のAさんは起訴されるだろうということを伝えられているため、起訴後の保釈を求める活動も見据えて弁護活動をすることが考えられます。
保釈に関する条文を引用します。
保釈の請求があったときは、左の場合を除いては、これを許さなければならない(刑事訴訟法89条柱書・権利保釈)。
① 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる(刑事訴訟法90条・裁量保釈)。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。
そのため、傷害罪を犯した場合、刑法89条に規定された被告人の権利としての保釈(権利保釈)は認められないことになります。
そこで、弁護士としては、刑法90条に規定された裁判所の裁量による保釈(裁量保釈)が認められるよう保釈請求書等で求めていくことになります。
保釈が認められた場合、住居制限などが加えられる可能性はあるものの、少なくとも判決が言い渡されるまでの間は通常の社会生活を送ることができるようになります(刑事訴訟法343条)。
保釈を求めるためには、保釈に十分な環境を作ってその環境を適切に主張していく必要があります。
専門家である弁護士のサポートを受けることで、環境づくりやその主張に効果的な活動をする事が期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
傷害致死事件と保釈についてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。