万引きから強盗罪
万引と強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市南区に住むAさんは、ギャンブルで消費者金融に手を出したことをきっかけにに借金返済に追われ、お金に困っていました。ある日、Aさんは、名古屋市内のデパートへ立ち寄ったところ、ブランドのバッグを目にしました。Aさんはこれを見て「売ればお金になる」「盗もう」と思い、万引きすることに決めました。そこで、Aさんは、X店の店員が目を離している隙に高級バッグ3点を手に取り、退店しました。そうしたところ、Aさんの行動を見ていた他の店員から「泥棒!」と叫ばれてしまいました。辺りは騒然となりましたが、Aさんは予め確認していた非常階段を使ってデパートの外に出ようとしたところ、警備員Vさんと鉢合わせとなりました。Aさんは高級バッグ3点を手にしていたため、無線で万引「き事案が起きた」との通報を受けていたVさんから、「万引きしましたね。」「事務所まで来ていただけますか。」と言われました。しかし、警察に逮捕されたくなかったAさんは、Aさんの行く手を阻むVさんの腹部を1回、顔面を2回殴った上、Vさんが怯んだ隙に出口から外へ出ようとしましたが、現場に駆け付けた警察官に窃盗罪で逮捕されてしまいました。その後、捜査の結果、Vさんに対する暴行の事実が明らかとなり、Aさんに対する容疑は事後強盗罪へと切り替わりました。
(フィクションです。)
~ 万引きから強盗罪 ~
Aさんの高級バッグを盗む行為は「万引き」と呼ばれ窃盗罪に当たります。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
しかし、今回、Aさんは万引きした後に、Aさんの逃走を制止しようとしたVさんに暴行を振るっています。
実は、この行為は「強盗罪」に当たる可能性があります。
通常、強盗罪といえば、
・相手にナイフを突きつけて(暴行)物を奪い取る
・相手を脅して(脅迫)物を奪い取る
などというように、物を奪い取る行為に先行して「暴行」又は「脅迫」行為が選考します。
しかし、今回は、まずはじめに物を奪い取る行為(万引き)が行われ、その後に「暴行」を行っています。このように、物を奪い取った後、事後的に「暴行」「脅迫」を行う罪を
事後強盗罪
といいます。
事後強盗罪(刑法238条)も強盗罪(刑法236条)の一種で法定刑は同じです。
刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
刑法238に規定されているように、事後強盗罪が成立するには「窃盗」を犯したことが必要とされていますが、窃盗の既遂、未遂は問いません。暴行、脅迫の相手方は、窃盗の直接の被害者のみならず、窃盗犯人の逃走を阻止したり、身柄を確保しようとする目撃者、警備員なども含まれます。
~ 怪我をさせた場合、死亡させた場合はさらに重たい罪 ~
万引き→強盗→人に怪我をさせた場合は「強盗致傷罪」、人を死亡させた場合は「強盗致死罪」に問われる可能性があります。
刑法240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
このように、強盗致傷罪、強盗致死傷罪は大変重たい罪です。
万引きも立派な犯罪ですが、それからさらにエスカレートすると、こうした重たい罪に問われかねないということは知っておくべきでしょう。
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