強要罪で示談するなら
強要罪と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
Aさんは、愛知県名古屋市中川区に住むVさんに200万円を貸し付けていましたが、期日になってもその返済が行われませんでした。
AさんはVさんに再三催促したものの、Vさんは「近々お金の工面ができるからそのとき返す」というばかりでした。
しびれを切らしたAさんは、知人2名と共にVさん宅を訪ね、「私は、令和元年8月2日にAから200万円を借りました。」という内容の借用書を書かせました。
借用書を書かせる際、AさんはVさんの胸倉を掴んで怒鳴ったり、抵抗するVさんを羽交い絞めにしたりしました。
それから数週間が経って、中川警察署から「Vさんの借用書の件で話を聞きたい」との連絡がありました。
以上の経緯をAさんから聞いた弁護士は、強要罪が成立する可能性があることを指摘し、弁護活動として示談を挙げました。
(フィクションです。)
【強要罪について】
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
強要罪は、暴行または脅迫を用いて、他人に何らかの行為をさせ、あるいはさせなかった場合に成立する可能性のある罪です。
脅迫を手段とする強要罪の場合、脅迫の内容が①被害者自身に害を加える旨の告知(223条1項)でも②被害者の親族に害を加える告知(223条2項)でも構いません。
上記事例では、Aさんが知人と共にVさんを脅迫し、Vさんに借用書を作成させています。
VさんはもともとAさんにお金を借りていたことから、無理やりとはいえ内容の正しい借用書を書かせる行為が犯罪に当たるのは理解しがたいかもしれません。
たしかに、借金の取り立てなどにつき、正当な権利行使の範囲内として適法とされることはあります。
ですが、そうした評価ができるかどうかの判断に当たっては、社会一般の常識に照らして手段が相当なものであったかが厳しく見られることになります。
そうした観点から見たとき、Aさんの手法は社会的に相当とは言えないと考えられます。
そのため、やはりAさんに強要罪が成立する可能性はあるでしょう。
【示談に期待できる効果】
強要罪は個人の意思決定の自由を侵害する罪であることから、被害者となるのは特定の個人です。
その場合、その個人との示談が重要な意味を持つと考えられます。
そもそも示談とは、被害者との間で交わす合意であって、謝罪をしたことや被害弁償の約束などを内容とするものです。
具体的な内容は事件によって異なるものであり、被害者が加害者に対する処罰を望まない旨や、今後被害者が加害者に接触してはならない旨などが合意されることもあります。
ある事件が警察などの介入で刑事事件として扱われた場合、示談の効力の発揮が期待できる場面は主に以下の2つが挙げられます。
1つ目の場面は、検察官が事件を起訴するか不起訴にするか決めるときです。
刑事事件においては、必要な捜査がひととおり行われたあと、検察官が事件を裁判にかけるかどうか決定することになります。
その際、示談の成否は重大な考慮要素の一つとされるのが通例であり、もし示談が成立していれば不起訴となる可能性は変わってきます。
2つ目の場面は、裁判官が刑罰の重さをどの程度にするか決めるときです。
検察官が事件を起訴すると、その事件については裁判が行われることになります。
裁判では、犯罪の内容のみならず犯罪後の対応や更生の可能性なども考慮され、示談についても当然のように考慮要素の一つとされています。
示談の成立が考慮されれば、刑の減軽が見込まれ、執行猶予となる可能性も高まるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、示談の締結をはじめとする的確な弁護活動を行います。
強要罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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