殺人未遂事件で逮捕①
殺人未遂事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、前編として殺人未遂罪と殺人予備罪について詳しく見ていきます。
【事件】
Aさんは、妻であるBさん(愛知県名古屋市在住)と別居中で離婚を考えていました。
財産分与の話し合いの中で、AさんはBさんに恨みを持つようになり,やがてBさんを殺害しようと考えるに至りました。
ある日の深夜、Aさんは自宅から包丁を持ってBさん宅に侵入しました。
ですが、Bさんの姿は見当たらず、Bさんの母であるVさんしかいませんでした。
そこで、過去にVさんから馬鹿にした態度をとられていたことを思い出し,AさんはVさんを殺害しようと、包丁でVさんの腹部を2回刺しました。
後日,Aさんは住居侵入罪と殺人未遂罪の容疑で南警察署に逮捕されました。
(フィクションです)
【殺人未遂・殺人予備】
犯罪というのは、ある権利や利益が侵害された場合にのみ成立が認められるものです。
ですが,守られるべき権利や利益の要保護性がより高いものである犯罪類型については,そのような結果が発生しなくても犯罪として成立するものがあります。
それが未遂罪と予備罪です。
以下では、殺人について見ていきます。
まず、法が保護するべき権利や利益のことを法益(保護法益)といいます。
たとえば、人の命は一般的に殺人罪(刑法第199条)の規定の存在によって守られており、人の命が殺人罪の保護法益だと言えます。
この人の命は、自由や名誉,財産など他の法益より要保護性が高いものといえます。
そこで、殺人未遂罪(刑法第203条)や殺人予備罪(刑法第201条)の規定を置くことにより、実際に生命の侵害が生じなくても処罰することとされています。
まず、殺人未遂罪は,被害者の殺害を図ったものの被害者が死亡しなかった場合に成立します。
Aさんのケースですと,AさんはVさんを殺害しようと包丁で腹部を2回刺しています。
これによりVさんが死亡しなかった場合には、Aさんに殺人未遂罪が成立すると考えられます。
次に、殺人予備罪は、殺人の「予備」(殺人を目的とする準備行為)を行った場合に成立する罪です。
法定刑は2年以下の懲役(情状により刑の免除あり)とされていす。
飽くまでも準備行為に過ぎないので、殺人罪の法定刑が死刑または無期もしくは5年以上の懲役とされていることに対しとても軽い法定刑が設定されていると言えます。
しかし,犯罪は犯罪ですので軽く考えるのは禁物です。
殺人予備罪は外部から明らかになりにくいので、それに当たる行為に及んだだけで捜査機関に反抗が露見することは稀です。
発覚の経緯としては、職務質問や(別件での)取調べにより明らかになるというのが現実的でしょう。
今回の事件のAさんは、Bさんとはそもそも接触できず、Vさんに対しては殺害を図るも実現には至っていません。
前提として、殺人予備罪に当たる行為を行っていても、そこから進んで殺人を実行に移せば、殺人未遂罪や殺人罪のみが成立します。
ですが,殺人罪の場合は被害者の数ごとに犯罪が成立しますので,Aさんの事件ではBさんとVさんそれぞれに対して犯罪の成立が検討されることになります。
これらのことを踏まえると、Vさんに対する殺人未遂罪の成立が考えられるだけでなく、Bさんに対する殺人予備罪も成立することが見込まれます。
ちなみに、捜査の途中でVさんの容体が悪化するなどしてが死亡した場合、Vさんの件に関する容疑は殺人未遂罪から殺人罪に切り替わることになるでしょう。
後編の方では、住居侵入罪と、殺人未遂事件の弁護活動について詳しく見ていきます。
殺人、殺人未遂の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が南警察署に逮捕されて困っている方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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