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少年事件の釈放後

2020-11-07

子どもが逮捕後釈放されたら安心なのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

名古屋市名東区に住むAさん(16歳)は痴漢事件を起こしたとして名東警察署に現行犯逮捕されてしまいました。しかし、その後、Aさんの母Bさんが名東警察署に身元引受人として迎えに行ったことから、Aさんは勾留されることなく釈放され、その日のうちに帰宅することを許されました。Bさんは、Aさんが逮捕直後に釈放されたことから、今後、Aさんが警察や検察から呼出しを受けることはないと考えています。
(フィクションです。)

~愛知県の痴漢~

痴漢行為によって成立する犯罪は、その多くが各都道府県の定める迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪(刑法第176条)のいずれかです。

愛知県迷惑行為防止条例では、第6条において「何人も、公共の場所又は公共の乗物(…)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」とし、その第1号において「人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(…)の上から触れること」としています。
「触れ」ることが迷惑防止条例違反の要件になりますので、胸やしりなどを撫でまわしたり揉んだりしていなくても、被害者が羞恥心や不安を覚える方法で身体に触れていれば、たとえば他人の身体に手などを押し付ける行為も痴漢として処罰されます。
愛知県における法定刑は、通常の場合1年以下の懲役または100万円以下の罰金で、常習の場合ですと2年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。

他方、強制わいせつ罪を定める条文は「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」となっています。
強制わいせつ罪におけるわいせつな行為とは、たとえば陰部・乳房・尻・太もも等に触れたりもてあそんだりする行為、裸にして写真を撮る行為、無理矢理キスしようとする行為などが考えられます。
加えて、被害者に行為者自身の性器等に触れさせる行為も、わいせつな行為に含まれると考えられます。
また、強制わいせつ罪における暴行・脅迫は、被害者の反抗を著しく困難にする程度に強いものでなければならないというのが有識者の多数説です。
ただ、実際のところ、痴漢被害にあっていることを周囲に知られたくなかったり、より悪質な行為をされないかという恐怖心などから反抗できない心理状態が比較的容易に形成されることも事実です。
このことから、裁判においては、様々な事情を考慮して反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったと比較的容易に認定される場合が少なくありません。

上記のいずれが適用されるかという点は、具体的な痴漢行為の内容に左右されます。
一般的には、衣服の上から被害者の陰部やしり、もも、胸を触ったり揉んだりした場合は迷惑防止条例違反として扱われる場合が多いです。
一方で下着の中に手を入れるなどして直接陰部を触った場合は強制わいせつ罪になる場合が多くなります。
これらは飽くまで一般的な傾向に過ぎず、衣服の上から触った場合でもその態様などがかなり悪質性の高いものであれば強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。

~逮捕から家庭裁判所送致まで~

警察に逮捕されると、少年であっても警察の留置場(留置施設)に収容されます。
逮捕後の流れは、

①逮捕

②警察官による弁解録取→釈放

③送致(送検)

④検察官による弁解録取→釈放

⑤検察官による「勾留請求」OR「勾留に代わる観護措置請求」

⑥勾留質問→釈放

⑦裁判官による「勾留決定」OR「勾留に代わる観護措置決定」
 
という手続を踏みます(なお、この間、不服申し立て等により釈放を早めることも可能です)。

①から⑦まで概ね3日間を要します。
なお、②の段階、③の段階、⑥の段階で釈放されることがあり、Aさんは④あるいは⑥の段階で釈放されています。

なお、⑦勾留決定があった場合は、逮捕された際に収容された留置場へ収容されるでしょう。
⑦勾留に代わる観護措置決定があった場合は指定された少年鑑別所へ収容されます。

勾留の期間は、検察官の勾留請求があった日から「10日間」で、その後、やむを得ない事由がある場合は最大「10日間」延長されることがあります。
観護措置の期間も請求の日から「10日間」ですが、延長は認められていません。
拘束された少年は上記の期間内に警察や検察の捜査を受け、事件を⑤家庭裁判所へ送致される手続を取られます。

~釈放されても安心はできない~

お子さんが逮捕されてしまったら、大きく混乱し、不安に思われる親御さんが多いでしょう。
だからこそ、その後、釈放されたとなればその時点で安心してしまい「これで事件は終わった」と考えてしまうことも無理はありません。

もっとも、釈放されたからといって事件が終わったということではなく、安心はできません。
逮捕直後に釈放された場合でも、その後、警察、検察庁から呼出しを受け、出頭して取調べを受ける必要があります。
捜査が終わった後は、事件が家庭裁判所へ送致され、家庭調査官の調査などを経た上で、少年審判を受けなければならない可能性もあります。
少年審判では、基本的に、保護観察、少年院送致などの保護処分が下されます。
保護処分を受けた後は、処分に応じた対応が必要となります。

このように、釈放されたら事件は終わりではないということは肝に銘じておくべきでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

強盗罪と自首

2020-11-06

強盗罪と自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。 

名古屋市天白区に住むAさんは,ある日の夜中,人通りの少ない路上を歩いていたVさんの背後から,Vさんに対し,左手に持っていた刃物を突き付け,「金を出せ,騒ぐと殺すぞ」などと言いました。Aさんはそのまま刃物を突き付けながら,Vさんから現金2万円入りの財布を右手で受け取り,その場から逃走しました。その後、Aさんは逮捕が怖くなって自首しようかどうか悩んでいます。
(フィクションです)

~ 強盗罪 ~

強盗罪は刑法236条に規定されています。

刑法236条
1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,前項と同様とする。

一般に,「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使,「脅迫」とは人に畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいますが,強盗罪の「暴行」「脅迫」の程度は,

相手方の反抗を抑圧する程度

に強いものでなければならないとされています。そして,程度であるか否かは,

・犯行の時刻・場所その他周囲の状況
・凶器使用の有無
・凶器の形状性質
・凶器の用い方など犯行の手段方法
・犯人,相手方の性別,年齢,体力

などを総合的に考慮して判断されます。

「強取」とは,上記の「暴行」「脅迫」により,相手方の反抗を抑圧して財物を自己又は第三者に移すことをいいます。
通常は,犯人が被害者自身から直接財物を奪取することが多いと思いますが,必ずしもその必要はなく,反抗を抑圧された被害者から交付を受けてもよいとされています。

~自首とは~

一般に、罪を犯した者が、捜査機関に犯罪、犯人が発覚する前に、自ら捜査機関へ出向くことを自首、出頭といいます。
このうち、自首については刑法に明文の規定があります。
ここで言う「自首」とは、捜査機関に自らの犯罪事実を申告し、その処分を委ねる意思表示を指します。
自首は任意的減軽事由として考慮されます。
つまり、裁判官が量刑を判断するにあたり、裁量で刑の減軽をするかしないか、減軽するとしてどの程度減軽するか決めることができるということです。

自首による刑の減軽を目指すに当たっては、ぜひとも留意しておくべき点が1つあります。
それは、事件が知られていないか、事件の被疑者が特定されていない状態で捜査機関へ出向かなければ「自首」として扱われないということです。
たとえば、被疑者が誰か分かっているものの居場所が掴めないというケースでは、被疑者が特定できている以上「自首」にはならないと考えられます。
ただし、この場合であっても、自ら捜査機関へ出向くことが反省の態度を示す一事情として量刑上考慮されることはあります。

単に自首すればOKという話ではないことは肝に銘じておくべきでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、強盗罪をはじめとする刑事事件、少年事件専門の法律事務所です。刑事事件、少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。

盗撮事件で前科を回避するためには

2020-11-05

盗撮事件で前科を回避したい場合を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

愛知県津島市に住む会社員のAさん(34歳)は、駅構内のエスカレーターで、前に座っていた女性のスカート内を盗撮したとして、迷惑行為防止条例違反で現行犯逮捕されました。そこで、逮捕の通知を受けたAさんの妻Bさんは、弁護士XにAさんとの接見を依頼しました。その後、弁護士Xから接見の報告を受けたBさんは、弁護士報酬が高いことに驚きその場で契約はしませんでした。ところが、Aさんは検察庁へ送検される前に釈放され、「在宅」被疑者として捜査を受けることになりました。AさんとBさんは話し合った結果、接見を依頼した弁護士に刑事弁護を依頼することに決めました。
(フィクションです。)

~盗撮が見つかってしまったら~

盗撮をして見つかってしまった場合、その場で警察に通報され、警察署で事情を聞かれることが多いでしょう。
このような場合に、その場から逃げようとせずに警察の指示に素直にしたがえば、逮捕されずにその日の内に釈放されるということもあります。
しかし、逃げようとしてしまうと、逃亡・証拠隠滅のおそれが高いと判断され、逮捕・勾留といった身柄拘束に繋がってしまう可能性が高くなります。
その為、盗撮が見つかってしまった場合には逃げようとせずに素直に警察の指示にしたがう事が身柄拘束をされないためには重要となります。

~盗撮の場合の刑事手続き~

警察に盗撮で逮捕された後は警察の留置場に収容されます。
その後、警察官の弁解録取という、あなたから事件についての弁解を聴く手続を受けます(実質は取調べと同じです)。
この後、釈放されることもあります。
釈放されない場合は、逮捕のときから48時間以内に検察庁へ事件と身柄を送致(送検)されます。
検察庁でも同じく弁解録取の手続を受けます。この後、釈放されることもあります。
釈放されない場合は、被疑者を受け取ったときから24時間以内に勾留請求の手続が取られます。

勾留請求されると今度は、裁判官による勾留質問の手続を受けます。ここでも事件のことについて聴かれます。この後釈放されることもあります。釈放されない場合は、勾留請求が許可された、つまり勾留決定が出たと考えて間違いありません。
最終的には警察官から勾留状という令状を示されます。勾留状には被疑者がどんな事実のどんな罪で勾留されるかなどが記載されています。
最初の勾留期間は、検察官が勾留請求をした日から10日間です。その後、「やむを得ない事由」がある場合は、最大10日間期間を延長されます。

~盗撮の場合の示談交渉~

盗撮事件では示談を成立させることが出来れば不起訴処分を獲得できる可能性が高いです。
もっとも、盗撮をした本人が被害者の方と直接示談をするのはほぼ不可能でしょう。
というのも、盗撮の場合、そもそも加害者と被害者の面識がない場合が多く、被害者とコンタクトをつけることすら難しいからです。
また、仮に何らかの方法で連絡が取れたとしても、盗撮などの被害者は不信感や恐怖心などにより会ってくれないことが多いでしょう。
逆に加害者が直接連絡を取ることで、却って被害者の方を怒らせてしまう可能性もあります。

他方で、刑事事件の弁護の依頼を受けた弁護士であれば、検察官から被害者の方の連絡先を取り次いでいただき連絡を取れる場合が多いです。
被害者の方も弁護士が相手であれば話を聞いてみようと考えて頂けることが多いようです。
被害者の方に話を聞いていただき示談を成立させることができれば今回のAさんのケースのような盗撮事件では不起訴処分となる可能性が高いでしょう。
また、示談を断られてしまった場合でも示談を試みたということは若干ではありますが有利な情状として扱ってもらえる場合もあります。

不起訴となれば前科がつくこともありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、盗撮をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。お気軽にご相談ください。

脅迫罪と弁護活動

2020-11-04

脅迫罪と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。 

名古屋市守山区の自営業者Aさんは、仲の悪い同僚に腹を立て「お前、殺すぞ」と言ってしまいました。以前にも同様のことを言われており、身体への危険を感じたVさんは、守山警察署に通報し、被害届を出しました。後日、Aさん宅にの守山警察署の警察官が訪れ、Aさんは脅迫罪の容疑で逮捕されました。Aさん逮捕に驚いたAさんの奥さんは、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

~ 脅迫罪 ~

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫したものは、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

害悪の告知は、一般に人を畏怖させる程度のものでなければなりません。
ただし、本罪は危険犯と言われ、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば足り、それによって現実に相手方が畏怖したことは必要ではないと解されています。

また、害悪を告知する方法には制限がありません。その程度に達しているかどうかは、その内容を四囲の状況に照らして判断すべきとされています。しかし、これが真意にでたこと(本当に家を焼き払う気があったか、など)、相手が現実に畏怖したことなどを必要とするものではありません。
害悪告知の手段には制限はありません。直接言葉で伝えることはもとより、文書の掲示、郵送、最近では、事例のようにメール送信の他、SNS・ブログなどネット上への投稿で脅迫罪に問われた例もあります。

なお、脅迫罪に似た犯罪ととして強要罪があります。
脅迫罪は人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば成立します。他方、強要罪は脅迫行為等の結果として、相手方に義務なきことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したことで成立するという点に違いがあります。また、強要罪の法定刑は3年以下の懲役と、脅迫罪と異なり罰金刑が設けられていないことも大きな違いです。

~脅迫罪と弁護活動~

脅迫罪に対する弁護活動は、被疑者が罪を認めるのか否認するのかで大きく変わります。

罪を認める場合、被害者への謝罪や示談の締結、再発防止のための取組みを主張し、不起訴処分や執行猶予、軽い罪を獲得するよう動きます。

他方、脅迫行為を否認する場合、脅迫電話や文章、メール等の客観的証拠の有無を争います。
また、捜査機関の取調べにおいて、不当な自白をしないよう対処したり、被害者の供述の矛盾や変化を私的するなど活動します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、脅迫罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

性感染で傷害

2020-11-03

性感染と傷害について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

名古屋市緑区に住むAさんは出会い系サイトで知り合ったVさん(当時20歳)と市内のホテルで性交に及びました。その際、Aさんは自身がHIVに感染していましたが、1回の性交で感染させることはないだろうと考え、Vさんには隠していました。後日、Vさんはエイズを発症し、Aさんを告訴しました。告訴を受けた緑警察署はAさんを取調べることにしました。
(フィクションです)

~傷害罪~

刑法第204条は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す」と規定しています。

傷害と聞くと、ナイフなどで人を傷つけたり、殴って怪我をさせたりといったことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

傷害罪にいう傷害とは、人の生理的機能に障害を与えることをいいます。
つまり、殴ったりするなどして人を傷つけずとも、病気にかからせたりした場合には傷害罪が成立し得るということです。

また、傷害罪は暴行罪(刑法第208条)の結果的加重犯としての性質も有しています。

結果的加重犯とは、基本となる犯罪(基本犯)から重い結果(加重結果)が生じたときに成立する犯罪です。
例えば、強盗致死傷罪(刑法第240条)、強制性交等致死傷罪(刑法第181条第2項)などがあります。
これらでは強盗罪(刑法第236条)や強制性交等罪(刑法第177条)が基本犯で、これらの犯罪の機会に人に死傷結果が生じた場合に強盗致死傷罪や強制性交等致死傷罪が成立するということになります。

強盗罪と強制性交等罪の法定刑が5年以上20年以下の懲役であるのに対して、強盗致傷罪と強制性交等致死傷罪の法定刑は無期または6年以上20年以下の懲役で、強盗致死罪に至っては死刑または無期懲役とかなり重い刑が設定されています。

原則として、過失犯を除いて犯罪が成立するためには故意が必要とされます。
しかし、結果的加重犯については、基本犯の故意のみが要求されているにすぎず、加重結果が生じたことについて故意は必要とされません。

傷害罪については、暴行の故意しかないにもかかわらず、傷害結果が生じた場合は傷害罪が成立しうるということになります。
さらに言えば、傷害罪の結果的加重犯である傷害致死罪(刑法第205条)と暴行罪は二重の結果的加重犯の関係になり、暴行の故意のみで行った暴行で人が死亡した場合は傷害致死罪が成立する可能性があるということにもなります。

ちなみに、暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料で、傷害致死罪の法定刑は3年以上20年以下の懲役です。

~傷害と示談~

傷害罪で被害者と示談したいという方にとって、一番関心が高いのは

示談金いったいはいくらかかるのか(示談金の相場は)?
慰謝料はいくらかかるのか(慰謝料の相場は)?

ということではないでしょうか?

まず、前提として慰謝料は示談金の一部であるということです。
示談金は正確には「損害賠償金」のことであり、慰謝料はその損害賠償金の一部です。

暴行・傷害行為は民法上の不法行為に当たり、加害者は暴行・傷害行為によって被害者に生じさせた「損害」を賠償する義務を負います(民法709条)。
この損害については「身体的損害」と「精神的損害」に分けることができます。
身体的損害は、治療費などの積極損害から休業損害などの消極損害まで様々です。
他方、精神的損害に当たるのが慰謝料というわけです。

なお、示談金(損害賠償金)の相場というものはありません。
なぜなら、示談金は傷害事件で現れた諸情状により変動するからです。
「情状」には

・被害者の怪我の程度
・被害者の処罰感情
・犯行態様(武器使用か否か)
・犯行に至るまでの経緯、動機(計画的か偶発的か)

などがありますが、このうち傷害罪で最も重要視されるのは「被害者の怪我の程度」です。
なぜなら、被害者の怪我の程度が重たければ重たいほど、上記でご紹介した治療費、休業損害、慰謝料も大きくなり、結果として損害賠償金(示談金)も大きくなるからです。

示談とは被害者側との話し合いです。
しかし、傷害罪の場合、加害者が示談交渉に乗り出しても、ほとんどの場合、被害者は示談交渉のテーブルには乗ってくれないでしょう。
また、どこまでの損害を賠償をするのか被害者側とよく話し合わなければなりません。
それには大変な知識と経験が必要ですし、労力・時間もかかります。
傷害罪で示談をご検討中の方は傷害罪に詳しい弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

強制わいせつと示談

2020-11-02

強制わいせつと示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

愛知県東海市に住むAさんは、妻の不倫に始まるトラブルによって離婚調停中です。どうしても妻を許すことができないAさんは、妻に対して復讐したいと考えるようになりました。
Aさんは婚姻関係の継続を望む妻を「話しがしたい」と市内のホテルの一室に呼び出しました。Aさんは部屋に入ってきた妻を押し倒し無理矢理衣服を脱がせて、上半身が露出した状態の姿を撮影しました。後日、妻が警察に相談したことをきっかけにAさんは強制わいせつの容疑で東海警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

~強制わいせつ罪~

強制わいせつ罪については、刑法第176条に規定があります。

刑法第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪におけるわいせつな行為とは、被害者の意思に反して身体的内密領域を侵害し、そのことによって被害者の性的羞恥心を害し、かつ一般人でも性的羞恥心を害されるであろうとされる行為のことをいいます。

具体的には、陰部・乳房・尻・太もも等に触れたりもてあそんだりする行為、裸にして写真を撮る行為、無理矢理キスしようとする行為などが挙げられます。
加えて、被害者に行為者自身の性器等に触れさせる行為もわいせつな行為に含まれます。

着衣の上から尻や乳房等を撫でまわしたりする行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反として取り締まられていますが、その程度や執拗さ等によってはより重い強制わいせつ罪の適用も考えられます。

これらの行為の被害者は、女性のみならず男性もなり得ます。
また、加害者にも限定はありません。

被害者が13歳以上であった場合、わいせつな行為をする手段として暴行・脅迫がなければ強制わいせつ罪は成立しません。

強制わいせつ罪の成立に必要な暴行・脅迫は、被害者の反抗を著しく困難にする程度に強いものでなければなりません。

従来、強制わいせつ罪について判例は「犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図」(最判昭和45・1・29刑集24巻1号1頁)がなければ成立しないものとしていました。

この見解によると、今回のAさんのように専ら報復や侮辱の目的で女性を裸にして写真撮影する行為については強制わいせつ罪は成立しないことになります。

しかし、2017年に判例変更がなされ、これによれば必ずしも性的意図が必要ではなく、その行為が客観的に見て明らかに性的な意味の強いものであれば、行為者自身に性的意図がなくても強制わいせつ罪の成立に影響がないこととされました(最大判平成29・11・29刑集71巻9号467頁)。

したがって、現在では撮影行為であってもその内容が客観的に見て明らかに性的な意味の強いものであれば復讐や侮辱目的であっても強制わいせつ罪に問われる可能性があることになります。

~強制わいせつと示談~

強制わいせつ事件など被害者がいる刑事事件では、早期の示談成立が早期の事件解決につながります。
強制わいせつ罪は「6月以上10年以下の懲役」と罰金刑の規定もない比較的重い罪となっていますが、示談を締結することができれば、今回の事例のように事件化を防ぐことができるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所で示談交渉に慣れた弁護士が所属しています。
被害者との示談成立をご希望の方は、ぜひ弊所に一度ご相談ください。

示談締結によるメリットは以下のとおりです。
一つ目に、刑事事件化を防止できたり、不起訴処分につながることです。
被害者が警察に届け出る前に示談を成立させることができれば、事件が刑事事件化することを防止することができます。
また、仮に、本件のように被害届を提出された後でも、検察官による刑事処分前に示談を成立させることができれば不起訴処分を獲得できる可能性は高くなります。
二つ目に、減刑や執行猶予につながることです。
示談締結は、起訴された後の刑事裁判の段階でも被告人に有利な事情として働きます。
示談が成立している場合、懲役刑の刑期が短くなったり、執行猶予がついたりします。
三つ目に、釈放・保釈につながることです。
示談が成立している場合、多くの場合、当事者間では事件を終わらせたいという合意が成立していることを意味します。
そのため、その時点で身柄拘束の要件である被疑者・被告人が逃亡や証拠隠滅を図るおそれはないと判断されやすいのです。
四つ目に、民事裁判の防止なども実現できることです。
将来、被害者の損害賠償請求権の行使を禁止する条項を示談条項に加えることもできます、

今回みてきたように、示談にはさまざまなメリットがあります。
しかし、被害を受けた方と示談を締結することは簡単ではありませんので、示談交渉については専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。また、示談交渉は知識、経験が重要になってきますので、示談交渉の経験も豊富な刑事事件専門の弁護士に依頼することが後悔のない事件解決への最善策であるといえるでしょう。

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ひったくり

2020-11-01

ひったくりについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは愛知県半田市の住宅街で、帰宅中の女性の後方から自転車で接近しハンドバッグをひったくろうとしました。とっさに女性がバッグを取られまいとベルトを強く引いたため、バランスを崩したAさんは転倒しました。その後Aさんは女性を突き飛ばし、ハンドバッグを持って逃走しました。この結果、女性は全治1週間の打撲傷を負いました。被害届を受けた半田警察署の警察官によって、Aさんは強盗致傷罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

~ひったくり~

通常、ひったくりは強盗罪(刑法第236条)ではなく、窃盗罪(同法第235条)に問われる行為です。

強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役で、窃盗罪の法定刑である10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に比べて重たくなっています。

一般的にひったくりが強盗罪ではなく窃盗罪に問われるのは、被害者から財物を得るにあたって強盗罪が要求する暴行・脅迫が存在しないためです。

強盗罪と窃盗罪は、共に不法領得の意思をもって被害者の意思に反してその財物の占有を取得・移転させる犯罪です。
ちなみに、ここでの占有とは、財物に対する事実的支配のことを指します。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に利用しまたは処分する意思・目的を意味します。
そして強盗罪ではさらに、占有を移転させる手段として被害者の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫が要求されているのです。

ひったくりはバイクや自転車等を走行させながら無理矢理被害者の所持品を奪う行為であるため、広い意味での暴行は存在しています。
しかし、暴行がかなりの危険性を伴うものであっても被害者がそれにより反抗を抑圧された結果財物を奪われたといえない以上、ひったくりは被害者の隙に乗じて財物の占有を奪ったにすぎず、窃盗罪の刑事責任を負うに止まるのです。

~強盗致傷罪~

Aさんはむしろ強盗致傷罪に問われる可能性が高いといえます。

繰り返しになりますが、強盗罪は不法領得の意思をもって暴行・脅迫を手段として相手方から財物を奪った場合に成立する犯罪です。

強盗致傷罪は、人への傷害結果が強盗の機会になされた行為によって発生した場合に成立する犯罪(刑法第240条)です。
法定刑は無期または6年以上の懲役です。

Aさんにはひったくり行為をする時点で女性のハンドバッグを奪おうという不法領得の意思が認められます。
さらにひったくり(未遂)行為やその後の突き飛ばす行為など、バッグを奪うための暴行の存在が認められます。
その結果として女性は怪我をし、Aさんはバッグを入手しています。

以上より、Aさんが強盗致傷罪に問われる可能性は高いといえます。

ただし、Aさんの暴行が女性の反抗を抑圧する程度に達していなかったと主張できれば、Aさんは強盗犯とはいえなくなりますので、窃盗罪と傷害罪(刑法第204条)の牽連犯(同法第54条第1項)としてその罪責を問われることになる可能性があります。

窃盗罪と傷害罪の牽連犯となった場合の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、ひったくりをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

空き巣の犯罪

2020-10-31

空き巣の犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

空き巣に入る家を決めかねていたAさんは、名古屋市名東区にある邸宅の家人が1週間旅行に出ることを確認しました。旅行3日目の夜2時30分ごろに誰もいないこの邸宅に侵入したAさんは、金品を物色し始めました。誰もいないはずの部屋の電気がついていることを不審に思った隣家の住人が警察に通報しました。午前2時45分ごろにAさんは駆けつけた愛知県名東警察署の警察官によって邸宅侵入の現行犯で逮捕されました。
(フィクションです)

~邸宅侵入罪~

正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入した場合には住居侵入罪(刑法第130条前段)が成立します。

この罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また、未遂も処罰されます(132条)。

住居とは、人の起臥寝食に使用される場所を指します。
邸宅とは、住居用に作られた建造物とこれに付随する囲繞地(塀や柵などで囲まれている土地)のことです。
「人の看守する」とは、管理人や監視人がいたり、鍵がかけられているなど、現実に人が支配・管理している状況にあるという意味です。

また、「侵入」とは、住居権者またはその委任を受けた看守者等の意思(推定的意思を含む)に反して、住居等の領域に立ち入ることと理解されています。
違法な目的を隠しての住居権者等の承諾を得た場合も、真意に基づく承諾ではないため本罪の成立が認められています。

今回の場合、Aさんは旅行で留守となっている邸宅に空き巣目的で侵入しているので、邸宅侵入罪の成立が認められる可能性は非常に高いと言えます。

~窃盗罪~

今回、Aさんは空き巣目的で邸宅に侵入しており、現に金品を物色しています。
この金品を物色する行為が窃盗罪の実行の着手と言えるのかということも、Aさんに問われる容疑内容を把握するために重要です。

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立します(刑法第235条)。
法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金で、未遂も処罰されます(243条)。

ここでの財物とは有体物である動産のことを意味します。
この動産の金銭的ないし経済的価値の有無は問われません。

窃取とは、占有者の意思に反して財物に対するその占有を排除し、その財物を自己の占有下に移す行為です。
占有とは、現実に物を支配している状態を意味します。

どのような場合に占有があるか認められるかは一概には言えませんが、過去の裁判例では、海中に落した物(最決昭和32・1・24・刑集11-1-270)やバス待合所に一時的に置き忘れたカメラ(最判昭和32・11・8刑集11-12-3061)などで所有者が意識していたり置いた場所をすぐに思い出して取りに戻ったりした場合にはその占有が認められています。

逆に、広大な湖沼に逃げ出した鯉(最決昭和56・2・20刑集35-1-15)や大規模スーパー内の6階で置き忘れたが被害者が思い出して10分後に取りに戻った財布(東京高判平成3・4・1判時1400-128)について、その占有を否定した裁判例があります。

以上の裁判例を見ると、裁判所はその物が意識して置いてあるように見えることを重視して占有の有無を認定しているといえます。

具体的には以下のようなものを基準としています。

①場所
自宅や自己の管理する場所内か、一般に人がその物を意識して置く場所かなど

②物自体の特性
忘れやすい物か、高価な物か、大きいか等

今回Aさんが盗ろうとした物は邸宅内の物であり、邸宅の住人に占有が認められる物であるといえそうです。

いよいよ本題に移って、Aさんが物色行為をしたことにより窃盗罪の未遂に達しているかという問題を考えてみましょう。

結論から言うと、物色行為時に未遂の成立が認められる場合が多いことから、Aさんの場合も未遂が認められる可能性が高いです。

ただし、目的としている物に接近してはじめて未遂が認められている事件(最決昭和40・3・9刑集19-2-69)もあり、物色を開始したからといって必ずしもその時点で未遂が認められるわけではなさそうです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、恐喝罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

少年の路上強盗

2020-10-30

少年の路上強盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

 

Aさん(15歳)は、路上を歩いていたVさんに対し、「金を出せ」等と言って脅し、顔などを殴って現金約6、000円を奪った路上強盗の件で、愛知県西警察署に強盗罪で逮捕されました。Aさんの両親は、今後のことが心配になり、少年事件に慣れた弁護士に刑事弁護を依頼しました。

 

 

~ 路上強盗 ~

 

路上強盗という罪はなく、正式には強盗罪(刑法236条)です。

 

刑法には、暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した場合に成立する旨規定されています。

 

強盗罪のいう「暴行」や「脅迫」は、暴行罪や脅迫罪のそれとは意味が異なり、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることが必要と解されています。

反抗抑圧の程度は、犯行の時刻・場所、その他の周囲の状況、凶器使用の有無、凶器の形状性質、犯行の態様・手段、犯人・相手方の性別・年齢、体力などを総合的に考慮して判断されます。反抗を抑圧する程度ではないと判断された場合は恐喝罪(刑法249条)となる場合もあります。

 

~少年事件の流れ~

 

少年事件であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には、逮捕されます。

逮捕されると、48時間以内に検察庁の検察官のもとに送られ、検察官は、24時間以内に少年を勾留するかを決めます。

勾留する場合は、裁判官に勾留請求をします。

そして、裁判官が勾留を認めれば、少年は留置施設に10~20日の間収容されます。

たた、少年事件においては、勾留に代わる観護措置というものがあります。

裁判官が勾留に代わり、観護措置を認めれば、少年は少年鑑別所に最大10日間収容されます。

 

少年事件は、家庭裁判所に送られます。

刑事事件の場合は、この段階で検察官に送られる(送致)ことになります。

家庭裁判所は、まず少年の身体が送られてきてから24時間以内に観護措置を決定しなければなりません。

家庭裁判所が観護措置を決定すると、少年は、少年鑑別所に収容されます。

期間は、通常4週間程度ですが、最長で8週間です。

また、家庭裁判所は、観護措置の判断とは別に、審判を開くか否かの調査をします。

裁判官は、調査を受けて審判開始もしくは不開始の決定をします。

この段階で、審判不開始を獲得できれば、少年事件を起こして警察から逮捕や捜査を受けた子供を少年院に入れないですむことになります。

 

~少年院送致の回避に向けた活動~

 

少年院送致の回避に向けては、主に

 

・少年と頻繁に接見して、法的アドバイス

・少年院送致の必要がないことの訴え

具体的には、再び非行に走ることのない環境調整が整っていること(家庭環境が良好であること、親に監督能力があること、暴走族等との交友関係を断ち切り今後交友する可能性がないこと、就職先があることなど)、少年が深く反省していることなどを主張していきます。

・被害弁償や示談交渉などの被害者対応

 

などを行います。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、強盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

 

恐喝で逮捕

2020-10-29

恐喝と逮捕について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

名古屋市北区に住むAさんは,会社の同僚であるVさんが不倫していることを偶然知りました。そこでVさんに対して不倫している事実を家族や他の同僚に黙っておく代わりに現金50万円を渡すよう脅迫しました。不倫を周りに知られてはまずいと思ったVさんは50万円のうち5万円を渡しました。
後日,考え直したVさんが警察に被害を届けたためAさんは恐喝の容疑で愛知県北警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

~恐喝罪~

恐喝罪とは,人を恐喝して財物を交付させた場合や,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた場合に成立する犯罪で,法定刑は10年以下の懲役です(刑法第249条)。

恐喝とは,暴行または脅迫を手段として相手方をその反抗を抑圧する程度に至らない程度に畏怖させ,畏怖した心理状態で財物の交付またはその他の財産上の利益の処分を行わせることをいいます。

典型例としては,理由にならないことを口実に語気強く迫り相手を脅して金品を出させることや,被害者が隠したい事実を暴露すると脅して口止め料を出させることなどがあります。

暴行・脅迫によって財物の交付や財産上の利益を処分させる罪には,他に強盗罪(刑法第236条)があります。

強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役(上限は20年)なので,強盗罪は恐喝罪に比べて相当に重い犯罪であるといえます。

強盗罪と恐喝罪とを区別するのが,暴行・脅迫によって生じた畏怖の程度が被害者の反抗を抑圧する程度に至ったかどうかということになります。

しかしながら,恐喝といいうるためには,人に恐怖心を生じさせ,意思決定の自由を制約するに足りる程度のものでなければならないので,畏怖の程度が被害者の反抗を抑圧するに足りる程度であったか,あるいはそれほどまでに至らなかったかという判断には微妙なものがあります。

判例の中には,ある地方新聞社の経営者が新聞紙上に医師の人気投票を掲載し,市の医師会を困惑させ,中止してほしいと申し入れた医師会に対して現金を要求してこれを交付させたという事件で,恐喝罪の成立を認めたものがあります(大判昭和8・10・6刑集12巻1807頁)。

このように,裁判所の判断の中には,相手を困惑させたり嫌悪の念を生じさせたりすることも恐喝にあたるとするものがあります。

裁判所が暴行・脅迫によって生じた畏怖の程度を判断する基準としては,暴行・脅迫の内容や方法の他に行為者や被害者の年齢,社会的身分,性別や体格差,周囲の環境などが考えられます。

したがって,もし明らかに被害者の反抗が抑圧されたとはいえないような事件で強盗罪の被疑者となってしまった場合には,社会的に相手方が優位にあったことや,相手の方が体格あるいは体力において優っていたことなどの主張をすることにより,強盗罪の適用を免れることができる可能性があります。

財産上不法の利益を得る場合とは,債務の履行を一時猶予させることなどが挙げられます。
例えば,飲食店側が飲食代金の支払いを求めたところ,「俺の顔を汚す気か,なめたことをいうな,こんな店をつぶすくらい簡単だ」などと言って支払いを一時断念させた事件で恐喝罪の成立が認められた判例があります(最決昭和43・12・11刑集22巻13号1469頁)。

今回,Aさんは不倫の事実を家族や同僚に告げるとVさんを脅して現金50万円を要求し,そのうち5万円を交付させました。

これは被害者が隠したい事実を暴露すると脅して口止め料を出させることにほかならず,恐喝の典型例といえます。

~逮捕後の流れ~

司法警察員による弁解を聴く手続、すなわち「弁解録取」の手続が取られます。その上で、司法警察員は、身柄を拘束する必要があるか否かを判断し、拘束する必要がないと判断したときは釈放し、必要がある判断したときは逮捕から48時間以内に、犯人及び事件を検察官の元に送致する手続を取ります。送致を受けた検察官も「弁解録取」という手続をとります。身柄拘束の必要がない場合は釈放し、必要がある場合は、犯人を受け取ってから24時間以内に、裁判官に対し勾留請求の手続を取ります。勾留の請求を受けた裁判官は、「勾留質問」という手続を取った上で、勾留するか釈放するかの判断をします。勾留の決定が出た場合は10日間拘束されます(ただし、不服申し立ての制度あり)。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、恐喝罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

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