Archive for the ‘ブログ’ Category
業務上横領罪と「占有」
業務上横領罪と「占有」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、愛知県名古屋市名東区内にあるIT企業(V会社)に従業員として勤務していました。
Aさんの仕事内容としては、経理としてV会社の預金(預金口座)を管理することが含まれていましたが、Aさんは約40回にわたり、勝手に会社の預金口座からAさん自身の銀行口座に合計約1億5000万円を送金しました。
その後、V会社が被害を届け出たことで、Aさんは愛知県名東警察署の警察官により業務上横領罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「横領した約1億5000万円には一切手を付けていない。何とか被害を弁償したり示談をしたりすることはできないか」と話しています。
Aさんの話を聞いたAさんの家族は、被害弁償や示談を含めた業務上横領事件の対応や、業務上横領罪自体について詳しく聞きたいと思い、名古屋市の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(2020年9月10日に中國新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【業務上横領罪とは】
刑法253条は以下のように業務所横領罪を規定しています。
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する(刑法253条)。
業務上横領罪は、被疑者自身が占有(濫用のおそれのある支配)をしている被害者の財物を領得することにより成立する犯罪です。
同じ財産に対する犯罪としては窃盗罪が思い浮かびやすいですが、窃盗罪とは異なり、被害者の占有(事実上の支配)を排除して被害者の方の財物を領得することにより成立する犯罪ではないことが、業務上横領罪の特徴です。
以下では、業務上横領罪が成立するための具体的な要件である「占有」に注目してみましょう。
【業務上横領罪の要件~「占有」】
業務上横領罪の客体(対象)は「自己の占有する他人の物」(刑法253条)です。
まず、V会社の預金が、Aさんにとっては「他人の物」(刑法253条)に該当するということは理解できるでしょう。
業務上横領罪の要件の理解が少々難解な部分は「自己の占有する」(刑法253条)という要件にあります。
業務上横領罪の「占有」(刑法253条)とは、濫用のおそれのある支配力であると考えられています。
濫用するおそれのある支配力を有していればよいことから、業務上横領罪の「占有」(刑法253条)は、物に対する事実的支配に加えて、法律的支配も含むとされています。
法律的支配の分かりやすい例としては、不動産の登記を有している場合が想定できるでしょう。
不動産の登記がある場合、必ずしも不動産に対する事実的支配もあるとは言えませんが、法律的支配があるとして、業務上横領罪の「占有」(刑法253条)に該当するのです。
対して、同じ財産に対する罪である窃盗罪では、「占有」の考え方は物に対する事実上の支配を指すと考えられています。
なお、今回の事例のように、預金を銀行に預けていたという場合には、銀行に預けているお金なのだから、その預金の事実上・法律上支配=「占有」は銀行のものではないかと疑問に思われるかもしれません。
しかし、現在の通説では、預金債権の支配が、性質上金銭その物の支配を同一視できると考えられています。
つまり、銀行に預金しているというケースであっても、その預金を操作できる立場にある場合には、預金に対する「占有」(濫用のおそれのある支配力)(刑法253条)を有していると考えられています(大審院判決大正9年3月12日)。
学説によっては、先に述べたように、銀行に預けている預金は銀行の「占有」のもとにあるとしているものもありますが、現状はこうした考えが通説となっています。
今回の刑事事件例では、AさんはV会社から預金の管理を任されています。
このとき、上記の考え方に照らせば、AさんはV会社の預金口座内の預金について占有(濫用のおそれがある支配)をしていたといえることになります。
刑事事件では、犯罪に当たるかどうかを考える時、この業務上横領罪の「占有」のように、1つ1つ条件の定義を考えた上でそれに当てはまるかどうかを検討し、判断していきます。
自分の行為のどこかどのように犯罪に該当しているのかといったことを正しく把握しておくことも、取調べで意図していない供述をしないようにするなどの防御においては重要なことです。
しかし、こうした検討・判断をするには、刑事事件の経験や知識が必要不可欠ですから、専門家の弁護士の力を借りることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
名古屋市の業務上横領事件でお悩みの場合、刑事事件への対応にお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
名古屋市中区で客引きをして逮捕されてしまったら
名古屋市中区で客引きをして逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは名古屋市中区の繁華街にあるキャバクラBの店長から、キャバクラBに客を勧誘して連れてくることを依頼され、1人あたり2000円の手数料を払うことで客引きを引き受けました。
AさんはキャバクラBの近くの道路上で通りすがりのVさんに「すぐ近くのキャバクラBです。今なら1万円ポッキリですよ。」と言いながら、Vさんの真横に密着して歩きながら声をかけ続けました。
しかし、実はVさんは愛知県中警察署の警察官で、Aさんは客引き行為で愛知県迷惑行為防止条例違反で現行犯逮捕され、後に風営法違反でも取調べを受けることになりました。
(フィクションです)
【客引きとはどういう行為ですか?】
Aさんが行った「客引き」とはどのような行為なのでしょうか。
裁判例(東京高判1979.9.13)では、客引きは「相手方を特定し、その店の客として遊興飲食をさせるために勧誘すること」とされています。
例えば
・近くに付きまとう、寄り添って歩く、立ちふさがる、腕をつかみ、引っ張る
・宣伝用チラシを差し出しながら「ワンセット●●円です。サービスの良い店ですよ。」や「どうぞどうぞ、いらっしゃいませ。」と声をかけ誘う
等の行為が客引きに該当すると言われています。
【客引きはどのような罪になるのですか?】
客引きはその行為を行なった人の身分により
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」と省略します)違反や
「愛知県迷惑行為防止条例」違反
となります。
風営法の条文は
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)当該営業に関し客引きをすること(風営法第22条第1項第1号)
となっており、罰則は
6月以下の懲役もしくは100蔓延以下の罰金(併科あり)(風営法第52条1号)
です。
愛知県迷惑行為防止条例の条文は
①人の性的好奇心をそそる見せ物若しくは物品若しくは人の性的好奇心に応じて人に接触する役務又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供について,客引きをし,又は人に呼び掛けて,若しくはビラ,パンフレットその他の物品(以下「ビラ等」という。)を配布して,若しくは提示して客となるように誘引すること。(愛知県迷惑行為防止条例第7条第1項第1号)
②歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなして飲食をさせる役務(人の通常衣服で覆われている身体又は下着に接触し,又は接触させる卑わいな行為(以下「卑わい行為」という。)を伴うものを含む。以下同じ。)若しくはこれを仮装したものの提供について、客引きをし、又は当該役務(卑わい行為を伴うものに限る。)若しくはこれを仮装したものの提供について,人に呼び掛けて,若しくはビラ等を配布して,若しくは提示して客となるように誘引すること。(愛知県迷惑行為防止条例第7条第1項第2号)
③歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなして飲食をさせる役務(卑わい行為を伴うものを除く。)又はこれを仮装したものの提供について,人に呼び掛けて,又はビラ等を配布して,若しくは提示して客となるように誘引すること。(愛知県迷惑行為防止条例第7条第2項第1号)
となっており、
①と②の罰則は
100万円以下の罰金、常習違反の場合は6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金
③の罰則は
再発防止命令が出され(10条)、違反した場合に30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
です。
では、客引きはどの罪に該当するのかのポイントですが
風営法違反の主体(罪を犯す人)は「風俗営業を営む者(従業者も含みます)」
愛知県迷惑防止条例違反の主体は「特に制限はなく、だれでもよい」
という違いがあります。
【刑事事件例について】
Aさんは、キャバクラBの店長から手数料をもらう約束で、キャバクラBの営業に関し客引きをすることを了承し(これが風俗営業を営む者との共謀、風俗営業に関し)、繁華街の道路上においてVさんに対し「すぐ近くのキャバクラBです。今なら1万円ポッキリですよ。」と真横に密着して歩きながら声をかけ続け、キャバクラBの客になるように勧誘しました(客引き行為をした)。
よってAさんは風営法の客引き及び愛知県迷惑行為防止条例の客引きの両方が成立するため、風営法違反と愛知県迷惑行為防止条例違反となると思われます。
【弁護活動について】
客引きについては、実際に執拗な客引き行為で逮捕された事例や警察による一斉摘発などで逮捕された事例が多数あります。
客引きは逮捕される可能性がある行為であることは理解していただけたかと思います。
では逮捕されてしまった場合の弁護活動について見ていきましょう。
逮捕から72時間以内は家族でも基本的には接見(いわゆる面会です)をすることはできませんが、弁護士なら接見をすることができます。
逮捕後すぐにに弁護士と接見できれば、取調べへの対応や今後どのような流れで進んでいくかなど様々な相談をすることができます。
逮捕後引き続き勾留され、身柄の拘束期間が長引けば、会社や学校に逮捕されたことが知られる可能性が高くなります。
弁護士に依頼すれば、勾留の取り消し申請や不当な勾留に対する不服申立てをしてもらえます。
身柄を拘束されることが無くても、弁護士のサポートがあれば先に述べた通り、取調べへの対応や相談もできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
ご家族やご自身が客引きで風営法違反や愛知県迷惑行為防止条例違反で話を聞かれることになった、または逮捕されてしまいお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談ください。
愛知県津島市の未成年者略取事件を相談したい
愛知県津島市の未成年者略取事件を相談したいというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは妻のBさんと離婚し、2歳の子どもであるVさんはBさんが親権者となりBさんの下で育てられていました。
ある日愛知県津島市にあるBさん宅を訪れていたAさんは、Vさんと一緒に暮らしたいと考えいきなりBさんを平手打ちし、Bさんがひるんだ隙に一緒にいたVさんを奪い、Aさんの自宅に連れ去りました。
その後AさんはBさんからの通報によって駆けつけた愛知県津島警察署の警察官により、未成年者略取罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)
【夫婦、または元夫婦の一方による子供の連れ去り行為について】
夫婦関係が破綻し、離婚成立、又は離婚協議中の別居夫婦において、子供の取り合いをめぐる争いが加熱し、一方の親の下で育てられている子供の連れ去り事件が発生した場合、未成年者略取罪や誘拐罪は成立するのか見ていきましょう。
【未成年者略取罪について】
未成年者略取罪とはどのような罪でしょうか?
条文は
「未成年者を略取し、または誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する」(刑法第224条)
となっています。
未成年者略取罪について内容を詳しくみていきましょう。
未成年者略取罪の主体は特に制限はなく、誰でも行えるとされており、未成年者の保護監督者(例:親権を有している親)も主体となります。
未成年者略取罪の対象は未成年者で、20歳未満の者をいいます。
犯罪の名前にも入っている「略取」とは、暴行や脅迫を手段として、他人をその保護された従来の生活環境から自己または第三者の実力的支配下に置くことをいいます。
なお、未成年者略取罪と同じ条文に定められている未成年者誘拐罪における「誘拐」とは、欺罔や誘惑を手段として、他人をその保護された従来の生活環境から自己または第三者の実力的支配下に置くことをいいます。
未成年者誘拐罪での「欺罔」とは、虚偽の事実を告げて、相手を錯誤に陥れることをいい、「誘惑」は、欺罔の程度には至りませんが、甘言をもって相手方の判断を誤らせることをいいます。
未成年者略取罪や未成年者誘拐罪の暴行や脅迫、欺罔や誘惑は未成年自身に加えられる必要はなく、その保護監督者に加えられるものでも構いません。
未成年者略取罪が成立するにあたっては、被拐取者が未成年者であること、略取、誘拐をすることの認識が必要とされています。
未成年者略取罪や未成年者誘拐罪は親告罪であり、告訴権者は未成年者本人及び保護監督者です。
また、親権を持つ人が加害者の場合は、親権者の行為として違法性が阻却されるか検討することが必要です。
【刑事事件例について】
AさんとBさんは既に離婚が成立しており、Vさんの親権はBさんにあり、Aさんにはありません。
AさんがBさんに対し暴行をしてVさんを自己の支配圏内に移しています。
これは未成年者略取罪に該当する行為となり、更にAさんには親権がありませんので、特に違法性を阻却することもなくAさんには未成年者略取罪が成立すると思われます。
【未成年者略取罪の弁護活動について】
仮にAさんが離婚協議中の段階で、Aさんに親権があった場合、違法性が阻却されるかどうかの判断で考慮されるべきとなる可能性が有ります。
ですが、今回Aさんには親権がないため違法性が阻却されるということはない可能性が高いです。
しかし公判において有罪判決を受ける見通しが強い場合であっても、子どもと会う理由や行為態様が粗暴や強引ではない等の事情を検察官や裁判官に主張することで、情状酌量で刑の減軽を目指していくことは可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
公判における情状酌量についての刑事弁護活動も多数の実績がございます。
ご自身やご家族が未成年者略取罪で話を聞かれることになったり逮捕されてしまった方は、ぜひ刑事事件に強い弁護士に早急にご相談ください。
改正少年法で少年事件が実名報道されやすくなる?
改正少年法で少年事件が実名報道されやすくなるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
~事例~
愛知県清須市に住んでいる18歳のAさんは、深夜、市内の路上を歩いていた通行人の女性Vさんに対して、後ろから抱きついて胸を触るといったわいせつな行為をしました。
Vさんが大きな声で叫んだことから周囲の人がAさんの行為に気が付き、愛知県西枇杷島警察署に通報。
Aさんはその場から逃げようとしましたが、駆け付けた警察官に強制わいせつ罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが逮捕されたという連絡を受け、自分達の息子が逮捕されたことにショックを受けています。
Aさんの両親は、最近のニュースで「改正少年法で少年事件でも実名報道されやすくなる」という報道を見たこともあり、Aさんが実名報道されるのかということも気になっています。
そこで、Aさんの両親は、少年事件について取り扱っている弁護士に、事件について詳しく相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・改正少年法と実名報道
少年法では、20歳未満の者を「少年」とし(少年法第2条第1項)、「少年」についてこの法律を適用しています。
この「20歳未満の者が少年法上の『少年』であり、少年法の適用を受ける」ということは、令和4年4月1日から施行される改正少年法でも変わりません。
しかし、今回の事例のAさんの両親は、「改正少年法で少年事件でも実名報道されやすくなる」といったニュースを見ているようです。
改正少年法によって変化することと、それに伴う影響とはどういったものがあるのでしょうか。
改正少年法が現行の少年法と大きく異なるポイントは、18歳・19歳の少年を「特定少年」と定義して、17歳以下の「少年」と異なる扱いをする部分が生まれたというところでしょう。
改正少年法では、以下の条文が新設され、「特定少年」というくくりが作られることになります。
改正少年法第62条
第1項 家庭裁判所は、特定少年(18歳以上の少年をいう。以下同じ。)に係る事件については、第20条の規定にかかわらず、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
第2項 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定をしなければならない。
ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
第1号 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るもの
第2号 死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であつて、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)
改正少年法では、上記のように、18歳・19歳の「少年」を「特定少年」というくくりとし、事件を検察官に送致(いわゆる「逆送」)して成人同様の刑事手続きを受ける範囲を、17歳以下の「少年」よりも広く取ることとなっています。
「特定少年」の原則逆送事件の範囲が広がることは、現行の少年法から改正少年法となることによって大きく変わることの1つといえるでしょう。
改正少年法の「特定少年」が現行の少年法と扱いが変更されることはこれだけではありません。
今回の事例でAさんの両親が心配している、報道に関する扱いも変更されることになります。
そもそも、現行の少年法では、20歳未満の少年全般に対して、推知報道を禁止する旨の条文が定められています。
少年法第61条
家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
この「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載」することがいわゆる「推知報道」です。
すなわち、20歳未満の「少年」について、実名報道を含むどこの誰だか分かるような報道はやめましょうということが推知報道の禁止ということです。
少年事件を起こした少年の実名報道が行われてしまえば、その少年の更生や社会復帰の機会を奪われてしまうおそれがあることから、少年法では少年の更生のために推知報道を禁止しているのです。
しかし、改正少年法では、以下のようにして、特定少年については条件によって推知報道禁止の例外とします。
改正少年法第68条
第61条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない。
ただし、当該罪に係る事件について刑事訴訟法第461条の請求がされた場合(同法第463条第1項若しくは第2項又は第468条第2項の規定により通常の規定に従い審判をすることとなつた場合を除く。)は、この限りでない。
つまり、事件時に特定少年=18歳・19歳であった場合で、その少年事件が逆送され、起訴されたのであれば、推知報道の禁止は適用されない=実名報道されうるということになるのです。
現行の少年法では、逆送や起訴の有無に関係なく事件時に少年であれば実名報道などの推知報道が禁止されていたことからすると、改正少年法では条件によっては実名報道が可能となるため、そうした意味では今回の事例のAさんの両親が報道で見たように「改正少年法では実名報道がされやすくなる」というように考えられるでしょう。
このほか、改正少年法では、事件時に特定少年だった少年が結果的に刑罰を受けることになった場合には、成人同様資格の取得制限を受けること等が現行の少年法から変更されます。
少年法が改正されることで、特に18歳・19歳の少年の扱いが大きく変更されます。
実名報道の可否など、少年やそのご家族に大きな影響が考えられることも変更される内容の1つですから、少年事件の当事者になってしまったら、疑問・不安は早期に解決して適切な対応をすることが必要になるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件だけでなく少年事件も数多く取り扱っています。
少年事件を起こしてしまった方、そのご家族の改正少年法に関するご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
少年が共同危険行為の疑いで逮捕されてしまった
少年が共同危険行為の疑いで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説いたします。
~ケース~
16歳のA君は、知人ら数名と誘い合わせ、愛知県瀬戸市内の県道において、原動機付自転車を大きく蛇行させて運転するなどしていたところ、パトカーで駆け付けてきた愛知県瀬戸警察署の警察官により道路交通法違反(共同危険行為)の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
逮捕の知らせを受けたA君の両親は、少年事件に詳しい弁護士から今後の対応についてアドバイスを受けようと考えています。
(フィクションです)
~共同危険行為とは?~
道路交通法第68条は、「二人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は、道路において二台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ、又は並進させる場合において、共同して、著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく他人に迷惑を及ぼすこととなる行為をしてはならない」としています。
これに違反し、有罪判決が確定すると、「二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処せられます(道路交通法第117条の3)。
~少年であるA君の場合はどうなる?~
A君は16歳の少年であるため、少年法の適用があります。
少年事件では、原則としてすべての少年事件が家庭裁判所へ送致された後、必要に応じて保護処分を受けることにより事件が終了します。
保護処分には、①保護観察処分、②児童自立支援施設又は児童養護施設送致、③少年院送致があります(少年法第24条1項1号~3号)。
審判が開かれた場合は、A君に対して保護観察処分、または、少年院送致が言い渡される可能性が高いでしょう。
保護観察処分が、在宅で保護観察官及び保護司による指導、支援を受けながら更生を目指す保護処分であるのに対し、少年院送致は、少年院に少年を収容した上で更生を目指す保護処分となります。
少年院に収容された場合は、特別の場合を除いて外出することができませんので、A君にとって負担の重い保護処分と考えることもできるかもしれません。
弁護活動を行う場合は、A君の将来を考慮し、過度に負担のかかる処分にならないよう、適切な処分の獲得に向けて活動していくことになるでしょう。
~少年院送致を避けるために必要な活動とは?~
例えば、最終的に少年院への送致を避けようとするのであれば、A君を少年院に収容するのではなく社会内で更生させる方が妥当であることを裁判官に納得してもらう必要があります。
今回のケースの場合は、家庭での監護態勢、A君の交友関係を見直し、改善していくことが必要となるでしょう。
ケースの状態のままでは、A君が社会に戻ったのち、再び今回の共同危険行為をした知人らと非行をしてしまうのではないかと予想されるからです。
家庭における監護態勢が十分でない場合や、今回のような非行を行う仲間との関係が続くと思われるのであれば、少年院送致などの処分によって、そういった環境から強制的に切り離す措置が取られる可能性が高まります。
もっとも、上記のような環境調整は一朝一夕に成し遂げられるものではなく、十分な時間をかける必要のある弁護活動です。
少年が1人の人間である以上、両親との関係や、ケースの非行を行った仲間との関係を見直すためには、弁護士を始め、周囲の支援が重要となります。
十分な時間をかけるためには、逮捕された段階からでも環境調整を行うべきです。
少年事件に詳しい弁護士に弁護活動を依頼し、少年審判に備えて活動を行うことが重要といえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件・少年事件の取り扱いを中心とする法律事務所です。
お子様が共同危険行為の疑いで現行犯逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談ください。
名古屋市中川区の虚偽告訴事件を法律相談
名古屋市中川区の虚偽告訴事件を法律相談したいというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは名古屋市中川区に住む知人のBさんからの借金の取り立てに嫌気がさしていたため、Bさんを刑務所に入れれば取り立ても止まると考えました。
そこでBさんに刑事処分を受けさせる目的で、愛知県中川警察署の警察官に対し「Bさんが私を蹴ってきて私は怪我をしました。」と嘘の話をしました。
その結果、愛知県中川警察署の警察官はBさんに対して任意で取り調べをすることになりました。
その後、Aさんの嘘が明るみになり、Aさんは虚偽告訴罪で愛知県中川警察署で話を聞かれることになりました。
(フィクションです)
【警察官に虚偽の犯罪通報をすると何罪になりますか?】
警察官に虚偽の犯罪通報をすると何罪になるのでしょうか?
刑法上の虚偽告訴罪か軽犯罪法上の虚偽申告の罪が成立します。
それぞれについて見ていきましょう。
【虚偽告訴罪】
虚偽告訴罪とはどのような罪なのでしょうか?条文は
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。
(刑法第172条)
となっています。
【軽犯罪上の虚偽申告の罪】
次に、軽犯罪上の虚偽申告の罪とはどのような罪なのでしょうか?該当するのは
虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
とされ、法定刑は「拘留」又は「科料」(軽犯罪法第1条柱書)です。
拘留は、1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束することです。
科料は、1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収することです。
【刑法上の虚偽告訴罪と軽犯罪法違反の境目】
刑法上の虚偽告訴罪が成立しないものが軽犯罪法違反の対象となります。
【虚偽告訴罪について】
それでは、刑法に定められている虚偽告訴罪がどのように成立していくのか見ていきましょう。
①虚偽告訴罪の主体に特に制限はなく、だれでも行えます。
②虚偽告訴罪の告訴等の対象は人だけではなく、法人も対象となりますが、人は実在する人(架空の人は含みません)でなければなりません。
③虚偽告訴罪における「虚偽」とは、刑事又は懲戒処分の原因となる事実が、客観的事実に反することです。
④虚偽告訴罪の「告訴」とは、犯罪の被害者やその他一定の条件がある人が、捜査機関(警察署など)に対し犯罪事実を申告して処罰を求めることをいいます。
⑤虚偽告訴罪で言われる「告発」とは、犯人又は告訴権がある人以外の第三者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告して処罰を求めることをいいます。
⑥虚偽告訴罪の条文にある「その他」とは、被害届を出すなど告訴や告発以外の方法をいいます。
⑦虚偽告訴罪の「申告」とは、自ら進んで事実を申告することをいいます。
⑧その行為を行う目的として、人に刑事又は懲戒処分を受けさせる目的があることが、虚偽告訴罪の成立に必要となります。
⑨虚偽告訴罪の故意としては、虚偽の犯罪を申告する認識が必要とされています。
【刑事事件例について】
今回のケースのAさんの行為を見ていきましょう。
虚偽告訴罪の主体となるには特に制限はありませんので、Aさんは虚偽告訴罪の主体となります。
今回のケースでは、Bさんが告訴等の対象ですが、Bさんは実在する人であるため虚偽告訴罪の「告訴」の対象となりえます。
Aさんは行為としてBさんの虚偽の犯罪=傷害罪を「Bさんに刑事処分を受けさせる目的で」申告しています。
よってAさんには、刑法上の虚偽告訴罪が成立する可能性が高いと思われます。
【Aさんへの弁護活動について】
先に書きました通り、虚偽告訴罪の法定刑は3月以上10年以下の懲役であり、罰金等の規定はありません。
もしも検察官に虚偽告訴罪で起訴をされて裁判になってしまえば、高い確率で実刑になってしまいます。
そして執行猶予が付かなければ、刑務所へ行き服役しなければならず、会社を解雇になったり学校を退学することになるかもしれません。
つまり弁護活動を早急に行い、起訴猶予による不起訴か、執行猶予を目指していくことになります。
このように、刑事事件に強い弁護士、示談交渉に強い弁護士に早急に相談をすることがとても大切です。
ご自身やご家族が虚偽告訴罪で話を聞かれることになったり逮捕されてしまった方は、ぜひ刑事事件に強い弁護士に早急にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
起訴猶予による不起訴、執行猶予を勝ち取った実績のある刑事弁護士も多数在籍しております。
名古屋市中川区の虚偽告訴事件でご自身やご家族が話を聞かれることになった、逮捕されたとお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
自己の所有家屋に侵入したら住居侵入事件になる?
自己の所有家屋に侵入したら住居侵入事件になる?
自己の所有家屋に侵入したら住居侵入事件になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは名古屋市名東区に自己が所有している一軒家に妻のVさんと2人暮らしをしていましたが、折り合いが悪くなり10年ほど前から一軒家を出て別居しています。
ある日、AさんはVさんが浮気をしているという噂を聞きつけ、Vさんの浮気現場の写真を撮ろうと夜中に自己が所有している一軒家に忍び込みました。
そこでAさんはVさんに見つかり愛知県名東警察署に通報され、Aさんは愛知県名東警察署で住居侵入罪の疑いで話を聞かれることになりました。
Aさんは「あの家は自分の名義だ。今は住んでないとはいえなぜ自分の家に入って住居侵入罪と言われなければいけないんだ。」と思い、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼しました。
(フィクションです)
【住居侵入罪】
正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。(刑法第130条)
【犯行の主体】
住居侵入罪の主体(犯罪を行う人)に特に制限はなく、誰でも行えます。
【犯行の対象】
1 「人の住居」とは
住居侵入罪の「侵入」の対象となる「住居」は、行為者以外の他人が居住する住居をいい、「住居」は、人の起臥寝食(日常生活)に用いる場所を言いますが、日常生活に使用するための一定の設備や構造は必要とされています。
住居としての使用は一時的なものでもよく、旅館やホテルの一室も起臥寝食に利用されれば「住居」に該当し、また現に日常生活の用に供されていれば、居住者が現在していることは必要ではなく、一時不在中の場所も「住居」に該当します。
一つの建物のうち区画された部屋はそれぞれ独立して「住居」となり、マンションの各部屋のほか、これに付属する屋上や階段などの共用部分のほか、屋根も「住居」となります。
「住居」がある塀などで囲んである部分は「住居」となります。
また、借家人が借家契約終了後も占有している場合など、不適法な住居であっても、事実上居住している以上、「住居」に該当します。
2 「人の看守する」とは
住居侵入罪の条文には、先ほど触れた「住居」の他に「人の監守する」邸宅などもその対象として定められています。
この「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配していることをいい、例えば守衛や警備員などの監視人を置く場合や鍵をかける場合、ドアをくぎ付けにする場合で、該当しないものとして単に立入禁止の立て札を立てる場合などがあります。
また、官公署の廊下、出入口、構内などは、庁舎管理権者の看守のもとにあるとされています。
3 「邸宅」とは
空き家やシーズンオフの別荘など、住居用に作られたものの、現在日常生活に使用されていない状態にあるもののことです。
4 「建造物」とは
屋根があり、障壁または支柱によって支えられた土地の定着物のことをいい、その内部に出入りできる構造があるものをいいます。
例えば、官公署の庁舎、学校、工場、倉庫、神社、寺院(ただし、起臥寝食に用いられていれば住居となります。)や駅の構内、国体開会式中の陸上競技場のスコアボード、警察署のコンクリート塀などがあります。
5「艦船」とは
軍艦やその他の船舶のことです。
【行為】
1 「侵入」とは
住居侵入罪における「侵入」とは、住居者や看守者の意思または推定的意思に反して立ち入ることをいいますので、承諾や推定的承諾がある場合は「侵入」に該当しませんが、その承諾は任意かつ真意から出たものでなければなりません。
例えば、威圧された状態での承諾や、強盗目的にもかかわらず客を装って店舗内に立ち入ることを許された場合は住居侵入罪にいう「侵入」となります。
また、違法な目的で立ち入る行為は、推定的意思に反する立入りとして「侵入」となります。
例えば、店内の客とけんかをする目的で日本刀を持ち店内に立ち入る行為や、ATMのキャッシュカードの暗証番号を盗み見る目的で、営業中のATMコーナーに立ち入る行為などが住居侵入罪のいう「侵入」となります。
2 「正当な理由がない」とは
住居侵入罪は「正当な理由がない」のに住居に「侵入」することで成立しますが、この「正当な理由がない」とは、「違法」ということと同じです。
すなわち、法令に基づいて立ち入る場合(警察などが行う刑事訴訟法に基づいた捜索や検証など)は正当な理由がある場合ということとなり、住居侵入罪の「しん」ます。
3 「実行の着手時期と既遂時期」
住居侵入罪の着手時期は侵入行為を開始した時、既遂時期は身体の全部が住居等に入った時です。
【刑事事件例について】
Aさんの自宅の名義は確かにAさんなのですが、実際に現在居住しているのはVさんであるので、Aさん名義の一軒家は「人の住居」と考えられます。
「人の住居」にVさんの浮気現場の写真を撮ろうという「正当な理由」ではない理由で侵入したので、住居侵入罪が成立すると思われます。
【Aさんに対する弁護活動】
まず、Aさんの行為が住居侵入罪にあたるのかどうか、目撃者や被害者の供述を争い警察などの捜査機関が住居侵入罪を立証するのに十分な証拠を持っていないことを主張し、不起訴処分や無罪を求めていくことも考えられます。
Aさんの行為が住居侵入罪になる場合、弁護士を通じて被害者の方と示談を締結することにより、起訴猶予などの不起訴処分により前科がつかなくなる可能性を高めることができます。
仮に住居侵入罪で逮捕・勾留されている場合でも、被害者の方への被害弁償や示談を行うことで釈放の可能性も高まりますので、早期の職場復帰や社会復帰を図ることもできます。
また、起訴され、裁判になった場合でも、示談が成立すれば執行猶予付き判決の可能性を大きく高めることが出来ますし、Aさんの犯行目的や犯行手口、住居侵入罪や建造物侵入罪など同種の前科の有無などを慎重に検討して、裁判所に対し適切な主張と立証を行うことで、執行猶予付きの判決を獲得する弁護活動を行っていくということになるでしょう。
このように、早期に事件概要を把握し、弁護活動をしてもらうことで有利な結果を獲得することが期待できますから、刑事事件に強い弁護士、示談交渉に強い弁護士に早期に相談をすることがとても大切です。
ご自身やご家族が住居侵入罪で話を聞かれることになったり逮捕されてしまった方は、ぜひ刑事事件や示談交渉に強い弁護士にお早めにご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
示談交渉や適切な主張や立証を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
名古屋市名東区の住居侵入罪でご自身やご家族が話を聞かれることになった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
インターネットで誹謗中傷をして侮辱事件に
インターネットで誹謗中傷をして侮辱事件に
インターネットで誹謗中傷をして侮辱事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、誰でも見ることができるインターネットの掲示板に「Vはクズな男だ、あんな奴なんで生きてるんだろう。」などとVさんの実名を挙げて書き込みをしました。
数週間後、Vさんが居住する愛知県豊山町を管轄する愛知県西枇杷島警察署の警察官がAさんの自宅を訪ね、Aさんは侮辱罪で愛知県西枇杷島警察署で話を聞かれることになりました。
(フィクションです)
【インターネットで他人を誹謗中傷することについて】
インターネット社会が発展するに伴い、他人を誹謗中傷する内容がインターネットの掲示板やSNSに書き込まれることが増加しています。
インターネットで不特定または多数人が閲覧できる場合、名誉棄損罪か侮辱罪が成立する可能性があります。
名誉棄損罪と侮辱罪では次に述べますとおり、法定刑に大きな違いがあります。
【名誉棄損罪】
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。(刑法第230条第1項)
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。(刑法第230条第2項)
【侮辱罪】
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留または科料に処する。(刑法第231条)
※侮辱罪につきましては、厳罰化が検討されており、罰則を「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」とする予定があります。
【名誉棄損罪と侮辱罪の共通事項】
名誉毀損罪と侮辱罪には、共通している部分もあります。
以下ではその共通事項を確認してみましょう。
1 人の名誉
名誉毀損罪と侮辱罪の条文にある「人」とは、行為者以外の自然人、法人、その他の団体をいい、「名誉」とは、外部的名誉、すなわち、人の価値に対する社会的評価をいいます。
人の倫理的価値(品性)、政治的・学問的・芸術的能力、容貌、健康、身分、家柄など社会において価値があるとされるものが含まれますが、人の経済的な支払い能力に対する評価(信用)は、信用棄損罪の対象となります。
2 公然
「人」同様、名誉毀損罪と侮辱罪の条文には同じく「公然」という言葉が使われています。
これは、不特定または多数人の認識しうる状態をいい、「不特定」とは相手方が特殊な関係によって限定されたものでないことをいい、摘示の相手方は特定かつ少数であっても、伝播して間接的に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれます。
3 親告罪
名誉棄損罪、侮辱罪とも親告罪です。
親告罪とは、被害者などの告訴権者が告訴をしなければ起訴できない犯罪のことをいいます。
【名誉棄損罪と侮辱罪の違い】
では、ここまで確認してきた名誉毀損罪と侮辱罪の共通事項に対して、2つの犯罪で異なる部分はどういった部分なのでしょうか。
1 事実の摘示について
名誉棄損罪は、「事実を摘示して、人の名誉を毀損する」ことで、人の社会的評価を低下させる恐れのある具体的事実を指摘、表示することをいい、単なる価値判断や評価は含まれません。
また、摘示される事実は、その真否を問わないし、公知の事実でもよく、また事実を摘示する方法に制限はなく、口頭、文書、写真(わいせつな写真と顔写真の合成)などがあります。
「名誉を毀損する」とは、人の社会的評価を低下させる恐れのある状態を作ることをいい、現実に社会的地位が傷つけられたことは必要ではありません。
一方、侮辱罪は、「事実を摘示しなくても、人を侮辱する」ことで、具体的事実を摘示することなく、人の社会的評価を低下させるような抽象的判断、批判を表現することをいいます。
表現補法に制限はなく、口頭、文書、動作などによってもかまいません。
2 故意
名誉棄損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損することの認識・認容が必要です。
侮辱罪は、事実を摘示することなく、公然と人を侮辱することの認識・認容が必要です。
3 違法性の阻却
名誉棄損罪にのみ規定があり、①摘示事実が公共の利害に関する事実であること(事実の公共性)②その目的がもっぱら公益を図るためであること(目的の公益性)③摘示事実が真実であることの証明があったこと(事実の真実性)の場合に違法性は阻却されます。
【刑事事件例について】
Aさんは誰でも見ることができるインターネットの掲示板に(=公然)、「Vはクズな男だ」と具体的な事実ではなく、抽象的な評価を示して、Vさんの社会的評価を低下させ得る内容の書き込みをしています(=事実を摘示することなく侮辱)。
よって、Aさんには侮辱罪が成立すると思われます。
【Aさんに対する弁護活動】
インターネットにおける誹謗中傷に関する犯罪は、名誉棄損罪であれ侮辱罪であれ、被害者が存在します。
よって、被害者との示談交渉が大変重要になってきます。
示談交渉とは、当事者同士で話し合って解決を模索することですが、加害者本人が示談交渉をすることはほぼ不可能ですし、ほぼ弁護士にしかできません。
被害者が刑事告訴を考えていた時、示談交渉をして刑事告訴をしないように働きかけることもできます。
名誉毀損罪や侮辱罪は上記のとおり親告罪ですので、示談交渉の前に被害者が刑事告訴をしていた場合でも告訴を取り下げてもらうことができれば不起訴になります。
ご自身やご家族がインターネットで誹謗中傷の書き込みをしてしまい心配だという方は、ぜひ刑事事件に強い弁護士にお早めにご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
示談交渉を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県豊山町の名誉棄損罪や侮辱罪で話を聞かれることになった、またはインターネットで誹謗中傷の書き込みをしてしまい不安だという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
愛知県犬山市の商標法違反事件で任意同行を相談
愛知県犬山市の商標法違反事件で任意同行を相談
愛知県犬山市の商標法違反事件で任意同行をする場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県犬山市に住んでいるAさんは、有名ブランドであるXの偽ブランド品を大量に輸入して、近日自分で運営する個人サイトで販売する予定でした。
数日後、愛知県犬山警察署の警察官がAさんの自宅を訪ね、「インターネットであなたの個人サイトを拝見しました。商標法に関連して、販売予定のXの商品で聞きたいことがあります。警察署で詳しく話を聞かせてください。」などと言い、Aさんは愛知県犬山警察署に任意同行することになりました。
(フィクションです)
【商標法(侵害の罪)】
今回Aさんが任意同行される際に警察官から伝えられている商標法という法律には、以下の規定があります。
商標権または専用使用権を侵害した者(第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(商標法第78条)
第37条または第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(商標法第78条第2項)
このようにして、偽ブランド品やコピーした商品などの商標権等を侵害した商品を輸出・輸入・所持・譲渡等した場合、商標法第78条第2項により処罰されます。
1 商標とは
商標法で保護されている商標とは、具体的な商品について使用される標章(人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的若しくは色彩またはこれらの結合、音など)(商標法第2条1項)を指します。
商品だけでなく、役務(いわゆるサービス)についても認められます。
2 犯行の主体
商標権を侵害する行為の主体に特に制限はなく、誰でも行えます。
3 犯行の対象
犯行の対象とされているものは、指定商品、指定商品や指定役務に類似する商品、その商品やその商品の個装に登録商標またはこれに類似する商標を付したものです。
「指定商品」、「指定役務」とは、商標出願にあたり、その商標を使用しているまたは使用を予定している商品や役務を指定する必要がありますが、この指定された商品や役務のことをいいます。
「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいいます(商標法第2条5項)。
類似する商標に該当するかは、商標の見た目(外観)、読み方(呼称)、一般的な印象(観念)の類似性や、取引の実情を踏まえ、総合的に出所混同のおそれがあるのかを取引者や一般の人を基準に判断していくことになります。
4 行為
今回の商標法違反に該当する行為は「所持」で、人が物を保管する実力的支配関係を内容とする行為をいいます。
5 目的
先ほど触れた「所持」については、譲渡、引渡し、輸出のために所持する目的が必要です。
【刑事事件例について】
Aさんは有名ブランドの偽ブランド品を輸入して、販売目的で所持していました。
上述の理由によりAさんには商標法違反の罪が成立すると思われます。
【Aさんに対する弁護活動】
偽ブランド品を所持していても、それを自分で使うためだけに所持していたり、そもそも偽ブランド品であることに気づかなかった・知らなかった場合は商標法違反は成立しません。
例えば、このような事実がある場合には、まずはこのことを客観的な証拠から主張していくことが考えられます。
商標法違反の成立に争いがない場合は、被害者への被害弁償や示談交渉を行うことが大切です。
被害金額が大きくなく、商標法違反や不正競争防止法違反などの同種前科が無ければ被害者との示談成立により起訴猶予による不起訴処分を目指すことも可能です。
仮に裁判になった場合でも、被害弁償や示談成立がされれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
また、被害弁償や示談成立がされれば、逮捕・勾留などの身柄拘束を回避できる可能性を高めることができます。
いずれにせよ、弁護士のサポートがあることで有利な結果を得る手助けになりますから、早期に刑事事件に強い・示談交渉に強い弁護士に相談することを強くおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
示談交渉を数多く行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県犬山市の商標法違反事件で相談をしたい、家族が商標法違反事件で任意同行をすることになった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
名古屋市北区の単純逃走未遂事件で保釈を相談
名古屋市北区の単純逃走未遂事件で保釈を相談
名古屋市北区の単純逃走未遂事件で保釈を弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県名古屋市北区に住んでいるAさんは、窃盗罪の容疑で逮捕後に起訴され、引き続き愛知県北警察署の留置場に勾留されていました。
Aさんは「裁判が終わるまでずっとここにいることになる。何としてでも家族と暮らしたい。」と思っていました。
ある晩、Aさんは留置場の寝具入れ作業中、留置場出入口の大扉が少し開いているのを見つけ、愛知県北警察署の警察官の隙をみて逃走しましたが、大扉を開けたところで取り押さえられ、単純逃走未遂罪で逮捕されました。
Aさんが単純逃走未遂罪で逮捕されたと聞いたAさんの家族は、どういった状況なのか、今後どういったことができるのかと不安になり、また、どうにかAさんの希望を叶えて釈放をしてやれないかと、保釈を含めて弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです)
【逃走罪(単純逃走罪)】
裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。(刑法第97条)
1 意義
単純逃走罪にあたる行為とは、国家の拘禁作用を侵害する犯罪で、既決または未決の囚人が、拘禁状態から離脱する行為です。
また、単純逃走罪は真正身分犯という種類の犯罪です。
真正身分犯とは、その犯罪が成立するにあたり、その人が特定の地位や状態にあることを必要とする=行為者がその地位や状態になければ成立しない犯罪のことを指します。
単純逃走罪の場合、後述のように「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者」という地位がある人が主体となる犯罪であるため、真正身分犯とされるのです。
2 保護法益
単純逃走罪が保護しているのは、国家の拘禁作用です。
3 単純逃走罪の主体
先ほども簡単に触れましたが、単純逃走罪の主体は、裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者で、監獄(代用監獄含む)に拘禁されている者をいいます。
既決の者とは、確定判決により刑の執行として現に拘禁されまたは死刑執行のため拘置されている者をいい、労役場留置執行中の者も含まれますが、仮出獄や執行停止中の者は含まれません。
未決の者とは、被疑者または被告人として勾留状によって拘禁中の者をいい、勾引状や逮捕状により、または現行犯逮捕、緊急逮捕により一時拘禁されている者は含まれません。
4 行為
単純逃走罪の条文にある「逃走」とは、拘禁から離脱することをいい、単に手錠を外し、または拘禁場の扉を合鍵で開けて逃走することなどをいいます。
単純逃走罪の着手時期は、逃走の故意で扉を開けにかかるなどの行為があった時点と考えられています。
また、既遂時期は拘禁場の支配から完全に脱したときであると考えられており、まだ追跡中の場合や外壁外に出ていない場合は未遂となります。
【刑事事件例について】
Aさんは起訴されているため、Aさんの身分は被告人であり、つまり、単純逃走罪にいう「未決の者」です。
Aさんは故意に留置場出入口の大扉を開けましたが、そこで取り押さえられたため、単純逃走罪に着手はしましたが、拘禁場の支配から完全に脱することはできなかったということになるでしょう。
そのため、Aさんには単純逃走未遂罪が成立すると考えられます。
【保釈などの身柄解放活動について】
被告人であるAさんは「家族と暮らしたい」という一心で、単純逃走未遂罪を犯してしまったようです。
Aさんは裁判が終わるまで家族と暮らすことはできないのでしょうか?
例えば、今回のAさんはすでに窃盗罪で起訴されている状態であったことから、保釈請求をするという手段が考えられます。
保釈が認められれば、Aさんは釈放され家族と暮らすことができるようになります。
保釈とは、保釈保証金(いわゆる保釈金)の納付を条件として、住居等の制限のもとに被告人の身体拘束を解く釈放制度のことです。
保釈は、ほとんどが弁護士からの請求によってなされ、弁護士が裁判所に保釈を請求する手続きをして、それが認められれば保釈金を納付して釈放されるという流れになることが多いです。
保釈が認められるには、①被告人が証拠隠滅をする危険がないこと②被告人が被害者や事件関係者及びその親族などに接触する危険がないこと③被告人が逃亡する危険がないこと、などの事情が重要とされます。
保釈が認められるかの判断期間は2~3日ですが、土日祝を挟むときは4~5日かかることもあります。
保釈金とは、保釈を認める条件として裁判所へ納付するお金のことで、被告人の経済状態や罪の重さなどを考慮して裁判所が決めますが、一般的には200万円前後、500万円を超えることもあります。
とても高額だと驚かれるかもしれませんが、保釈金は被告人が証拠隠滅などをせずに裁判に出頭していれば裁判の終了後に返却されます。
今回の事例のAさんの場合、既に起訴されている窃盗罪だけではなく、新たに単純逃走未遂罪でも逮捕されてしまっていることから、単純逃走未遂事件に関する釈放を求める活動を行った後に既に起訴されている窃盗事件の保釈請求活動を行う等、釈放を求める活動の手順が複雑になることも考えられます。
さらに、単純逃走未遂罪という、逃亡しようとする行為をしてしまっていることから、保釈を求める際にもより丁寧に監督体制等を主張していく必要があるでしょう。
こうしたことから、刑事事件に精通している弁護士と綿密な打ち合わせのもと、保釈請求活動をしてもらうことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
保釈請求活動を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
名古屋市北区の単純逃走未遂事件で逮捕された、または家族を留置場や拘置所から釈放してほしいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。