キセル乗車と電子計算機使用詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは毎朝、満員電車で電車通勤をしています。
Aさんの自宅の最寄り駅B駅は、ある路線の始発駅である愛知県小牧市にあるC駅の次の駅です。
そこでAさんは、通勤方向とは逆の方向の電車に乗りC駅まで行き、自動改札機を出ず、そのままC駅から正規の方向の電車に乗れば確実に座れて、会社の最寄り駅のD駅まで行けると考えました。
Aさんの定期券は、自宅最寄り駅のB駅から会社最寄り駅のD駅までです。
Aさんは数か月ほど、B駅に自動改札機に入りC駅まで行き、C駅から座ってD駅まで行き自動改札機で出るということを繰り返していました。
ある日AさんはC駅ホームで駅員に「ここ数ヶ月キセル乗車をしていませんか?」と声をかけられ、駅長室に行くことになりました。
駅員は愛知県小牧警察署に電話しており、Aさんは、会社にこのことが知られたらどうしようと不安になっています。
(フィクションです)
【キセル乗車とは】
キセル乗車とは、乗降駅付近の乗車券や定期券を使い、中間を無賃乗車する不正行為のことです。
言葉の由来は、喫煙具の煙管(キセル)からで、煙管は煙草を入れる先と吸い口だけ金属でできており、途中は竹でできています。
つまり乗車区間の最初と最後だけ金属(金)を使うことにかけて、「キセル乗車」というようになったと言われています。
キセル乗車については、現在は電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性が高いと思われます。
それでは、電子計算機使用詐欺罪について見ていきましょう。
【電子計算機使用詐欺罪】
電子計算機使用詐欺罪は、刑法246条の2に規定があり、
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
とされています。
そもそも電子計算機使用詐欺罪は、電子計算機(コンピューター等)を騙す行為が、詐欺罪(刑法第246条)の構成要件である「人を欺く」ことに該当しないため、その補完のために作られたものと言われています。
仮にB駅の駅員に定期券を見せてキセル乗車をしていた場合は、「人(駅員)を欺く行為」があるため詐欺罪となりますが、今回の場合はB駅で駅員に定期券を見せることなく自動改札機を通っているため、人を欺く行為ではなく、自動改札機(や内部のコンピューター)を欺いているため、電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性が高いのです。
参考に、詐欺罪が成立するためには
①人を欺く行為がある
②欺く行為により相手方が錯誤に陥る
③錯誤に基づく財産的処分行為がある
④その結果、財物の交付を得る
ことと、①~④の間に因果関係があることが必要です。
【会社に知られたくない…】
詐欺事件を起こしたことが会社に発覚する経緯は以下のようなものがあります。
①逮捕された時
②勾留されて身体拘束期間が長期化した時
③職場や学校に捜査がはいった時
④起訴されて正式裁判になった時
①は、警察がマスコミに事件のことを報告し報道(テレビ・新聞・ネットニュースなど)で事件が世間に知れ渡り、その結果、職場に発覚することが考えられます。
弁護士は事実と異なる報道がなされてしまった場合、報道内容の訂正・削除を報道機関に求めていくことが可能です。
②は、逮捕、更に勾留された場合、長期間会社を休むことになりますので会社に発覚してしまうことが考えられます。
その結果、会社を解雇される、降格されるなどの社会的制裁を受ける可能性が出てくるのです。
弁護士は早期に釈放されるように、被害者と示談交渉を行ったり、身体拘束を決定したことに対して不服を申し立て、早期に身柄を解放する活動ができます。
④は詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪には罰金刑が無いため、起訴をされれば正式裁判となり、裁判は公開の法廷で行われることになります。
誰でも見ることができる裁判であるため、傍聴席に知人や同僚、報道関係者がいた場合に事件が知られてしまう可能性が有るのです。
ですので、弁護士はそもそも裁判とならない(起訴猶予などによる不起訴)処分を目指して活動をしていくことになるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身がキセル乗車をしてしまった、事件のことを会社に知られるのが心配だという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。