無免許で死亡事故を起こした女性が、内縁の夫を身代わり出頭させた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
参考事件(『「男性は身代わり」内縁の妻とみられる容疑者を逮捕 愛知県警』を参考にしたフィクションをです。)
A子さんは、無免許で車を運転した際に、不注意で高齢の歩行者をはねてしまいました。
無免許の発覚をおそれたA子さんは、救急車を呼んだり、事故を警察に届け出るなど適切な措置をせずにその場から逃走しました。
そして内縁の夫に依頼し、身代わり出頭してもらったのです。
しかし警察の捜査によってA子さんが車を運転していたことが発覚し、A子さんはひき逃げと無免許過失運転致死等の罪によって逮捕されてしまい、内縁の夫は釈放されました。
何か犯罪を起こした人の身代わりになって警察に申告すれば、犯罪を犯した人だけでなく、身代わりになった人も刑事責任を問われます。
ここで適用される法律は、刑法に定められている「犯人隠避罪」です。
犯人隠避罪
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者の逃走を手助けしたら、犯人蔵匿罪若しくは犯人隠避罪となります。
犯人隠避罪の客体
これらの犯罪の客体となるのは①罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、又は②拘禁中に逃走した者です。
A子さんは、無免許運転や、死亡事故、そしてひき逃げといった『罰金以上の刑に当たる罪』を犯しているので、犯人隠避罪の客体となります。
犯人隠避罪の行為
隠避とは、蔵匿以外の逃走を助ける一切の行為。(逃走資金や逃走用の車や衣類等、携帯電話機を用意する行為など)
ここでいう「蔵匿」とは、逃走中の犯人が隠れる場所を提供することで、そういった行為をすると犯人蔵匿罪となります。
Aさんの知人のように、身代わりとなって警察に申告する行為も、犯人隠避罪でいう「隠避行為」に当たりますので、Aさんの知人は犯人隠避罪に問われるでしょう。
犯人隠避罪の罰則
犯人隠避罪で起訴されて、有罪が確定すれば「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。
犯人隠避罪の量刑は、逃走犯の犯した犯罪や社会的反響の大きさと、蔵匿期間等の犯行形態によって左右されるでしょうが、今回の場合は、無免許による死亡ひき逃げ事故ですので、厳しい刑事罰が予想されます。
教唆犯
A子さんの内夫だけでなく、A子さん自身も犯人隠避罪の教唆に問われるでしょう。
教唆とは、犯罪の意思がない人をそそのかして、犯罪を実行することを決意させて実行させることをいいます。
A子さんと内夫の間でどのような話し合いがあったのかまでハッキリしませんが、教唆の方法には制限がなく、明示的な方法に限られず、黙示的な方法であってもよいとされていますので、A子さんが犯人隠避教唆罪に問われる可能性は非常に高いと言えます。
教唆犯は、正犯の刑が科せられるので、もしA子さんが、犯人隠避罪の教唆犯として起訴されて有罪が確定した場合は、犯人隠避罪の法定刑である「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が適用されます。
まずは弁護士に相談を
交通事故は、車やバイクを運転する方であれば、誰もが巻き込まれる可能性のある事件です。
このような刑事事件に関するご相談は、刑事事件を専門に扱っている「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部」にお任せください。
早期に弁護士に相談することで不安が和らぐ可能性があります。また早期に弁護活動を行うことで刑事罰が軽減される可能性もありますので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。