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未成年と性交し犯罪に?

2020-01-14

未成年と性交し淫行(犯罪)に?

未成年と性交し淫行(犯罪)になるケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【事件】

愛知県名古屋市に住むAさんはアルバイト先の同僚である女性Vさん(16歳)と恋愛関係にありました。
AさんとVさんは何度もデートをし,性行為も行っています。
ある日,AさんはVさんと並んで歩いているところを職務質問され,Vさんとの関係を正直に話したところ北警察署で詳しく事情を聞かれることになりました。
Aさんが心配になり弁護士に相談したところ,淫行として愛知県青少年保護育成条例違反に当たる可能性があるとの指摘を受けました。
(フィクションです)

【未成年者との淫行と犯罪】

未成年者と性交に及んだ場合,淫行として犯罪になる可能性があります。
適用される可能性のある法令としては,自治体に関係なく適用される児童福祉法と,各自治体のみで適用される青少年保護育成条例(青少年健全育成条例とも)が挙げられます。

児童福祉法では,第34条第1項第6号で児童(満18歳に満たない者)に淫行をさせる行為を禁止しています。
この淫行の罪は,後述する条例違反の罪とは異なり,児童に影響力を行使して淫行に及んだ場合に適用されうるものです。
たとえば,日ごろから児童の面倒を見ている親が児童と性交した場合が典型です。
罰則は,10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金,またはその両方が科せられます。

青少年保護育成条例については,愛知県の場合ですと愛知県青少年保護育成条例14条1項に規定されています。

愛知県青少年保護育成条例
第14条 何人も、青少年に対して、いん行又はわいせつ行為をしてはならない

ここでいう青少年とは,18歳未満であって,他の法令によって成年者と同一の能力を有する者(例えば婚姻関係にある者)以外の者を意味します。
また,「いん行」(淫行)について,判例(最大判昭和60・10・23刑集39巻6号413頁)によれば「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」を意味するものとされています。
更に,同判例によれば「例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等」は「社会通念上およそ処罰の対象として考え難い」ものであり,淫行にはあたらないとしています。
したがって,青少年保護育成条例で処罰される淫行とは,必ずしも18歳未満の者との性交全てを指すわけではないと言えます。

この他にも,相手が13歳未満であった場合は,強制わいせつ罪(刑法第176条)や強制性交等罪(刑法第177条)などに当たる可能性があります。
これらの罪は,相手方が13歳未満の場合に暴行・脅迫が要求されないため注意が必要です。
強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役,強制性交等罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役とかなり重くなっています。

また,18歳未満の女性と性行為やわいせつ行為を行い報酬を支払った場合は,児童買春禁止法違反(児童買春罪)となり,5年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。

Aさんは18歳未満であるVさんと性行為を行っており,青少年健全育成条例違反に問われる可能性があります。

【弁護活動】

未成年者との援助交際や淫行によるトラブルに対して,弁護士は個別具体的な事案に応じて,児童福祉法違反・青少年健全育成条例違反・児童買春罪あるいは強制わいせつ罪や強制性交等罪に当たる可能性があるのかご説明し,今後なされうる刑事手続きや弁護活動について依頼者と話し合います。

もしこれらの犯罪に当たる可能性がある場合,弁護士としては,被害者と示談交渉を行うことで不起訴や執行猶予の獲得を目指します。
未成年者を相手とする性犯罪の場合ですと,交渉相手となることの多い未成年者の保護者は被疑者との直接やりとりすることを拒絶する場合が少なくありません。
刑事事件に強い弁護士に依頼していただくことで,難航することの多い示談を円滑に進めることが期待できます。

未成年者との淫行に伴うトラブルで捜査の対象となってしまった方,児童買春事件の被疑者となってしまった方,北警察署から呼び出しを受けた方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(無料法律相談のご予約はこちら

強盗事件の弁護活動

2020-01-13

強盗事件の弁護活動

強盗事件の弁護活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【事件】

Aさんは,愛知県名古屋市で仲間数名と共に会社員の男性Vさんに襲い掛かり,腹部や頭部を殴打の上バッグから財布を奪いました。
Aさんらの犯行を目撃した通行人が警察に通報し,Aさんらは西警察署の警察官に強盗罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

【強盗罪】

強盗罪は,暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した場合に成立します(刑法第236条第1項)。
法定刑は,5年以上の有期懲役です。

本罪における暴行・脅迫は,客観的に見て相手方(被害者)の反抗を抑圧するに足りる程度の強さがなければならないと考えられています(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75頁)。
これは,暴行罪(刑法第208条)に規定されている「暴行」より強度のものが必要であることを意味します。
更に,暴行・脅迫の相手方は必ずしも財物の所有者に限られず,強盗を遂げるうえで障害となる者が対象であれば強盗罪には成立しうると考えられています。

暴行・脅迫は,財物を奪うための手段として行われる必要があります。
そのため,暴行・脅迫によって相手の反抗が抑圧された後に財物奪取の意思が生じたような場合には強盗罪とはならないとされています(大判昭和8年7月17日刑集12巻1314頁)。
これに従うと,相手方を痛い目にあわせようと暴行を加えたあと,なんとなく思い立って物を盗んだ場合には,理論上強盗罪には当たらないことになります。
ただし,財物奪取の意思を生じた後に新たに反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったことが認められれば強盗罪に問われる可能性があります。
この場合については,やはり財物奪取の意思のもと暴行・脅迫を加えたと評価できるためです。

「強取」とは,暴行・脅迫によって相手方の反抗を抑圧し,財物の占有を移転することを意味します。
ここでの占有とは,財物に対する事実上の支配のことで,他者の管理の及んでいる状態(例えば,鍵付きの金庫に保管してある状態やすぐ手の届く場所に置いてある状態にあるなど)があれば占有があると認められる場合が多いです。
ちなみに,相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫はあったものの,財物を取得することができなかった場合,強盗未遂罪に問われる可能性があります。

今回のケースですとAさんらは男性に暴行を加えています。
一般的に,1人を複数人で襲い暴行した場合,客観的に見て人の反抗を抑圧するに足りるものとされる可能性が高いと言えます。
特にAさんらの場合ですと頭部など急所を殴打していることが読み取れますので,この暴行が強盗罪の成立に必要な程度の暴行・脅迫に至っている可能性は更に高まるでしょう。
更に,その結果としてAさんらはVさんから財布を奪い取っています。
そうすると,Aさんらは強盗罪に問われる可能性が高いと考えられます。

【強盗致傷罪】

強盗の際に人を死傷させてしまった場合,強盗致死傷罪(刑法第240条)に問われる可能性があります。
強盗致死罪の法定刑は死刑または無期懲役で,強盗致傷罪の法定刑は無期または6年以上の懲役となっています。

通常,有罪とするためには犯罪に対する故意が必要とされますが,強盗致死傷罪に関しては死傷の結果に故意は必要ないと考えられています。
つまり,強盗の際に相手方を死傷させれば,それがわざとだろうがそうでなかろうが強盗致傷罪という極めて重い罪に当たるということです。
今回の事件でもし男性が暴行によって怪我をしていた場合,Aさんらは強盗罪ではなく強盗致傷罪に問われることも考えられます。

【弁護活動】

Aさんのように逮捕されてしまっている場合,面会できる時間や曜日などが限られてしまいます。
特に,多くの警察署においては,長期の身体拘束である勾留決定が出るまで(多くは逮捕から2~3日間)面会が禁止されています。
ですが,弁護士は逮捕された被疑者との自由な面会(接見)が保障されています。

弁護士が早期に介入すれば,法的なアドバイスを提供することにより捜査機関に有利な調書を不当に作成されることを防ぐほか,外部との情報のやりとりをお手伝いすること等により,精神的なサポートも期待できます。
特に強盗事件の場合,被害者との示談交渉を行い早期に示談を成立させることで,不起訴処分や執行猶予の獲得を目指すことができます。
具体的な弁護活動内容は依頼者様とご相談しながら決めていくことになりますが,とにかく刑事事件はスピードが命ですから,相談だけでもお早めに受けられることをおすすめします。

強盗事件の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が西警察署に逮捕されてしまってお困りの方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談ください。
(無料法律相談のご予約はこちら

盗撮で不起訴を目指すには

2020-01-12

盗撮で不起訴を目指すには

盗撮事件で不起訴を目指す場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します

~ケース~

愛知県春日井市の会社員のAさんは春日井市内のショッピングモールにおいて行き交う客を赤外線カメラで撮影していた。
Aさんが赤外線カメラで撮影されていることに気づいたVさんが警備員を呼び,Aさんは警備員に取り押さえられ,通報により駆け付けた愛知県春日井警察署の警察官に引き渡された。
Aさんは盗撮の疑いで愛知県春日井警察署で取り調べを受け赤外線カメラとSDカードを提出した後,釈放された。
Aさんは前科が付かない方法がないかと弁護士護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談した。
(フィクションです)

~盗撮行為~

盗撮行為盗撮罪として刑法で定められているのではなく,各都道府県の制定する迷惑行為防止条例によって定められています。
各都道府県が条例内容を定めますので,都道府県によって盗撮となる行為の態様や罰則などが多少異なります。
愛知県の場合は,愛知県迷惑行為防止条例によって以下の様に定められています。

第二条の二 何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 略
二 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
三 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること

また,第2項および第3項で、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物,住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所についても同様の規制を設けています。

これらの規定に違反し盗撮行為をした場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金に課せられます(第15条)
都道府県によっては,赤外線カメラなどを念頭に置いた,「衣服を透かして見ることができる写真機」という文言ある場合もあります。
愛知県迷惑行為防止条例にはそのような文言はありませんが,衣服等で覆われている人の身体を撮影することになるので盗撮に当たると考えられます。

~盗撮事件の弁護活動~

盗撮事件の弁護活動としてはまず,身柄解放があります。
今回のケースでは身柄拘束がされていませんので,在宅事件の場合について説明していきます(身柄拘束されている場合はこちら

犯罪事実に争いがない場合には不起訴処分を目指す,罰金刑や執行猶予付判決となるように情状弁護等を行う事が考えられます。
今回のケースでは赤外線カメラを使用していますが,上記のように「衣服等で覆われている人の身体を撮影する」に該当すると考えられますので構成要件該当性(犯罪となるかどうか)を争うことは難しいでしょう。

また,罰金や執行猶予付きの判決であっても前科となってしまいますのでAさんが前科を回避するためには事件の不起訴処分を目指すことになります。
盗撮事件に限らず,被害者がいる刑事事件で不起訴処分を獲得するには原則として示談が成立していることが前提となります。
今回のケースでは撮影されたVさんが被害者として特定されていますのでVさんとの示談交渉をすることになるでしょう。
ただし,被害者の方の連絡先などは基本的にわからないと思われますので,ご自身で示談をしようとしても連絡すら取れないでしょう。
また,仮に連絡が取れたとしても,盗撮事件の加害者ですので,不信感などから示談などの話し合いに応じてもらえない可能性が非常に高いでしょう。

弁護士が相手であれば盗撮事件などの被害者の方も安心して示談に応じて頂ける可能性があります。
示談の際には,「加害者を許し,処罰を求めない」という宥恕文言示談書に盛り込んで頂くことが重要です。
盗撮事件では宥恕文言がある示談が成立していれば不起訴処分となる可能性が非常に高くなります。
前科とならない不起訴処分を獲得するためにも宥恕文言付きの示談を成立させることが弁護活動の第一となります。

弁護法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
盗撮事件などで示談を成立させることで不起訴処分となった事例も数多く手掛けて参りました。
盗撮事件などを起こしてしまい前科を付けたくないとお考えの方は0120-631-881までご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。

ナンパから痴漢に

2020-01-08

ナンパから痴漢に

ナンパの際に生じた痴漢事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは愛知県名古屋市にある駅ビルの前でVさんをナンパしました。
2人で飲んだ後,近くにあった公園のベンチに横並びで腰かけしばらく会話を楽しみました。
途中,AさんはVさんの体を抱き寄せ,服の上から胸などを触りつつVさんの唇にキスしました。
VさんはAさんから離れようと身を捩りましたが,構わずAさんはVさんの陰部に下着の上から手をやり触りました。
Vさんは少し大きな声で「やめてください」と叫んだので,驚いたAさんが体を離しました。
その隙にVさんは立ち去り,そのまま瑞穂警察署に被害を申告しました。
(フィクションです)

【痴漢行為と犯罪】

痴漢行為によって成立する犯罪は,その多くが各都道府県の定める迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪(刑法第176条)のいずれかです。

愛知県迷惑行為防止条例では,第6条において「何人も、公共の場所又は公共の乗物(…)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」とし,その第1号において「人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(…)の上から触れること」としています。
「触れ」ることが迷惑防止条例違反の要件になりますので,胸やしりなどを撫でまわしたり揉んだりしていなくても,被害者が羞恥心や不安を覚える方法で身体に触れていれば,たとえば他人の身体に手などを押し付ける行為も痴漢として処罰されます。
そのため、偶然他人の身体に手などが当たった場合でもすぐに離さなければ痴漢として検挙されてしまうことも考えられます。
愛知県における法定刑は,通常の場合1年以下の懲役または100万円以下の罰金で,常習の場合ですと2年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。

他方,強制わいせつ罪を定める条文は「13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする」となっています。
強制わいせつ罪におけるわいせつな行為とは,たとえば陰部・乳房・尻・太もも等に触れたりもてあそんだりする行為,裸にして写真を撮る行為,無理矢理キスしようとする行為などが考えられます。
加えて,被害者に行為者自身の性器等に触れさせる行為も、わいせつな行為に含まれると考えられます。
また、強制わいせつ罪における暴行・脅迫は,被害者の反抗を著しく困難にする程度に強いものでなければならないというのが有識者の多数説です。
ただ,実際のところ,痴漢被害にあっていることを周囲に知られたくなかったり,より悪質な行為をされないかという恐怖心などから反抗できない心理状態が比較的容易に形成されることも事実です。
このことから,裁判においては,様々な事情を考慮して反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったと比較的容易に認定される場合が少なくありません。

上記のいずれが適用されるかという点は,具体的な痴漢行為の内容に左右されます。
一般的には,衣服の上から被害者の陰部やしり,もも,胸を触ったり揉んだりした場合は迷惑防止条例違反として扱われる場合が多いです。
一方で下着の中に手を入れるなどして直接陰部を触った場合は強制わいせつ罪になる場合が多くなります。
これらは飽くまで一般的な傾向に過ぎず,衣服の上から触った場合でもその態様などがかなり悪質性の高いものであれば強制わいせつ罪に問われる可能性もあります。

Aさんは、公園という「公共の場所」において、Vさんの抵抗を意に介することなく下着の上から陰部を触っています。
そうすると、Aさんの行為は少なくとも迷惑防止条例違反に当たると考えられます。
更に、無理やり陰部に触れているという点を捉えると、より重い強制わいせつ罪となる可能性も否定しきれないでしょう。

【弁護活動】

もし痴漢による迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の被疑者となってしまった場合は,早急に被害者に謝罪を申し入れ示談を成立させることで,不起訴処分や執行猶予を得られる可能性を高めることができます。

ただ,性犯罪では被害者が加害者との面会・交流を拒否するケースが非常に多く,また事件の性質上デリケートな部分も多いのが実情です。
そのため,性犯罪に強い弁護士に示談などを依頼することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に所属する弁護士は,痴漢を含む性犯罪事件を数多く経験しており,その中には早期の釈放や不起訴処分を獲得につながった事件も多くあります。
痴漢行為があったとして迷惑防止条例違反や強制わいせつ罪の被疑者となってしまった方,瑞穂警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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私選弁護人と国選弁護人

2020-01-05

私選弁護人と国選弁護人

私選弁護人国選弁護人について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します

~国選弁護人制度とは~

日本国憲法は第37条3項によって以下のように定めています。

日本国憲法第37条
3.刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

上記の条文から被告人国選制度は,憲法上の制度となりますから,刑事被告人が国選弁護人を依頼する権利は憲法上の権利であるといえるでしょう。

~刑事事件の流れ~

刑事事件の基本的な流れとしては,警察が第一次的捜査機関として捜査を担当します。
捜査の端緒としては被害届の提出,職務質問,警察官による現行犯人の視認などが挙げられます。
その後は,被疑者が逮捕されたか,逮捕されなかったかによって手続の流れが異なっていきます。

◇逮捕された場合◇

警察が被疑者を逮捕した場合,逮捕から48時間以内に身柄を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法203条)。
検察官は送致された被疑者を受け取った時は弁解の機会を与え,留置の必要がないと思料するときは直ちに釈放し,留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判所に被疑者の勾留を請求しなければなりません(刑事訴訟法205条)。
勾留が裁判所に認められると検察官は請求の日から10日以内に起訴するか被疑者を釈放しなければなりません(刑事訴訟法208条1項)。
なお,裁判官はやむを得ない事由があると認めるときは,検察官の請求により,最長で10日間勾留期間を延長することができます(同条2項)。
刑事訴訟法37条の2は勾留に際して,被疑者国選弁護人選任制度を定めています。

第37条の2
被疑者に対して勾留状が発せられている場合において,被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは,裁判官は,その請求により,被疑者のため弁護人を付さなければならない。

この規定により,勾留された場合には国選弁護人の選任が可能となります

◇逮捕,勾留されなかった場合◇

逮捕もしくは勾留されなかった場合には在宅事件となります。
勾留された場合には刑事訴訟法上10日ないし20日の間に検察官は起訴するかどうかを決める必要がありますが,在宅事件の場合にはそのような制限はありません。
在宅事件では起訴された場合にも,在宅起訴という形で身柄拘束がされない場合も多くなっています。
在宅事件の場合は,起訴され刑事被告人となった時点で被告人国選制度の対象となりますので国選弁護人が選任されることになります。

~私選弁護人と国選弁護人のメリット・デメリット~

国選弁護人の最大のメリットとしては費用面での負担が少ないことが挙げられます。
デメリットとして,国選弁護人はいわゆる「法テラス」に登録している弁護士からランダムに選ばれるため,被疑者や被告人・ご家族が好きな弁護士を選ぶことが出来ません。
当然,弁護士は忠実に弁護活動を行いますが,場合によっては刑事弁護の経験の少ない弁護士が選任されてしまうこともあります。
また,弁護活動のスピードが命の刑事事件において,選任されるのが勾留後(基本的には勾留満期で起訴されてしまうでしょう)もしくは起訴後であるため,思い通りの弁護活動ができない可能性があります。
勾留から起訴までの期間は10日ないし20日しかなく,不起訴処分を獲得するためには短い期間で弁護活動をする必要があります

しかし,被害者の方と示談交渉をしようとしても被害者の方の都合が合わず,勾留期間内に示談交渉をすることができない可能性もあります
そのような場合には,起訴されてしまい,有罪判決を受け前科がついてしまう可能性が非常に高くなります。

一方で私選の弁護人であれば,勾留される前のみならず逮捕される前でも弁護活動が可能となります。
そのため,逮捕・勾留といった身柄拘束を回避する弁護活動が可能です。
また,ご自身で信頼できる弁護士を選任できるという点が国選弁護人と異なります。
逮捕勾留を回避することができれば,在宅事件で勾留された場合に比べ検察官が起訴するかどうかの判断までの期間が長いため,比較的余裕を持って示談交渉などに臨む事が可能です。
デメリットとしては,私選の弁護士の場合,国選弁護人と異なり報酬などを依頼者が負担しなければならない金銭面が挙げられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士が所属しており,身柄拘束の回避,身柄解放,示談締結など多数の実績があります。
刑事事件を起こしてしまった場合には0120-631-881までご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。

盗撮で贖罪寄付

2020-01-04

盗撮で贖罪寄付

贖罪寄附について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します

~盗撮のケース~

愛知県名古屋市中区在住のAさんは自宅近くの寺院に初詣に行った。
多くの参拝客で賑わっており,Aさんは人ごみに紛れVさんの背後からVさんのスカートの中を撮影するという盗撮行為をした。
Aさんは警備員のXに咎められ,近くを警備していた愛知県中警察署の警察官であるYに引き渡された。
Aさんは愛知県中警察署盗撮の疑いで事情を聞かれた後,携帯電話のメモリの消去等した後釈放され,後日また呼び出しをすると伝えられた。
今後が不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用することにした。
(フィクションです)

~盗撮~

盗撮は各都道府県の定めるいわゆる迷惑行為防止条例によって規制されており,愛知県では愛知県迷惑行為防止条例によって規制されています。

愛知県迷惑行為防止条例第二条の二

何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

二 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。
三 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他のを設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。

盗撮は被害者の同意などがないので条文のいう「正当な理由なく,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法」であったといえるでしょう。

~盗撮事件の弁護活動~

盗撮で検挙されるのは多くの場合が,現場で周りの人や被害者,警備員や駅員などに気付かれ警察官に引き渡されるというものでしょう。
住所不定などの事情がない場合,逮捕・勾留といった身柄拘束はされずに事情聴取の後に釈放されることも多いです。
ただし,盗撮をしてその場から逃げようとしたような場合には逮捕・勾留といった身柄拘束をされてしまう可能性が高くなります。

盗撮事件の弁護活動は逮捕・勾留といった身柄拘束の回避,被害者の方との示談交渉がメインとなります。
前科のない初犯であれば示談交渉の末,加害者を許すという宥恕条項を盛り込んでいただければ検察官は事件を起訴猶予とする場合が多くなっています。
そのため,盗撮事件では示談を締結することが弁護活動の第一となるでしょう。
ただし,盗撮をしてしまったご自身で示談をしようとしても,被害者の連絡先がわからない場合も多く,また不信感などから被害者の方が会ってくれるということはほとんどないでしょう。
弁護士であれば,警察や検察官から盗撮の被害者の連絡先を教えてもらえる場合もあり,被害者の方も弁護士が相手であれば安心して示談に応じてもらえることもあるでしょう。

なお,今回のような盗撮事件では被害者がその場からすでに去ってしまっており,被害者の方が特定できない場合もあるでしょう。
このような場合には盗撮行為が「正当な理由なく,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法」であったと証明するのが難しくなります。
そのため,捜査機関は盗撮に遭った被害者の方を探すことになります。
盗撮の被害者の方が見つからなかった場合には検察官は事件を起訴猶予とすることもありますが場合によっては起訴されてしまう場合もあります。
盗撮の場合,盗撮しようとカメラなどを差し向けた時点で盗撮として処罰の対象となってしまいますので被害者が特定されていない場合でも,起訴されてしまうことがあります。

~贖罪寄附~

被害者が特定できていないような場合には示談をすることはできませんが,代わりに贖罪寄附という方法が考えられます。
贖罪寄附は薬物犯罪などの被害者のいない犯罪の場合や,今回の盗撮のケースのように被害者が特定できない場合など,被害者と示談が出来ない場合に,反省と贖罪の気持ちを表明するために寄附をすることです。
示談をした場合には,被害者が加害者を許しているという事情に加え,示談金の支払いという経済的制裁が加害者に課せられているという事情から検察官は起訴猶予の判断材料としていると思われます。
そのため,盗撮事件で贖罪寄附をすることは検察官が起訴猶予とする判断の一資料となるでしょう。
したがって,被害者不明の盗撮事件の場合には示談ができないので贖罪寄附をすることを検討することになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
盗撮をしてしまい,被害者の方がわからないという場合でも贖罪寄附の検討などが可能です。
まずは0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。

準強制性交等罪に問われたら

2019-12-29

準強制性交等罪に問われたら

準強制性交等罪に問われた場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します

~準強制性交等罪になるケース~

愛知県碧南市在住の会社員のAさんは会社の同僚であるVさんと仕事の帰りにバーでお酒を飲んでいた。
Vさんはかなりお酒を飲み,店を出た時には一人では歩けないほど酔ってしまっていた。
以前からVさんに好意を持っていたAさんは介抱するという名目でVさんをホテルに連れ込んだ。
AさんはVさんが酔いつぶれているのを見てVさんと性交した。
その後,目を覚ましたVさんが状況をAさんに問い質し,Aさんが諸々の事情を白状した。
VさんはAさんに対し愛知県碧南警察署に被害届を出すつもりであると伝えた。
(フィクションです)

~準強制性交等罪~

まず,Aさんの行為は準強制性交等罪に該当する可能性が考えられます。

準強制性交等罪は刑法178条2項に規定されています。

刑法第178条
2.人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

刑法第177条

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

刑法上の「準・準ずる」とは同じであるという意味で,元々の罪名よりも軽いという意味ではありません。
相手を薬で眠らせるといった行為がなくとも,お酒に酔った相手と性交をしてしまうと準強制性交等罪に問われてしまう可能性があります。
今回のモデルケースでは一人では歩けないほどに酔っていたので,心神喪失状態であったため準強制性交等罪に該当すると判断される可能性が高いでしょう。

~具体的な弁護活動~

男女間の性交渉トラブルによる準強制性交等事件の発覚はほとんどの場合,被害者から被害届が出されたというケースです。
そのため,被害者の方が被害届の提出をしなかった場合には準強制性交等事件となる可能性は低くなります。

準強制性交等罪で被害届の提出を思いとどまってもらうためには準強制性交等罪として刑事事件化する前に示談交渉をするという事が考えられます。
しかし,性犯罪では被害者の方の怒りが強く,示談交渉をしようとしても連絡すら取れない場合も多いでしょう。
弁護士が相手であれば被害者の方も話を聞いてみようと思ってもらえる場合も多いです。

また,準強制性交等罪で被害届を出されてしまった場合でもあらかじめ弁護士に依頼しておけば早い段階での弁護活動が可能です。
準強制性交等罪で逮捕されてしまった場合の勾留回避,引続き被害者の方との示談交渉などを進めていくことになるでしょう。
準強制性交等罪は2017年の刑法改正以前は親告罪でしたので示談が成立すれば検察官は起訴できないことになっていました(示談要件に告訴しない旨を必ず入れるため)。
しかし,現在では準強制性交等罪は親告罪ではないため,被害届や告訴がなくとも検察官は起訴することが可能です。

もっとも,今回のケースのような男女間の性交渉トラブルによる準強制性交等事件では示談が成立していれば検察官は多くの場合,起訴猶予の不起訴処分にするでしょう。。
一方,起訴されてしまった場合には準強制性交等罪法定刑は5年以上の有期懲役のみですので刑事裁判が開かれることになります。
道端の女性を襲ったというような強制性交等事件の場合は実刑判決が下されると考えられますが,今回のようなケースでは酌量軽減により執行猶予付きの判決が下される可能性も高いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
準強制性交等罪などの性的トラブル事件では示談の成否が最終的な刑事処罰などに大きく影響します。
もし準強制性交等罪などに問われてしまうような事をしてしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。

下着泥棒で窃盗罪に

2019-12-25

下着泥棒で窃盗罪に

下着の窃盗事件と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは愛知県名古屋市にあるVさん宅のベランダに干されていた女性用下着を4点盗みました。
近隣住民が車で逃走するAさんを目撃し,通報を受けた熱田警察署が捜査を開始しました。
その後、車のナンバーなどからAさんが特定され,Aさんは窃盗罪の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【窃盗罪】

窃盗罪は刑法第235条に規定されています。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

「財物」とは、有体物である動産のことを意味し、不動産(主に建物や土地)以外の様々なものが含まれます。
必ずしも金銭的ないし経済的価値を持つものでなければならないというわけではありません。
次に、「窃取」とは,占有者の意思に反して財物に対するその占有を排除し,その財物を自己の占有下に移す行為です。
かみ砕いて説明すると、他人の元にあるものを自分の元へ移す、と説明できます。

「占有」については,法律に特有の難しい概念と言えます。
簡単に言うと物を支配している状態を意味します。
「占有」は物を肌身離さず持っていれば認められる可能性が高いですが、そうでない場合には検討すべき事項となります。
どのような場合に占有があるか認められるかは一概には言えませんが,過去の裁判例では,海中に落した物(最決昭和32・1・24・刑集11-1-270)やバス待合所に一時的に置き忘れたカメラ(最判昭和32・11・8刑集11-12-3061)などで,所有者が意識していたり置いた場所をすぐに思い出して取りに戻ったりした場合にはその占有が認められています。
逆に,広大な湖沼に逃げ出した鯉(最決昭和56・2・20刑集35-1-15)や大規模スーパー内の6階で置き忘れたが被害者が思い出して10分後に取りに戻った財布(東京高判平成3・4・1判時1400-128)について,その占有を否定した裁判例があります。

以上の裁判例からも,占有の有無の認定はそう簡単にできるものではないことが分かります。
敢えて一般化すれば、具体的に以下のような事情を特に参考にするでしょう。

①場所
自宅や自己の管理する場所内か,一般に人がその物を意識して置く場所かなど

②物自体の特性
忘れやすい物か,高価な物か,大きいかなど

上記事例において,Aさんはベランダに干されていた下着を盗んでいます。
ベランダは各部屋の住人が管理する場所であることから,そこに干してある下着には住人の占有が及んでいるものと理解されるでしょう。
したがって,ベランダに干してある他人の下着を取る行為は,窃盗罪の実行行為に当たると考えられます。

【住居侵入罪】

事件の概要からは明らかではありませんが,ベランダの下着を盗むために塀などの内側やベランダに立ち入った場合は,住居侵入罪(刑法第130条前段)に問われる可能性もあります。
住居侵入等罪は,正当な理由がないのに,人の住居もしくは人の看守する邸宅,建造物もしくは艦船に侵入した場合に成立します。
この罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また,未遂も処罰されます(刑法第132条)。

「住居」とは,人の起臥寝食に使用される場所を指します。
「邸宅」とは,住居用に作られた建造物とこれに付随する囲繞地(塀や柵などで囲まれている土地)のことです。
「人の看守する」とは,管理人や監視人がいたり,鍵がかけられているなど,現実に人が支配・管理している状況にあるという意味です。

また,「侵入」とは,住居権者(世帯主など)またはその委任を受けた推定的意思を含む看守者等の意思に反して,住居等の領域に立ち入ることと理解されています。
住居権者等の意思に反するような目的を隠して承諾を得た場合も,真意に基づく承諾ではないため「侵入」に当たると考えられています。

【弁護活動】

窃盗事件の依頼を受けた弁護士の活動は,身柄拘束からの解放と不起訴や執行猶予の獲得が中心になります。
まず,被疑者が逮捕や勾留されている場合は,被疑者に逃亡のおそれがないことや証拠隠滅のおそれがないことを主張することで早期の身柄の解放を目指します。
さらに,被害者と示談を成立させることで処罰回避を図ります。
弁護士を介した示談交渉は,当事者同士で行う場合より円滑に進むことが期待できます。
それ以外のものとして,被疑者が取調べを受けるにあたって法的なアドバイスを行うことも重要な弁護士の活動の一つとして挙げられます。

自分にどういう権利があってどう行使できるのかまったくわからない状況で取調べを受けると被疑者にとって不当に不利な調書の作成などが行われる可能性があります。
弁護士に事件を依頼することで必要以上の不利益を被るリスクを回避することが期待できます。

窃盗事件の被疑者となってしまった方,熱田警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(無料法律相談のご予約はこちら

偽計業務妨害事件の弁護活動

2019-12-24

偽計業務妨害事件の弁護活動

偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【事件】

Aさんは動画サイトに動画をアップロードし,広告料収入を得ながら生活していました。
より多くの再生回数を狙える動画を作成するため,小麦粉を封入したポリ袋を愛知県名古屋市所在の交番の前で落とし,違法薬物と誤認した警察官の姿を撮影しようとしました。
狙いどおりAさんは警察に追跡されました。
撮影を終えた後も薬物検査や臨場等が行われ,粉末が小麦粉であると判明するまでの約5時間にわたって対応が行われました。
これにより,警察官計20名の業務の遂行を妨害したとして,Aさんは偽計業務妨害罪の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【偽計業務妨害罪】

虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて人の業務を妨害した場合,偽計業務妨害罪(刑法第233条後段)として処罰される可能性があります。
偽計業務妨害罪の法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

偽計業務妨害罪における業務とは,人が社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務または事業をいいます。
つまり、経済活動に限らず、様々な社会的活動が偽計業務妨害罪による保護の対象になりえます。
たとえば、利潤の追求を目的としないNPO法人の活動を妨げた場合にも、偽計業務妨害罪に当たる可能性があります。
また,条文では「業務を妨害した」とされていますが,実際に売上の低下などの結果が生じる必要はなく、その危険を持つ行為のみを以て成立すると考えられています。

次に,虚偽の風説の流布とは,客観的事実に反することを不特定または多数の人に伝播させることをいいます。
そして、偽計とは,人を欺罔,誘惑し,あるいは人の錯誤や不知を利用する違法な手段のことです。

今回のケースはAさんが薬物犯罪を装ったために警察官の刑事当直や警ら活動などが妨害されたというものです。

このような警察官の活動は公務といえますが,公務も業務に含まれるのかが問題となります。
というのは,警察官の活動は公務執行妨害罪の適用を受けるものであり,偽計業務妨害罪の適用を認める必要はないように思えるからです。
この点に関して,警察官の活動に偽計業務妨害罪が成立するという判断を下した裁判例が存在します。
理由は定かではありませんが,公務執行妨害罪の要件は暴行・脅迫であり、虚偽の風説の流布や偽計には対応できないからではないかと考えられます。

今回のケースで,Aさんは小麦粉を違法薬物に見せかけ,警察に捜査の手間をとらせています。
このような行為は警察の正常な公務を妨げると言えることから、Aさんに偽計業務妨害罪が成立する可能性は高いでしょう。

【公務執行妨害罪・軽犯罪法違反】

先ほど触れましたが,警察官などが行う公務を妨害する犯罪として,公務執行妨害罪(刑法第95条第1項)が挙げられます
公務執行妨害罪は,公務員が職務を執行するにあたり,これに対して暴行または脅迫を加えた場合に成立する罪です。
法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。
今回のケースでは,Aさんは警察官に対し暴行や脅迫を行った事実が概要からは認められません。
そのため,公務執行妨害罪には当たらない可能性が高いと言えます。

また,軽犯罪法第1条第31号は,「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」を拘留または科料に処すると定めています。
この犯罪は公務執行妨害罪や業務妨害罪の補充規定で,違法性の低い場合に適用されるものとされています。

簡単に言うと「悪戯」のレベルにとどまる場合に限って適用される可能性があるということで,Aさんの事件では約5時間にわたって併せて20名の警察官の業務が妨害されています。
そうすると,悪戯の程度を超えたものと判断され,軽犯罪法違反ではなく偽計業務妨害罪などとされる可能性が高いでしょう。

【弁護の方針】

業務妨害事件や公務執行妨害事件では,犯行態様が比較的軽微な場合,十分な反省を示したり示談を成立させたりすることで不起訴や執行猶予を得られる可能性が高いと言えます。
また,被疑者が捜査機関に逮捕・勾留されている場合,弁護士としては上記の活動と並行して早期の身柄の解放を目指します。
主に、逃亡や証拠隠滅を防止するための方策を講じたうえで、そうした行為に及ぶ可能性が低いと主張することになるでしょう。
加えて,取調べを受ける被疑者に法的なアドバイスを行うことも,自身に与えられた権利の内容やどう行使していいか分からない状況を回避し,捜査機関に都合のいい内容の調書の作成を阻止することにつながります。

偽計業務妨害罪の被疑者となってしまった方,瑞穂警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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スマホを充電したら窃盗罪に

2019-12-17

電気窃盗について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します

~ケース~

愛知県名古屋市熱田区在住の大学3年生のAさん大学の友人らとショピングモールのフードコートVを利用していた。
Aさんはその際に,席の近くにあったコンセント自分のスマートフォンの充電をしていた。
店員のXはAさんにコンセントを使用しないように注意したがAさんはそれに従わなかった。
その後,AさんがVを利用するたびにコンセントを使用していたため,店長であるXは愛知県熱田警察署に被害届を提出した。
後日,Aさんは窃盗罪の疑いで愛知県熱田警察署で事情を聞かれることになった。
(フィクションです)

~電気窃盗~

他人のコンセントなどを勝手に使用した場合,窃盗罪(刑法235条)が成立します。

第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

形を持たない電気が財物かどうかについては窃盗罪および強盗罪に関しては刑法245条が電気を財物とみなすと規定していますので財物となります。

明治時代に制定された旧刑法では物ではない電気の窃盗が想定されおらず,勝手に電気を使用する行為が窃盗罪となるか議論がありました。。
1903年に大審院(現代の最高裁判所)が電気も窃盗罪の対象となると判示し,1907年に施行された現刑法で245条の電気が窃盗罪の対象となると規定されました。

~可罰的違法性~

刑法では可罰的違法性という考え方があり,違法な行為であっても,刑罰を科するに足りる程度の違法性がない場合には犯罪を構成しないという考え方です。

可罰的違法性の有名な判例に「一厘事件」「旅館たばこ買い置き事件」があります。
前者は煙草の栽培農家が,納入しなければならない葉煙草2グラム(1厘相当)を納入せずに自分で喫煙したという事件です。
後者は旅館が利用客の利便の為に,たばこを買い置きし,利用客に定価で販売したというものです。
一厘事件では「零細な反法行為では,犯人に危険性があると認められるような特殊な状況がある場合を除けば,共同生活の観念上刑罰を持って保護するようなものではない」として無罪を言い渡しました。
旅館たばこ買い置き事件では「この程度の行為はタバコ専売法の趣旨や目的に反せず、社会的に許容される行為である」として無罪としました。

ただし,電気窃盗窃盗行為ですので零細な反法行為とは認めらず,社会的に許容される行為ともいえないので,起訴されてしまった場合に被害額が微小(数円程度)であることをもって窃盗罪が上記判例の理屈で無罪となる可能性は低いでしょう。

~電気窃盗の場合~

充電目的でのコンセントの無断使用という典型的な電気窃盗の場合,被害額自体は微小であるといえますが,頻繁に行われた場合には大きな被害金額となりえます。
このような電気窃盗事件を警察が摘発した場合,被害額が微小なため微罪処分とする場合もありますが,電気窃盗を繰り返し行った場合などは逮捕書類送検されてしまう可能性もあります。

最近では2010年に大阪で料金滞納で電気を止められていた男性が,アパートの共用コンセントから自室に電気を引き込んで,2円50銭相当の電気を盗んだとして,懲役1年,執行猶予3年の有罪判決が言い渡されています。

窃盗罪には以前は懲役刑しか規定がなく,被害額も微小なため,微罪処分不起訴処分となることが多かったようですが,2006年の刑法改正で罰金刑が加えられたため起訴されて罰金刑となる可能性が高くなったと考えられます。
また,1回コンセントを無断使用しただけでは窃盗罪として起訴されてしまう可能性は高くないと考えられますが,Aさんのように注意されたにも関わらず,繰り返し電気窃盗をしたという事案では窃盗罪として起訴されてしまう可能性が高くなってしまうでしょう。

弁護士が付けば微罪処分不起訴処分となるように弁護活動をしていきます。
今回のケースではお店への謝罪文や少額とはいえ被害弁償などを申し出ることが考えられます。
それによって被害届の取下げとなれば微罪処分不起訴処分となる可能性は高くなります。
また,被害届が取下げとならない場合でも,警察の判断で微罪処分となる場合や検察官の判断で起訴猶予となる可能性が高くなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
電気窃盗事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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