覚醒剤の使用の再犯 執行猶予はつく?

覚醒剤の使用の再犯 執行猶予はつく?

覚醒剤の使用の再犯で執行猶予はつくのかということについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

事例

Aさんは名古屋市中村区に在住の男性会社員(35歳)です。
Aさんは4年前に覚醒剤使用による覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕・起訴され,懲役6月執行猶予3年の有罪判決を受けたことがありました。
その後,社会復帰をしたAさんでしたが,会社でのストレスなどに押しつぶされてしまい,再び覚醒剤を手に入れて自宅で使用し始めてしまいました。
すると,覚醒剤の使用を再開して2か月後自宅に東海北陸厚生局麻薬取締部の捜査が入りました。
捜査の結果,未使用の覚醒剤が出てきたことと尿検査で陽性反応がでたためAさんは覚醒剤所持覚醒剤使用による覚醒剤取締法違反で逮捕されてしまいました。
その後,Aさんは覚醒剤取締法違反の容疑で起訴されました。
Aさんの妻は,Aさんが実刑判決となり,長期間身柄を拘束されてしまうと生活が困難になるため,Aさんに執行猶予が付くか刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです。)

覚醒剤に関しての法律

覚醒剤の所持及び使用について,覚醒剤取締法の以下の条文に定められています。

覚醒剤取締法第14条第1項 (所持の禁止)
覚醒剤製造業者、覚醒剤施用機関の開設者及び管理者、覚醒剤施用機関において診療に従事する医師、覚醒剤研究者並びに覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者のほかは、何人も、覚醒剤を所持してはならない。

覚醒剤取締法第41の2第1項
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。

覚醒剤取締法第19条 (使用の禁止)
次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
1 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
2 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
3 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
4 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
5 法令に基づいてする行為につき使用する場合

覚醒剤取締法第41条の3 次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。
1 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

通常の覚醒剤関連での検挙の大多数は覚醒剤の所持と使用であると思われます。
これらについて法律は特別に許されている医療目的や研究目的以外の所持や使用を禁止しています。
そして,法律に違反して覚醒剤を所持,使用すると最悪の場合は10年の懲役に処されることもある重い犯罪であると言えます。

執行猶予について

刑の全てについて執行猶予にできる場合について,刑法の以下の条文に定められています。

刑法第25条第1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができる。
1 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

刑法第25条第2項
前に禁錮以上の刑に処せられたことあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮以上の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときも,前項と同様にする。

まず,刑法第25条第1項の執行猶予が認められるためには,
1 5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
2 判決の言い渡しが3年以下の懲役若しくは,50万円以下の罰金であること
3 情状があること
の3点が必要になります。
このうち,3の情状とは,犯罪中若しくはその後の状態をみて,刑の執行を猶予することで自主的に更生することが期待できる状況を言います。

本件では,以前の執行猶予から5年経過していないため,第1項の執行猶予には当たりません。
そのため,第2項の執行猶予に当たるかが問題になります。

覚醒剤所持による覚醒剤取締法違反事件の場合,実際の所持していた覚醒剤の量などによって裁判官が量刑を決めますが,再犯の場合,基本的に量刑は重くなる傾向にあります。
そのため,Aさんの場合には,1年を超える懲役に処せられる可能性が高いと言え,第2項の執行猶予を得ることも簡単にはできないと考えられます。
さらに,たとえ刑期が1年以下に抑えられたとしても,執行猶予を付けるには「情状に特に酌量すべきものがある」ことが必要です。
ですから,Aさんのようなケースでは,執行猶予を獲得することは非常に難しく厳しい道であることが分かります。

しかし,このような事件では絶対に執行猶予を得ることが出来ないというわけではありません。
今回は裁判中から治療を受けて,その経過を裁判で主張するなど「情状に特に酌量すべきものがある」ことを裁判官に納得させる手はないわけではないため,あきらめることなく,弁護士などの専門家と一緒に努力することが必要です。
もしも実刑判決となってしまっても,再犯防止策の構築などをしていくことは,その後の更生にも役立ちますから,まずは弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

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