免許証を偽造して詐欺
免許証を偽造して詐欺をした場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
Aさんが在籍している株式会社Xでは,ある社員の退職に伴い,大型車両の運転免許を取得する意思のある者を募っていました。
社内で回覧されていた文書によると,大型車両の運転免許を取得することで給与が上がるだけでなく,教習に掛かる代金の負担という名目で30万円が交付されるようでした。
そのことを知ったAさんは,運転免許証を偽造し,会社から30万円を騙し取ろうと考えました。
そこで,大型免許を持っていないのに,取得済みであるかのような偽の免許証を作成したうえで,コピーを会社に提出して30万円の交付を受けました。
しかし,のちにAさんが免許を取得していないことが発覚し、会社から追及されたAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
【免許証の偽造は何罪に当たるか】
一般的に,免許証の偽造とは,免許証に似たものを作成したり,既に所持している免許証を加工するなどして内容に変更を加えたりすることを指すかと思います。
このような行為に及んだ場合,以下の犯罪が成立する可能性があります。
①公文書偽造罪
刑法(一部抜粋)
第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
公文書偽造罪は,公的機関が作成すべき文書を「偽造」した場合に成立する可能性のある罪です。
ここでの「偽造」とは,権限のない者が文書等を作成することを意味します。
運転免許証を作成する権限があるのは公安委員会であり,当然ながら一般人に運転免許証を作成する権限はありません。
したがって,偽の運転免許証を作成した場合には公文書偽造罪が成立すると考えられます。
罰則は1年以上10年以下の懲役となっており,罰金刑がないことから,もし起訴されれば簡易な手続で罰金刑にする略式裁判は利用できません。
したがって公開の法廷で通常の裁判を受け、無罪にならない限り、懲役刑の実刑判決か執行猶予判決が下されることになるでしょう。
②偽造公文書行使罪
第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
Aさんは偽造した免許証(155条に該当する文書)を会社に提出しているので、「第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し」た者として、虚偽公文書作成罪も成立してしまいます。
③詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
Aさんは、大型免許を取得しているかのように「人を欺いて」、30万円という「財物を交付させた者」にあたりますので、詐欺罪も成立してしまいます。
このように、Aさんには多くの犯罪が成立してしまいます。
なお、これらの罪で有罪判決を受ける場合、罰則は単純に各条文の罰則を足すのではなく、詐欺罪よりも重い公文書偽造・同行使罪を基準に、1年以上10年以下の懲役の範囲で処罰されることになります(牽連犯・刑法54条1項参照。なお執行猶予となる可能性はあります)。
【弁護士にご相談ください】
今回のような事件では、今後警察に被害届が出されてしまうおそれもあるため、すみやかに謝罪してお金を返すなどの対応が必要となってきます。
それで丸く収まればよいのですが、警察沙汰になってしまう場合もあるでしょうし、今後どのような展開になってしまうのか不安が強いと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
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