往来危険罪の弁護活動

2020-01-20

往来危険罪の弁護活動

往来危険罪の弁護活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【事件】

Aさんは,愛知県名古屋市に敷設されている線路上に,最終電車が通過した後から始発電車が通過するまでの深夜,コンクリートブロックを合わせて10個並べました。
始発電車が現場を通過する前に作業員によってブロックは除去されましたが,Aさんは往来危険罪の疑いで中村警察署に逮捕されました。
(フィクションです)

【往来危険罪】

鉄道若しくはその標識を損壊し,又はその他の方法により,汽車又は電車の往来の危険を生じさせた場合,往来危険罪が成立します(刑法第125条第1項)。
鉄道のみならず,灯台若しくは浮標を損壊し,又はその他の方法により,艦船の往来の危険を生じさせた場合も往来危険罪に問われます(同法第125条第2項)。
法定刑は2年以上の有期懲役となっています。

往来危険罪の構成要件について説明します。
「標識」とは,信号機やその他標識などを指します。
「汽車」は蒸気機関車によって列車を軌道上牽引するものをいい,「電車」は電気を動力として列車を軌道上走らせるものをいいます。
これらには軌道上を走行するモノレールやケーブルカーも含まれますが,ロープウェイやトロリーバスは含まれないと考えられています。
「損壊」とは,信号機や標識などを物理的に壊して使えなくすることを意味します。
「その他の方法」には,今回の事件のような置き石の他に,無人電車を走らせること(最大判昭和30・6・22刑集第9巻8号1189頁),正規の運転計画にしたがわない電車を走らせること(最判昭和36・12・1刑集15巻11号1807頁),鉄製ごみ箱を軌道上に投げ込んで放置すること(東京高判昭和62・7・28東高刑時報38巻7~9号56頁),鉄道用地と境界を接する自己所有地上をパワーショベルで掘削すること(最決平成15・6・2刑集57巻6号749頁)などがこれに当たるとされています。

往来危険罪は,往来の危険が発生してはじめて構成要件該当性が充足される罪(具体的危険犯)です。
往来の危険とは,判例によると衝突・転覆・沈没・脱線など,交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態を意味します(最決平成15・6・2刑集57巻6号749頁)。
また,その要件について同判例は「単に交通の妨害を生じさせただけでは足りないが,上記脱線等の実害の発生が必然的ないし蓋然的であることまで必要とするものではなく,上記実害の発生する可能性があれば足りる」としています。
つまり,電車等の脱線・転覆などの危険が生じる程度の妨害行為があれば往来の危険があると認められるということになります。

ちなみに,置き石行為などで電車等の往来の危険を発生させ結果的に電車等が転覆するなどした場合,往来危険による汽車転覆等罪(刑法第127条)によって無期または3年以上の懲役に処される可能性があります。

今回のAさんは線路上にコンクリートブロックを10個置いています。
これは往来危険罪における「その他の方法」に該当します。
また,電車がコンクリートブロックが上に置かれた線路に侵入すると電車の転覆や脱線の可能性がありますので,往来の危険の発生も認められる可能性が高いといえます。
以上から,Aさんに往来危険罪が成立する可能性は高いと言えます。

また,Aさんの置き石行為で鉄道会社の業務が妨害されたということになれば,威力業務妨害罪(刑法第233条後段)に当たる可能性もあります。
威力業務妨害罪の法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

【弁護活動】

まず,Aさんのように逮捕・勾留されてしまっている場合,逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを示すことで早期の身柄解放を目指すことが考えられます。
弁護士であればそうした活動に慣れていることが多いので,最適な身柄解放活動を期待できるでしょう。

また,往来危険罪によって被害を受けることが見込まれる鉄道会社などを相手方として,示談交渉を行うことも考えられます。
ただし,往来危険罪は公共の利益に関わる罪なので,個人を害する罪(たとえば傷害罪や強制わいせつ罪)と比べて示談の効力が薄い可能性があります。
この点を含め,示談のことは弁護士に相談されることをおすすめします。

置き石行為によって取調べを受けることになってしまった方,ご家族やご友人が中村警察署に逮捕されてしまって困っている方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談ください。
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