職務質問中に公務執行妨害罪で現行犯逮捕

2021-12-21

職務質問中に公務執行妨害罪で現行犯逮捕

職務質問中公務執行妨害罪現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

自動車を運転していたAさんは、愛知県名古屋市南区の路上で、覚醒剤取締法違反の疑いがあるとして、愛知県南警察署の警察官により職務質問を受けました。
その際、Aさんは「職務質問って任意でしょ。応じないよ。」と言いましたが、警察官から約30分間にわたり職務質問に応じるように説得を受けました。
警察官の職務質問に苛立ったAさんは、乗っていた乗用車のドアを職務質問した警察官に押し当ててしまいました。
Aさんは警察官の職務を妨害したとして公務執行妨害罪の容疑で逮捕されました。
その後、車内の捜索差押えが行われ、車内からは注射器108本と覚醒剤の入った粉末10袋などが見つかりました。
そこで、Aさんを覚醒剤取締法違反の罪で現行犯逮捕され、注射器108本と覚醒剤の入った粉末10袋の捜索差押えも受けました。
Aさんは、この覚醒剤は自分のものではないと主張しています。
(2020年11月5日に神奈川新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【公務執行妨害罪とは】

公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する(刑法95条)。

公務執行妨害罪の「暴行」とは、公務員に向けられた物理力の行使をいうと考えられています。

刑事事件例では、Aさんは乗っていた乗用車のドアを職務質問した警察官に押し当てています。
このAさんの行為は、公務員に向けられた物理力の行為であるとして、公務執行妨害罪の「暴行」に該当します。

また、公務執行妨害罪の「職務」は適法であることが必要です。
これは、公務執行妨害罪は公務の適正な執行を保護するために規定されているからです。

ところで、刑事事件例では、Aさんは「職務質問って任意でしょ。応じないよ。」と明言していたにも関わらず、警察官はAさんに職務質問に応じるよう説得行為を続けています。
この警察官による職務質問とそれに伴う説得行為は許されるものなのでしょうか。
公務執行妨害罪の「職務」の適法性との関係で問題となります。

【職務質問とは】

警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる(警察官職務執行法2条1項)。

職務質問では、「停止させて」(警察官職務執行法2条1項)質問することができると規定されています。
この職務質問の「停止」(警察官職務執行法2条1項)は、任意に停止することを意味します(刑事訴訟法197条参照)。

しかし、任意の停止といっても、必ずしも自発的に職務質問に応じる必要はなく、職務質問に応じるよう一定程度働きかける説得行為は許されます。
犯罪の予防・鎮圧に重要な役割を果たす職務質問の実効性を高めるため、このように考えられているのです。
一般的に使われる任意の意味と刑事訴訟法上における任意の意味の違いに注意が必要です。

また、この職務質問は、その必要性が認められ、具体的状況の下で相当と認められる限度において許されます(刑事訴訟法197条参照)。

刑事事件例の職務質問は、覚醒剤取締法違反の容疑という重大犯罪の嫌疑があるAさんに対して行われているものであり、職務質問を行う必要性はあると考えられます。
また、職務質問も時間にして30分間という比較的短時間で行われており、職務質問として相当な範囲内にあると考えられます。
さらに、上述したように、職務質問は任意に停止させることができ、この停止には一定程度の説得行為も含まれることから、刑事事件例のような警察官による説得行為も許されると考えられます。

よって、刑事事件例における警察官による職務質問は適法である(許される)と考えられます。
そして、この公務執行妨害罪の適法な「職務」に対して「暴行」を加えたAさんには公務執行妨害罪が成立すると考えられます。

【現行犯逮捕とは】

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる(刑事訴訟法213条)。

現行犯逮捕が「逮捕状なくして」(刑事訴訟法213条)許される理由は、現行犯逮捕される者が犯罪を犯したことが明白で、誤認逮捕のおそれがないからです。

そのため、現行犯逮捕の要件としては、①現行犯逮捕される者が犯人であることが明白であること、②現行犯逮捕の場所が犯行現場ないしその延長とみられる場所であることが必要とされます。

刑事事件例では、Aさんは公務執行妨害事件の犯人であることが明白であり、現行犯逮捕公務執行妨害事件の犯行現場で行われています。
よって、警察官による公務執行妨害罪の容疑での現行犯逮捕は上記要件を満たした適法なものであると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
職務質問中公務執行妨害罪で現行犯逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。