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免許証を偽造して詐欺
免許証を偽造して詐欺
免許証を偽造して詐欺をした場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
Aさんが在籍している株式会社Xでは,ある社員の退職に伴い,大型車両の運転免許を取得する意思のある者を募っていました。
社内で回覧されていた文書によると,大型車両の運転免許を取得することで給与が上がるだけでなく,教習に掛かる代金の負担という名目で30万円が交付されるようでした。
そのことを知ったAさんは,運転免許証を偽造し,会社から30万円を騙し取ろうと考えました。
そこで,大型免許を持っていないのに,取得済みであるかのような偽の免許証を作成したうえで,コピーを会社に提出して30万円の交付を受けました。
しかし,のちにAさんが免許を取得していないことが発覚し、会社から追及されたAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
【免許証の偽造は何罪に当たるか】
一般的に,免許証の偽造とは,免許証に似たものを作成したり,既に所持している免許証を加工するなどして内容に変更を加えたりすることを指すかと思います。
このような行為に及んだ場合,以下の犯罪が成立する可能性があります。
①公文書偽造罪
刑法(一部抜粋)
第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
公文書偽造罪は,公的機関が作成すべき文書を「偽造」した場合に成立する可能性のある罪です。
ここでの「偽造」とは,権限のない者が文書等を作成することを意味します。
運転免許証を作成する権限があるのは公安委員会であり,当然ながら一般人に運転免許証を作成する権限はありません。
したがって,偽の運転免許証を作成した場合には公文書偽造罪が成立すると考えられます。
罰則は1年以上10年以下の懲役となっており,罰金刑がないことから,もし起訴されれば簡易な手続で罰金刑にする略式裁判は利用できません。
したがって公開の法廷で通常の裁判を受け、無罪にならない限り、懲役刑の実刑判決か執行猶予判決が下されることになるでしょう。
②偽造公文書行使罪
第百五十八条 第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
Aさんは偽造した免許証(155条に該当する文書)を会社に提出しているので、「第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し」た者として、虚偽公文書作成罪も成立してしまいます。
③詐欺罪
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
Aさんは、大型免許を取得しているかのように「人を欺いて」、30万円という「財物を交付させた者」にあたりますので、詐欺罪も成立してしまいます。
このように、Aさんには多くの犯罪が成立してしまいます。
なお、これらの罪で有罪判決を受ける場合、罰則は単純に各条文の罰則を足すのではなく、詐欺罪よりも重い公文書偽造・同行使罪を基準に、1年以上10年以下の懲役の範囲で処罰されることになります(牽連犯・刑法54条1項参照。なお執行猶予となる可能性はあります)。
【弁護士にご相談ください】
今回のような事件では、今後警察に被害届が出されてしまうおそれもあるため、すみやかに謝罪してお金を返すなどの対応が必要となってきます。
それで丸く収まればよいのですが、警察沙汰になってしまう場合もあるでしょうし、今後どのような展開になってしまうのか不安が強いと思いますので、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
刑事事件に強い弁護士が,事件の軽重を問わず最善の結果を目指して弁護活動を行います。
逮捕されている事件では、弁護士が警察署での面会(接見)を行う初回接見サービスのご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では無料法律相談のご利用をお待ちしております。
車上荒らしで不起訴を目指す
車上荒らしで不起訴を目指す
車上荒らしの弁護活動について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します
~ケース~
愛知県犬山市に住む大学生Aさんは駐車してある車の窓を破りロックを外し中の物品を盗むいわゆる車上荒らしをしていた。
Aさんが愛知県犬山市内の道路に駐車してある車の窓ガラスを破ったところ,車に設置してあった警報装置が鳴り響いた。
その音を偶然聞きつけたパトロール中の愛知県犬山警察署の警察官であるXにAさんは窃盗未遂罪および器物損壊罪の疑いで現行犯逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親はなんとかして前科が付かないようにできないかと弁護法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部に弁護を依頼した。
(フィクションです)
~車上荒らし~
車上荒らしはケースのAさんの犯行のように,窓ガラスなどを破り,ロックを外して車内の物品を盗む行為をいいます。
窓ガラスを割っていることから器物損壊罪(刑法261条)が,車内の金品を盗むことから窃盗罪(刑法235条)が成立します。
第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
第264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
なお,器物損壊罪のいう前3条に規定する物とは,公用文書,私用文書,建造物のことをいいます。
~車上荒らしの弁護活動~
車上荒らしに限らず,窃盗罪や器物損壊罪の場合,身柄拘束の回避,被害者の方との示談交渉が主な弁護活動となります。
窃盗罪や器物損壊罪に限らず刑事事件を起こし逮捕され,勾留されてしまうと最長で23日間身柄を警察署などの留置施設に拘束されてしまうことになります。
また,勾留されてしまった場合には勾留満期とともに起訴されてしまう可能性が高く,被害者の方と示談交渉などをする時間的余裕も短くなってしまいます。
一方,逮捕・勾留されない在宅での捜査の場合には,勾留されてしまった場合に比べ起訴しなければならない期間が定められていませんので勾留されてしまった場合に比べ,示談交渉などをする時間的余裕が生まれます。
勾留回避のためには逮捕段階で刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士に弁護を依頼することが重要です。
また,起訴される前の被疑者段階では勾留されなければ国選弁護人は選任されません。
そのため,勾留そのものを回避するためには逮捕段階で弁護士に弁護を依頼する必要があります。
逮捕段階で依頼していただければ勾留決定の前に,裁判官に意見書の提出,弁護士が裁判官と直接面談などをして勾留決定をしないように働きかけます。
もし勾留されてしまった場合にも勾留決定に対する準抗告を申立て,準抗告が認められれば身柄解放されることになります。
しかし,勾留決定に対する準抗告が認容されるケースは勾留が却下されるケースに比べて少ないため,勾留前からの勾留回避活動が重要となります。
車上荒らしのような窃盗罪,器物損壊罪に限らず,刑事事件を起こしてしまい示談をしようとしても被害者が赤の他人でり連絡先なども分からないことも多いでしょう。
その点,刑事事件の弁護の依頼を受けた弁護士であれば警察や検察官から被害者の方の連絡先を弁護士限りで取り次いで貰える場合もあります。
被害者の方の連絡先を取り次いで貰えたら実際に被害者の方に連絡を取り示談交渉をすすめていきます。
示談交渉の際に加害者を許すという宥恕条項を示談書に盛り込んでもらうことで不起訴処分となる可能性が高くなります。
また,器物損壊罪は親告罪となっていますので,示談が成立し告訴をしない旨約束してもらえれば検察官は起訴することができず不起訴となります。
車上荒らしのような窃盗,器物損壊事件に限らず,刑事事件で不起訴処分となるためには示談交渉が非常に重要となります。
刑事事件を起こしてしまい前科を回避したいとお考えの方はできるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
示談が成立し,不起訴処分となった刑事事件も多数取り扱ってまいりました。
車上荒らしなどの刑事事件を起こしてしまい前科を避けたいとお考えの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見のご予約を24時間年中無休で受け付けております。
万引きをしてしまったら
万引きをしてしまったら
万引きをしてしまった場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋が解説します
~万引きの事例~
愛知県犬山市在住の主婦のAさんは日常生活のストレスをスーパーなどで商品を万引きすることで発散していた。
ある日,Aさんが育児のストレスからV店で商品の万引きを行ったところ警備員に見つかり,事務所に連れていかれた。
その後,Aさんは通報によりかけつけた愛知県犬山警察署の警察官に窃盗罪の疑いで事情を聞かれることになった。
(フィクションです)
~万引きと刑事手続き~
万引きは原則として刑法235条の窃盗罪に該当します。
第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
万引きをしてしまい発覚した場合でも,その場から逃げようとしたりしなければ逮捕されないことも多いです。
逆に,逃げようとしてしまった場合には逃亡のおそれがあると認められることになり逮捕されてしまう可能性が高くなってしまいます。
逮捕されてしまった場合には,勾留され,窃盗罪で起訴された場合には初犯であれば罰金刑となることが多いです。
ただし,万引きの金額,余罪や前科などの事情によっては執行猶予付きの判決や実刑判決が出てしまう場合もあります。
なお,勾留された場合には,勾留請求から10日以内に起訴しなければならないと定められています(刑事訴訟法208条)ので,準抗告による釈放やむをえない事由により勾留延長がない限りは10日以内に起訴されることになります。
万引きをしてしまっても逮捕されなかった場合には釈放され,在宅で刑事手続きが進むことになります。
万引きに限らず在宅事件の場合,逮捕・勾留といった身柄拘束を受ける場合と異なり検察官に起訴するまでの期限が定められていません。
そのため,在宅事件であれば検察官が窃盗罪で起訴するまでに勾留されてしまった場合に比べて時間的余裕があります。
検察官はその間に万引きの被害弁償などを行ったかどうかなどの情状によって最終的に窃盗罪で起訴するか起訴猶予の不起訴処分とするかを判断します。
~万引きの弁護活動~
万引きなどの窃盗事件で起訴された場合,被害金額が大きくなく,かつ初犯であれば刑事裁判が開かれない略式手続きによって罰金刑となることが多いです。
しかし,罰金刑であっても前科となってしまいますので可能な限り前科のつかない起訴猶予の不起訴処分を目指すことになるでしょう。
万引きに限らず窃盗罪で起訴猶予の不起訴処分となるには被害者の方への被害弁償,示談の成立が重要です。
万引きに限らず窃盗罪では,被害者の方と示談が成立していれば起訴猶予の不起訴処分となる場合が多くなっています。
在宅事件であれば被害者の方と示談交渉をする時間的余裕がありますが,勾留されてしまっている場合には示談交渉をするための時間的余裕があまりありません。
そのため,不起訴処分を目指すには窃盗罪で逮捕されてしまった段階で弁護士を依頼し身柄拘束の回避や迅速な被害者対応をすることが重要になります。
勾留されてしまった場合には準抗告を申立て,認められれば釈放され在宅事件となることもあります。
万引きなどの窃盗罪に限らず刑事事件では加害者が被害者の方と示談交渉などをするのは困難です。
被害者の方は加害者に対し不信感や警戒心など持っていますので直接示談をしたいと連絡したとしても応じてくれないことがほとんどでしょう。
弁護士が相手であれば窃盗の被害者の方も話を聞いていただける場合も多いでしょう。
また,万引きの場合,被害者である店舗は示談交渉などを受け入れてくれないことも多いですが,弁護士を間に入れることによって被害の弁償金だけでも受け取って頂ける場合もあります。
示談成立とまでいかなくとも万引きによる被害を弁償をすることは有利な情状となり,検察官が事件を不起訴処分とする可能性もあります。
万引きをしてしまった場合,まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
万引きによる窃盗事件で示談をしたことで起訴猶予の不起訴処分となった事例も多数あります。
まずはフリーダイヤル0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談,警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。
盗撮事件で前科を回避したい
盗撮事件で前科を回避するためには
盗撮事件で前科を回避したい場合を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
~ケース~
名古屋市の大学に通うAさん(4回生)は名古屋駅にあるショッピングモールのエスカレーターで前に立っていたVさんのスカートの中をスマートフォンで盗撮した。
しかし,VさんはAさんが盗撮していることに気付き,Aさんは警備員に取り押さえられた。
その後,通報により駆け付けた愛知県中村警察署の警察官によってAさんは盗撮(愛知県迷惑行為防止条例違反)の疑いで事情を聞かれることになった。
Aさんはスマートフォンは没収されたものの逮捕,勾留されることなく釈放され,連絡を受けたAさんの家族は,Aさんの将来のためにも前科が付かない方法がないか弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部に相談した。
(フィクションです)
~盗撮が見つかってしまったら~
盗撮をして見つかってしまった場合,その場で警察に通報され,警察署で事情を聞かれることが多いでしょう。
このような場合に,その場から逃げようとせずに警察の指示に素直にしたがえば,逮捕されずにその日の内に釈放されるということもあります。
しかし,逃げようとしてしまうと,逃亡・証拠隠滅のおそれが高いと判断され,逮捕・勾留といった身柄拘束に繋がってしまう可能性が高くなります。
その為,盗撮が見つかってしまった場合には逃げようとせずに素直に警察の指示にしたがう事が身柄拘束をされないためには重要となります。
~盗撮の場合の刑事手続き~
今回のAさんのように逮捕されなかった場合や,逮捕されてしまっても勾留されずに釈放された場合には在宅で事件の手続きが進むことになります。
警察が捜査を進め,検察官に事件の関係書類や証拠を送致します(この手続きを書類送検といいます)。
書類送検を受けた検察官は関係書類や証拠,事件後の情状などを考慮し,被疑者を起訴するかどうかを判断します。
起訴された場合には刑事裁判を受けることになりますが,100万円以下罰金刑の場合には刑事裁判が開かれずその場で罰金を納付する略式手続きが採られる場合もあります。
なお,在宅事件の場合には検察官は「何日以内に起訴しなければならない」という期限が定められていませんので比較的ゆっくりと手続きが進むことになります。
一方,逮捕・勾留されてしまった場合,検察官は被疑者の勾留を請求した日から10日以内(勾留延長があった場合には20日以内)に起訴しなければならないと定められています(刑事訴訟法208条)ので勾留されてしまった場合被害者の方と示談をする時間的余裕があまりありません。
その為,検察官に勾留請求をしないように意見書を提出したり,勾留に対する準抗告申立などを依頼された弁護士は行うことになります。
検察官が勾留請求をしなかった場合や,準抗告申立が認められた場合には釈放され,在宅で事件の手続きが進むことになります。
なお,盗撮に限らず在宅事件の場合には起訴されるまでは国選弁護人を付けることは出来ませんので弁護士を付ける場合には私選の弁護士に依頼することになります。
私選の弁護士に依頼するメリットとして,起訴前に示談交渉などの弁護活動が行える点があります。
盗撮事件の場合,余罪のない1件のみで前科がないという場合には被害者の方と示談を成立させることができれば検察官は事件を起訴猶予の不起訴処分とすることが多いです。
一方で示談を成立させられなかった場合には起訴され略式手続きで罰金刑となることが多いようです。
罰金刑であっても前科となってしまいますので前科を回避するためには示談を成立させることが重要です。
~盗撮の場合の示談交渉~
盗撮事件では示談を成立させることが出来れば検察官が事件を不起訴処分にすることが多いと書きましたが,事件を起こした本人が被害者の方と直接示談をするのはほぼ不可能でしょう。
というのも,盗撮に限らず刑事事件の被害者の情報を加害者は教えてもらう事は当然できません。
また,仮に何らかの方法で連絡が取れたとしても,盗撮などの被害者は不信感や恐怖心などにより会ってくれないことが多いでしょう。
逆に加害者が直接連絡を取ることで,却って被害者の方を怒らせてしまう可能性もあります。
刑事事件の弁護の依頼を受けた弁護士であれば,検察官から被害者の方の連絡先を取り次いでいただき連絡を取れる場合が多いです。
被害者の方も弁護士が相手であれば話を聞いてみようと考えて頂けることが多いようです。
被害者の方に話を聞いていただき示談を成立させることができれば今回のAさんのケースのような盗撮事件では不起訴処分となる可能性が高いでしょう。
また,示談を断られてしまった場合でも示談を試みたということは若干ではありますが有利な情状として扱ってもらえる場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は刑事事件専門の法律事務所です。
盗撮事件で示談を成立させ不起訴処分となった事件も数多く手掛けて参りました。
盗撮をしてしまい前科をつけたくない,不起訴処分を目指したいとお考えの方は0120-63-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談・警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間年中無休で受け付けています。
振り込め詐欺の「受け子」をしてしまったら
振り込め詐欺の「受け子」をしてしまったら
振り込め詐欺の受け子をしてしまった場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します
~「受け子」になってしまったケース~
愛知県名古屋市瑞穂区在住の大学4年生のAさんは友人から荷物運びのアルバイトを紹介された。
アルバイトの内容は地下鉄の駅のコインロッカーで荷物を受け取り,その荷物を事務所まで運ぶというものであった。
簡単な作業な割に給料のいい仕事だったのでAさんは3ヵ月にわたり7回アルバイトを行った。
ある日,Aさんが地下鉄新瑞橋駅のコインロッカーから荷物を取り出そうとしたところ,張り込んでいた愛知県瑞穂警察署の警察官によってAさんは詐欺罪の疑いで現行犯逮捕されてしまった。
実は,荷物の中身は特殊詐欺の被害者からの現金などであった。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部の初回接見サービスを依頼した。
(フィクションです)
~特殊詐欺の受け子~
「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」といった近年増加傾向にある詐欺の手口はまとめて「特殊詐欺」と呼ばれています。
特殊詐欺はその名の通り詐欺罪(刑法246条)に該当します。
刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
人を騙すことを一般に詐欺と呼びますが,刑法上の詐欺罪の成立には以下のような要件が要求されています。
1.社会通念上,相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益を処分させるような行為をすること(欺罔行為)
2.相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
3.錯誤に陥った相手方が,自己の意思で財物などを処分すること(処分行為)
4.財物などの占有が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転)
5.上記1~4の間に因果関係が認められ,行為者に故意および不法領得の意思が認められること
すなわち,相手を騙し,騙された相手が自分の意思で現金の振り込みなどをした場合に詐欺罪が成立します。
振り込め詐欺などの特殊詐欺の場合,組織的に息子などを装って電話をかける「かけ子」,騙された相手から現金などを受け取る「受け子」などにわかれています。
「受け子」は単純に現金などを受け取るだけですので,何も知らない大学生などが簡単なアルバイトだと思い詐欺の一員として利用されてしまうケースも多いようです。
~特殊詐欺における接見禁止~
振り込め詐欺などの特殊詐欺事件では,逮捕された後,多くの場合で勾留されてしまいます。
振り込め詐欺などの特殊詐欺事件では,共犯者がいることも多く,口裏合わせなどを防ぐために接見禁止が付されることも多いです。
勾留の際に接見禁止がつけられてしまうと弁護士以外の者との接見が不可能となりますので,たとえ家族であっても接見に行くことはできません。
勾留の際に接見禁止が付されてしまった場合,依頼を受けた弁護士はまずはご家族の方が接見できるように接見禁止の一部解除を目指して活動していくことになるでしょう。
~「受け子」の場合の弁護活動~
刑事事件における共犯関係には共同正犯と幇助犯に大別されます。
共同正犯と幇助犯の区別は,一般に,特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思があったか,それとも他人の犯罪を手助けする意思に過ぎなかったのかによって判断されます。
特殊詐欺の「受け子」の場合,自分の行為が特殊詐欺の一環であると認識があったかどうかがポイントとなります。
特殊詐欺の「受け子」は実際に現金などを受け取るという重要な役割ですが,「受け子」による持ち逃げを防ぐために実際の内容を知らせていない場合も多いようです。
そのような場合にはそもそも詐欺であるという認識がなく,詐欺罪の故意がないと主張することが考えられます。
刑法は故意処罰が原則となっていますので(刑法38条),故意が欠ける場合には過失の場合にも処罰するという特別な規定がない場合には罰せられません。
詐欺罪には過失処罰が規定されていませんので故意が無かったと認められれば詐欺罪は成立しないことになります。
しかし,実際には,何となく「詐欺じゃないかな」程度の認識を持っていたということも多く,そのような場合には詐欺罪の故意があったと認定されてしまう可能性が高いでしょう。
そういった場合には,詐欺罪の共同正犯ではなく幇助に過ぎないと主張することが考えられます。
共同正犯であるか幇助犯にとどまるかは,「受け子」となった動機,利益の大きさ,主犯格や他の実行犯との関係性などによって判断されるようです。
特殊詐欺の「受け子」の場合,事情を正しく主張できるかどうかによって幇助犯にとどまるか,共同正犯と判断されてしまうか,故意がなかったとして詐欺罪が成立しないか,といったように結果が大きく変わってしまう可能性があります。
幇助犯にとどまるのであれば刑の減軽が規定されていますので(刑法63条)執行猶予判決付きの判決や,もしも実刑となってしまったとしても短い刑期となることが考えられます。
特殊詐欺の「受け子」をしてしまった場合,弁護活動の内容次第では大きく結果が変わってしまう可能性もあります。
ご家族が特殊詐欺の「受け子」をしてしまったという場合には刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にお気軽にご相談ください。
フリーダイヤル0120-631-881にて事務所での無料法律相談や警察署などでの初回接見サービスのご予約を24時間365日承っております。
強要罪で示談するなら
強要罪で示談するなら
強要罪と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
Aさんは、愛知県名古屋市中川区に住むVさんに200万円を貸し付けていましたが、期日になってもその返済が行われませんでした。
AさんはVさんに再三催促したものの、Vさんは「近々お金の工面ができるからそのとき返す」というばかりでした。
しびれを切らしたAさんは、知人2名と共にVさん宅を訪ね、「私は、令和元年8月2日にAから200万円を借りました。」という内容の借用書を書かせました。
借用書を書かせる際、AさんはVさんの胸倉を掴んで怒鳴ったり、抵抗するVさんを羽交い絞めにしたりしました。
それから数週間が経って、中川警察署から「Vさんの借用書の件で話を聞きたい」との連絡がありました。
以上の経緯をAさんから聞いた弁護士は、強要罪が成立する可能性があることを指摘し、弁護活動として示談を挙げました。
(フィクションです。)
【強要罪について】
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
強要罪は、暴行または脅迫を用いて、他人に何らかの行為をさせ、あるいはさせなかった場合に成立する可能性のある罪です。
脅迫を手段とする強要罪の場合、脅迫の内容が①被害者自身に害を加える旨の告知(223条1項)でも②被害者の親族に害を加える告知(223条2項)でも構いません。
上記事例では、Aさんが知人と共にVさんを脅迫し、Vさんに借用書を作成させています。
VさんはもともとAさんにお金を借りていたことから、無理やりとはいえ内容の正しい借用書を書かせる行為が犯罪に当たるのは理解しがたいかもしれません。
たしかに、借金の取り立てなどにつき、正当な権利行使の範囲内として適法とされることはあります。
ですが、そうした評価ができるかどうかの判断に当たっては、社会一般の常識に照らして手段が相当なものであったかが厳しく見られることになります。
そうした観点から見たとき、Aさんの手法は社会的に相当とは言えないと考えられます。
そのため、やはりAさんに強要罪が成立する可能性はあるでしょう。
【示談に期待できる効果】
強要罪は個人の意思決定の自由を侵害する罪であることから、被害者となるのは特定の個人です。
その場合、その個人との示談が重要な意味を持つと考えられます。
そもそも示談とは、被害者との間で交わす合意であって、謝罪をしたことや被害弁償の約束などを内容とするものです。
具体的な内容は事件によって異なるものであり、被害者が加害者に対する処罰を望まない旨や、今後被害者が加害者に接触してはならない旨などが合意されることもあります。
ある事件が警察などの介入で刑事事件として扱われた場合、示談の効力の発揮が期待できる場面は主に以下の2つが挙げられます。
1つ目の場面は、検察官が事件を起訴するか不起訴にするか決めるときです。
刑事事件においては、必要な捜査がひととおり行われたあと、検察官が事件を裁判にかけるかどうか決定することになります。
その際、示談の成否は重大な考慮要素の一つとされるのが通例であり、もし示談が成立していれば不起訴となる可能性は変わってきます。
2つ目の場面は、裁判官が刑罰の重さをどの程度にするか決めるときです。
検察官が事件を起訴すると、その事件については裁判が行われることになります。
裁判では、犯罪の内容のみならず犯罪後の対応や更生の可能性なども考慮され、示談についても当然のように考慮要素の一つとされています。
示談の成立が考慮されれば、刑の減軽が見込まれ、執行猶予となる可能性も高まるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、示談の締結をはじめとする的確な弁護活動を行います。
強要罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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強盗事件を起こして逮捕されてしまったら
強盗事件を起こして逮捕されてしまったら
~強盗事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します~
~ケース~
名古屋市千種区で一人暮らしをしている大学3年生のAさんは自分の娯楽の為,両親に内緒で消費者金融から借り入れをしていた。
しかし,Aさんは返済日に返済用の現金を用意できず,近所の店で強盗をし現金を奪おうと考えた。
Aさんは犯行当日,包丁を持参しV店に押し入り従業員Xさんに包丁を突きつけ現金を出すように要求した。
しかしXはこれに応じず,緊急通報システムによって駆けつけた愛知県千種警察署の警察官によってAさんは強盗罪の疑いで逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(フィクションです)
~強盗罪~
強盗罪は刑法236条に規定されています。
刑法236条
1.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は,強盗の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。
強盗罪のいう暴行又は脅迫は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の強さが必要です。
強盗の際の暴行・脅迫が反抗を抑圧するに足りる程度であったかどうかは客観的な基準によって判断されます。
今回のAさんのように包丁を突きつけるという行為は反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫となりますのでAさんの行為は強盗罪に該当するといえるでしょう。
しかし,Aさんは強盗を試みたものの,Xさんが要求に応じずお金を奪う事はできませんでした。
強盗罪はお金などの財物を奪った時点で既遂となりますので,お金などを奪えなかった場合には強盗未遂罪にとどまります(刑法243条)。
そのため,Aさんには強盗未遂罪が成立することになります。
なお未遂の場合は,「その刑を減軽することができる」と定められています(刑法43条)。
~刑事手続き~
今回のAさんの場合,一人暮らしであるという事情から逮捕後に検察官の請求により勾留されてしまう可能性が高いでしょう。
一人暮らしであるという事情から逃亡のおそれが高い,また近所の店に押し入っての強盗ですから被害者等への接触といった証拠隠滅のおそれも高いと判断されてしまうおそれがあります。
勾留の期間は勾留請求の日から10日間で,勾留満期の時点で検察官は被疑者を起訴するかどうかを決めなければなりません。
事件が複雑である場合など,10日間では起訴または不起訴の決定が困難な場合には検察官の請求により,裁判官は10日間を限度に勾留期間を延長することができます。
刑事訴訟法では,逮捕後,被疑者を検察官に48時間以内に送致し,送致を受けた検察官は24時間以内に被疑者の勾留を請求するか釈放するかを決定しなければならないとされています。
そのため,単純計算で起訴されるまでに最長で23日間身柄拘束されてしまうことになります。
その間が警察署の留置場などで生活することになりますので,当然大学へ通ったりアルバイトなどに行くこともできません。
そうなってしまうと出席日数が不足してしまったりアルバイトを解雇されてしまう可能性も高いでしょう。
したがって,勾留はできるだけ回避する必要があります。
~弁護活動~
今回のケースではまずAさんが勾留されないように活動していくことになるでしょう。
未遂罪とはいえ,強盗罪は重大事件ですので勾留されてしまう可能性は高いでしょう。
しかし,両親が身元引受人になり同居などによって監督を約束,警察などの出頭要請には必ず従うといったことを約束すれば裁判官が検察官による勾留請求を棄却する可能性はあります。
勾留請求が認められてしまった場合には勾留に対する準抗告をすることによって,それが認められれば釈放となる場合もあります。
強盗罪は5年以上の有期懲役というかなり重い刑罰が規定されています。
強盗罪には罰金刑が定められていないので起訴されてしまった場合には刑事裁判を受けることになります。
今回,Aさんの起こした強盗未遂事件は事件の内容がそこまで重いものではないとも思われます。
しかし,未遂であり刑の減軽がされたとしても刑事裁判の結果は執行猶予付きの懲役という判決になるでしょう。
今回のような事案では,被害店舗や被害者の方と示談交渉をし,加害者を許すという宥恕条項を盛り込んだ示談を成立させることができれば検察官は事件を不起訴とする可能性が高くなります。
しかし,示談を使用と思っても被害者の方は恐怖心や不信感などから加害者本人との示談に応じることは少ないと思われます。
弁護士が代理人として示談をするという場合であれば被害者の方も安心して示談に応じて頂ける可能性が高くなります。
強盗未遂罪であっても示談によって不起訴となった事例は多くあります。
ご家族の方が強盗事件を起こしてしまいお困りの方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部の弁護士にご相談下さい。
事務所での無料法律相談のご予約,初回接見サービスのお申し込みを0120-631-881にて24時間年中無休で受け付けております。
公務執行妨害罪で逮捕されたら
公務執行妨害罪で逮捕されたら
~公務執行妨害罪で逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します~
~ケース~
深夜に犬山市内の繁華街で友人と遊んでいたAさんは、別件で捜査活動中の愛知県警察犬山警察署の警察官Vに声を掛けられた。
警察官は私服姿で強面であったことから、AさんはVさんを警察官だと思わず、その場から逃げるためにVさんを手で押し、そのまま立ち去ろうとした。
死に貯め、Aさんはその場で公務執行妨害罪の容疑で逮捕された。
Aさんが逮捕されたことを知ったAさんの家族は、少しでも早く釈放して欲しいと、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部の弁護士に初回接見を依頼した。
(フィクションです)
~公務員だという認識が無かった場合~
公務執行妨害罪は刑法95条1項において「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」と規定されています。
ここでいう職務とは、適法なものであることを要します。
仮に、違法な職務まで保護するとすれば、国民の権利・自由が不当に侵害され、必要以上に公務員そのものの身分又は地位を保護する結果となりかねないためです。
今回の場合、警察官は警ら中ですので、適法な職務といえます。
また、Aさんは公務員のVさんを手で押しているので、暴行になり公務執行妨害罪としての要件は満たされます。
ただし、上記のケースにおいて、AさんはVさんを警察官だとは思っていませんでした。
公務執行妨害罪が成立するには、今回の場合であれば「警察官が職務執行をしている」という認識がAさんには欠けているため、公務執行妨害罪が成立しない可能性があります。(もちろん、暴行罪が成立する可能性はあります)
今回のケースのように、公務執行妨害罪の成否を争うケースでは、弁護士によるサポートが必要となるケースが多いです。
そのため、早い段階で刑事事件に強い弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
~早期釈放に向けた弁護活動~
上記のケースのように、公務執行妨害罪にはあたらないことを主張し、早期身柄解放を目指すためには弁護士のサポートが必要となります。
というのも、逮捕後勾留される前であれば、検察官に対して勾留請求をしないように働きかけることが出来ます。
そして、検察官が勾留請求をしてしまった場合には、弁護士は裁判官に勾留を認めさせないように意見書を提出するなどの弁護活動を行います。
さらに、裁判官が勾留決定を出して場合には、準抗告と言う異議申し立てを裁判所に対して行い、勾留決定を取り消すよう求めていくことが可能です。
実際、準抗告が認容されるケースよりも、勾留請求をされない、あるいは勾留請求が却下されることで釈放されるケースの方が多いです。
したがって、出来る限り早い段階で弁護士に身柄解放活動に動いてもらうことが重要になります。
ご家族が公務執行妨害罪で逮捕されてお困りの方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部の弁護士にご相談下さい。
初回無料法律相談のご予約や、初回接見サービスのお申し込みは、24時間いつでも可能です(0120‐631‐881)。
初回接見サービスや初回無料相談に関してご不明点がありましたら、相談予約担当の者がお答えさせて頂きますので、まずはお気軽にお電話下さい。
名誉毀損罪や侮辱罪で告訴されたら
名誉毀損罪や侮辱罪で告訴されたら
~名誉毀損罪や侮辱罪で告訴について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します~
~ケース~
名古屋市中村区在住の大学3年生のAさんは交際していたVさんと別れた後,SNSにVさんを誹謗中傷する内容を投稿した。
書き込みを発見したVさんはAさんに対して投稿をやめて当該投稿を削除するように要請した。
しかしAさんはVさんからの要請を無視し,継続的にVさんを誹謗中傷する内容を投稿した。
そのため,VさんはAさんを刑事告訴し,Aさんは名誉毀損罪および侮辱罪の疑いで愛知県警察中村警察署で事情を聞かれることになった。
前科が付くことを避けたいAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部の無料法律相談を利用した。
(フィクションです)
~侮辱罪と名誉毀損罪~
名誉毀損罪は刑法230条,侮辱罪は刑法231条に規定されており条文は以下の通りになっています。
刑法230条(名誉毀損)
1.公然と事実を摘示し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
刑法231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
ある行為が名誉毀損罪となるか侮辱罪となるかは「事実の適示」が存在するかどうかによって異なります。
ここでいう「事実」とは日常生活で使われる「事実」とは若干意味が異なります。
「事実」とは実際に存在しうる事柄という程度の意味で,内容が虚偽である必要はありません。
例えば「Xが留年した」という内容はXが実際に留年していたかどうかに関わらず「事実」として扱われ,「Xが留年した」という事実の適示によってXの名誉が毀損された場合には名誉毀損罪が成立することになります。
一方で,「Xはアホだ」というような場合は「事実の適示」ではないので侮辱罪に留まると考えられます。
なお,SNSなど不特定多数の人が閲覧できる場所に投稿することは「公然と・・・した」といえるでしょう。
~侮辱罪や名誉毀損罪に問われたら~
Aさんの投稿が具体的な事実を適示した誹謗中傷なのか,単なる罵詈雑言,すなわち事実を適示しない誹謗中傷なのかで成立する犯罪が変わります。
侮辱罪の場合,法定刑が拘留または科料と刑罰の中で最も軽いものが規定されていますが,名誉毀損罪の場合には3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となっています。
他の犯罪との併合罪でなければ侮辱罪や名誉毀損罪の実際の刑罰としては,科料もしくは罰金刑が選択されることがほとんどでしょう。
なお,市議会議員がスナックの女性客に何度も『デブ』と侮辱した事件では拘留29日の判決が言い渡されましたが,これは市議会議員という社会的立場が考慮された判決と考えられます。
また,名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪となっていますので,被害者の告訴がなければ検察官は公訴を提起できません。
そのため,名誉毀損罪や侮辱罪にあたる行為を行ってしまったとしても、実際には刑事告訴そのものが行われず刑事事件化しないことも多いでしょう。
一方,告訴が受理されて事件化した場合には基本的に科料や罰金刑となりますので前科となってしまいます。
しかし,親告罪ですので刑事事件化した場合でも被害者の方と示談などをまとめ,告訴の取下げをしてもらえれば公訴の提起ができなくなりますので前科が付くこともなくなります。
侮辱罪や名誉毀損罪の場合,刑事告訴の前に被害者の方から当該行為を止めるように要請されることが多いです。
そのため,当該行為をやめることおよび慰謝料を支払う事によって示談を成立させられる場合が多くなっています。
示談を成立させる際に,告訴の取下げを約束してもらうことで前科が付くことはなくなります。
軽い気持ちでSNSなどに投稿した内容が名誉毀損罪や侮辱罪として刑事告訴されてしまう場合もあります。
そのような場合には弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部,フリーダイアル0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事件の見通しや示談の可能性など,刑事事件の専門の弁護士が無料で相談させていただきます。
食品衛生法違反で故意否認なら
食品衛生法違反で故意否認なら
~食品衛生法違反で故意否認について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します~
~ケース~
名古屋市北区で小料理屋を営んでいるAさんは,常連客に市場にあまり流通しない珍しい魚を提供することで有名であった。
ある日,Aさんが魚市場で珍しい魚はないかと漁師Xに尋ねたところ,「脂の乗った美味しい魚がある」と言われ刺身を一切れ試食した。
大トロのような脂の乗った刺身で美味であったため,Aさんは鮪の一種であると思い,この魚を漁師Xから購入し持ち帰った。
後日,Aさんは自身の料理屋で常連に対し購入した魚の刺身を提供した。
ところが,刺身を食べた常連客が健康被害を保健所に訴え,Aさんは食品衛生法違反の疑いで事情を聞かれることになった。
この魚は実はアブラソコムツという魚であり,食品衛生法で販売が禁止されている魚であった。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)
~アブラソコムツ~
アブラソコムツは食べると非常に美味であると言われています。
しかし実はこの魚には人の身体では消化できない脂を含んでおり,ほんの少量であれば問題ない場合もありますが,食べてしまうと消化できなかった脂がお尻から垂れ流しになってしまいます。
そのため,アブラソコムツおよびバラムツは厚生省の通達により食品衛生法6条2項のいう有害な物質が含まれる食品にあたるとされています
そして、アブラソムコツおよびバラムツを販売することは食品衛生法第6条2項によって禁止されており,罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています(同法71条)。
。
~故意と錯誤~
刑法38条1項は「罪を犯す意思がない行為は,罰しない。」と規定されています。
ただし,法律の不知,すなわち罪になると知らなかった場合には,罪を犯す意思がなかったとはいえないとされています(同条3項)。
罪を犯す意思,すなわち犯罪を犯す故意がない場合には罰せられないという規定であり,Aさんはアブラソコムツであると認識していなかったのでAさんに故意があったといえるのかが問題となります。
このような事実の錯誤の有名な事件として「たぬき・むじな事件」と「むささび・もま事件」があります。
たぬき,むささびは両者とも捕獲が禁止されているところ,たぬきを「むじな」であると認識して捕獲した事件,むささびを「もま」であると認識して捕獲した事件です。
前者は故意がないとして無罪,後者は単なる法律の不知であると有罪との判断が下されました。
前者は,当時(100年程前です),「むじな」はたぬきとは別の動物であるという認識が一般的であり,当事者も「むじな」という動物であるという確信的な認識でたぬきを捕獲したのであり,「たぬきを捕獲する」という故意があったとは言えないという判断が下されました。
一方後者は,「もま」は単なるむささびの方言であり,「もま=むささびであることを知らなかっただけ」で違法であることを知らない,すなわち単なる法律の不知に過ぎないと判断されました。
~Aさんの場合~
今回のケースでAさんはアブラソコムツをマグロの一種であると誤認して客に提供しています。
そのため,たぬき・むじな事件のように故意がなかったとして無罪となるか,むささび・もま事件のように単なる法律の不知にすぎないと判断されるかが問題です。
ところで,アブラソコムツおよびバラムツは海釣りで釣った魚を食べる愛好家の間では“美味しいが食べてはいけない魚”として有名なようです。
Aさんは単に提供した魚がアブラソコムツであるということを知らなかっただけですので,販売が禁止されていることを知らなかったに過ぎない,すなわち単なる法律の不知であると判断される可能性が非常に高いです。
また,Aさんは食品を客に提供する立場ですので,食品衛生法3条により食品の安全確認の努力義務が課せられています。
したがって,Aさんに故意がなかったと主張するのは難しそうです。
ただし,刑法38条3項では、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる」とも定められています。
今回のケースでは,Aさんは自分には(一切れしか食べなかったので)症状がでなかったため安全な魚であると思い込んだといった事情などを情状として主張することになるでしょう。
「罪になると思わなかった行為」が単なる法律の不知なのか,実際に故意がなかったとして罰せられないかは事情によって異なります。
どちらの場合でも取調べの内容によって故意があったと認められたり,認識があったと判断されてしまう可能性があります。
「罪になると思わなかった行為」によって逮捕されてしまったり,警察から事情を聞かれることになった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事件の見通しや取調べの対応などの無料相談,警察署での初回接見のご予約を24時間365日受け付けています。