自己の所有家屋に侵入したら住居侵入事件になる?
自己の所有家屋に侵入したら住居侵入事件になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは名古屋市名東区に自己が所有している一軒家に妻のVさんと2人暮らしをしていましたが、折り合いが悪くなり10年ほど前から一軒家を出て別居しています。
ある日、AさんはVさんが浮気をしているという噂を聞きつけ、Vさんの浮気現場の写真を撮ろうと夜中に自己が所有している一軒家に忍び込みました。
そこでAさんはVさんに見つかり愛知県名東警察署に通報され、Aさんは愛知県名東警察署で住居侵入罪の疑いで話を聞かれることになりました。
Aさんは「あの家は自分の名義だ。今は住んでないとはいえなぜ自分の家に入って住居侵入罪と言われなければいけないんだ。」と思い、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼しました。
(フィクションです)
【住居侵入罪】
正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。(刑法第130条)
【犯行の主体】
住居侵入罪の主体(犯罪を行う人)に特に制限はなく、誰でも行えます。
【犯行の対象】
1 「人の住居」とは
住居侵入罪の「侵入」の対象となる「住居」は、行為者以外の他人が居住する住居をいい、「住居」は、人の起臥寝食(日常生活)に用いる場所を言いますが、日常生活に使用するための一定の設備や構造は必要とされています。
住居としての使用は一時的なものでもよく、旅館やホテルの一室も起臥寝食に利用されれば「住居」に該当し、また現に日常生活の用に供されていれば、居住者が現在していることは必要ではなく、一時不在中の場所も「住居」に該当します。
一つの建物のうち区画された部屋はそれぞれ独立して「住居」となり、マンションの各部屋のほか、これに付属する屋上や階段などの共用部分のほか、屋根も「住居」となります。
「住居」がある塀などで囲んである部分は「住居」となります。
また、借家人が借家契約終了後も占有している場合など、不適法な住居であっても、事実上居住している以上、「住居」に該当します。
2 「人の看守する」とは
住居侵入罪の条文には、先ほど触れた「住居」の他に「人の監守する」邸宅などもその対象として定められています。
この「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配していることをいい、例えば守衛や警備員などの監視人を置く場合や鍵をかける場合、ドアをくぎ付けにする場合で、該当しないものとして単に立入禁止の立て札を立てる場合などがあります。
また、官公署の廊下、出入口、構内などは、庁舎管理権者の看守のもとにあるとされています。
3 「邸宅」とは
空き家やシーズンオフの別荘など、住居用に作られたものの、現在日常生活に使用されていない状態にあるもののことです。
4 「建造物」とは
屋根があり、障壁または支柱によって支えられた土地の定着物のことをいい、その内部に出入りできる構造があるものをいいます。
例えば、官公署の庁舎、学校、工場、倉庫、神社、寺院(ただし、起臥寝食に用いられていれば住居となります。)や駅の構内、国体開会式中の陸上競技場のスコアボード、警察署のコンクリート塀などがあります。
5「艦船」とは
軍艦やその他の船舶のことです。
【行為】
1 「侵入」とは
住居侵入罪における「侵入」とは、住居者や看守者の意思または推定的意思に反して立ち入ることをいいますので、承諾や推定的承諾がある場合は「侵入」に該当しませんが、その承諾は任意かつ真意から出たものでなければなりません。
例えば、威圧された状態での承諾や、強盗目的にもかかわらず客を装って店舗内に立ち入ることを許された場合は住居侵入罪にいう「侵入」となります。
また、違法な目的で立ち入る行為は、推定的意思に反する立入りとして「侵入」となります。
例えば、店内の客とけんかをする目的で日本刀を持ち店内に立ち入る行為や、ATMのキャッシュカードの暗証番号を盗み見る目的で、営業中のATMコーナーに立ち入る行為などが住居侵入罪のいう「侵入」となります。
2 「正当な理由がない」とは
住居侵入罪は「正当な理由がない」のに住居に「侵入」することで成立しますが、この「正当な理由がない」とは、「違法」ということと同じです。
すなわち、法令に基づいて立ち入る場合(警察などが行う刑事訴訟法に基づいた捜索や検証など)は正当な理由がある場合ということとなり、住居侵入罪の「しん」ます。
3 「実行の着手時期と既遂時期」
住居侵入罪の着手時期は侵入行為を開始した時、既遂時期は身体の全部が住居等に入った時です。
【刑事事件例について】
Aさんの自宅の名義は確かにAさんなのですが、実際に現在居住しているのはVさんであるので、Aさん名義の一軒家は「人の住居」と考えられます。
「人の住居」にVさんの浮気現場の写真を撮ろうという「正当な理由」ではない理由で侵入したので、住居侵入罪が成立すると思われます。
【Aさんに対する弁護活動】
まず、Aさんの行為が住居侵入罪にあたるのかどうか、目撃者や被害者の供述を争い警察などの捜査機関が住居侵入罪を立証するのに十分な証拠を持っていないことを主張し、不起訴処分や無罪を求めていくことも考えられます。
Aさんの行為が住居侵入罪になる場合、弁護士を通じて被害者の方と示談を締結することにより、起訴猶予などの不起訴処分により前科がつかなくなる可能性を高めることができます。
仮に住居侵入罪で逮捕・勾留されている場合でも、被害者の方への被害弁償や示談を行うことで釈放の可能性も高まりますので、早期の職場復帰や社会復帰を図ることもできます。
また、起訴され、裁判になった場合でも、示談が成立すれば執行猶予付き判決の可能性を大きく高めることが出来ますし、Aさんの犯行目的や犯行手口、住居侵入罪や建造物侵入罪など同種の前科の有無などを慎重に検討して、裁判所に対し適切な主張と立証を行うことで、執行猶予付きの判決を獲得する弁護活動を行っていくということになるでしょう。
このように、早期に事件概要を把握し、弁護活動をしてもらうことで有利な結果を獲得することが期待できますから、刑事事件に強い弁護士、示談交渉に強い弁護士に早期に相談をすることがとても大切です。
ご自身やご家族が住居侵入罪で話を聞かれることになったり逮捕されてしまった方は、ぜひ刑事事件や示談交渉に強い弁護士にお早めにご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
示談交渉や適切な主張や立証を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
名古屋市名東区の住居侵入罪でご自身やご家族が話を聞かれることになった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。