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業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留②

2020-05-02

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留②

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①の続きとなります。

保護責任者遺棄致死罪の法定刑

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときには、保護責任者遺棄罪が成立します(刑法218条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上5年以下の懲役です。

また、刑法218条の罪(保護責任者遺棄罪)を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により、保護責任遺棄致死罪として処断されます(刑法219条)。
保護責任遺棄致死罪の場合,「傷害の罪と比較して、重い刑によ」るとは、傷害致死罪(刑法205条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)に定められた刑(法定刑)の上限及び下限を比較して、その重い方を選択するということを意味します。

保護責任者遺棄致死罪によってAさんが未成熟児(Vさん)を死亡させるに至った場合を見てみると、傷害致死罪(刑法205条)の下限は3年以上の懲役、上限は20年の懲役です(刑法205条・刑法12条)。
それに対して、保護責任者遺棄罪(刑法218条)の下限は3月以上の懲役、上限は5年以下の懲役です。
ここで、上述した傷害致死罪(刑法205条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)の下限及び上限について、それぞれ重い方を選択します。
したがって、保護責任者遺棄致死罪の法定刑は、下限が3年以上の懲役、上限は20年以下の懲役だと考えられます。

遺棄の意義

保護責任遺棄致死罪における「遺棄」は、①要救助者(要扶助者)の場所を移動させるという移置行為と、②保護しなければ生命の危険が生じ得る要救助者(要扶助者)を放置したまま立ち去るという置き去り行為をいうと解されています。

また、保護責任遺棄致死罪において「必要な保護をしなかった」とは、場所を移動させたり立ち去ったりするように物理的に離れずに、要扶助者に対し生存に必要な保護をしないという不保護行為をいいます。

ケースにおいて、Aさんは医師として未成熟児であるVさんを保護する必要があるにも関わらず、Vさんを放置したまま立ち去ったことから、置き去りによる遺棄が行われたといえます。
よって、Aさんには保護責任遺棄致死罪が成立すると考えられます。

以上より、Aさんには業務上堕胎罪と保護責任者遺棄致死罪が成立すると考えられ、愛知県北警察署による逮捕・勾留が行われたのだと考えられます。
ちなみに,AさんがVさんを殺すつもりで遺棄に及んだ場合,保護責任者遺棄致死罪ではなく殺人罪に当たる余地が出てきます。
そうなった場合,殺人罪として法定刑の上限が死刑,下限が5年の懲役という非常に厳しいものになるおそれがあります。

勾留の要件と身柄解放活動

勾留とは、逮捕した被疑者の身柄を一定の事由がある場合に留置することをいいます。
その一定の事由とは、刑事訴訟法60条1項と87条1項に記載されている事由を指します。
具体的には、以下の①から③の全てに該当する場合に勾留が認められます。

①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき
②次のうち最低でも1つに該当するとき
被疑者が定まった住居を有しない
被疑者が罪証を隠滅すると疑うにつき相当な理由がある
被疑者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
(上記①②をまとめて「勾留の理由」と呼ぶことがあります)
③勾留の必要があるとき

③については,その具体的な意味が日本語の一般的な意味とは少し異なる点に注意が必要です。
ここで言う「勾留の必要があるとき」とは,勾留の利益(たとえば円滑な捜査が行えること)と不利益(たとえば被疑者が会社に行けないこと)を比較し,不利益より利益の方が大きいことを指すと考えられています。
そのため,仮に①②に該当しても,勾留による不利益の大きさ次第では③が否定され,結果的に勾留されないということもありえます。

以上に対して、勾留中の被疑者の身柄拘束を解く刑事弁護活動には、
①勾留の理由または必要があると判断した裁判官の判断を争う準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)
②その後の状況の変化により、勾留の理由または必要がなくなったことを主張する勾留取消請求(刑事訴訟法87条)
③裁判官の職権による勾留の執行停止を求める活動
などが挙げられます。

また、この前提として、
④勾留された理由を公開の法廷において裁判官が告げることを求める勾留理由開示請求(刑事訴訟法82条)
も、勾留中の被疑者の身柄拘束を解く刑事弁護活動において重要な役割を果たします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、逮捕されている被疑者のもとに出向き、拘束されている身柄の解放に向けた刑事弁護活動を行っています。
業務上堕胎罪や保護責任者致死罪で逮捕された被疑者の身柄解放をお考えの方は、まずは刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご連絡ください(フリーダイヤル0120-631-881)。

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①

2020-04-30

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

愛知県名古屋市北区内の病院に勤務するAさん(医師)は、旧友のBさん(女性)から、母体保護法による適法な堕胎の期間を過ぎてしまっているにも関わらず、Bさんが妊娠している胎児の堕胎を依頼された。
Aさんが同病院内で堕胎を行った結果、母体外に胎児が排出されたが、Aさんの病院には保育器等の未熟児医療設備が整っており、堕胎により排出された未熟児(Vさん)は適切な処置を施せば生育可能な状態であった。
しかし、Aさんは、未成熟児を処置室にそのまま放置したため、未成熟児(Vさん)は死亡した。
その後、愛知県警北警察署の捜査によりAさんは業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪の容疑で逮捕され、またそれに引き続く勾留がなされた。
(この事例は、フィクションです。)

業務上堕胎罪と母体保護法

医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときには、業務上堕胎罪が成立します(214条)
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上5月以下の懲役です。

業務上堕胎罪における「堕胎」とは、①胎児を母体内で殺すか、あるいは、②自然の分娩期に先立って人工的に胎児を母体から分離・排出することです。
ケースでは、医師であるAさんが自然の分娩期に先立って母体外に胎児を排出しています。
そして,このような行為は妊婦であるBさんの依頼を受けて行っているため,「医師」が「女子の嘱託を受け」「堕胎」を行ったといえます。
そうすると,Aさんの行為は業務上堕胎罪に当たると考えられます。

ただし,形式的には業務上堕胎罪に当たる行為であっても,母体保護法が定める人工妊娠中絶に該当すれば不可罰となる余地があります。

まず,母体保護法2条2項は、「人工妊娠中絶」の定義について、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期(注:行政機関の通知によれば受胎後満22週間未満)に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出すること」と定めています。
そのため,第一にこの定義に該当することが必要となるでしょう。

そのうえで,母体保護法14条1条1号は、次の要件を満たす場合に限って適法に「人工妊娠中絶」を行えるとしています。
①医師会が指定した医師の手によること
②妊婦が次のいずれかに該当すること
・妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある
・暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した
③妊婦と配偶者の双方が同意していること(ただし一定の場合は妊婦のみで可能)

以上の各要件を満たす場合には,適法な行為と評価される結果,業務上堕胎罪の成立も否定されるでしょう。

ケースでは、母体保護法による適法な堕胎の期間を過ぎています(受胎後満22週間を過ぎています)。
また、上記の身体的・経済的理由や倫理的理由は存在しないと考えられます。
したがって、適法な「人工妊娠中絶」とは見られず、Aさんには業務上堕胎罪が成立すると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
業務上堕胎罪と保護責任者遺棄致死罪で逮捕・勾留された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部へご相談ください。
次回の記事では、業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留(後編)を解説します。
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名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた

2020-04-28

名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた

名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

愛知県名古屋市瑞穂区の新聞社に勤めるAさん(45歳)は、愛知県内の選挙区から当選した国会議員であるVさん(40歳)に対し、かねてから自分の政治信念と一致しないことからVさんの人気に立腹していた。
そこで、Aさんは、Vさんについて綿密に取材を重ね、既婚者であるVさんが妻以外の複数の女性と交際関係にあると突き止めた。
Aさんは、Vさんは国民の代表たる政治家として不適切であると考え、取材情報を新聞に公表した。
一方、Vさんは自身の名誉が傷付けられたとして、愛知県警瑞穂警察署に告訴した。
その後の愛知県警瑞穂警察署の捜査の結果、Aさんは名誉毀損罪の容疑で任意の取り調べを受けるに至った。
Aさんは、「自分は正しいことをしたのではないか」と考え、自身を弁護してくれる法律事務所を探している。
(この事例はフィクションです。)

名誉毀損罪の成立

公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者には、名誉毀損罪が成立します(刑法第230条第1項)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

名誉毀損罪は親告罪であり、告訴がなければ、検察官は起訴することができません。
告訴とは、犯罪の被害者その他一定の者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
しかし、親告罪について告訴の提出がされていない場合でも、告訴の可能性の有無や事案の大小から慎重に判断した上で犯罪の捜査を開始することは可能であると解されています。

ケースでは、名誉毀損罪の被害者であるVさんが、愛知県警瑞穂警察署に告訴していることから、検察官が起訴することは可能であると考えられ、また、愛知県瑞穂警察署の捜査も適法であると考えられます。

名誉毀損罪が不可罰になる場合

名誉毀損罪として規定されている行為(「公然と、事実を摘示」する行為)が
①公共の利害に関することに係り、
かつ、
②その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合
には、
③事実の真否を判断し、真実であることの証明があったとき
は、これを罰しない(名誉毀損罪は成立しない)とされています(刑法第230条の2第1項)。

さらに、名誉毀損罪として規定されている行為(「公然と、事実を摘示」する行為)が、公務員又は公選による公務員の候補者に関す事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しないとされています(刑法第230条の2第3項)。
つまり、名誉毀損罪が不成立となる条件(①、②、③)のうち、③が満たされれば基本的に不可罰となります。
このように①②の要件が不要となる理由は,公務員に対する批判の自由の保障を徹底すべきだという考えに基づきます。
そのため,公務員の身分を持つ者に関する事実であれば何でもいいとまでは考えられていません。

ケースにおいてAさんが公表した情報は、国会議員であるVさんが妻以外の複数の女性と交際関係にあるというものです。
このこと自体はVさんのプライベートに関わる事柄ですが,Vさんは国民の代表たる国会議員としての資質が問われる立場にあると言えます。
そうすると,Aさんが公表した内容は「公務員…に関する事実」だと考えられます。

Aさんの公表した内容が「公務員…に関する事実」である以上,その内容が真実だと証明できれば名誉毀損罪は成立しない可能性が高いです。
それでは,仮に真実だと証明できなかった場合,Aさんには名誉毀損罪が成立することになるのでしょうか。
この点については,確実な資料・根拠に基づく相当な理由によって真実だと誤信したのであれば,責任を問うべきではないとして名誉毀損罪の成立が否定されると判断した裁判例が存在します。
この裁判例に従えば,仮にAさんが公表した情報の真実性を証明できずとも,真実だと信じたのが相当な理由によることを理由に名誉毀損罪の成立を否定する余地があるということになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件のみを専門に扱う法律事務所として、名誉毀損罪に関する刑事弁護も自信をもってお受けいたします。
名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた場合は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談下さい。

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傷害のつもり(故意)はなかったのに傷害罪で逮捕

2020-04-26

傷害のつもり(故意)はなかったのに傷害罪で逮捕

傷害のつもり(故意)はなかったのに傷害罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

会社員のAさん(25歳)は、職場において同僚の目の前で上司のVさんから激しい叱責を受けた腹いせに、Vさんの帰宅時を待ち伏せし、愛知県名古屋市守山区の周辺の雑居ビルの隙間から石を投げて脅かしてやろうと考えた。
しかし、意外にもこれがVさんに当たり、かつVさんは転倒して後頭部を打って全治2週間の怪我を負った。
その後、Vさんは愛知県警守山警察署に被害届を提出した。
その際、実はVさんがAさんの投石行為を目撃していたことから、後日Aさんは傷害罪の容疑で逮捕されることとなった。
Aさんは、「自分は石を投げて脅かしてやろうと考えただけだ。Aが転倒して怪我をさせてやろうなんて考えなかった。」と主張している。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、愛知県名古屋市守山区周辺の法律事務所に法律相談を検討している。
(この事例はフィクションです。)

傷害の故意がなかった場合にも傷害罪が成立するのか

人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立します(刑法204条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、15年以下の懲役又は50年以下の罰金です。

傷害罪における「傷害」(刑法204条)とは、身体の生理機能の障害を意味すると考えられています。
これには、怪我をさせることは当然、病気や精神衰弱状態に陥れることも含まれます。
事例では、Aさんは後頭部の打撲という怪我を負っていますので、結果としては「傷害した」といえます。

ここで、刑法38条1項は、故意犯を原則とし、過失犯は「法律に特別の規定のある場合」に限って例外的に処罰することとしています。
確かに、傷害罪の成立においても,傷害罪の故意が必要と考えるのが自然のようにも思えます。
しかし、暴行罪(208条)の条文を見ると、暴行を加えた者が人を「傷害するに至らなかったとき」に暴行罪が成立するとされています。
この条文を素直に読むと,暴行を加えて結果的に傷害が生じた場合,「傷害するに至らなかった」とは言えないことから暴行罪は適用できないということになります。
ここでもし故意が欠けることを理由に傷害罪も成立しないとすると,次に適用が考えられるものとして過失傷害罪が挙げられます。
ですが,過失傷害罪は法定刑が著しく軽く,故意の暴行により傷害が生じたケースで科すべき刑としては軽すぎる感が否めません。
そのため,暴行の故意があった以上は傷害罪の適用を認めてもよいとする見解が支配的になっているのです。

ケースにおいて、確かに、Aさんの「自分は石を投げて脅かしてやろうと考えただけだ。Aが転倒して怪我をさせてやろうなんて考えなかった。」という主張では、Aさんは投石行為によりVさんに怪我をさせるつもりはなかったのでしょう。
しかし、暴行罪を犯すつもり(故意)で行為に及べば傷害罪を適用する余地はあるので,Aさんには傷害罪が成立する可能性があります。

暴行罪と傷害罪の法定刑の違いについて

暴行罪の法定刑は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です(刑法208条)。
これに対して、傷害罪の法定刑は、上述の通り、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法204条)。
懲役とは、刑事施設において所定の作業を伴う拘置をいいます。
罰金とは、1万円以上の金銭を国庫に納付することを指します。
拘留とは、1日以上30日未満の刑事施設における拘置をいいます。
科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を国庫に納付することを指します。

したがって、暴行罪が成立すると、2年以下の懲役(上限)から1000円以上の科料(下限)までの範囲で刑が定まることになります。
一方、傷害罪が成立すると、15年以下の懲役(上限)から1万円以上の罰金(下限)までの範囲で刑が定まることになります。

このように暴行罪と傷害罪の法律に定められた刑(法定刑)は大きく異なります。
この場合、傷害事件において、適切な刑事弁護活動がなされないまま判決が下された場合に被疑者・被告人が被る損害は、暴行事件に比較して大きくなります。

このため、たとえAさんに暴行罪ではなく傷害罪が成立し得るとしても、起訴された場合の適切かつ妥当な判決獲得のためには、刑事事件に強い弁護士による強い刑事弁護が依然として必要不可欠となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、24時間対応の法律相談受付で行っています。
フリーダイヤルにご連絡いただくか、弊所ホームページ上のお問合せフォームより必要事項をご記入ください。
フリーダイヤルにご連絡いただくと、対応スタッフが傷害事件の事情をお伺いし、ご来所の日時を調整して予約をお取りします。
その後、事務所にて担当弁護士との法律相談が可能となります。

初回無料法律相談のご予約は、0120―631-881までご連絡ください。
傷害のつもり(故意)がなかったのに傷害罪で逮捕された場合は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談下さい。
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住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴

2020-04-24

住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴

住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

Aさん(男性)は、既婚者であるVさん(女性・妻)と不倫関係にあり、二人は、Bさん(男性・夫)の不在時に、夫婦が住む愛知県名古屋市西区内の自宅で会っていた。
Aさんは、Vさんに、夫と離婚するように迫ったが、ある日、Vさんが夫との間の子を妊娠したことが発覚した。
そこで、Aさんは、胎児が離婚の妨げになると考え、Bさんの不在時に、Vさんに無断で夫婦の自宅に忍び込んだ上、Vさんに気付かれないようVさんの飲み物に点鼻薬を注入した。
その後、投薬物を飲んだVさんの分娩時期は早まらなかったが、生まれてきた子に障害があることが発覚したため、夫のBさんが、愛知県警西警察署に告訴した。
愛知県警西警察署の警察官による任意の取り調べを受けたAさんは、自分がどのような罪を犯したことになるのか分からず困惑していた。
(事例はフィクションです。)

住居侵入罪の成立

正当な理由がないのに、人の住居に侵入した者には、住居侵入罪が成立します(刑法130条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3年以上の懲役又は10万円以下の罰金です。

住居侵入罪における「住居」(刑法130条)とは、人が寝食のために日常生活に使用している場所をいい、ケースにおける夫婦の自宅はその典型例です。
また、住居侵入罪における「侵入」(刑法130条)とは、「住居に誰を立ち入らせ、誰の滞留を許すか」という居住者(住居権者)の意思に反して、住居に立ち入ることをいうとされています。
これは、住居侵入罪を規定することによって守られるべき利益(法益)が、個人的利益であると考えられており、居住者(住居権者)の意思を尊重するべきであると考えられるからです。

そして、住居権とは、住居に対する現実の支配・管理をいうとされています。
住居に複数人が住んでいる場合,誰の承諾があれば住居侵入罪に当たらないかという点については見解が分かれています。
裁判例の中には,夫婦の住居において妻のみの承諾があった場合について,住居侵入罪の成立を否定したものがあります(尼崎簡裁昭和43年2月29日判決)。
ケースにおいて、AさんとVさんは、不倫行為の場所として夫婦が住む自宅を利用しています。
そうすると,Vさんには、不倫行為時にはAさんを住居に立ち入らせる意思があったと言え,したがって住居侵入罪は成立しないように思えます。
しかし、犯行当時、Aさんは専ら投薬行為を目的としてVさんに無断で住居に侵入しており、Vさんはこのような目的・態様による立ち入りは承諾していなかったと考えられます。
このような場合、Vさんの住居権を侵害しているとして、Aさんには住居侵入罪が成立すると考えられます。

妊婦への投薬と堕胎罪

刑法212条から216条にかけて、刑法は堕胎罪を規定しています。
この堕胎とは、自然の分娩期に先立って人工的に胎児を母体内から排出させることを含みます。
ケースでは、点鼻薬入りの飲み物を飲んだVさんの分娩時期は早まっていないので、堕胎罪は成立しないと見込まれます。

胎児への投薬と傷害罪

刑法204条は、人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立するとしています。
法律に定められた刑(法定刑)は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

傷害罪における「人」(刑法204条)には、胎児は含まれないと考えられています。
傷害罪における「人」(刑法204条)であるというためには、母体から、胎児の身体が一部でも露出していなければならないと考えられているからです。

今回のケースでは,Aさんの投薬行為によりVさんの子が胎児である間に障害の原因が形成されたと考えられます。
先述した「人の」定義によればAさんの投薬行為が傷害罪にならないように思えますが、裁判例に従う限りそうではありません。
胎児は母体の一部であると考えられ、胎児への傷害行為は母という人に対する傷害行為であり、さらに、その傷害行為の結果が生まれてきた子という人に生じていると考えられるからです。
母という人に向けられた行為により、生まれてきた子という人が傷害を負ったのだから、結局、人を病変させて人に傷害の結果をもたらす傷害罪が成立することになるのです。

ケースでは、Aさんは、妊婦であるVさんの飲み物に点鼻薬を注入しそれを飲ませることで、生まれてきた子に障害を発生させています。
障害を負わせることは,人の生理的機能を害するものとして「傷害」に当たりうることから, Aさんには傷害罪が成立すると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件のみ専門とする弁護士を擁し、住居侵入罪や傷害罪を含む刑事事件の弁護活動を多数行ってきました。
Aさんのように、刑事事件に関して不安をお持ちの方にも、分かり易くご説明させて頂きます。
住居侵入罪と妊婦への傷害罪で告訴された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご連絡ください。

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自殺関与罪と情状弁護活動

2020-04-22

自殺を促して自殺関与罪で告訴

自殺を促して自殺関与罪で告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

ケース

大学生のAさん(24歳)は、大学で留年を繰り返し、また、友人との関係も上手くいかず、このままでは死ぬしかないと思うに至った。
そこで、かねてから交際関係にあるVさん(19歳)に、「一緒に死のう。僕も君の後に死ぬよ。」と心中自殺を促し、愛知県名古屋市中村区の自宅マンションの一室に首吊り自殺の道具を準備した。
Vさんも、交際関係にあるAさんがそう言うならと思い、Aさんの手伝いの下、縄に首を通し、踏み台を外した。
しかし、実際に首を吊り始めた後、Vさんはやはり死ぬのは嫌だと思い直し、暴れて抵抗した。
その結果、首吊りの道具が壊れ、Vさんの自殺は未遂に終わった。
その後、この件の話を聞いたVさんの両親は、これを問題視し、Vさんの両親として中村警察署の警察官に告訴した。
Vさんの両親による告訴を聞いたAさんは、刑事事件に強い法律事務所への相談を検討している。
(事例はフィクションです。)

自殺関与・同意殺人罪の成立

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者には、自殺関与罪・同意殺人罪が成立します(刑法202条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮です。
また、未遂も処罰されます(203条)。

本来、教唆とは、他人に犯罪を唆す(そそのかす)ことをいいます。
人を唆して(教唆して)犯罪を実行させた者は、その犯罪(正犯)の刑に処されます(刑法61条)。
また、幇助とは、他人の犯罪の実行を援助し、容易にさせることをいいます。
他人の犯罪(正犯)を幇助した者は、その犯罪(正犯)の刑を減軽された従犯とされます(刑法62条1項、63条)。
これらの規定が適用される教唆犯・幇助犯というのは,他人が特定の犯罪を実行することを前提として,それに間接的に関わったことが処罰の根拠となります。

しかし、自殺というのは刑法に犯罪として記載されていません。
そうすると,本来教唆犯や幇助犯は他人による犯罪の存在を前提とすることから,自殺を教唆したり幇助したりしても処罰されないように思えます。
それにもかかわらず、自殺の教唆や幇助という自殺関与罪が犯罪として刑法に規定されています。
刑法がこうした規定を置いている理由は、人の生命の処分は本人だけに許されているという考えに基づき、法律が他人の関与を禁じているからです。
したがって、自殺関与罪は、刑法61条や63条の規定とは独立して、独自の犯罪として規定されたものだと考えられています。

ケースにおいて、Aさんは、Vさんに心中を勧めています。
また、自宅マンションの一室内に首吊り自殺のための道具を用意し、Vさんの首吊り自殺を手伝っています。
ここにVさんへの自殺教唆・幇助行為があるといえます。
そして、Vさんの自殺行為は未遂に終わっていますので、Vさんには自殺関与罪(刑法202条)の未遂(刑法203条)が成立すると考えられます。

弁護士による情状弁護活動

自殺関与罪の法律に定められた刑(法定刑)は、上述の通り、6月以上7年以下の懲役又は禁錮と重くなっています。
このように重い刑が予想されるケースについては,弁護士による情状弁護活動が重要となります。
情状弁護とは,裁判において被告人に有利な事情を主張し,有罪となった場合に科される刑を妥当なものにするための活動です。
今回のケースでは、情状弁護を行ううえで主張することが考えられる事情として,結果的にVさんが自殺には至らなかったこと,Aさんの犯行の動機が悪質とまでは言えないこと,Aさんがまだ若く更生の余地があること,などが考えられます。

起訴された場合において適切な量刑を得るためには、情状弁護で主張し得る無限の事実の中から、弁護士により検察官や裁判官が情状事由として目を向けていない事実を主張することが必要です。
具体的にいかなる事情の主張が有効か,そのためにどのような準備をすべきか,といった事柄は,個々の事案によってかなり異なってきます。
ですので,情状弁護活動に関するご相談は,ぜひ法律のプロフェッショナルである弁護士にされることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部では、法律相談を無料で行っています。
フリーダイヤルにご連絡いただくと、相談対応スタッフが事件の事情をお伺いし、ご来所の日時を調整して予約をお取りします。
その後、事務所にて担当弁護士との法律相談が可能となります。

初回無料法律相談のご予約は、0120―631-881までご連絡ください。
自殺を促して自殺関与罪で告訴された場合は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談下さい。

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕

2020-04-20

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

Aさんは、かねてからの顔見知りであるVさん(女性・20歳)を強姦しようと企て、愛知県名古屋市瑞穂区のVさんの自宅まで送ってやると言って、Vさんを自分の車に乗せた。
途中で方向の違うことに気付いたVさんが「降ろして」と頼んだが、Aさんはかまわず車を疾走させた。
人気のない愛知県名古屋市瑞穂区内の山中に着くと、Aさんは、強姦の目的でVさんを無理矢理車外に引っ張り出し、押し倒した。
そのとき、AさんはVさんが怪我をしてもかまわないと考えていた。
しかし、Vさんが抵抗した結果、Aさんは姦淫行為に至る前で、諦めて逃走した。
その後、Vさんの告訴により、事件が発覚した。
愛知県警瑞穂警察署の警察官の捜査の結果、Aさんは逮捕されるに至った。
逮捕の報告を受けたAさんの両親は、Aさんの刑事弁護を依頼する弁護士を探している。
(事例はフィクションです。)

わいせつ目的誘拐罪の成立

わいせつの目的で、人を略取し、又は誘拐した者には、わいせつ目的誘拐罪が成立します(刑法225条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、1年以上10年以下の懲役です。

「略取」と「誘拐」はいずれも人の移動の自由を侵害する行為ですが、「略取」は暴行または脅迫を手段とする場合を、誘拐とは、欺罔または誘惑を手段とする場合を指します。
また、「わいせつの目的」とは、姦淫その他の被害者の性的自由を侵害する目的をいいます。

ケースでは、Aさんは、かねてからの顔見知りであるVさん(女性・20歳)を強姦しようと企て、自宅まで送ってやると嘘をつき、Vさんを自分の車に乗せています。
したがって、Aさんには、わいせつ目的誘拐罪が成立する可能性が高いでしょう。

監禁罪の成立

不法に人を逮捕し、又は監禁した者には、逮捕・監禁罪が成立します(刑法220条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上7年以下の懲役です。

「逮捕」とは、羽交い絞めにする・縄で縛りつける等の直接的な強制行為によって移動の自由を奪うことをいいます。
「監禁」とは、一定の場所から脱出できないようにして移動の自由を奪うことをいいます。

ケースのAさんは、自宅まで送ってやると言ってVさんを自分の車に乗せ、途中で方向の違うことに気付いたVさんが「降ろして」と頼んだにもかかわらず、かまわず車を疾走させています。

ここで、監禁罪が想定している保護すべき利益(保護法益)は、身体の場所的移動の自由だと考えられています。
したがって、監禁罪に当たる行為は、Vさんの自由が奪われた時点、すなわちVさんが車に乗り込んだ時点から行われたといえます。
ただ、Vさんは車に乗り込んだ時点でAさんの真の目的に気づいていないことから、Vさんから見て移動の自由が奪われていたとは言えず,したがってこの時点では監禁罪は成立しないようにも思えます。
ですが、監禁罪の保護法益は、具体的に言うと行動したいときに行動できる自由(潜在的・可能的自由)と解されています。
今回のケースでは、仮にVさんがすぐに車から降りようとしても、強姦を遂げるべくAさんがそれを拒んだと予想されます。
そうすると、Vさん自身が当初監禁の事実に気付いていなくとも、Vさんの移動の自由が侵害されていたとして監禁罪が成立する可能性があるのです。

さらに、Vさんは当初車に乗り込むことを承諾していたことから、監禁の事実につきVさんの同意があったとして監禁罪の成立は否定されるように思えます。
しかし、Aさんの犯罪の意思をVさんが知っていたならば、Vさんは車に乗り組むことを承諾しなかったと考えられます。
このように被害者が錯誤に陥っているケースについては、承諾が無効であるして犯罪の成立を妨げないと考えられています。

以上より、Aさんには監禁罪が成立すると考えられます。

強制性交等致傷罪と傷害罪の成立

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交をした者には、強制性交等罪が成立します(刑法177条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、5年以上の有期懲役です。
未遂も処罰されます(刑法179条)

また、刑法第177条(強制性交等罪)又はこれらの未遂を犯し、よって人を死傷させた者には、強制性交等致死傷罪が成立します(刑法181条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、無期又は6年以上の懲役です。

「暴行又は脅迫」は、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要となります。
また、「姦淫」とは性交をいい、男性器を女性器に一部でも挿入した時点で犯罪が達成されたことになります。

ケースでは、Aさんは、Vさんが怪我をしてもかまわないと考え、強姦の目的でVさんを無理矢理車外に引っ張り出し、押し倒しています。
この時点で、強制性交に至る客観的可能性が明らかに認められます。
そのため、この時点で、強制性交行為の犯罪開始(実行)行為たる暴行の着手があると考えられます。

また、Vさんが抵抗した結果、Aさんは姦淫行為に至る前で、諦めて逃走しています。
したがって、強制性交行為において成立し得る犯罪は未遂であると考えられます。

この点、刑法181条(強制性交等致死傷罪)は、「刑法第177条(強制性交等罪)又はこれらの未遂を犯し、よって人を死傷させた」と規定していることから、強制性交等罪(刑法177条)を犯した結果、偶然にも致死傷の結果が生じたという場合のみを規定しています。
つまり、最初から傷害や殺人の故意があった場合に、刑法181条により強制性交等致死傷罪を成立させるだけでは、傷害や殺人の故意があった点の評価をする(責任を負わせる)ことができません。

このように、もとより傷害や殺人を犯すつもりであったときは、傷害の故意がある場合には強制性交等致傷罪と傷害罪を成立し、殺人の故意がある場合には強制性交等致死罪と殺人罪が成立することになるとするのが最高裁判例(最判昭和31年10月25日)です。

したがって、ケースでは、Aさんには強制性交等致傷罪(未遂)と傷害罪が成立することが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件を専門とする弁護士が刑事弁護活動に取り組んでいます。
今回のケースのように、1人の被疑者に複数の犯罪が成立すると考えられる場合であっても、刑事事件に強い弁護士が全て弁護をすることができます。

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕された場合には、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談下さい。
初回接見のご案内はこちら)

職務質問に伴う所持品検査

2020-04-18

職務質問に伴う所持品検査について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【事件】

愛知県名古屋市千種区で強盗事件が連続して発生していたため,千草警察署は警らする警察官を増員し犯人逮捕に努めていました。
ある日,Aさんは千草区内の路上で職務質問を受けました。
Aさんは警察官からバッグの中を見せるよう要求されましたが拒否しました。
すると警察官はAさんのバッグを渡すよう要求し,それも拒否すると半ば無理矢理バッグを奪い取り所持品検査を始めました。
バッグの中から強盗被害にあった物品とよく似た物が出てきたため,Aさんは千草警察署に同行するよう指示されました。
(フィクションです)

【所持品検査】

職務質問とは,警察官職務執行法(以下「警職法」といいます)第2条の定める要件の下で認められる,警察官が挙動不審者等に対して行う停止・質問行為のことをいいます。

警職法第2条第1項
警察官は,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪につ
いて,若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。

職務質問における質問行為はあくまで任意で,質問対象者が重大な権利の侵害や不利益を被る強制にわたらないように行われなければならないのが原則です。

他方で,任意に行われなければならないとされつつも,腕を掴んで引き留めるなど一定程度の有形力の行使も認められています(最決昭和29・7・15刑集8巻7号113 7頁など)。

職務質問は犯罪の発生を必要的要件としておらず,警職法の目的からしても本来的には広く犯罪の予防や公安の維持のために行われる行政警察活動とされています。
ただ,現実としては職務質問から犯罪の捜査が行われていることもしばしばあり,特定の犯罪を検挙するための捜査活動(司法警察活動)としての側面を持つこともあります 。

捜査活動として行われる職務質問では,証拠を発見するために必要な活動も付随して行われることがあります。
Aさんが受けたような所持品検査がまさにそれに当たります。

職務質問は原則として任意で行われなければならず,行き過ぎた職務質問に由来する証拠は違法収集証拠として排除される場合もあります(東京高判平成8・9・18判タ1 273号338頁)。

ここで,職務質問については先述のとおり警職法に定めがある一方,所持品検査についてはそれを明確に規定する条文がありません。
そこで,所持品検査にはどのような形態があり,どのようなものが適法あるいは違法となるのかが問題となります。

所持品検査のとしては,法益侵害の程度が軽いものから

①所持品を外部から観察し所持品について質問する行為
②相手方に内容物について開示を要求する行為
③衣服・携帯品の外部から手を触れて検査する行為
④警察官みずから衣服の内側やポケットの内部,その他かばんなどの携帯品を開披し所持品を取り出し検査する行為

の4つが考えられます。

所持品検査についてのリーディングケースである最判昭和53・6・20刑集32巻4号670頁によると,一般論として「所持人の承諾のない限り所持品検査が一切許され ないと解するのは相当でなく,捜索に至らない程度の行為は,強制にわたらない限り,所持品検査においても許容される場合がある」とされています。

しかし,所持品について捜索・押収を受けない権利は憲法第35条によって保障されていることから,このような行為が許されるのは「所持品検査の必要性,緊急性,これに よって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ,許容される」としました。

昭和53年判決が出ることになった事件は,深夜銀行強盗事件の検問の現場を通りかかった被告人らが職務質問に黙秘し,所持品であるボウリングバッグの開披を要求し,結果として警察官が承諾なしにボウリングバッグのファスナーを開披したというものです。

この事件では,上記の判決によって承諾を得ず行われたファスナーの開披行為を「職務質問に付随する行為として許容される」とされましたが,別の事件で承諾なしに上着の内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出した上で検査した行為は「所持品検査の許容限度を逸脱したもの」とする判決(最判昭和53・9・7刑集32巻6号1672頁)が出ています。

Aさんのケースでは,質問を受けた場所と同じ千種区内で強盗事件が連続して発生していたことが所持品検査を正当化する事実としてあげられますが,Aさんが警察官からの質問にどう対応していたのか,事件現場との距離がどの程度だったかなど、他の事情によってはAさんが受けた所持品検査が違法であると主張できる可能性もあります。

Aさんのみならず,刑事事件の依頼を受けた弁護士は犯罪となるべき事実だけを争うのではなく,場合によっては捜査機関の捜査が適法に行われたのか,提出された証拠が違法収集証拠に当たるのではないかということも争うことがあります。
このように刑事事件は民事事件などとは異なった専門的な知識や手腕が問われますので,もし刑事事件の被疑者となってしまった場合にはお早めに刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することが重要です。

違法と思われる職務質問で犯罪の被疑者となってしまった方,千種警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にお早めにご相談ください。

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2度目の執行猶予はありうる?②

2020-04-14

2度目の執行猶予はありうる?②

執行猶予判決を2回受けることができるかどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】
Aさんは2018年3月に、コンビニでの常習的な万引きに関して、窃盗罪懲役2年執行猶予5年の有罪判決を受けていました。
しかし2020年4月、またもやコンビニで万引きをしてしまい、これを見つけた店員により通報、その後Aさんは逮捕・起訴されてしまいました。
Aさんは、実刑判決を避け、なんとしても執行猶予を付けて欲しいと考えています。
このような2回目の執行猶予は法律上可能なのでしょうか。
また可能とすると、どのような場合において可能なのでしょうか。
なお、現在期間中の執行猶予には保護観察はついていないものとします。
(このケースはフィクションです。)

~2度目の執行猶予~

前回は上記の事例について、刑法25条1項に基づいて執行猶予を得ることができるかについて解説いたしました。
2度目の執行猶予はありうる?①

今回は、25条2項に基づいて再度の執行猶予を得ることができるかについて解説いたします。
この条文は、まさに今回のAさんのような事例について定めてあります。

刑法25条2項
前に禁錮以上の刑に処されたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内にさらに罪を犯した者については、この限りではない。

読みづらい条文ですが、つまり、

①保護観察の付かない執行猶予期間中の者に対し、
②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合で、
③情状に特に酌量すべきものがあるときは、

再度の執行猶予判決ができるということになります。

執行猶予中に罪を犯した者はさらなる執行猶予は受けられないことを原則としたうえで、犯した罪が軽く、また情状的にも強い猶予の理由がある場合にのみ限定的に、さらなる執行猶予を与える、という趣旨です。

なお①について、執行猶予の期間を、保護観察所の助言・指導などの監督を受けながら生活するという保護観察が付いている場合には、その期間中の犯罪について再度の執行猶予を付けることはできないことになります。
保護観察は、執行猶予を付けるケースの中では比較的悪質な犯罪のケースです。
このような保護観察のもとでもなお犯罪を犯した者には、もはやさらなる執行猶予は与えない、ということです。

~今回は執行猶予を付けられるか~

では今回のAさんは、執行猶予を受けられるのでしょうか。

Aさんには保護観察は付いていませんから、①保護観察の付かない執行猶予期間中の者という条件は満たします。

しかし、②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合という条件はどうでしょうか。
通常、再犯者には前回よりも重い判決が出されます。
Aさんは前回、懲役2年の判決を受けています。
そうすると特殊な事情がない限り、今回は2年以上の懲役判決が下される可能性が高いことになります。

また、②と重なる部分がありますが、③情状に特に酌量すべきものがあるときという条件についても、よほど特殊な事情がないと認めてもらえない可能性が高いでしょう。

以上により、Aさんが再度の執行猶予を得ることは、理論上は可能ですが、実際は厳しいところがあります。

~弁護士にご相談ください~

この状況で執行猶予を得るためには、適切かつ有効な弁護活動によって、まずは刑を1年以下に抑え、加えて特に酌量すべき情状があることを裁判官に認めてもらう必要があります。
ただ、このような弁護活動は、結果的に執行猶予とならなかったとしても、懲役の期間を短くすることにはつながる可能性があります。

ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

私たちの事務所では、刑事弁護を専門とする弁護士を取り揃えております。
執行猶予を得たいという場合かどうかにかかわらず、刑事事件に関して何かお困りのことがあれば、無料法律相談初回接見サービスをぜひご利用ください。

2度目の執行猶予はありうる?①

2020-04-13

2度目の執行猶予はありうる?①

執行猶予判決を2回受けることができるかどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】
Aさんは2018年3月に、コンビニでの常習的な万引きに関して、窃盗罪懲役2年執行猶予5年の有罪判決を受けていました。
しかし2020年4月、またもやコンビニで万引きをしてしまい、これを見つけた店員により通報、その後Aさんは逮捕・起訴されてしまいました。
Aさんは、実刑判決を避け、なんとしても執行猶予を付けて欲しいと考えています。
このような2回目の執行猶予は法律上可能なのでしょうか。
また可能とすると、どのような場合において可能なのでしょうか。
なお、現在期間中の執行猶予には保護観察はついていないものとします。
(このケースはフィクションです。)

~執行猶予とは~

執行猶予とは、有罪判決がなされる場合に、情状を考慮して、刑の執行を猶予するという制度です。
根拠となる条文には刑法25条1項と同条2項があり、今回は1項について解説します。
2項についてはこちら→2度目の執行猶予はありうる?②
(なお、刑の一部の執行猶予という制度もありますが、ここでは刑の全部の執行猶予に焦点を当てて解説していきます。)

まずは条文を見てみましょう。

刑法25条1項
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することが出来る。
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり、25条1項により執行猶予を得るための要件は次の3つです。

①25条1項1号または2号にあてはまること
②今回、言い渡される判決が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金刑であること
③情状により猶予が相当であること

①についてさらに詳しく解説すると、25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」とは、禁錮以上の判決を言い渡されたことがないことを言います。

※ 「禁錮」という刑罰は、刑務所内で刑務作業をするかしないかは自由とされている他は懲役と同じです。「禁錮以上の刑」は、死刑・懲役・禁錮を指し、罰金などは含まれません。

純粋に前科がない者や、罰金しか受けたことのない者の他、前の裁判で懲役や禁錮の執行猶予判決を受けてその猶予期間を再犯せずに無事すごした場合も、判決言渡しの効果が消滅するので(刑法27条参照)、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に含まれます。

本ケースでのAさんは、2年前の裁判で懲役刑を言い渡されており、執行猶予期間の5年もすぎていないので、該当しません。

また、25条1項2号は、実際に懲役刑禁錮刑を受け、(ア)刑期満了による出所した時、(イ)仮釈放され残りの期間を無事過ごした時のいずれかの時点から5年間、再び禁錮以上の刑の言渡しを受けなかった場合などを指します。
しかし、今回のAさんはそもそも実際に懲役刑や禁錮刑を受けていないので、該当しません。

したがって、Aさんは25条1項を根拠として執行猶予を受けることはできないわけです。

長くなったので、25条2項による再度の執行猶予については次の記事で解説いたします。
→2度目の執行猶予はありうる?②

~お困りの方はご相談ください~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

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