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自殺関与罪と情状弁護活動

2020-04-22

自殺を促して自殺関与罪で告訴

自殺を促して自殺関与罪で告訴された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

ケース

大学生のAさん(24歳)は、大学で留年を繰り返し、また、友人との関係も上手くいかず、このままでは死ぬしかないと思うに至った。
そこで、かねてから交際関係にあるVさん(19歳)に、「一緒に死のう。僕も君の後に死ぬよ。」と心中自殺を促し、愛知県名古屋市中村区の自宅マンションの一室に首吊り自殺の道具を準備した。
Vさんも、交際関係にあるAさんがそう言うならと思い、Aさんの手伝いの下、縄に首を通し、踏み台を外した。
しかし、実際に首を吊り始めた後、Vさんはやはり死ぬのは嫌だと思い直し、暴れて抵抗した。
その結果、首吊りの道具が壊れ、Vさんの自殺は未遂に終わった。
その後、この件の話を聞いたVさんの両親は、これを問題視し、Vさんの両親として中村警察署の警察官に告訴した。
Vさんの両親による告訴を聞いたAさんは、刑事事件に強い法律事務所への相談を検討している。
(事例はフィクションです。)

自殺関与・同意殺人罪の成立

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者には、自殺関与罪・同意殺人罪が成立します(刑法202条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮です。
また、未遂も処罰されます(203条)。

本来、教唆とは、他人に犯罪を唆す(そそのかす)ことをいいます。
人を唆して(教唆して)犯罪を実行させた者は、その犯罪(正犯)の刑に処されます(刑法61条)。
また、幇助とは、他人の犯罪の実行を援助し、容易にさせることをいいます。
他人の犯罪(正犯)を幇助した者は、その犯罪(正犯)の刑を減軽された従犯とされます(刑法62条1項、63条)。
これらの規定が適用される教唆犯・幇助犯というのは,他人が特定の犯罪を実行することを前提として,それに間接的に関わったことが処罰の根拠となります。

しかし、自殺というのは刑法に犯罪として記載されていません。
そうすると,本来教唆犯や幇助犯は他人による犯罪の存在を前提とすることから,自殺を教唆したり幇助したりしても処罰されないように思えます。
それにもかかわらず、自殺の教唆や幇助という自殺関与罪が犯罪として刑法に規定されています。
刑法がこうした規定を置いている理由は、人の生命の処分は本人だけに許されているという考えに基づき、法律が他人の関与を禁じているからです。
したがって、自殺関与罪は、刑法61条や63条の規定とは独立して、独自の犯罪として規定されたものだと考えられています。

ケースにおいて、Aさんは、Vさんに心中を勧めています。
また、自宅マンションの一室内に首吊り自殺のための道具を用意し、Vさんの首吊り自殺を手伝っています。
ここにVさんへの自殺教唆・幇助行為があるといえます。
そして、Vさんの自殺行為は未遂に終わっていますので、Vさんには自殺関与罪(刑法202条)の未遂(刑法203条)が成立すると考えられます。

弁護士による情状弁護活動

自殺関与罪の法律に定められた刑(法定刑)は、上述の通り、6月以上7年以下の懲役又は禁錮と重くなっています。
このように重い刑が予想されるケースについては,弁護士による情状弁護活動が重要となります。
情状弁護とは,裁判において被告人に有利な事情を主張し,有罪となった場合に科される刑を妥当なものにするための活動です。
今回のケースでは、情状弁護を行ううえで主張することが考えられる事情として,結果的にVさんが自殺には至らなかったこと,Aさんの犯行の動機が悪質とまでは言えないこと,Aさんがまだ若く更生の余地があること,などが考えられます。

起訴された場合において適切な量刑を得るためには、情状弁護で主張し得る無限の事実の中から、弁護士により検察官や裁判官が情状事由として目を向けていない事実を主張することが必要です。
具体的にいかなる事情の主張が有効か,そのためにどのような準備をすべきか,といった事柄は,個々の事案によってかなり異なってきます。
ですので,情状弁護活動に関するご相談は,ぜひ法律のプロフェッショナルである弁護士にされることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部では、法律相談を無料で行っています。
フリーダイヤルにご連絡いただくと、相談対応スタッフが事件の事情をお伺いし、ご来所の日時を調整して予約をお取りします。
その後、事務所にて担当弁護士との法律相談が可能となります。

初回無料法律相談のご予約は、0120―631-881までご連絡ください。
自殺を促して自殺関与罪で告訴された場合は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談下さい。

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕

2020-04-20

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

Aさんは、かねてからの顔見知りであるVさん(女性・20歳)を強姦しようと企て、愛知県名古屋市瑞穂区のVさんの自宅まで送ってやると言って、Vさんを自分の車に乗せた。
途中で方向の違うことに気付いたVさんが「降ろして」と頼んだが、Aさんはかまわず車を疾走させた。
人気のない愛知県名古屋市瑞穂区内の山中に着くと、Aさんは、強姦の目的でVさんを無理矢理車外に引っ張り出し、押し倒した。
そのとき、AさんはVさんが怪我をしてもかまわないと考えていた。
しかし、Vさんが抵抗した結果、Aさんは姦淫行為に至る前で、諦めて逃走した。
その後、Vさんの告訴により、事件が発覚した。
愛知県警瑞穂警察署の警察官の捜査の結果、Aさんは逮捕されるに至った。
逮捕の報告を受けたAさんの両親は、Aさんの刑事弁護を依頼する弁護士を探している。
(事例はフィクションです。)

わいせつ目的誘拐罪の成立

わいせつの目的で、人を略取し、又は誘拐した者には、わいせつ目的誘拐罪が成立します(刑法225条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、1年以上10年以下の懲役です。

「略取」と「誘拐」はいずれも人の移動の自由を侵害する行為ですが、「略取」は暴行または脅迫を手段とする場合を、誘拐とは、欺罔または誘惑を手段とする場合を指します。
また、「わいせつの目的」とは、姦淫その他の被害者の性的自由を侵害する目的をいいます。

ケースでは、Aさんは、かねてからの顔見知りであるVさん(女性・20歳)を強姦しようと企て、自宅まで送ってやると嘘をつき、Vさんを自分の車に乗せています。
したがって、Aさんには、わいせつ目的誘拐罪が成立する可能性が高いでしょう。

監禁罪の成立

不法に人を逮捕し、又は監禁した者には、逮捕・監禁罪が成立します(刑法220条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上7年以下の懲役です。

「逮捕」とは、羽交い絞めにする・縄で縛りつける等の直接的な強制行為によって移動の自由を奪うことをいいます。
「監禁」とは、一定の場所から脱出できないようにして移動の自由を奪うことをいいます。

ケースのAさんは、自宅まで送ってやると言ってVさんを自分の車に乗せ、途中で方向の違うことに気付いたVさんが「降ろして」と頼んだにもかかわらず、かまわず車を疾走させています。

ここで、監禁罪が想定している保護すべき利益(保護法益)は、身体の場所的移動の自由だと考えられています。
したがって、監禁罪に当たる行為は、Vさんの自由が奪われた時点、すなわちVさんが車に乗り込んだ時点から行われたといえます。
ただ、Vさんは車に乗り込んだ時点でAさんの真の目的に気づいていないことから、Vさんから見て移動の自由が奪われていたとは言えず,したがってこの時点では監禁罪は成立しないようにも思えます。
ですが、監禁罪の保護法益は、具体的に言うと行動したいときに行動できる自由(潜在的・可能的自由)と解されています。
今回のケースでは、仮にVさんがすぐに車から降りようとしても、強姦を遂げるべくAさんがそれを拒んだと予想されます。
そうすると、Vさん自身が当初監禁の事実に気付いていなくとも、Vさんの移動の自由が侵害されていたとして監禁罪が成立する可能性があるのです。

さらに、Vさんは当初車に乗り込むことを承諾していたことから、監禁の事実につきVさんの同意があったとして監禁罪の成立は否定されるように思えます。
しかし、Aさんの犯罪の意思をVさんが知っていたならば、Vさんは車に乗り組むことを承諾しなかったと考えられます。
このように被害者が錯誤に陥っているケースについては、承諾が無効であるして犯罪の成立を妨げないと考えられています。

以上より、Aさんには監禁罪が成立すると考えられます。

強制性交等致傷罪と傷害罪の成立

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交をした者には、強制性交等罪が成立します(刑法177条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、5年以上の有期懲役です。
未遂も処罰されます(刑法179条)

また、刑法第177条(強制性交等罪)又はこれらの未遂を犯し、よって人を死傷させた者には、強制性交等致死傷罪が成立します(刑法181条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、無期又は6年以上の懲役です。

「暴行又は脅迫」は、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要となります。
また、「姦淫」とは性交をいい、男性器を女性器に一部でも挿入した時点で犯罪が達成されたことになります。

ケースでは、Aさんは、Vさんが怪我をしてもかまわないと考え、強姦の目的でVさんを無理矢理車外に引っ張り出し、押し倒しています。
この時点で、強制性交に至る客観的可能性が明らかに認められます。
そのため、この時点で、強制性交行為の犯罪開始(実行)行為たる暴行の着手があると考えられます。

また、Vさんが抵抗した結果、Aさんは姦淫行為に至る前で、諦めて逃走しています。
したがって、強制性交行為において成立し得る犯罪は未遂であると考えられます。

この点、刑法181条(強制性交等致死傷罪)は、「刑法第177条(強制性交等罪)又はこれらの未遂を犯し、よって人を死傷させた」と規定していることから、強制性交等罪(刑法177条)を犯した結果、偶然にも致死傷の結果が生じたという場合のみを規定しています。
つまり、最初から傷害や殺人の故意があった場合に、刑法181条により強制性交等致死傷罪を成立させるだけでは、傷害や殺人の故意があった点の評価をする(責任を負わせる)ことができません。

このように、もとより傷害や殺人を犯すつもりであったときは、傷害の故意がある場合には強制性交等致傷罪と傷害罪を成立し、殺人の故意がある場合には強制性交等致死罪と殺人罪が成立することになるとするのが最高裁判例(最判昭和31年10月25日)です。

したがって、ケースでは、Aさんには強制性交等致傷罪(未遂)と傷害罪が成立することが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件を専門とする弁護士が刑事弁護活動に取り組んでいます。
今回のケースのように、1人の被疑者に複数の犯罪が成立すると考えられる場合であっても、刑事事件に強い弁護士が全て弁護をすることができます。

誘拐・監禁をした強制性交等致傷罪で逮捕された場合には、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談下さい。
初回接見のご案内はこちら)

職務質問に伴う所持品検査

2020-04-18

職務質問に伴う所持品検査について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【事件】

愛知県名古屋市千種区で強盗事件が連続して発生していたため,千草警察署は警らする警察官を増員し犯人逮捕に努めていました。
ある日,Aさんは千草区内の路上で職務質問を受けました。
Aさんは警察官からバッグの中を見せるよう要求されましたが拒否しました。
すると警察官はAさんのバッグを渡すよう要求し,それも拒否すると半ば無理矢理バッグを奪い取り所持品検査を始めました。
バッグの中から強盗被害にあった物品とよく似た物が出てきたため,Aさんは千草警察署に同行するよう指示されました。
(フィクションです)

【所持品検査】

職務質問とは,警察官職務執行法(以下「警職法」といいます)第2条の定める要件の下で認められる,警察官が挙動不審者等に対して行う停止・質問行為のことをいいます。

警職法第2条第1項
警察官は,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪につ
いて,若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。

職務質問における質問行為はあくまで任意で,質問対象者が重大な権利の侵害や不利益を被る強制にわたらないように行われなければならないのが原則です。

他方で,任意に行われなければならないとされつつも,腕を掴んで引き留めるなど一定程度の有形力の行使も認められています(最決昭和29・7・15刑集8巻7号113 7頁など)。

職務質問は犯罪の発生を必要的要件としておらず,警職法の目的からしても本来的には広く犯罪の予防や公安の維持のために行われる行政警察活動とされています。
ただ,現実としては職務質問から犯罪の捜査が行われていることもしばしばあり,特定の犯罪を検挙するための捜査活動(司法警察活動)としての側面を持つこともあります 。

捜査活動として行われる職務質問では,証拠を発見するために必要な活動も付随して行われることがあります。
Aさんが受けたような所持品検査がまさにそれに当たります。

職務質問は原則として任意で行われなければならず,行き過ぎた職務質問に由来する証拠は違法収集証拠として排除される場合もあります(東京高判平成8・9・18判タ1 273号338頁)。

ここで,職務質問については先述のとおり警職法に定めがある一方,所持品検査についてはそれを明確に規定する条文がありません。
そこで,所持品検査にはどのような形態があり,どのようなものが適法あるいは違法となるのかが問題となります。

所持品検査のとしては,法益侵害の程度が軽いものから

①所持品を外部から観察し所持品について質問する行為
②相手方に内容物について開示を要求する行為
③衣服・携帯品の外部から手を触れて検査する行為
④警察官みずから衣服の内側やポケットの内部,その他かばんなどの携帯品を開披し所持品を取り出し検査する行為

の4つが考えられます。

所持品検査についてのリーディングケースである最判昭和53・6・20刑集32巻4号670頁によると,一般論として「所持人の承諾のない限り所持品検査が一切許され ないと解するのは相当でなく,捜索に至らない程度の行為は,強制にわたらない限り,所持品検査においても許容される場合がある」とされています。

しかし,所持品について捜索・押収を受けない権利は憲法第35条によって保障されていることから,このような行為が許されるのは「所持品検査の必要性,緊急性,これに よって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ,許容される」としました。

昭和53年判決が出ることになった事件は,深夜銀行強盗事件の検問の現場を通りかかった被告人らが職務質問に黙秘し,所持品であるボウリングバッグの開披を要求し,結果として警察官が承諾なしにボウリングバッグのファスナーを開披したというものです。

この事件では,上記の判決によって承諾を得ず行われたファスナーの開披行為を「職務質問に付随する行為として許容される」とされましたが,別の事件で承諾なしに上着の内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出した上で検査した行為は「所持品検査の許容限度を逸脱したもの」とする判決(最判昭和53・9・7刑集32巻6号1672頁)が出ています。

Aさんのケースでは,質問を受けた場所と同じ千種区内で強盗事件が連続して発生していたことが所持品検査を正当化する事実としてあげられますが,Aさんが警察官からの質問にどう対応していたのか,事件現場との距離がどの程度だったかなど、他の事情によってはAさんが受けた所持品検査が違法であると主張できる可能性もあります。

Aさんのみならず,刑事事件の依頼を受けた弁護士は犯罪となるべき事実だけを争うのではなく,場合によっては捜査機関の捜査が適法に行われたのか,提出された証拠が違法収集証拠に当たるのではないかということも争うことがあります。
このように刑事事件は民事事件などとは異なった専門的な知識や手腕が問われますので,もし刑事事件の被疑者となってしまった場合にはお早めに刑事事件に強い弁護士に事件を依頼することが重要です。

違法と思われる職務質問で犯罪の被疑者となってしまった方,千種警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にお早めにご相談ください。

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盗撮と前科③

2020-03-18

盗撮前科について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】

愛知県愛西市に住むAさんは,買い物をしようと近所のショッピングモールへ行きました。
そうしたところ,店内でスカートを履いた女性Vさんがエスカレーターに向かって歩くのが目に入りました。
そこで,Aさんはエスカレーターに乗ってVさんの背後に立ち,自身のスマートフォンをVさんのスカートに差し入れて下着を盗撮しました。
ところが,撮影の際にAさんのスマートフォンがVさんの太ももに当たり,Vさんから「ちょっと,何してるんですか」と声を掛けられました。
その場から逃走を図ったAさんでしたが,近くにいた買い物客に腕を掴まれ,結局津島警察署にて取調べを受けることになりました。
Aさんから相談を受けた弁護士は,Aさんに盗撮前科があることを聞きました。
(フィクションです)

【前科の定義と影響②】

前回の記事に引き続き,今回の記事でも前科を取り扱います。
今回は,刑事事件における前科の影響について説明します。

前回の記事で,「前科は普通に生活している限り簡単に知られるものではない」といった趣旨のことを述べました。
ですが,捜査機関や裁判所においては,照会によって前科の有無や内容を知ることができます。
また,起訴後に弁護人が閲覧できる記録にも,犯罪経歴照会結果報告書などが綴られています。
そのため,刑事事件の関係者であれば,本人の申告などなくとも前科の内容を把握できるようになっています。

刑事事件における前科の影響として,前科の存在を理由に刑罰が重くなることが考えられます。
まず,刑法57条において,「再犯」(詳しい定義は56条参照)に対しては「その罪について定めた懲役の長期の二倍以下」の刑に処するとしています。
たとえば,本来の法定刑が1年以下の懲役である罪を犯した場合,再犯の際に言い渡される刑は2年以下の懲役になるということです。
また,この規定を抜きしても,過ちを複数回繰り返したとなると当然ながら印象はよくありません。
この点を捉えて,裁判官により言い渡される刑が重くなるだけでなく,検察官が決める処分(起訴か不起訴か,正式起訴か略式起訴か)も重くなることがありえます。

次に,前科の存在によって,法律上執行猶予を付ける余地がなくなる可能性が出てきます。
たとえば,刑法25条1項によると,執行猶予の対象は原則として「過去に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」であり,そうでない者に対する執行猶予の付与は例外的となっています。
このように法律上執行猶予が付けられないとなると,裁判官としても裁量の余地が全くなくなってしまいます。
そのため,執行猶予との関係で前科の有無とその内容は極めて重要だと評価できます。

更に,前科の存在は,刑事事件の過程である保釈にも関わってきます。
前科の刑が死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮であるとき,権利保釈(被告人などから請求を受けた場合に必ず認めなければならない保釈)は不可能となります。
権利保釈が不可能でも裁量保釈(権利保釈の可否に関係なく裁判官の判断で認められる保釈)の可能性はありますが,上記のとおり厳罰の可能性もある以上,やはり裁判官の心証に響くことはありえます。

前回および今回の記事で取り上げた以外にも,前科には様々な影響が考えられます。
前科により自身の刑はどの程度重くなるのか」などの疑問があれば,一度弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,前科に関してご不明な点に真摯に耳を傾けます。
ご家族などが盗撮の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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盗撮と前科②

2020-03-17

盗撮前科について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】

愛知県愛西市に住むAさんは,買い物をしようと近所のショッピングモールへ行きました。
そうしたところ,店内でスカートを履いた女性Vさんがエスカレーターに向かって歩くのが目に入りました。
そこで,Aさんはエスカレーターに乗ってVさんの背後に立ち,自身のスマートフォンをVさんのスカートに差し入れて下着を盗撮しました。
ところが,撮影の際にAさんのスマートフォンがVさんの太ももに当たり,Vさんから「ちょっと,何してるんですか」と声を掛けられました。
その場から逃走を図ったAさんでしたが,近くにいた買い物客に腕を掴まれ,結局津島警察署にて取調べを受けることになりました。
Aさんから相談を受けた弁護士は,Aさんに盗撮前科があることを聞きました。
(フィクションです)

【前科の定義と影響①】

前科という言葉は,その文脈に応じて複数の意味があります。
よく見られるものとして,「過去に懲役刑や禁錮刑の言い渡しを受けて刑務所に収容されたこと」という意味があるのではないかと思います。
今回取り扱う「前科」は,刑務所へ収容された経験に限らず,犯罪に及んで何らかの刑罰を受けたことを意味する言葉として用います。
以下をお読みになる際には,そのことを念頭に置いておきましょう。

前科は,過去に犯罪をして処罰を受けたことがあるという経歴を示すものです。
そのため,前科は人の名誉や信用に関わる事柄であることが裁判例でも指摘されており,行政機関なども慎重に取り扱うのが通常です。
普通に生活していれば,自身の前科を容易に他人に知られることはありませんし,他人の前科を知ることもまた極めて稀でしょう。

ただ,社会で生活する以上,前科の存在が他人に知られざるを得なかったり,前科があることにおり不利益を被ったりすることはどうしても起こります。
そこで,前科がもたらす影響について,刑事事件と刑事事件以外とに分けて簡単に見ていきます。
今回は,刑事事件以外に関する影響に焦点を当てます。

第一に,就職するにあたって事実上または法律上の不利益を受けることが考えられます。
まず,国家資格の多くは,一定以上の刑罰を受けた場合に付与の不許可や取消しが行われる可能性があることが関係法令に定められています。
前科の内容がそうした規定に抵触するものであれば,当然ながらその資格の取得や保持は危ぶまれます。
また,民間企業に就職する際,提出を求められる履歴書に賞罰欄が設けてあることがあります。
こうした場合についても,前科の存在と内容により採否が決められたり,秘匿したことが発覚した際に懲戒処分を受けたりすることがありえます。

第二に,海外への旅行が制限されることがあります。
パスポートの申請などについて定めた旅券法は,13条1項において一定の前科の存在を申請拒否の事由としています。
また,パスポート自体は取得できても,各国の入国審査において前科の存在を理由に入国を拒否されることがありえます。
これらの事情から,前科があることで自由に海外旅行できないという事態が生じてしまいます。

第三に,選挙に関わることができなくなることがあります。
選挙について定めた公職選挙法は,11条および11条の2において選挙権や被選挙権を有しない者を列挙しています。
この規定に該当すると,選挙権または被選挙権が行使できない結果,選挙を通して自己の意思を表明することができません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,前科が付いてしまった場合の影響について丁寧にご説明します。
ご家族などが盗撮の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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盗撮と前科①

2020-03-16

盗撮前科について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
今回の記事では,盗撮について詳しく見ていきます。

【ケース】

愛知県愛西市に住むAさんは,買い物をしようと近所のショッピングモールへ行きました。
そうしたところ,店内でスカートを履いた女性Vさんがエスカレーターに向かって歩くのが目に入りました。
そこで,Aさんはエスカレーターに乗ってVさんの背後に立ち,自身のスマートフォンをVさんのスカートに差し入れて下着を盗撮しました。
ところが,撮影の際にAさんのスマートフォンがVさんの太ももに当たり,Vさんから「ちょっと,何してるんですか」と声を掛けられました。
その場から逃走を図ったAさんでしたが,近くにいた買い物客に腕を掴まれ,結局津島警察署にて愛知県迷惑行為防止条例違反の疑いで取調べを受けることになりました。
Aさんから相談を受けた弁護士は,Aさんに盗撮前科があることを聞きました。
(フィクションです)

【刑事事件としての盗撮】

一般に,盗撮とは,カメラなどを用いて他人を密かに撮影する行為を指します。
こうした盗撮が全て犯罪に当たるとお思いの方がいらっしゃるかもしれませんが,実際のところそういうわけではありません。
不法行為として民事上の責任を負う可能性があるのはさておき,犯罪として刑事上の責任を負うのは,特定の場所における特定の物を対象とする盗撮に限られています。

性犯罪としての盗撮については,基本的に以下の2つの法令により処罰されることが見込まれます。

①各都道府県の迷惑防止条例
社会における様々な迷惑行為を規制すべく,都道府県毎に迷惑防止条例(自治体により名称差異あり)というものが定められています。
愛知県では,「愛知県迷惑行為防止条例」がそれに該当します。
愛知県迷惑行為防止条例2条の2では,「公共の場所又は公共の乗物」における「衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し,又は撮影すること」が禁止されています。

上記規定に違反して盗撮を行った場合,1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習であれば2年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
盗撮の罰則は改正により以前より重くなっており,特に常習の盗撮については,条例において科すことができる刑の上限に達しています。
このことから,盗撮に対する社会の問題意識が高まっており,その扱いは決して軽いものではないことが窺えます。

なお,以上のような盗撮の規制は全国の自治体で見られますが,愛知県を含む一部の自治体では,更にカメラなどを設置して先述の対象に向けることをも規制しています。

②軽犯罪法
①で紹介した盗撮の規制は,公共の場所または公共の乗物における盗撮にのみ及ぶものです。
そのため,少なくとも愛知県においては,住居など一部の場所における盗撮が条例では処罰されないということになります。
その場合,軽犯罪法の適用が見込まれます。
軽犯罪法1条は,「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(23号)に拘留または科料を科すとしています。
裁判例によれば,「のぞき見た」にカメラなどによる撮影も含まれると解釈されているので,愛知県内の住居などにおける盗撮にはこちらが適用されることになるでしょう。
たは,拘留は1日以上30日未満の拘置,科料は1000円以上1万円未満の金銭の徴収なので,①で紹介した盗撮の規制に比べると罰則は軽いと言えます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,盗撮として処罰されるかどうかについて的確な回答を致します。
ご家族などが盗撮の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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強盗罪と逮捕の可能性

2020-03-15

強盗罪逮捕の可能性について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】

Aさんは,悪質なセールスに騙されて数十万円の時計を購入させられ,その代金の支払いの目途が立たず困っていました。
そうした話を友人のBさんにしたところ,「それなら俺と一緒にコンビニ強盗でもやろう。2人なら上手くやれる」と誘いを受けました。
悩みに悩んだ結果,Aさんはその誘いに乗り,Bさんと共に愛知県稲沢市内のコンビニで強盗をすることにしました。
そして,事前に立てた計画に沿って犯行を遂げ,およそ20万円を奪取しました。
しかし,犯行の翌日になって,Aさんは急に逮捕される自分を想像して恐怖を抱きました。
そこで,すぐに弁護士に相談し,逮捕の可能性について聞いてみました。
(フィクションです)

【強盗罪について】

刑法(一部抜粋)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

強盗罪は,暴行または脅迫を手段として,他人から財産を奪取した場合に成立する可能性のある罪です。
単に相手方の意思に反して財産を盗むのではなく,それを暴行・脅迫によって実現する点で,窃盗罪より悪質性が高いと評価されています。
そのため,窃盗罪の法定刑が10年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対し,強盗罪は5年以上の有期懲役(上限20年)という厳しい刑が定められています。

強盗罪における暴行・脅迫は,相手方の反抗を抑圧するに至る程度のものでなければならないと考えられています。
具体的には,凶器の有無,発言の内容,暴行の程度などの様々な事情を考慮し,客観的に判断されます。
特に凶器を用いている場合については,実務上犯行を抑圧するに至る程度のものがあったと評価されやすい傾向にあります。
もし暴行・脅迫がこの程度に至っていなければ,強盗罪ではなく恐喝罪(10年以下の懲役)に当たる可能性が出てきます。

【逮捕の可能性】

犯罪をしてしまった場合,多くの方はまず「逮捕されるのではないか」という点を懸念されるのではないかと思います。
逮捕というのは,捜査機関が裁判所に令状を請求し,その令状の発付を受けたうえで行われるのが原則です。
そのため,,①捜査機関による令状の請求,②裁判所による逮捕状の発付(逮捕の許可),③捜査機関による逮捕状の執行という手続を踏んではじめて逮捕に至るということになります。
とはいえ,実務上②の段階で裁判所が逮捕状の請求を却下するのは稀であり,なおかつ③の段階で捜査機関が敢えて逮捕の執行をしないというのも考え難いので,逮捕の可能性は基本的に①に掛かっていると言えます。

逮捕するかどうかが捜査機関の判断に掛かっている以上,弁護士などの法律家であっても確実に逮捕されるか判断することはできません。
ただ,逮捕の目的というのは主に逃亡と証拠隠滅の防止なので,そうした視点からある程度予測を立てることは可能です。
まず,問題となる犯罪が重い場合,逮捕の可能性は高くなるのが一般的です。
犯罪が重いと,刑罰を免れるために逃亡や証拠隠滅を図る疑いがあると考えられるからです。
この観点からすれば,強盗罪を疑われたケースは逮捕の可能性が高いと予想できます。
また,犯行が複雑な場合についても,逮捕の可能性は高くなることがありえます。
こうした場合の例として,コンピュータに関する犯罪や,共犯者がいる犯罪などが挙げられます。
これらのケースでは,データの消去または共犯者間での口裏合わせによる証拠隠滅を捜査機関が懸念するからだと考えられます。

以上はあくまでも考慮要素と考えられるものの一部であり,実務上は個々の事案に応じて可能性が変わってきます。
逮捕の可能性について少しでも正確な予測を立てるなら,やはり自身の事案を弁護士に相談するのが一番かと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,逮捕の可能性を含む事件の見通しを丁寧に説明いたします。
ご家族などが強盗罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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公務執行妨害罪と逮捕後の流れ

2020-03-14

公務執行妨害罪逮捕後の流れについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します,

【ケース】

愛知県一宮市に住むAさんは,会社の後輩と酒を飲み,すっかり酔った状態で自宅までの帰り道を歩いていました。
帰宅途中,Aさんは道路の真ん中で寝転び,その場で寝始めてしまいました。
その姿を警邏中の警察官が発見し,Aさん「大丈夫ですか。こんなところで寝てたら他の方に迷惑ですから」と声を掛けました。
それに対し,Aさんは「なんだてめえ。若造が」と言って警察官の胸倉を掴み,顔を近づけて怒号を浴びせました。
これにより,Aさんは公務執行妨害罪の疑いで現行犯逮捕され,一宮警察署に連行されました。
Aさんと接見した弁護士は,Aさんに事件の流れを伝えました。
(フィクションです)

【公務執行妨害罪について】

刑法(一部抜粋)
第九十五条 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪は,公務員に対して暴行または脅迫を加えた場合に成立する可能性のある罪です。
刑法では,暴行については暴行罪,脅迫については脅迫罪というかたちで,いずれの行為についても別途犯罪として規定されています。
ですが,公務というのは国や地方公共団体が行う公的な事務であり,特に保護に値すると言えます。
このような事情から,公務執行妨害罪という犯罪類型が定められ,公務が手厚く保護されるに至っているのです。

実務において見られる公務執行妨害事件は,逮捕を伴うものが少なくありません。
その理由の一つとしては,暴行・脅迫の対象となった公務員が警察官であり,犯行の現認によって現行犯逮捕に至っているからだと考えられます。
法定刑は率直なところ比較的軽いものですが,上記のような理由で逮捕がよく見られる点には注意が必要です。

【逮捕後の事件の流れ】

逮捕勾留というのは,被疑者の身体の自由を奪う点で人権侵害の側面を持っています。
そのため,刑事事件の手続について定めた刑事訴訟法には,逮捕勾留について厳格な時間制限を課しています。
これにより,身体拘束を伴う刑事事件では,基本的に以下の流れに沿って進むことになります。

まず,警察署は,被疑者を逮捕してから48時間以内に事件を検察庁に送致しなければなりません。
警察署から身柄の送致を受けた検察庁は,被疑者の身体を引き続き拘束する勾留が必要か検討し,必要だと判断すれば身柄を受け取ってから24時間以内勾留請求を行います。
以上の手続は逮捕から72時間以内に行わなければならず,事件制限を超えたり身体拘束の必要性が認められなかったりする場合,直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

検察官の勾留請求があると,被疑者を勾留すべきかどうかの審査を裁判所が行うことになります。
こうした審査の結果,裁判官が勾留の必要性を認めると,被疑者は検察官が勾留請求をした日から10日間勾留が決定します。
この被疑者に対する勾留の期間は,捜査の必要上やむを得ない場合については更に10日以内の範囲で延長される(つまり勾留最長20日となる)ことがあります。

担当の検察官は,上記の勾留の期限までに被疑者を起訴するか不起訴にするか決めなければなりません。
もし起訴の判断が下された場合,勾留は被疑者向けのものから被告人向けのものへと変わり,勾留の期間は2か月延長されてしまいます。
更に,被告人に対する勾留については,必要に応じて1か月単位で更新が行われます。

以上のように,逮捕後の身体拘束は,事件によっては相当長期にわたってしまいます。
この間,弁護士は適切なタイミングで身柄解放活動を行い,被疑者・被告人の身柄解放を目指すことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,逮捕の前後を問わず充実したサポートを行います。
ご家族などが公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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傷害罪と不起訴

2020-03-13

傷害罪不起訴について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】

Aさんは,愛知県犬山市内にある居酒屋で友人と酒を飲みました。
その帰り道,すっかり酔ったAさんは,前から歩いてきたVさんにぶつかってしまいました。
それが原因でVさんと喧嘩になり,Aさんは友人の制止を振り切ってVさんの顔面を殴打しました。
これによりVさんは全治1か月の怪我を負い,Aさんは現場に駆けつけた犬山警察署の警察官によって傷害罪の疑いで逮捕しました。
Aさんから依頼を受けた弁護士は,不起訴を目指して弁護活動を行うことにしました。
(フィクションです)

【傷害罪について】

刑法(一部抜粋)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪は,文字どおり他人を傷害した場合に成立する可能性のある罪です。
傷害罪における「傷害」とは,人の生理的機能の侵害を指すと考えられています。
具体的には,出血や骨折といった怪我に加え,失神や腹痛などの症状を引き起こすことも含まれます。
過去に裁判で争われた結果,「傷害」に当たると判断されたものとしては,性病,外傷後ストレス障害(PTSD),睡眠薬による意識障害などがあります。
中には必ずしも暴行を手段としないものもあるため,故意の行為により「傷害」さえ生じれば,その手段を問わず傷害罪に当たるとされる可能性は十分あります。

傷害罪の法定刑は,15年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
他の罪と比較してみると,科される可能性のある刑の幅が広いというのが特徴として浮かび上がります。
具体的にどの程度の刑が科されるかは,傷害に至った動機,行為の内容,傷害の程度などの様々な事情を考慮のうえ判断されることが見込まれます。
中でも特に重視されるのはやはり傷害の程度かと思いますので,怪我などが重くなればそれだけ処分も厳しいものになると考えてよいでしょう。
なお,仮に暴行などの時点で殺意があった場合,傷害罪ではなく殺人未遂罪が成立する余地が出てきます。
そうなると,罰金刑の可能性がなくなるなど刑の重さが変わってくるので注意が必要です。

【不起訴の概要と見込み】

一般の方からすると,刑事事件というのはその多くが裁判となり,刑罰が科されるとお考えになるかもしれません。
ですが,法務省が公表している統計によると,起訴率は例年4割から5割程度で推移しています。
つまり,全ての刑事事件のうち半分かそれ以上が不起訴というかたちで終わっていることになります。

不起訴の理由には様々なものがありますが,統計上最も多いのは起訴猶予です。
起訴猶予とは,事件の内容,被疑者の態度,犯罪後の状況などの様々な事情を考慮し,敢えて起訴を見送るというものです。
罪を犯したこと自体に争いがない事件で不起訴を目指す場合は,基本的にこの起訴猶予による不起訴を目指すことになります。
傷害事件において起訴猶予による不起訴を目指せるかどうかは,主に傷害の程度と示談の成否に大きく左右されると考えられます。
怪我などの程度が軽く,なおかつ示談が成立していれば,起訴猶予による不起訴となる可能性は高くなるでしょう。

傷害罪というのは,そもそも先述したとおり法定刑の幅が広いのも相まって,個々の事件により予想される処分が大きく変わってきます。
ですので,まずはご自身の事件について弁護士に相談し,不起訴になるかどうか見込みを聞いてみるのをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,不起訴の見通しについて的確な回答を致します。
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放火罪と保釈

2020-03-11

放火罪で逮捕され保釈を目指すケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】

愛知県清須市に住むAさん(20歳)は,高校1年生の頃にVさんからいじめを受け,それが原因で不登校となりました。
これによりAさんはVさんに恨みを抱いていたため,ある日Vさん宅の庭にガソリンをまき散らして火をつけました。
幸いにも火は比較的早期に消し止められ,怪我人は一人もいませんでした。
この件について西枇杷島警察署が捜査を開始し,やがてAさんは現住建造物等放火罪の疑いで逮捕されました。
Aさんは,接見に来た弁護士から,保釈による身柄解放を目指すべきであることを告げられました。
(フィクションです。)

【放火罪について】

刑法において,「放火罪」には複数の種類が規定されています。
大きく分けると,現住(現在)建造物等放火罪非現住建造物等放火罪建造物等以外放火罪の3つです。
いずれが成立するかは,放火の対象によって決まります。

今回のケースで問題となっているのは,先述した3つの中で最も重い現住建造物等放火罪です。
現住建造物等放火罪は,①「現に人が住居として使用し」ている建造物等を②放火によって「焼損」した場合に成立する可能性のある罪です。
まず,①の建造物等に当たる典型例としては,やはり方々に存在する民家が挙げられます。
注意すべきは,住居として使用されてさえいれば,必ずしも放火のときに人が存在する必要はない点です。
つまり,家主が旅行などで一時的に留守にしている家を放火した場合も,現住建造物等放火罪として罰せられる可能性があるのです。
また,②の「焼損」について,裁判例の中には30センチメートル四方という比較的狭い範囲のみが燃えた場合もこれに当たるとしているものがあります。
加えて,仮に「焼損」と言うに値しないと評価できる場合も,放火未遂罪や器物損壊罪が別途成立する可能性はあります。

【保釈による身柄解放の可能性】

現住建造物等放火罪の法定刑は,死刑,無期懲役,5年以上の有期懲役のいずれかという非常に重いものです。
そのため,逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして,逮捕・勾留による身体拘束が長期にわたる可能性が高いと言えます。
こうした事件については,被疑者の身柄の確保と証拠収集の便宜という建前上,捜査の期間である被疑者段階で身柄解放を実現するのは難しいというのが実情です。
そこで,捜査を終えて起訴された後で,保釈を請求して身柄解放を実現することが考えられます。

保釈とは,裁判所に保釈保証金となる一定額の金銭を預け,それと引き換えにいったん身柄を解放してもらうというものです。
保釈保証金は逃亡や証拠隠滅が行われた際に没収される可能性があるため,これがそうした行動を防ぐ担保となることが期待されています。
その分,被疑者段階で単に身柄を解放する場合と比べ,身柄解放が認められやすくなっているのです。

先述のとおり,裁判所に保釈を認めてもらうには,保釈請求を行って裁判所の許可を得る必要があります。
この保釈をするに当たり,弁護士としては,裁判官の懸念を払しょくできるような事情を主張し,場合によってはその主張に備えて事前に様々な活動を行います。
そのため,保釈の許可の可能性を高めるなら,やはり弁護士に保釈を依頼するのが賢明だと言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,保釈請求などを通して一刻も早い身柄解放の実現を目指します。
ご家族などが放火罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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