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未成年者誘拐罪と愛知県青少年保護成条例違反とは
未成年者誘拐罪と愛知県青少年保護成条例違反とは
未成年者誘拐罪と愛知県青少年保護条例違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県名古屋市中川区に住むAさんは、インターネット上の掲示板で、Vさん(愛知県名古屋市中川区に住む17歳の女子高校生)が家出中で宿泊先を探しているとの書き込みとVさんの連絡先を見つけました。
そこで、Aさんは、掲示板に書き込まれたVさんの連絡先に連絡し、「今なら無料で泊めてあげる」と自宅に来るよう伝えました。
その後、VさんはAさんの自宅に数日間滞在していましたが、Vさんの家族が捜索願を出したことからVさんの所在が発覚しました。
その結果、Aさんは愛知県中川警察署の警察官により未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されました。
実はAさんはVさんと淫行もしていたことから、Aさんは未成年者誘拐罪以外の犯罪も成立するのではないかと不安に思っています。
(2021年1月5日にSTVNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【未成年者誘拐罪とは】
未成年を略取し、又は誘拐した者は、3年以上7年以下の懲役に処する(刑法224条)。
未成年者誘拐罪は、被誘拐者(誘拐される者)である未成年者の自由と、親権者の保護・監督権を保護するために規定されたと考えられています。
未成年者誘拐罪の「未成年」とは20歳未満の者をいいます(民法4条)。
また、未成年者誘拐罪の「誘拐」とは、欺罔又は誘惑を手段として、未成年者を現在の生活状態から離脱させ、自己の支配下に移して行動の自由を奪うことをいいます。
欺罔とは虚偽の事実を告げることをいいます。
また、誘惑とは甘い言葉を用いて未成年者の判断を誤らせることをいいます。
刑事事件例のVさんは17歳であり、未成年者誘拐罪の「未成年者」に該当することになります。
また、AさんはVさんに対し「今なら無料で泊めてあげる」との言葉で自宅に来るよう伝えています。
このAさんの言葉は、費用のかからない宿泊先を提供するという甘言であり、これによりVさんに判断を誤らせたと考えられるため、未成年者誘拐罪の誘惑に該当するといえます。
そして、このAさんの誘惑的発言により、Vさんは現在の生活環境から離れAさんの自宅に滞在しているため、未成年者を現在の生活状態から離脱させ、自己の支配下に移して行動の自由を奪う未成年者誘拐罪の「誘拐」に該当すると考えられます。
以上より、Aさんには未成年者誘拐罪が成立すると考えられます。
【愛知県青少年保護条例違反とは】
刑事事件例では、AさんはVさんと淫行もしていました。
このAさんの行為は、愛知県青少年保護条例違反という犯罪にあたる可能性があります。
(目的)
この条例は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し、もつて青少年を保護し、その健全な育成に寄与することを目的とする(愛知県青少年保護条例1条)。
(定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところに よる(愛知県青少年保護条例4条)。
一 青少年 18歳未満の者をいう。
刑事事件例のVさんは17歳であり、愛知県青少年保護条例の「青少年」に該当することになります。
(いん行、わいせつ行為の禁止)
何人も、青少年に対して、いん行又はわいせつ行為をしてはならない(愛知県青少年保護条例14条1項)。
何人も、青少年に対して、前項の行為を教え、又は見せてはならない(愛知県青少年保護条例14条2項)。
愛知県青少年保護条例14条における「淫行」の意義は、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」であると考えられています(昭和60年10月23日最高裁判決)。
(罰則)
第14条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する(愛知県青少年保護条例29条1項)。
次の各号のいずれかに該当する者は、10万円以下の罰金に処する(愛知県青少年保護条例29条7項)。
四 第14条第2項の規定に違反した者
愛知県青少年保護条例14条に違反した場合、上記の刑罰が科せられます。
【愛知県青少年保護条例違反の追及について】
Aさんに愛知県青少年保護条例違反の罪が成立する場合、Aさんは警察官による取調べにどのように対応すればよいでしょうか。
一つの方法としては、愛知県中川警察署の警察官からの追及があるまでは愛知県青少年保護条例違反については黙秘をするということが考えられます。
また、示談の経過や早期に身柄を解放してほしい事情があるなど諸般の事情をよく検討した上、自白をするという選択肢も考えられます。
警察官の取調べに対してどう対応するのが良いかは、当該刑事事件を取り巻く様々な事情によって左右され得るので、刑事事件に強い弁護士に専門的な見地からの助言を仰ぐことが重要であると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
未成年者誘拐罪と愛知県青少年保護条例違反でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
傷害事件の公訴時効
傷害事件の公訴時効
傷害事件の公訴時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県名古屋市北区にある高校の教師であるAさんは、同校の空手部の顧問をしていました。
2017年、Aさんは、空手部員であるVさんが道場においてアイスを食べていたことに腹を立て、指導と称して技を掛け、全治3か月の怪我を負わせました。
2020年になり、Aさんは愛知県北警察署の警察官から連絡を受け、傷害罪の容疑で取調べを受けました。
Aさんは「3年も前のことだからもう時効ではないのか」と考えています。
(2020年12月22日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【公訴時効とは】
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する(刑事訴訟法250条1項)。
1 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については30年
2 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
3 前2号に掲げる罪以外の罪については10年
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する(刑事訴訟法250条2項)。
1 死刑に当たる罪については25年
2 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
3 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
4 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
5 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
6 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
7 拘留又は科料に当たる罪については1年
左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない(刑事訴訟法337条)。
4 時効が完成したとき
公訴時効が完成すると、刑は「免除」されることになります(刑事訴訟法337条4号)。
これは、たとえ犯罪を犯したとしても、一定の期間、国家により訴追(起訴)されなかったのであれば、その既成事実を尊重すべきである、言い換えれば、犯罪を犯した者の「有罪にならない」という地位を安定させるべきであると考えられているからです。
公訴時効により消滅するのは国家の刑罰権ではなく国家の訴追権(起訴する権利)であるため、公訴時効が完成すると無罪が言い渡されるのではなく刑が「免除」されることになります(刑事訴訟法337条4号)。
例えば、傷害罪(刑法204条)の法定刑(刑法典に定められた刑)は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められています。
とすると、傷害罪は「長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪」(刑事訴訟法250条2項3号)といえることになります。
そのため、傷害罪の公訴時効は「10年」(刑事訴訟法250条2項3号)ということになります。
【公訴時効の起算点】
上述したように、公訴時効の完成により消滅するのは国家の訴追権(起訴する権利)と考えられています。
そして、この国家の訴追権(起訴する権利)は、犯罪の結果が生じたときに発生すると考えられます。
そのため、公訴時効の起算点は、犯罪の結果が生じたときであると考えられます。
再度公訴時効についてまとめると、公訴時効の完成とは、犯罪の結果が生じたときに発生する国家の訴追権(起訴する権利)が一定期間の経過により消滅することを意味するのです。
例えば、傷害罪(刑法204条)については、「人の身体を傷害したとき」が公訴時効の起算点となります。
そして、傷害結果の発生から「10年」(刑事訴訟法250条2項3号)を経過することにより、公訴時効が完成することになります。
【刑事事件例と公訴時効】
刑事事件例では、2017年にAさんはVさんに対して怪我をさせる傷害事件を起こしていますが、2020年に愛知県北警察署の警察官から捜査を受けた段階では、未だ公訴時効が完成していないことになります。
刑事弁護士としては、公訴時効が完成していないことを前提として、被害者の方であるVさんもしくはVさんのご両親に対して、正式な謝罪と被害弁償をするために示談交渉を開始することになるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
傷害事件の公訴時効でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)の続きとなります。
【遺失物等横領罪の要件(その2)】
遺失物等横領罪を規定した刑法254条を再度引用します。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
遺失物等横領罪における「横領」とは、領得行為をいうと考えられています。
すなわち、不法に領得する意思を持って、遺失物等を自己の事実上の支配下に置くことをいうと考えられています。
そして、不法に領得する意思の意義については、物の経済的用法に従って、所有者でなければできない処分をする意思を指します。
刑事事件例について見てみると、Aさんは、本件自転車を持ち去り、遺失物横領事件が発覚する日までの間、本件自転車に乗っています。
こAさんの行為は、まさに本来の所有者でなければできないであろう経済的な使用であり、Aさんは本件自転車を不法に領得しようという意思を持って自己の支配下に置いていたといえます。
よって、Aさんの行為は遺失物等横領罪の「横領」に該当すると考えられます。
以上より、Aさんには遺失物等横領罪が成立すると考えられます。
【遺失物等横領罪と微罪処分】
本件遺失物等横領罪は微罪処分の対象事件に該当する可能性があります。
微罪処分とは、検察官により指定された極めて軽微な事件についてのみ認められた処分であり、検察官に事件の送致をすることなく刑事手続を終局させる処分をいいます。
すなわち、微罪処分となれば警察の捜査段階で事件が終了し、裁判を受けたり刑罰を受けたりということはないということです。
微罪処分については、刑事訴訟法246条や犯罪捜査規範198条1項が以下のように規定しています。
刑事訴訟法246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。
犯罪捜査規範198条1項
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
微罪処分の対象となるのは、通常、犯情が軽微、被害額が僅少で、被害回復が行われ、被害者の宥恕(許し)があり、かつ偶発的犯行であって再犯のおそれがない事件です。
遺失物横領事件も、事情によっては上記微罪処分の対象事件の要件を満たす余地があります。
先ほど触れたように、微罪処分となれば、検察官に事件が送致されないため、当該事件の被疑者の方が起訴されることはありません。
そこで、刑事弁護士を選任し、遺失物横領事件の被害者の方と示談交渉を経て、被害弁償や示談を行うことが重要です。
遺失物横領事件の被害者の方の宥恕(許し)を得ることができれば、検察官へ事件が送検されることなく、刑事手続を終局させることができる可能性があると考えられます。
微罪処分とならなくとも、示談締結の事実は不起訴処分の獲得や刑罰の減軽に有利に働く事情となりますから、いずれにせよ遺失物横領事件の当事者となってしまったら早めに弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
遺失物等横領事件のような微罪処分対象事件を取り扱った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県名古屋市天白区内に住むAさんは、深夜、同市内の路上を歩いていると、1台の自転車(以下、本件自転車と呼びます)が無施錠の状態で路上のわきに放置されていることに気付きました。
Aさんはこの自転車が盗難車で乗り捨てられているのだろうということにすぐに気が付きましたが、「盗まれるやつが悪い」と思い、そのまま自転車を持ち去りました。
後日、Aさんが深夜に本件自転車に乗っていると、愛知県天白警察署の警察官から職務質問を受け、Aさんが自転車を持ち去ったことが発覚しました。
愛知県天白警察署の警察官によると、自転車は本来Vさんが所有していたものであったといいます。
その後、Aさんは愛知県天白警察署の警察官により遺失物横領罪の容疑で取調べを受けました。
(2020年7月30日に千葉日報オンラインに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【遺失物等横領罪の要件(その1)】
刑法254条は遺失物等横領罪を規定しています。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
実務では、「遺失物」「を横領した者」には遺失物横領罪、「漂流物」「を横領した者」には漂流物横領罪、「その他占有を離れた他人の物を横領した者」には占有離脱物横領罪というように、名称が区別されることがあります。
遺失物等横領罪の「占有を離れた他人の物」とは、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、誰の占有(事実上の支配)にも属していないもの、および、偶然に被疑者の方の占有(事実上の支配)に帰属したものをいうと考えられています。
そして、遺失物等横領罪の「遺失物」や「漂流物」は、上記「占有を離れた他人の物」の例であると考えられています。
つまり、遺失物等横領罪の「占有を離れた他人の物」のうち、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、誰の占有(事実上の支配)にも属していないものを「遺失物」といい、その中でも水面又は水中に存在するものを「漂流物」といいます。
その他、「占有を離れた他人の物」の例としては、誤配達された郵便物、隣家から飛んできた洗濯物、誤って多く渡された釣り銭などが考えられます。
これらは、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、偶然に被疑者の方の占有(事実上の支配)に帰属したものに該当します。
刑事事件例において、自転車は、本来Vさんが所有していたものであり、Aさん以外の何人かにより盗み取られ、愛知県名古屋市天白区内の路上に放置されていたものです。
これは、Vさんの意思によらずにその占有(事実上の支配)が離れ、何人かの乗り捨て行為を経て、まだ誰の占有(事実上の支配)にも属していないものであると考えられます。
よって、本件自転車は遺失物等横領罪の「遺失物」に該当すると考えられます。
遺失物横領事件では、示談交渉などの弁護活動が考えられます。
弁護士に事件の詳しい事情を話すことでより具体的な弁護活動を聴くことができますから、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
遺失物等横領事件のような微罪処分対象事件を取り扱った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)に続きます。
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(後編)
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(後編)
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(前編)の続きとなります。
【勾留に関する被疑者・被告人の権利】
逮捕に引き続く長期の身体拘束である「勾留」については、勾留理由開示(刑事訴訟法82条1項)がなされ、これをもとにして勾留決定に対する不服申立てである準抗告(刑事訴訟法429条)ができます。
勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる(刑事訴訟法82条1項)。
裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる(刑事訴訟法429条)。
勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判(刑事訴訟法429条1項2号)。
その他、勾留の取消請求(刑事訴訟法87条)をしたり、勾留の執行停止(刑事訴訟法95条)による救済を受けたりすることが考えられます。
勾留の理由又は勾留の必要性がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人…の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない(刑事訴訟法87条)。
裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族…に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる(刑事訴訟法95条)。
また、弁護人(弁護士)の選任権を実質的に保障するために、弁護人(弁護士)の接見交通権(刑事訴訟法39条2項)が保障されており、身体拘束されている被疑者・被告人の方との自由な接見が認められています。
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護士又は弁護士を選任できる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる(刑事訴訟法39条2項)。
【証拠保全に関する被疑者・被告人の権利】
否認事件においては、被疑者・被告人の方は、自己に有利な証拠の収集を行うことが重要であると考えられます。
将来の裁判(公判)において使用すべき証拠をあらかじめ収集して保持しておく処置を証拠保全といいます。
具体的な手段として、裁判官に対する証拠保全請求(刑事訴訟法179条1項)やその閲覧・謄写請求権(刑事訴訟法180条)が認められています。
この規定は、被疑者・被告人の方にとっては、警察や検察による捜査に対応するものであるといえます。
被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠をしようすることがその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる(刑事所掌179条1項)。
検察官及び弁護人は、裁判所において、前条第1項の処分に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写をすることができる(刑事訴訟法180条1項柱書)。
被告人又は被疑者は、裁判所の許可を受け、裁判所において、第1項の書類及び証拠物を閲覧することができる。
ただし、被告人又は被疑者に弁護人があるときは、この限りでない(刑事訴訟法180条3項)。
【刑事事件例における被疑者・被告人の権利】
殺人未遂罪の容疑を否認する場合、逮捕に引き続く長期の身体拘束である勾留がなされることが多くみられます。
そこで、刑事弁護士としては、勾留理由開示(刑事訴訟法82条1項)をし、勾留決定に対する不服申立てである準抗告(刑事訴訟法429条)をすることにより、Aさんに対する身体拘束の決定を争うことができます。
また、殺人未遂罪の容疑を否認する場合においては、警察官や検察官により厳しい追及がなされることが考えられます。
そこで、刑事弁護士としては、弁護士のもつ接見交通権(刑事訴訟法39条2項)のもと、Aさんと接見を行い、黙秘権の保障(憲法38条1項・刑事訴訟法198条2項)があることをや関連する刑事訴訟法上の規定(刑事訴訟法198条4項、5項)についても分かりやすく説明します。
さらに、必要であれば、証人などについて、裁判官への証拠保全請求(刑事訴訟法179条)や関係者への事情聴取を行うことができると考えられます。
前回も触れた通り、被疑者・被告人本人やその周囲の方が、被疑者・被告人の持つ権利についてきちんと知っておくことは、その後の刑事事件の流れに対応していくうえで非常に重要です。
刑事事件に強い弁護士と協力し、サポートしてもらいながら刑事手続きに対応していくことが望ましいでしょう。
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殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(前編)
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(前編)
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(前編)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Vさん(29歳)は、愛知県名古屋市瑞穂区内の路上において、男に刃物のようなもので首や胸などを刺されました。
Vさんは、命に別状はなかったものの、全治6か月の重症を負いました。
その後、愛知県瑞穂警察署の警察官は、殺人未遂罪の容疑で、Aさん(51歳)を逮捕しました。
Aさんは、愛知県瑞穂警察署の警察官の取調べに対し、「自分はやっていない」と供述し、殺人未遂罪の容疑を否認しています。
Aさんは「自分は本当にやっていない。今後どうすればよいのか」として、被疑者の権利について知りたいと考えています。
(2014年11月11日に神奈川新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【被疑者・被告人の権利】
刑事事件例では、Aさんは、愛知県瑞穂警察署の警察官により殺人未遂罪の容疑がかけられているところ、「自分はやっていない」と殺人未遂罪の容疑を否認しています。
刑事事件例のように、犯罪の容疑を否認するときには、被疑者・被告人の方は、刑事訴訟法・憲法上保障されている被疑者・被告人の権利について十分理解した上で警察や検察と対峙しなければなりません。
以下では、まず、刑事訴訟法や憲法において被疑者・被告人の方に保障されている代表的な諸権利を確認します。
その後、刑事事件例ではどのような刑事弁護活動が考えられるのかを考えていきます。
【捜索・差押えに関する被疑者・被告人の権利】
捜索・差押えに対しては、押収目録(刑事訴訟法120条)または捜索証明書(刑事訴訟法119条)が交付され、これらをもとにして押収物の還付請求(刑事訴訟法123条準用)や、不服申立てとして準抗告(刑事訴訟法430条)をすることができます。
押収をした場合には、その目録を作り、所有者、所持者若しくは保管者又はこれらの者に代わるべき者に、これを交付しなければならない(刑事訴訟法120条)。
捜索をした場合において証拠物又は没収すべきものがないときは、捜索を受けた者の請求により、その旨の証明書を交付しなければならない(刑事訴訟法119条)。
押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない(刑事訴訟法123条)。
この規定は、捜査機関(警察や検察)が押収した物を還付、仮還付する場合にも準用されます。
検察官又は検察事務官のした…押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服のある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる(刑事訴訟法430条1項)。
司法警察職員のした前項の処分に不服のある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる(刑事訴訟法430条2項)。
【取調べに関する被疑者・被告人の権利】
取調べに対しては、被疑者・被告人の方には黙秘権の保障(憲法38条1項)とその告知(刑事訴訟法198条2項)があるということを知っておく必要があります。
何人も、自己に不利益な供述を強要されない(憲法38条1項)。
前項の取調べに際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない(刑事訴訟法198条2項)。
こうした権利や手続きを把握せずに刑事事件の手続きに臨むのと、権利や手続きを十分に把握して手続きに臨むのでは、対応の違いはもちろん、被疑者・被告人やその周囲の方の不安の度合いも大きく異なってきます。
刑事事件の当事者となってしまったら、まずは自分の持っている権利をきちんと確認する意味も込めて、専門家である弁護士に相談してみることがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
否認事件の刑事弁護活動を行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
殺人未遂容疑の否認事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
殺人未遂容疑を否認する被疑者の権利(後編)に続きます。
名古屋市中区の建造物不退去事件で逮捕・勾留された
名古屋市中区の建造物不退去事件で逮捕・勾留された
名古屋市中区の建造物不退去事件で逮捕・勾留された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、名古屋市中区にある愛知県中警察署を訪れ、「警察官への不満や要求を言いたい」などと愛知県中警察署の署長・副署長への面会を繰り返し求めました。
その後、Aさんは、「署長、副署長を出せ」と騒ぎ始め、対応した愛知県中警察署の警察官から5回にわたり愛知県中警察署から出ていくよう警告されたにもかかわらず、警告を受けてから約3時間、来署してからは約4時間半以上居座り続けました。
その結果、Aさんは愛知県中警察署の警察官により建造物不退去罪の容疑で現行犯逮捕されました。
建造物不退去罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、愛知県内にある刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(2020年10月6日に東海テレビNEWSに掲載された記事を参考に作成しました。)
【建造物不退去罪とは】
刑法130条は、以下のように建造物不退去罪を規定しています。
(刑法130条)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたのにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物不退去罪は、「要求を受けたのにもかかわらず」「人の看守する建造物」「から退去しなかった」者に成立する犯罪です。
まず、愛知県中警察署は「人の看守する建造物」に該当します。
次に、建造物不退去罪における「要求」とは、建造物から退去することを求める要求であり、施設管理権を有する者又はこれらの者から退去要求の権限行使を委任された者からなされるものです。
刑事事件例では、愛知県中警察署の警察官からAさんに対して愛知県中警察署から出ていくよう求める警告がなされています。
この警告は、建造物から退去することを求める要求であり、施設管理権を有する愛知県中警察署長から退去要求の権限行使を委任された者により発せられたと考えられます。
よって、刑事事件例における警告は、建造物不退去罪における「要求」に該当すると考えられます。
さらに、建造物不退去罪における「不退去」とは、建造物から退去しないことを指します。
そして、建造物不退去罪における「不退去」に該当するためには、退去の要求を受けた後、退去の要求を受けた者が退去するのに必要な合理的時間が経過したのにも関わらず、建造物内に居座り続ける必要があります(東京高等裁判所判決昭和45年10月2日)。
刑事事件例では、Aさんは、愛知県中警察署の警察官から5回にわたり退去の要求を受けた後、約3時間という退去するのに必要な合理的時間が経過したのにも関わらず、愛知県中警察署内に居座り続けています。
よって、Aさんの行為(不作為)は、建造物不退去罪における「不退去」に該当すると考えられます。
以上より、Aさんには建造物不退去罪が成立すると考えられます。
【建造物不退去罪と逮捕・勾留】
刑事事件例では、Aさんは建造物不退去罪で逮捕されているところ、Aさんに対する身体拘束は逮捕に引き続く勾留として最大20日間(勾留が延長された場合に限る)に及ぶ可能性があります。
ところで、勾留として長期間に及ぶ身体拘束がなされるのは、Aさんが逃亡をするおそれがある、又はAさんが建造物不退去事件の罪証(証拠)を隠滅するおそれがあると検察官や裁判官が判断するためです。
そこで、刑事弁護士としては、Aさんに逃亡するおそれや罪証隠滅をするおそれがないことを主張できると考えられます。
例えば、本件建造物不退去事件は愛知県中警察署内で起こったものであり、建造物不退去事件に関する証拠としては、愛知県中警察署内に存在する物証(防犯カメラなど)や、建造物不退去事件の目撃者(愛知県中警察署の警察官など)の供述が考えられます。
しかし、愛知県中警察署内に存在する物証(防犯カメラなど)は既に愛知県中警察署の警察官が押収している可能性があります。
また、Aさんが罪証隠滅の目的で愛知県中警察署内に立ち入ることは困難であると考えられます。
さらに、建造物不退去事件の目撃者である愛知県中警察署の警察官に対して、Aさんに有利になるよう供述を変えるよう働きかけても、愛知県中警察署の警察官はこれに応じないと考えられます。
すなわち、刑事弁護士としては、Aさんが罪証隠滅をすることができる可能性はない又は著しく低いと主張することができると考えられます。
その他、刑事弁護士としては、例えばAさんが定職を持っていたり扶養している家族がいたりする場合には、Aさんが逃亡する意欲がないと主張することができると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
名古屋市中区の建造物不退去事件で逮捕・勾留された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕
愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕
愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさん(21歳・男性)は、交際相手であるBさん(21歳・女性)に対してVさん(20歳・男性)が連絡を取るなどしたことに立腹し、愛知県豊田市内の公衆トイレでVさんの髪をつかみ、壁に頭をぶつけるなどして「ぼこられるか金を出すか」などと脅迫し、現金を奪おうとしました。
しかし、Vさんが所持金をほとんど持っていなかったため、何も取らずに逃走しました。
Vさんは全治2週間の怪我を負ったといいます。
その後、愛知県豊田警察署の警察官は、Aさん(とBさん)を強盗致傷罪の容疑で逮捕しました。
強盗致傷罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、愛知県豊田市に近い刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(10月15日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【強盗致傷罪とは】
刑法240条は強盗致傷罪を規定しています。
「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する」(刑法240条)
刑法240条の「強盗」とは、刑法236条の強盗罪の犯人や、刑法238条の事後強盗罪の犯人、刑法239条の昏睡強盗罪の犯人を指し、それぞれ既遂犯・未遂犯は問わないとされています。
ここで、刑法236条1項を見てみると、以下のように規定されています。
「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」(刑法236条1項)
強盗罪の未遂犯は強盗未遂罪として処罰されます(刑法243条)。
刑法236条1項の強盗罪の成立には「暴行又は脅迫を用いて」「強取」がなされる必要があります。
そして、強盗罪における「暴行又は脅迫」を用いた「強取」とは、被害者の反抗を抑圧するものに足りる暴行又は脅迫により、財物を奪取することをいいます。
刑事事件例では、愛知県豊田警察署の警察官は、AさんによるVさんの髪をつかみ、壁に頭をぶつけるなどして「ぼこられるか金を出すか」などと脅迫する行為は、強盗罪における「暴行又は脅迫」に該当すると考えたのでしょう。
そして、結局AさんはVさんから現金などの財物を奪取するに至っていません。
よって、愛知県豊田警察署の警察官の判断を前提にすると、Aさんは強盗未遂罪の犯人である、すなわち刑法240条の強盗致傷罪の主体である「強盗」に該当すると考えられます。
この刑法240条の強盗致傷罪の主体である「強盗」が、強盗の機会に「人を負傷させた」とき、その者には強盗致傷罪が成立することになるのです。
刑事事件例をみてみると、Aさんは、上記のような「暴行又は脅迫」により、Vさんに全治2週間の怪我を負わせています。
よって、Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられます。
なお、確かにAさんはVさんから現金などの財物を奪取するに至っていません。
しかし、強盗致傷罪の既遂犯・未遂犯は、財物を奪取したか否かではなく、負傷の結果を生じさせたか否かで決まると考えられています。
そのため、Aさんには強盗致傷罪の既遂犯が成立すると考えられるのです。
【強盗致傷罪と示談】
強盗致傷事件を起こした場合において、少しでも刑を軽くさせたい場合は、強盗致傷事件の被害者の方であるVさんと示談をすることが重要となります。
本件強盗致傷事件では、共犯者としてBさんがいます。
そのため、Aさんの刑事弁護士としては、Bさん又はBさんの選任された刑事弁護士と連絡を取った上、被害弁償額を按分する方向性で示談交渉を開始するなど、円滑な示談交渉に向けた迅速な対応を行うことができると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
加重収賄罪の容疑の収賄事件を弁護士に相談
加重収賄罪の容疑の収賄事件を弁護士に相談
加重収賄罪の容疑の収賄事件を弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは愛知県刈谷市の農業林業振興課に勤務していました。
愛知県刈谷市の農業林業振興課では林道工事を計画していましたが、その発注の際、AさんはB建設会社から有利な取り計らいをしてほしい旨の依頼を受けました。
このB建設会社からの依頼を受け、Aさんは、B建設会社が入札できるよう違法に有利な取り扱いをしました。
そして、AさんはB建設会社から賄賂として現金30万円を受け取り、自己のために消費しました。
その後、Aさんは愛知県刈谷警察署の警察官により加重収賄罪の容疑で逮捕されました。
(2020年11月19日に福井新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【加重収賄罪とは】
刑法第197条の3第1項は、加重収賄罪について、以下のように規定しています。
刑法第197条の3第1項
公務員が前2条(注:刑法第197条・第197条の2)の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当な行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
第2項
公務員が、その職務上不正な行為をしたと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項を同様とする。
加重収賄罪(刑法第197条の3第1項)が「前2条」として引用する刑法第197条第1項は、単純収賄罪と受託収賄罪を規定しています。
刑法第197条第1項
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。
これらの条文を整理すると、以下のような関係があるといえます。
まず、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」は、単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)が成立します。
次に、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした」うえ、「請託を受けた」場合には、受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)が成立します。
さらに、これらの単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)・受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)を犯した者が、「よって不正な行為をし、又は相当な行為をしなかったとき」は、加重収賄罪(刑法第197条の3第1項)が成立します。
以上のような関係を前提に、Aさんに加重収賄罪が成立するか考えたいと思います。
【加重収賄罪の各要件】
まず、Aさんは単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)・受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)を犯した者であるといえるか考えます。
単純収賄罪の要件である「賄賂」(刑法第197条第1項前段)とは、公務員の職務行為に対する対価としての不正な報酬をいいます。
刑事事件例でAさんがB建築会社から受け取った現金30万円は、公務員であるAさんの職務行為に対する対価としての不正な報酬であるといえます。
よって、AさんがB建築会社から受け取った現金30万円は、単純収賄罪の「賄賂」(刑法第197条第1項前段)に該当すると考えられます。
また、同じく単純収賄罪の要件である賄賂の「収受」(刑法第197条第1項前段)とは、供与された賄賂を自己の物とする意思で取得することをいいます。
刑事事件例では、AさんはB建築会社から現金30万円を受け取り、まさに自分のために消費していますので、単純収賄罪の賄賂の「収受」(刑法第197条第1項前段)に該当すると考えられます。
そして、受託収賄罪の要件である「請託を受けた」(刑法第197条第1項後段)とは、一定の職務行為を行うことの依頼を受けたことをいいます。
刑事事件例では、AさんはB建設会社から有利な取り計らいをしてほしい旨の依頼を受けています。
よって、Aさんは、受託収賄罪の「請託を受けた」(刑法第197条第1項後段)といえると考えられます。
以上より、ひとまずAさんは受託収賄罪を犯したものであるといえると考えられます。
次に、Aさんに加重収賄罪が成立するかを考えます。
加重収賄罪の要件である「不正な行為」(刑法第197条の3第1項)とは、積極的行為により職務に違反することをいいます。
刑事事件例では、Aさんは、B建設会社からの依頼を受け、B建設会社が入札できるよう違法に有利な取り扱いをしました。
このAさんの行為は、公務員の裁量権を濫用した職務違反行為であると考えられます。
よって、このAさんの行為は、加重収賄罪の「不正な行為」(刑法第197条の3第1項)に該当すると考えられます。
以上より、Aさんには加重収賄罪が成立すると考えられます。
これまで検討してきた通り、収賄事件では法律の適用関係が多少複雑であるといえます。
そのため、まずは、刑事事件に強い弁護士が在籍する法律事務所へ法律相談をし、専門的な見地から分かりやすい言葉で収賄事件について助言してもらうことで収賄事件の全貌を把握することが重要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
加重収賄罪の容疑の収賄事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。
非現住建造物等放火事件で逮捕されたら
非現住建造物等放火事件で逮捕されたら
非現住建造物等放火事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、愛知県刈谷市にあるVさんが所有する木造2階建ての家屋に火をつけて全焼させました。
Vさんはこの家に1年以上前に住居として使用することを放棄しており、事件当時は上記家屋にVさんを含め誰も住んでいませんでした。
捜査の結果、Aさんは愛知県刈谷警察署の警察官により、非現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されました。
(2020年7月28日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【非現住建造物等放火罪とは】
刑法109条1項
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
非現住建造物等放火罪は、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船または鉱坑」に「放火して」「焼損」した場合に成立します。
非現住建造物等放火罪の「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない」とは、現に人が起臥寝食の場所として日常的に使用しておらず、かつ、現に人が建造物内にいないことをいいます。
非現住建造物等放火罪の「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物」の具体例としては、物置小屋や倉庫、納屋などが挙げられます。
また、居住者が住居として使用する意思を放棄した場合には、非現住建造物等放火罪の「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物」に該当すると考えられています。
刑事事件例の建造物は、Vさんが所有しているものですが、Vさんはこの家に1年以上前に住居として使用することを放棄しており、事件当時は上記家屋に誰も住んでいませんでした。
このため、刑事事件例の家屋は、非現住建造物等放火罪の「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物」に該当すると考えられます。
非現住建造物等放火罪の「放火して」とは、目的物または媒介物に点火することをいいます。
非現住建造物等放火罪の「焼損」とは、火が媒介物を離れて、目的物が独立して燃焼を継続する状態に達することをいいます。
刑事事件例では、Aさんの放火によりVさん所有の建物は全焼しており、非現住建造物等放火罪の「放火して」「焼損」したという要件は満たすと考えられます。
よって、Aさんには非現住建造物等放火罪が成立すると考えられます。
【非現住建造物等放火事件の刑事弁護活動】
非現住建造物等放火事件で起訴され有罪となってしまった場合、Aさんは「2年以上の有期懲役」に科せられることになります。
ですから、刑事弁護士としては、Aさんに実刑が科され刑務所に服役することを避けるための刑事弁護活動を行うことが考えられます。
例えば、もし非現住建造物等放火事件の被害者の方との示談をしていないのであれば、被害者の方との示談交渉を開始します。
この非現住建造物等放火事件の被害者の方との示談交渉の結果、裁判所に示談書や嘆願書などを提出することができれば、執行猶予を得られる可能性は高まります。
執行猶予が得られない場合でも、書面によって情状酌量を求めたり、情状証人を呼んで証言してもらったりすることで刑罰の減軽を求めていくことが考えられます。
刑の減軽を求める刑事弁護活動においても、非現住建造物等放火事件の被害者の方との示談をすることは重要であるため、上述のようにすみやかに示談交渉を開始することが効果的でしょう。
だからこそ、まずは刑事事件に強い弁護士への相談・依頼がおすすめされます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
非現住建造物等放火事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。