犯人蔵匿等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
愛知県名古屋市に住むAさんは,1ヶ月前から友人であるBさんと同居していました。
AさんはBさんが何らかの罪を犯し自身の住居に居られなくなっていたという事情を知っていましたが,具体的にどの犯罪をBさんが行ったのかは知りませんでした。
ある日,Aさんのもとに南警察署の警察官が「Bさんを知っていませんか」と尋ねてきました。
実はBさんは詐欺の容疑で愛知県警察の捜査対象となっていたのです。
(フィクションです)
【犯人蔵匿等罪】
犯人蔵匿等罪は犯人や逃走者をかくまう罪で,刑法第103条に規定されています。
刑法第103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し,又は隠避させた者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
犯人蔵匿等罪の客体は「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」と「拘禁中に逃走した者」です。
「罰金以上の刑に当たる罪」とは,その法定刑が罰金以上の刑を含む罪のことです。
「罪を犯した者」について,判例は真犯人に限らず犯罪の嫌疑で捜査あるいは訴追中の者をも含むものとしています(最判昭和24・8・9刑集3巻9号1440頁など参照)。
また,捜査開始前(まだ被疑者になる前)の者も,真犯人である限り犯人蔵匿等罪の客体とされます。
犯人蔵匿等罪は,国の刑事司法作用の適正な実現を守るために設けられた犯罪類型なので,公訴時効の完成,刑の廃止,恩赦等の理由によってもはや訴追や処罰の可能性がなくなった者は,仮に真犯人であったとしても犯人蔵匿等罪の客体にはならないとされています。
一方、「拘禁中に逃走した者」とは,法令によって拘禁されている間に逃走した者をいいます。
次に、「蔵匿」とは,場所を提供してかくまうことをいいます。
そして、「隠避」とは,蔵匿以外の方法で官憲による発見・逮捕を免れさせる一切の行為をいいます。
これには、変装道具を与えたり逃走資金を提供するといった有形的な方法による隠避と,捜査中の情報を犯人に与えたり目撃者を説得して捜査機関への情報提供をやめさせるといった無形的な方法による隠避があります。
ただし,犯人自身が隠避に当たる行為を行っても処罰対象とはなりません。
隠避行為のうち代表的なものに,身代わりとなって警察に出頭することで犯人の発見・逮捕を妨害する行為があります。
よって,ある人に身代わりとして出頭させることを指示したりした場合は,犯人隠避罪の教唆となります。
犯人隠避罪の教唆については、犯人自身が行っても成立すると考えられているので注意が必要です。
さらに,現に犯人の身柄が捜査機関などに拘束されている場合に,身代わりとなって出頭することで犯人の身柄を解放させるような性質の行為も隠避に当たるとされています(最決平成元・5・1刑集43巻5号405頁)。
故意の内容については,法律の専門家でもない一般人に罰金以上の刑に当たることの認識は要求できないため,判例(最決昭和29・9・30刑集8巻9号1575頁参照)では殺人犯人であるとか窃盗犯人であるというような認識があれば足りるものとされています。
また,犯罪の具体的内容を認識していなかったり,具体的内容に関する錯誤があったとしても故意は阻却されませんが,一方で,法定刑として拘留や科料のみが予定された軽微な犯罪(侮辱罪や軽犯罪法違反など)の犯人であると誤信していた場合は,犯人蔵匿等罪の故意は認められません。
犯罪というのは故意が認められなければ処罰されないので、故意があるかどうかは重要な問題です。
今回のケースを見ていきましょう。
Bさんは詐欺の被疑者です。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役ですので,犯人蔵匿等罪の客体たり得ます。
AさんはBさんに自身の住居を提供していますので蔵匿に当たると考えることは十分に評価できます。
AさんはBさんがどんな犯罪を行ったのか知りませんが,何らかの罪を犯したことについての認識はありますので故意も認められそうです。
以上からすれば、Aさんには犯人蔵匿等罪が成立すると考えられます。
犯人蔵匿等罪は,示談交渉を行える直接の相手(被害者)がいませんので,示談をして不起訴や執行猶予の獲得を目指すというわけにはいきません。
しかし,犯人蔵匿等罪を犯すに至った経緯などに酌量すべき情状があれば,これを主張することで不起訴や執行猶予を獲得できる可能性もあります。
反省の姿勢を捜査機関に伝えることも、不起訴や執行猶予を目指すうえで当然ながら有効です。
犯人蔵匿等罪の被疑者となってしまった方,愛知県名古屋市で犯罪を行ってしまった方,南警察署の捜査を受けている方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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