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【ニュース紹介】自動車によるひき逃げ事件
今回は、愛知県で起きたひき逃げ事件の報道をもとに、ひき逃げ事件の特徴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
【ケース】
令和4年11月、愛知県蟹江町の交差点で、軽乗用車を運転中に女性をはねたにもかかわらず、そのまま逃げたとして、51歳の女が逮捕されました。
道路交通法違反のひき逃げなどの疑いで逮捕されたのは、蟹江町の51歳女性です。
警察によりますと、女性は11月14日に蟹江町須成の交差点で、軽乗用車を運転中に道路を横断していた女性(78)をはねたにもかかわらず、そのまま逃げた疑いがもたれています。
はねられた女性は、腰の骨を折るなど全治2カ月の重傷です。
警察の調べに対し、女性は「全然記憶にありません」と容疑を否認しています。
警察は当時の詳しい状況を調べています。
(https://www.nagoyatv.com/news/?id=016532 令和4年12月14日 メ~テレ 「はねられた女性は腰の骨を折るなど全治2カ月の重傷 ひき逃げの疑いで女を逮捕 愛知」より ※被疑者氏名は加筆修正を行い伏せてあります)
【ひき逃げ事件の特徴】
人身事故を起こした場合、「過失運転致死傷罪」、「危険運転致死傷罪」などの罪に問われますが、これに加え、負傷者の救護措置や危険防止措置などを怠り現場から逃走した場合は、ひき逃げの罪にも問われる可能性が高いです。
人身事故自体が構成する犯罪に加えて、ひき逃げの罪についても有罪判決が下されると、実刑判決などの極めて重い処分となる可能性があります。
また、身体拘束が長期化する可能性が高い点についても無視することができません。
逮捕・勾留された場合は、捜査段階で最長23日間、身体拘束を受けることになります。
勾留されたまま起訴された場合は、自動的に起訴後勾留に移行し、保釈許可決定がなされなければ、やはり外に出ることができません。
逮捕・勾留は罪証隠滅、逃亡を阻止するために行われる処分ですが、ひき逃げ行為自体が逃亡を内容としていることからも(身体拘束を解除した場合、再び逃亡するおそれがあると判断されやすい)、早期の身柄解放の実現は極めて難しいといえます。
一方で、事故に気付かずに事故現場を離れた場合、事故を起こしたのに救護等をしなかったという認識がないことになり、故意がないため、犯罪は成立しません。しかし、このように否認すると、身体拘束が長期化し、取調べも過酷なものとなりがちです。
人身事故を起こし、ひき逃げなどの疑いで逮捕された場合には、速やかに弁護士の接見を受け、今後の弁護活動につきアドバイスを受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を中心に扱う法律事務所です。
ご家族が人身事故を起こし、ひき逃げなどの疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【解決事例】不正アクセス禁止法違反事件で不起訴処分獲得
不正アクセス禁止法違反事件で検挙され、不起訴処分を獲得した事例につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事例】
Aさん(20代男性)は、交際相手のVさんが浮気をしているのではないかと疑い、Vさんのメールを勝手に読むために、VさんのフリーメールパスワードをVさんに無断でフリーメールアプリに入力し、Vさんのフリーメールアカウントに不正にアクセスしたとして、愛知県港警察署に、不正アクセス禁止法違反の疑いで取り調べを受けていました。
Aさんは「私が間違っていました。今回のことは公にはしたくありません。Vさんには電話も着信拒否されていますが、何とかVさんに謝って許してもらいたいです。」と相談時にお話されました。
弁護士は、Vさん代理人弁護士と示談交渉を行い、その結果「AさんがVさんに対し深く謝罪し、示談金をお支払いし、VさんはAさんに対し、Aさんを許し刑事処分を望まない」旨の示談を締結することができました。
その後、示談が締結できた旨を検察庁に提出したところ、Aさんは不起訴処分となりました。
(※守秘義務及び個人情報保護の観点から一部、事実と異なる記載をしています。)
【不正アクセス禁止法について】
不正アクセス禁止法では、不正アクセス行為等を禁止するとともに違反行為について罰則が定められています。
禁止されている行為として
①不正アクセス行為の禁止(不正アクセス禁止法11条)
②他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止(不正アクセス禁止法4条、12条1号)
がありますので、それぞれを見ていきましょう。
【①不正アクセス行為の禁止(不正アクセス禁止法11条)】不正アクセス行為の禁止に反した場合には、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
不正アクセス行為には、以下のものがあります。
・他人の識別符号を悪用する行為(不正アクセス禁止法2条4項1号)
他人の識別符号を悪用することにより、本来自分がアクセスする権限のないコンピューターを利用する行為を禁止しています。
他人のIDやパスワードによる不正ログインが念頭に置かれています。
・コンピュータプログラムの不備を衝く行為(不正アクセス禁止法2条4項2号、3号)
アクセス制御のプログラムの弱いところや、アクセス管理者の設定上のミスなどの安全対策上の不備、いわゆるセキュリティホールを利用し、システムに不正に侵入する行為を禁止しています。
【②他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止(不正アクセス禁止法4条、12条1号)】
不正アクセス行為に使用する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得する行為が禁止されており、これに違反すると、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
【弁護活動など】
サイバー犯罪においても、今回のAさんの事件のように、被害者が存在する事件も多いのです。
そのような場合には、被害者に対して謝罪や示談を締結することで、不起訴処分や刑の減軽を目指していく弁護活動を行うことも可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部では、サイバー犯罪についての経験が豊富な弁護士によるアドバイスを受けることができます。
不正アクセス禁止法で検挙された、家族が逮捕されてしまったという方は
0120-631-881まで是非ご連絡ください。
ご家族が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。
捜索手続の適法性が注目された事例を解説
今回は、過去の判例をもとに、捜索手続の適法性が争われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
【ケース】
現在、名古屋市南区のAさんの自宅において、Aさんが違法薬物であるMDMAを譲り受け、これを所持、使用した疑いで愛知県南警察署の捜索が行われています。
当日の午前8時頃に捜索差押許可状が呈示され、捜索手続が開始されましたが、同日午前11時頃、Aさんの自宅に宅配便が届きました。
荷物は小包のようです。
警察官らは「今回の捜索差押許可状の効力により小包を開封し中を調べる」として同小包を開封したところ、MDMA様の錠剤が発見されました。
後に前記錠剤はMDMAであることが判明したため、警察官らはMDMAを譲り受けた疑いでAさんを逮捕しました。
Aさんは捜索開始の後に届いた荷物が開封され、中身を調べられたことに不満を抱いており、法律上適正な捜索であったのか疑問に感じています。
(最高裁平成19年2月8日決定をもとにしたフィクションです)
【捜索差押許可状とは】
警察官などの捜査機関が被疑者または関係各所を強制的に捜索できることはよく知られていることでしょう。
この場合、関係者が拒絶したとしても、令状による捜索・差押は拒否することができません。
ただし、強制的な捜索・差押を行うためには、原則として、その処分を受ける者に対し、捜索差押許可状が呈示されなければなりません(刑事訴訟法第222条1項・第110条)。
通常、令状を呈示して捜索差押に着手した後、捜査に必要な捜索・差押を行い、捜索差押手続が終了しますが、ケースの場合、捜査官らは令状呈示後に配達された小包の捜索・差押えを行っています。
Aさんはこのような順序の手続であったことに不満、疑問を感じているようです。
【ケースのモデルになった事件についての見解】
※最高裁平成19年2月8日決定要旨
「警察官が,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,捜索場所を被告人方居室等,差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき,被告人立会いの下に上記居室を捜索中,宅配便の配達員によって被告人あてに配達され,被告人が受領した荷物について,警察官において,これを開封したところ,中から覚せい剤が発見されたため,被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し,逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は,上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが,警察官は,このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である」
前記最高裁決定には明確な理由付けがなされていませんが、前記判例によれば、ケースのような捜索・差押手続も適法とされる可能性が高いでしょう。
刑事手続の適法性が争われる、あるいは、争いうるケースは、捜索手続に関連する事件以外にも多々あります。
既存の判例のみでは説明しきれないケースもあるかもしれません。
新しい問題点が争われ、判断がなされた場合には、新規の判例となることもあります。
ただし、このようなケースに対処するためには、刑事事件に関する高度な法律的知識を要します。
捜索・差押手続の適法性に疑問を抱いた場合は、刑事事件に詳しい弁護士と相談し、今後の対策についてアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
捜索・差押手続の適法性に疑問を感じ、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【解決事例】名古屋市中川区の建造物侵入事件で勾留阻止と不起訴処分を獲得
建造物侵入事件で勾留阻止と不起訴処分を獲得した事例につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
名古屋市中川区在住のAさんは、自宅近くのV高校付近で、夜間ジョギングをしていました。
その際にふざけて自宅の鍵を投げて遊んでいたところ、誤ってV高校の敷地内に自宅の鍵が入ってしまいました。
Aさんは鍵を取るため、V高校の校門を乗り越えて敷地内に入ったところ、付近を警戒していたV高校の警備員に発見され、警備員の通報で駆け付けた愛知県中川警察署の警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんのご家族の方はご相談時、「身柄がこれ以上拘束されていると息子の勤務先に迷惑がかかってしまいます。なんとか釈放することはできないでしょうか。」とお話しされました。
(守秘義務の関係から、一部異なる表記をしています。)
【具体的な弁護活動】
Aさんは逮捕された後、勾留請求がされました。
そのため、弁護士がまず身柄解放のため裁判所に対して勾留請求に対する準抗告申立てを行いました。
準抗告申立書において、①事案の性質上、証拠隠滅・逃亡のおそれがほとんどないこと、②犯罪自体も比較的軽微であり、犯情も悪質とはいえないこと、③Aさんの勤務先の上司が一刻もはやい仕事復帰を望んでいること、④今後はAさんの両親が監督することなどを挙げて、勾留請求を却下すべきであると主張しました。
その結果、準抗告が認められ、Aさんの身柄は解放されました。
さらに、弁護士がV高校の学校長との示談交渉を行い、被害届の取り下げと、宥恕条項(被疑者を許し、刑事処罰を求めないことを内容とするもの)付きの示談が成立しました。
そして、検察官に対して、今回の事件は被害届が取り下げられたうえ宥恕条項付きの示談が成立していることから、不起訴処分が相当であると主張しました。
その結果、Aさんは不起訴処分となりました。
【まとめ】
検察官により勾留請求がされ、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留され、さらにやむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留延長となるので、長期間拘束されることになります。
早期の身柄解放ができれば、社会復帰を円滑に遂げられる可能性が高まりますので、弁護士による早期の身柄解放活動が重要になります。
今回の事案では、犯罪自体が比較的軽微であり、証拠隠滅や逃亡のおそれもないことに加え、Aさんが勤務先で重要な役割を任されており、Aさんの勾留が長引けば、会社全体に不測の不利益が生じるおそれがあることが、勾留阻止につながったと考えられます。
早期の身柄解放のためには、刑事事件に強い弁護士による迅速かつ適切な弁護活動が重要となります。
お困りの方は、刑事事件に強い弁護士に弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
勾留阻止といった身柄解放のための弁護活動はお任せください。
是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【ニュース紹介】傷害致死事件について
今回は、愛知県で起きた傷害致死事件の報道をもとに、傷害致死事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
【ケース】
去年7月、名古屋市熱田区の住宅で同居していた当時90歳の父親に暴行を加え死亡させたとして、60歳の長男が逮捕されました。
傷害致死の疑いで逮捕されたのは、名古屋市熱田区の会社員男性(60)です。
愛知県熱田警察署によりますと、男性は去年7月、同居していた父親(当時90)の頭を後ろから両手でつかみ、複数回にわたって振り動かす暴行を加え、首の骨を骨折させるなどの重傷を負わせ死亡させた疑いがもたれています。
男性は父親と2人暮らしで、去年6月、父親の顔に湯を沸かしたやかんを押し当てたなどの疑いで逮捕されていました。
調べに対し、男性は「首を前後左右に振った。間違いなくやりました」と容疑を認めた上で、「死亡させるつもりはなかった」などと供述しているということで、警察が当時の詳しい経緯を調べています。
(11月15日 CHUKYO TV NewsWEB 「首の骨が折れ…住宅で男性(90)死亡 同居の長男(60)を傷害致死容疑で逮捕」より引用 ※一部変更を加えてあります)
【傷害致死罪とは?】
身体を傷害し、よって人を死亡させる犯罪です(刑法第205条)。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役(最長20年の有期懲役)となっています。
傷害致死罪について有罪判決が確定したとしても死刑に処せられることはありませんが、人を死亡させている以上、相当に重い犯罪ということができます。
また、殺意が認められる場合は、傷害致死罪ではなく、殺人罪が成立する可能性が高いです。
殺人罪の法定刑は、「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」となっています。
殺人事件や傷害致死事件の捜査段階では、殺意の有無が重要なポイントとなります。
捜査段階から慎重に吟味が行われるでしょう。
【傷害致死事件は裁判員裁判対象事件】
傷害致死事件は裁判員裁判対象事件です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条1項2号)。
日常、刑事裁判と関わることのない市民の方々が裁判員として裁判に参加し、被告人が有罪であるか無罪であるか、有罪である場合にはどのような刑が適切かを裁判官と共に決めることになります。
裁判員裁判では、公判前整理手続が必ず実施され(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第第49条)、争点の整理、証拠の整理等が行われます。
公判前整理手続は複雑で、対応するには刑事手続に関する高度な法律的知識が必要です。
傷害致死の疑いで逮捕された場合は、すぐに刑事事件に熟練した弁護士を依頼し、事件解決のサポートを受けることを強くおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が傷害致死の疑いで逮捕され、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
無賃乗車と成立する犯罪
無賃乗車と成立する犯罪について、あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
名古屋市瑞穂区在住のAさんは、名古屋市中村区にある会社に地下鉄で通勤しています。
あるとき、日々の電車代を節約したいと考えたAさんは、最低運賃の切符を購入して入場し、降車する際は、改札を出ようとする目の前の客にピッタリとついていくことで改札を通過し、電車代を節約する方法を思いつきました。
実際に何度か試したところ、駅員にバレなかったため、数ヶ月にわたって上記方法による乗車を繰り返しました。
しかし、Aさんの改札を出る様子を不審に思った駅員が愛知県中村警察署に相談し、Aさんは自宅最寄り駅の瑞穂区役所駅で張り込んでいた愛知県瑞穂警察署の警察官に呼び止められ、取り調べを受けることになりました
。後日再び取調べを受けることになったAさんは、今後の見通しなども含め、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
【今回のケースは無賃乗車にあたる】
今回のケースのように、出発地では入場券を購入して最低運賃で改札を通り抜け、目的地ではほかの乗客に紛れて改札を受けずに場外へと出る行為は、本来支払うべき運賃を免れているため、無賃乗車にあたります。
今回のケースと同様の手口で、数十万円もの電車代の支払いを免れたとして検挙された事案も存在します。
無賃乗車などの不正乗車が発覚した場合、鉄道営業法第18条および鉄道運輸規程第19条により、その乗車区間に相当する運賃とその2倍以内の増運賃(合計で3倍以内の額)が請求されますが、これは民事上の問題です。
刑事については、後述するような複数の問題があります。
【どのような犯罪が成立する?】
無賃乗車については、適用される法律が一概に決まっておらず、状況に応じて適用される法律が異なっています。
まず、駅係員や乗務員が直接切符を確認するような駅で無賃乗車を行った場合、人を欺いて本来支払うべき運賃を免れていることになるため、財産上不法の利益を得たとして、刑法第246条2項の詐欺罪(「2項詐欺罪」といいます)に該当することが考えられます。
刑法
第二百四十六条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
しかし、現在では自動改札機を設置している駅がほとんどであるため、2項詐欺罪が問題になることは少ないです。
次に、今回のケースのように自動改札機を利用した無賃乗車については、刑法第246条の2の電子計算機使用詐欺罪が成立することが考えられます。
電子計算機使用詐欺罪は、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えて、財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作ること等によって、財産上不法の利益を得ることで成立し、罰則として「十年以下の懲役」が規定されます。
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
自動改札機を用いた無賃乗車に同罪の成立を認めるべきかについては争いがある一方、過去の裁判例には同罪の成立を認めたものもあります。
今回のケースだと、Aさんが不正な手段で改札を通過したことで、自動改札機に虚偽の情報を与えたとして電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性があります。
また、有効な切符によらないで入場した場合には、刑法第130条の建造物侵入罪、鉄道営業法第29条違反や軽犯罪法第1条32号違反が問題となります(なお、鉄道営業法第29条は同法第30条の2により親告罪となっており、罰則についても罰金等臨時特措法第2条の規定によって「2万円以下の罰金または科料」と読み替えることになっています)。
今回のケースでは、Aさんは本来必要な切符を購入することなく駅構内への入退場や電車の利用を行っているため、上記の犯罪が成立することが考えられます。
刑法
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
鉄道営業法
第二十九条 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ五十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 有効ノ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ
二、三 (略)
罰金等臨時措置法
第二条 刑法(明治四十年法律第四十五号)、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪(条例の罪を除く。)につき定めた罰金については、その多額が二万円に満たないときはこれを二万円とし、その寡額が一万円に満たないときはこれを一万円とする。ただし、罰金の額が一定の金額に倍数を乗じて定められる場合は、この限りでない。
軽犯罪法
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一~三十一 (略)
三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
他にも、行為態様によっては、刑法第234条の威力業務妨害罪などが成立する場合もあるなど、無賃乗車は様々な犯罪が成立する可能性がある行為といえます。
【具体的な弁護活動】
少しでも刑事処分を軽くしたいと考える場合、弁護士による鉄道会社との示談交渉が重要になります。
鉄道営業法29条については親告罪なので、鉄道会社との示談で告訴を取り下げてもらうことができれば、事件化を回避すること(不送致処分)ができます。
電子計算機使用詐欺罪や建造物侵入罪、軽犯罪法1条32号違反については親告罪ではないものの、示談締結ができれば不起訴処分を獲得することも可能です。
特に電子計算機使用詐欺罪については、罰則が「十年以下の懲役」であり罰金刑が定められておらず、起訴されれば必ず正式裁判となるため、不起訴処分の獲得や仮に起訴された場合の執行猶予の獲得には、示談締結が非常に重要になります。
無賃乗車をしてしまい警察の取り調べを受けた、またはその予定がある方など、お困りの方は早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【裁判紹介】業務上横領事件についての裁判例を紹介
業務上横領事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
【事案】
社内システムで現金の精査結果に関するデータを操作する権限を利用し、顧客から回収した売上金計約6500万円を着服したとして、業務上横領の罪に問われた被告人に、名古屋地裁は懲役5年(求刑懲役7年)の判決を言い渡した。
(産経新聞「6500円着服の元社員に懲役5年」(2022/5/26)を引用・参照)。
【業務上横領罪】
刑法は、252条以下において、(委託物)横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪について処罰規定を置いています。
(委託物)横領罪が「5年以下の懲役」と定めているのに対して、遺失物等横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と法定刑は軽くなっています。
これに対し、業務上横領罪は「10年以下の懲役」と法定刑が重くなっていることに注意が必要です。
特に横領罪が成立することに争いはない場合は、「業務」性が認められるか否かによって罪の重さが変わってくることになります。
【業務上横領事件の弁護活動】
本事案では、上述のとおり被告人は「懲役5年」の実刑判決を受けています。
財産犯の場合、事後的な被害回復である被害弁償が刑事処分を大きく左右する情状となり、こと横領罪においては極めて重要性が高いと考えられています。
例えば、会社から1400万円を横領したとして、業務上横領の罪に問われた事件においては、一部被害弁償の事実が考慮され、「懲役3年、執行猶予5年」の執行猶予判決が下されています。
以上のように被害額が多額であっても、被害弁償や被害者との示談が成立の有無によってその刑事処分は大きく異なってくる可能性があり、弁護士を通じた示談交渉等が事件の命運を分けるといっても過言ではありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、業務上横領事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
業務上横領事件で逮捕・起訴された方のご家族等は、365日いつでも繋がるフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。
【ニュース紹介】無銭飲食の疑いで男を逮捕
無銭飲食で逮捕された事例につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
名古屋市中区の居酒屋で無銭飲食をしたとして、40代の男が逮捕されました。
詐欺の疑いで愛知県中警察署に逮捕されたのは同市在住の無職の男です。
男は、同市内の居酒屋で酒やつまみなどおよそ3000円分について無銭飲食をした疑いが持たれています。
愛知県中警察署によりますと店の防犯カメラに男が店員に気づかれないよう隠れるようにして店を出ていく様子が映っていたということです。
(10月12日朝日テレビ配信のニュースを参考に一部変更したものです。)
【無銭飲食は何罪にあたる?】
無銭飲食は、その態様に応じて成立する犯罪が異なります。
まず、入店当初から代金を支払う意思がないのに、飲食物を注文して、これを飲食した場合には、詐欺罪(刑法246条1項)が成立します。
(刑法)
第二百四十六条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、人を騙して財物の交付を受ける犯罪であり、この場合では、最初から代金を支払う意思がないのに、支払うと装い、これを信じた店側に飲食物(財物)を提供させていることから、その時点で詐欺罪が成立することになります(飲食後に店員に気付かれないように退店した時点ではありません)。
今回の事案は、詐欺罪の疑いで逮捕されていますから、この場合に該当すると考えられます。
次に、最初は代金を支払う意思があったものの、飲食物の提供後に代金の支払いを免れようと考えた(例えば、財布を忘れたことを飲食後に気付き、支払いを免れようと考えた)場合が挙げられます。
このとき、店員に対して「財布を忘れたので取りに行きます」などと嘘をついて退店し、そのまま戻らなかった場合には、人を騙して財産上の利益を得た(飲食代金の支払いを免れた)として、詐欺利得罪(刑法246条2項)が成立します。
第二百四十六条
1 (略)
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
一方で、店側に気付かれないように逃げて代金の支払いを免れたような場合は不可罰(刑法上の犯罪に該当しない)となります。
これは、店側に気付かれていない以上、人を騙す行為が行われておらず、刑法には利益窃盗の規定が存在しないこと(窃盗罪は「財物を窃取した」場合のみ処罰される)が理由です。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
もっとも、この場合でも、逃げている途中で店員に見つかったため、捕まらないように暴行や脅迫を加えた場合は、強盗利得罪(刑法236条2項)が成立するおそれがあります。
強盗利得罪の罰則は「五年以上の有期懲役」ですので、極めて重大な犯罪となります。
第二百三十六条
1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【お困りの場合は弁護士に相談を】
詐欺罪は罰金刑が規定されておらず、起訴されれば必ず正式な裁判となります。
また、もし強盗利得罪となってしまうと、刑法上の減刑事由がなければ執行猶予が付きませんので、必ず実刑判決となってしまいます。
そのため、少しでも刑事処分を軽くしたいと考えた場合には、被害店舗への被害弁償や示談交渉が極めて重要になります。
宥恕条項(被疑者を許し、刑事処罰を求めないことを内容とするもの)付きの示談を締結することができれば、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
もしお困りの場合は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【解決事例】交通死亡事故の弁護活動
交通死亡事故の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
Aさんは名古屋市中村区の信号・横断歩道の無い交差点で、自転車に乗ったVさんに衝突し、Vさんは死亡してしまいました。
愛知県中村警察署で取調べを受けていたAさんは相談時「ご遺族様への対応は保険会社にお任せしていましたが、ご遺族様の処罰感情がとても強いと言われましたし、検察官からも正式な裁判にするつもりだと言われました。私は公務員で、禁錮以上の刑になってしまうと職を失います。どうしたらよいでしょうか。」とお話しされました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)
【前科がつくことによる不利益】
前科とは、一般的には過去に確定した有罪判決を受けた事実・経歴を意味します。
前科があることによって、社会生活上の不利益を受けることがあります。
例として、禁錮以上の刑に処せられた場合には、国家公務員や弁護士、公認会計士などの資格の欠格事由に当てはまることになるなど、職業上の制約として、一定の資格が制限されることがあるのです。
前科となる場合とは、捜査後に起訴され、裁判所によって有罪の判決が下された場合のことです。
となれば、「無罪判決となればよいのでは?」と考えられるかもしれません。
しかし、検察官が起訴した場合の有罪率は大変高く、99%が有罪となるといわれています。
ならどうしたらよいのでしょう?
それは、不起訴処分を目指すことです。
不起訴処分とは、検察官が事件に対し、起訴をしないという処分をするということです。
不起訴処分となれば事件は終了し、前科にはなりません。
不起訴処分を目指すには、被害者様がいる事件につきましては、弁護士をとおして被害者様との示談成立をするのがよいでしょう。
【事案の弁護活動】
弊所弁護士が、ご遺族様代理人弁護士に、Aさんが謝罪してお見舞金を払いたいと言っている旨を伝えました。
その結果、ご遺族様とお見舞金を支払い、謝罪することで、ご遺族様よりAさんの処分を罰金もしくは不起訴処分の寛大な処分にして欲しい旨の意思表示を頂きました。
その経緯、結果を検察官に提出したところ、Aさんは不起訴処分となりました。
被害者様の処罰感情が強く、謝罪を受け入れてもらえない場合でも、「弁護士ならば、まずは話を聞いても良いです」と被害者様が言われることも多いのです。
被害者様から謝罪を受け入れてもらえない時は、弁護士にお任せください。
交通死亡事故を起こし、ご遺族様に謝罪したいが拒絶されている、資格に影響しない処分を得たい方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部までご相談ください。
事故について詳細に確認をとったうえで、見通しについてご説明致します。
このコラムをご覧の方で、交通死亡事故を起こして困っている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部では、交通死亡事故に関するご相談を
フリーダイヤル 0120-631-881(24時間、年中無休)
にてご予約を受け付けております。
【解決事例】傷害事件で不起訴処分獲得
傷害事件で不起訴処分を獲得した事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
AさんはルームシェアをしているVさんに対し殴る蹴るなどの暴力を振るい、傷害を負わせたとして愛知県西警察署に逮捕、勾留されました。
Aさんの家族は「Aの職場から、Aが逮捕されたと聞きました。家族のためにも何とか早く帰ってきてほしいと考えています。」と相談時にお話しされました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)
【暴行・傷害事件の刑罰について】
傷害罪(刑法204条)
刑罰:15年以下の懲役、50万円以下の罰金
暴行罪(刑法208条)
刑罰:2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留(1日以上30日未満の期間で刑事施設に拘置する刑罰)
又は科料(1000円以上1万円未満の金銭を徴収する刑罰)
【傷害罪について】
傷害罪は、人を傷害したことで犯罪が成立します。
傷害とは、判例上「人の生理的機能に障害を与えること」と理解されています。
例えば、出血や骨折などの怪我をさせることや、病気にかからせることなどは、傷害になります。
なお、毛髪を無理矢理切ることは、人の生理的機能に障害を与えることにはあたらないとされ、暴行罪が成立すると言われています。
【暴行罪について】
暴行罪は、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった場合に成立します。
つまり、人に暴行を加えることにより、暴行罪が成立しますし
人を傷害する結果が生じたときには、傷害罪が成立することとなります。
【弁護活動について】
被害者Vさんに対し、弁護士から示談交渉を申し入れたところ、交渉に応じるとのお返事をいただきました。
また、Aさんが作成した謝罪文をVさんに渡すなどしたところ、Vさんと、「Aさんから謝罪と賠償を受けたため、Aさんを許します」という内容の示談を締結することができました。
その後、示談が締結されるなどしたことをまとめた文章を検察庁に提出したところ、Aさんは不起訴処分となり、警察署の留置場から釈放されました。
【傷害・暴行で逮捕された時は】
①事件を起こしたことを認めている場合
被害者への謝罪や被害弁償など、被害者の方と示談を行い、許してもらうことで、早期釈放を目指していきます。
示談を締結することで、不起訴処分を得たり、刑罰の量刑が軽くなる可能性が高まります。
②事件が身に覚えのない場合
警察や検察などの捜査機関に対して、本人の言い分を十分に説明し潔白を証明していくことになります。
弁護士から、取調べへの対応も行っていくこともできます。
被害者との示談交渉や取調べのアドバイスなどは、法律の専門家である弁護士に任せるのがよいでしょう。
このコラムをご覧の方で、傷害事件の被害者との示談を希望されている方、取調べのアドバイスを受けたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部では、傷害事件に関するご相談を
フリーダイヤル 0120-631-881(24時間、年中無休)
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