Archive for the ‘暴力事件・凶悪犯罪’ Category

愛知県田原市の承諾殺人事件

2021-08-03

愛知県田原市の承諾殺人事件

愛知県田原市承諾殺人事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県田原市内にある公園内において、交際相手のV1さん(40歳)とその子供のV2さん(15歳)から承諾を得て、V1さんとV2さんを刺殺しました。
V1さん・V2さんは当時貧困状態にあり、V1さんはAさんに「私を殺してほしい」、V2さんもAさんに「私もお母さんと一緒に殺してほしい」と言ったといいます。
Aさんは愛知県田原警察署の警察官により承諾殺人罪の容疑で逮捕されました。
(2020年8月5日に日本経済新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【承諾殺人罪とは】

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

承諾殺人罪は、刑法202条にいう殺人への「承諾」が死の意味を理解した上でなされた場合にのみ成立します。
例えば、死の意味を理解しない幼児や精神障害者の承諾は無効であり、承諾殺人罪は成立しません。
殺人への承諾が無効である場合は、刑法202条の承諾殺人罪ではなく、刑法199条の殺人罪が成立すると考えられています。

刑事事件例では、V1さん(40歳)とその子供のV2さん(15歳)はAさんによる殺人に承諾しているところ、二人の承諾は死の意味を理解した上でなされた有効なものであると考えられます。

そして、AさんはV1さんとV2さんの承諾を認識して、二人を刺殺しています。

よって、Aさんには承諾殺人罪が成立すると考えられます。

【承諾殺人罪と刑罰】

刑法45条は「確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする」としています。
そして、刑法47条は「併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする」としています。

刑事事件例では、V1さんの生命侵害とV2さんの生命侵害という2つの承諾殺人罪が成立しており、これら2つの承諾殺人罪は併合罪であると考えられます。

そのため、承諾殺人罪の法定刑は6月以上7年以下の懲役又は禁錮ですが、その刑の長期にその2分の1を加えた10年6月が本件刑事事件例における処断刑の長期となります。

このようにして複数の承諾殺人罪が処理された例として、母子ら4人の承諾を得て殺害した承諾殺人事件において懲役8年が言い渡された判決があります(2020年8月5日に日本経済新聞に掲載された福島地裁いわき支部判決を参照ください)。

刑事弁護士としては、刑事裁判において被疑者・被告人の方にとって有利になるような事情を主張し、6月以上10年6月という処断刑の長期内でより被疑者・被告人の方に有利な判決を獲得できるよう裁判対応をしていくことになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県田原市承諾殺人事件を起こした場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

暴力行為等処罰に関する法律違反事件で書類送検

2021-07-27

暴力行為等処罰に関する法律違反事件で書類送検

暴力行為等処罰に関する法律違反事件書類送検された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

愛知県知立市に住むAさんは、自身の娘(Vさん)と学業をめぐって口論となり、Vさんに対して包丁を突き付けるなどして、Vさんに全治1週間の怪我をさせました。
Aさんは愛知県安城警察署の警察官により、暴力行為等処罰に関する法律違反の容疑で書類送検されました。
(2020年11月6日に岐阜新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【暴力行為等処罰に関する法律違反とは】

暴力行為等処罰に関する法律第1条の2は、「銃砲又は刀剣類を用ひて人の身体を傷害したる者は1年以上15年以下の懲役に処す。」と規定しています。

ここで、刑法に定められた傷害罪の規定を見ると、刑法第204条1項は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定しています。

刑法204条1項の傷害罪ではなく、暴力行為等処罰に関する法律違反の罪が適用されるのは、人の身体を傷害する手段として「銃砲又は刀剣類を用」いられている場合です。

刑事事件例のAさんはVさんに対して包丁を突き付けるなどして、Vさんに全治1週間の怪我をさせました。
暴力行為等処罰に関する法律の規定する「銃砲又は刀剣類」を用いてVさんの身体を傷害したといえ、Aさんには暴力行為等処罰に関する法律違反の罪が成立すると考えられます。

【暴力行為等処罰に関する法律違反の罪と刑罰】

暴力行為等に関する法律第1条の2に定められた刑は「1年以上15年以下の懲役」であるのに対して、刑法第204条1項の傷害罪に定められた刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
つまり、暴力行為等に関する法律違反(第1条の2違反)となった場合は1年以上15年以下の刑事施設への拘置及び刑務作業(懲役)が科せられることになります。
これに対して、傷害罪を犯した場合は1月以上15年以下の刑事施設への拘置及び刑務作業(刑法12条1項)か、50万円以下の罰金が科せられることになります。

選択刑として罰金刑が設けられており、罰金が科せられる場合、略式手続という非公開手続により事件が終局する可能性があります。
また、執行猶予付き判決を獲得することができなかったとしても刑事施設に収容される恐れもありません。
よって、暴力行為等に関する法律違反事件を起こし書類送検された場合には、傷害事件を起こした場合と比較して、正式起訴がなされる可能性や重い刑が科せられる恐れがあることに注意しなければなりません。

刑事弁護士としては、書類送検後に正式起訴がなされた場合、執行猶予付き判決の獲得を目指し、裁判官に対して、犯行に至る経緯や犯行の態様、犯行を行った結果の軽重、犯行の危険性などの犯罪それ自体に対する事情(犯情)について、被告人に有利な事情を主張していくことになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
暴力行為等処罰に関する法律違反事件書類送検された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

暴行事件の容疑を否認

2021-07-23

暴行事件の容疑を否認

暴行事件の容疑を否認する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

愛知県愛知郡東郷町立B小学校の教頭であるAさんは、愛知県愛知郡東郷町内を走行する電車の中で、Vさん(女子中学生)に体液をかけました。
その後、Vさんが駅で泣いているところを見つけた駅員が110番通報し、事件が発覚しました。
Aさんは愛知県愛知警察署の警察官により暴行罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは「体液が出てしまったのは間違いないが、体液をかけるつもりはなかった。短パンだったのでかかってしまったのかもしれない。」と、暴行罪の容疑を否認しています。
暴行罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、一刻も早くAさんを釈放をしてほしいと考えています。
(2020年10月21日に東海テレビNEWに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【暴行罪の成立要件(構成要件)】

Aさんは暴行罪の容疑で逮捕されていますので、以下ではAさんに暴行罪が成立するのかを検討します。

暴行罪は、刑法208条に規定されています。

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する(刑法208条)。

暴行罪のいう「暴行」とは他人の身体に対する物理力の行使です。
「暴行」という言葉から連想される殴る、蹴る等の行為は当然に暴行罪のいう「暴行」に含まれます。
これに加えて、例えば被害者の耳元で拡声器を使い大声を発する行為のように音を使った物理力の行使というものなどもあります。

刑事事件のAさんのようにVさんに体液をかける行為も、他人の身体に対する物理力の行使として暴行罪のいう「暴行」に該当すると考えられます。

【暴行事件と否認】

刑事事件例では、Aさんは「体液が出てしまったのは間違いないが、体液をかけるつもりはなかった。短パンだったのでかかってしまったのかもしれない。」と、暴行罪の容疑を否認しています。

ところで、逮捕は、「逮捕の必要性」(刑事訴訟法199条2項)があるときになされる身体拘束です。
具体的には、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他諸般の事情を総合考慮し、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれの有無等によって判断されます。
また、逮捕に引き続く勾留も、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがある場合になされるものです(刑事訴訟法60条1項1号)。

ここで、例えば犯罪の容疑を認めている場合、あえて逃亡したり罪証隠滅をしたりする主観的可能性がないなど、一般に釈放される可能性が高まります。
これに対して、刑事事件例のAさんのように暴行罪を含む犯罪の容疑を否認している場合、逃亡したり罪証隠滅をしたりする主観的可能性があるとして、逮捕に引き続く勾留までなされる可能性が高まると考えられています。

しかし、だからといってやっていないにも関わらず容疑を認めることとなれば、それは冤罪となってしまいます。
容疑を否認する場合には、取調べへの対応なども重要になってきますから、逮捕・勾留による身体拘束についても取調べへの対応についても、早めに弁護士に相談し、対応を考えていくことが重要でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県愛知郡東郷町暴行事件の容疑を否認したいとお悩みの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県知多市の強要未遂事件で逮捕

2021-07-09

愛知県知多市の強要未遂事件で逮捕

愛知県知多市強要未遂事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、大学時代の後輩にあたる人気俳優のVさんのSNSに「返信をしろ、さもないとお前を殺す」と投稿したとして、愛知県警知多警察署の警察官により強要未遂罪の容疑で逮捕されました。
この強要未遂事件は、Vさんが愛知県警知多警察署の警察官に強要未遂事件の被害を受けたと届け出たことから発覚しました。
強要未遂事件を起こした動機について、Aさんは、Vさんの活躍を祝うメッセージを送ったのにも関わらず返信がなかったことからVさんに裏切られたと思ったと話しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、愛知県知多市に対応している刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(フィクションです。)

【強要未遂罪(強要罪)とは】

生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」には、強要罪が成立します(刑法223条)。
強要罪の法律に定められた刑(法定刑)は、3年以下です。

強要罪の未遂は、強要未遂罪として処罰されます(刑法223条)。
具体的には、強要の手段として強要罪に規定された脅迫・暴行を行ったが、強要の結果として義務のないことを行わせあるいは権利の行使を妨害するに至らなかった場合に、強要未遂罪が成立します。

強要未遂罪強要罪)における脅迫とは、他人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことを指します。
ただし、強要未遂罪強要罪)が成立するためには、一般人にとってその害悪の告知が畏怖させるに足りるといえればよく、現実に相手方が畏怖したことを要しないとされています。

刑事事件例のように「お前を殺す」とのメッセージを受け取った場合、通常の一般人であれば身の危険を感じる、すなわち畏怖すると考えられます。
たとえ「お前を殺す」とのメッセージを受け取った人が豪気な人でありこのような脅迫行為には一切恐怖を抱かなかったというような事情があっても、強要未遂罪強要罪)における脅迫行為があったといえることになります。

よって、Aさんの「返信をしろ、さもないとお前を殺す」とメッセージを送る行為は、強要未遂罪強要罪)における「生命に対して害を加える旨を告知して脅迫」する行為に該当すると考えられます。

そして、刑事事件例では結果的にはVさんはAさんに対して返信しなかったため、強要の結果として「義務のないことを行わせ」るに至らなかったといえます。
したがって、Aさんには強要未遂罪が成立することになります。

【強要未遂罪と刑事裁判】

強要罪には条文にある通り、罰金刑がありません。
ですから、強要罪で起訴され有罪になるということは、執行猶予付き判決となるか実刑判決となるかの2択となります。
例えば、過去の刑事裁判例として、強要未遂罪を犯した者に懲役1年6月執行猶予3年が言い渡されたという例があります。
これは、検察官が強要未遂事件として刑事裁判に提訴(起訴)しましたが、裁判所が強要未遂事件の犯行を率直に認め反省しているなどといった情状を考慮して、執行猶予が相当であると判断した刑事裁判例であると考えられます。

刑事事件では、検察官に対して刑事裁判に提訴(起訴)しないように働きかけることができる段階(被疑者段階)と、裁判所に対して強要未遂事件の被告人には執行猶予付き判決を宣告するに足りる情状があったと働きかけることができる段階(被告人段階)があります。
被疑者段階で不起訴獲得を目指し、起訴されてしまったとしても執行猶予付き判決を獲得できるよう準備しておくためには、早い段階から弁護士に相談・依頼しておくことが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事裁判例のような起訴に至った強要未遂事件であっても、被疑者としての刑事弁護活動に引き続き、被告人段階の刑事弁護活動を行うことができます。
愛知県知多市強要未遂事件逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

傷害致死事件で執行猶予獲得を目指す

2021-07-02

傷害致死事件で執行猶予獲得を目指す

傷害致死事件執行猶予獲得を目指すケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県一宮市の路上において、バス停のベンチに座っていたVさん(60歳)と口論になった結果、Vさんを殴りました。
Vさんは地面に倒れこんでしまい、通行人の通報により愛知県一宮市内の病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。
Aさんは、愛知県一宮警察署の警察官により、傷害致死罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「殺すつもりはなかった。口論になってイライラして殴ってしまった。」と述べています。
Aさんの両親は、Aさんに執行猶予を付けてほしいと考えています。
(2020年11月16日にTBSNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【傷害致死罪とは】

刑法205条は、傷害致死罪を以下のように規定しています。

刑法205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

刑事事件例では、Aさんは「殺すつもりはなかった。」と言っています。
この場合、Aさんは、Vさんが死亡したことの責任を負うのでしょうか。

刑法205条の傷害致死罪は、暴行罪・傷害罪の結果的加重犯であると考えられています。
結果的加重犯とは、一定の犯罪行為を行い、その犯罪行為により、予想よりも重い結果が生じた場合に、その重い結果に対して責任を問う罪をいいます。
すなわち、暴行罪を犯し、その暴行行為より重い結果=被害者の方が死亡するという結果が発生した場合、より重い結果である被害者の死亡に対する罪(傷害致死罪)が成立することになります。

Aさんは、Vさんに暴行を加える認識(故意)のもと暴行を行っており、その暴行行為によりVさんの死亡というより重い結果が生じています。
よって、AさんにはVさんの死亡という、より重い結果に対応する傷害致死罪が成立することになります。

【傷害致死罪と執行猶予】

刑事事件例では、Aさんには傷害致死罪が成立すると考えられますが、上述のように、傷害致死罪を犯した者は、3年以上の有期懲役に処せられます。

ここで、刑事事件においてよく耳にする執行猶予について検討してみます。
執行猶予とは、刑の言渡しをした場合において、一定期間その執行を猶予し、その期間を無事に経過した場合には刑の言渡しを失効させ、条件に違反した場合には執行猶予を取り消して刑の執行をしようとするものです。

執行猶予の要件は刑法25条に規定されています。
特に前科のない初犯の方にとっては、執行猶予の要件としては、「3年以下の懲役若しくは禁錮、又は50万円以下の罰金を言」い渡す場合であること(刑法25条1項)に注目する必要があるでしょう。

傷害致死事件について言えば、傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役であるため、執行猶予付き判決を獲得できる余地があることになります。

刑事弁護士の活動としては、同じく執行猶予の要件である「情状」(刑法25条1項)が存在することを主張していくことになるでしょう。
この「情状」としては、被害弁償や示談の有無、再犯防止策が取られていることなどが考えられますから、執行猶予を獲得するためには早い段階から被害者対応などの弁護活動を行いつつ準備をすることが必要となります。
傷害致死事件の発生から早期に弁護士に相談・依頼して活動を開始してもらうことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県一宮市傷害致死事件でお困りの場合や、執行猶予の獲得にお悩みの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県豊田市の監禁・恐喝事件

2021-06-29

愛知県豊田市の監禁・恐喝事件

愛知県豊田市監禁・恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県豊田市内の駐車場で、Vさんが乗った軽自動車に故意に衝突し「示談しないと痛い目に合うぞ」などと因縁をつけ、愛知県豊田市内のカラオケ店に閉じ込め(監禁し)て合計200万円を脅し取りました。
Aさんの脅迫は、Vさんの反抗を抑圧するものではなかったものの、Aさんを畏怖させるものでした。
その後、Aさんは、愛知県豊田警察署の警察官により監禁罪・恐喝罪の容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、今後どのように事件が進んでいくのか知りたく、刑事事件に強い法律事務所への法律相談することを検討しています。
(2020年10月26日に京都新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【監禁罪とは】

刑法220条は、監禁罪について以下のように規定しています。

刑法220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法220条は、前段(「不法に人を逮捕し」の部分)で逮捕罪を、後段(「不法に…監禁した」の部分)で監禁罪を規定しています。
それでは、逮捕罪が成立する「逮捕」(刑法220条)と監禁罪が成立する「監禁」(刑法220条)の違いは何でしょうか。

この点、逮捕罪の「逮捕」(刑法220条)とは、直接的な強制によって移動の自由を奪うことをいいます。
逮捕罪の「逮捕」(刑法220条)に該当する行為の例は、羽交い絞めにする行為や縄で縛り付ける行為です。
一方、監禁罪の「監禁」(刑法220条)とは、間接的に一定の場所から脱出できないようにして移動の自由を奪うことをいいます。
監禁罪の「監禁」(刑法220条)に該当する行為の例は、部屋に閉じ込めて脱出できなくする行為です。
そのほか、脅迫により心理的に脱出を困難にする行為も監禁罪の「監禁」(刑法220条)に該当します(東京高等裁判所判決昭和40年6月25日)。
つまり、逮捕罪が成立する「逮捕」(刑法220条)と監禁罪が成立する「監禁」(刑法220条)の違いは、移動の自由を奪う手段が直接的なもの、間接的なものかという点にあるといえます。

刑事事件例では、AさんはVさんに「示談しないと痛い目に合うぞ」などと脅迫し、カラオケ店に閉じ込めています。
そのため、Aさんの行為は、間接的に一定の場所から脱出できないようにして移動の自由を奪ったといえます。
よって、Aさんの行為は監禁罪の「監禁」(刑法202条)に該当すると考えられます。

【恐喝罪とは】

刑法249条1項は恐喝罪について以下のように規定しています。

刑法249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

恐喝罪は、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行又は脅迫により、財物を交付させることにより成立する犯罪です。
反抗を抑圧するに足りる暴行又は脅迫により財物を交付させた場合には恐喝罪(刑法249条1項)ではなく、強盗罪(刑法236条1項)が成立するため、暴行又は脅迫の強さによって成立する犯罪が異なることに注意が必要となります。
例えば、凶器を使用して脅迫したような場合には、相手の反抗を抑圧する程度の強さがあるとされて恐喝罪ではなく強盗罪が成立する可能性が出てきます。

今回の刑事事件例では、AさんはVさんに「示談しないと痛い目に合うぞ」などと脅迫し、合計200万円を受け取っています。
このAさんの行為は、反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫により、財物を交付させたといえます。
そのため、Aさんの行為は、恐喝罪の「恐喝」(刑法249条1項)に該当すると考えられます。
よって、Aさんには恐喝罪が成立すると考えられます。

【監禁・恐喝事件と刑事弁護】

刑事事件例のような監禁・恐喝事件において、刑事弁護士がすることができる代表的な刑事弁護活動としては、示談交渉が挙げられます。
示談では、加害者の方から被害者の方への正式な謝罪や損害賠償金の支払いなどを交渉していくことになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県豊田市監禁・恐喝事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県蟹江市の自殺教唆事件で逮捕

2021-06-25

愛知県蟹江市の自殺教唆事件で逮捕

愛知県蟹江市自殺教唆事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさん(愛知県蟹江市内在住の大学生・22歳)は、交際中の女性(Vさん・愛知県蟹江市内在住の大学生・21歳)に無料通信アプリLINEで、「死ねよ」「お願いだから死んでくれ」「手首切るより飛び降りれば死ねるじゃん」などと合計7回のメッセージを送り、Vさんの自殺を唆(そそのか)し、自殺させました。
Aさんは愛知県蟹江警察署により自殺教唆罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの両親は、Aさんが長期間身体拘束されないようにしたいと考えています。
(2014年2月21日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【自殺教唆罪とは】

刑法202条は、自殺教唆罪について以下のように規定しています。

刑法202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

この条文の「人を教唆し」「自殺させ」るという部分が自殺教唆罪となります。

【自殺は犯罪?】

ところで、刑法は自殺についてどのように評価しているのでしょうか。
自殺教唆罪を考えるにあたり、まず自殺の刑法的評価を考えなければなりません。
刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」として、殺人罪を規定しています。
しかし、殺人罪の「人」(刑法199条)には行為者自身(自分)は含まれません。
自殺をする者にも自己の生死を決定する自由があるからです。

そのため、刑法では自殺は犯罪ではないと評価されています。

【自殺教唆罪の処罰根拠】

先ほど触れたように、自殺することは犯罪ではないにも関わらず、刑法202条は自殺教唆を犯罪として規定しています。
自殺教唆罪が犯罪とされる理由はどこにあるのでしょうか。

諸説ありますが、上述したように自殺をする者には自己の生死を決定する自由があるものの、他人の自殺を教唆することは他人の生命への過度な干渉になると考えるべきだとされています。
こうした考えなどにより、自殺教唆罪は、生命を保護するために定められた独立の犯罪として刑法に規定されているのです。

【自殺教唆罪の成立】

刑事事件例では、Aさんは、Vさんに「死ねよ」「お願いだから死んでくれ」「手首切るより飛び降りれば死ねるじゃん」などと合計7回のメッセージを送っています。
教唆とは、その(犯罪)行為をする意思のなかった人にその(犯罪)行為をする意思を起こさせることを指します。
このAさんの行為は、Vさんに自殺をする意思を起こさせ自殺させていることから、「人を教唆し」「自殺させ」た自殺教唆行為に該当する可能性があります。

よって、Aさんには自殺教唆罪が成立する可能性があるのです。

【自殺教唆罪と身体拘束】

刑事事件例のように自殺教唆罪の容疑で逮捕されてしまったケースにおいて、被疑者が長期間身体拘束されないようにするためには、刑事弁護士が検察官や裁判官に勾留をしないよう働きかけることができます。
また、一度勾留決定がなされた後には、勾留決定に対する不服申立て(準抗告)ができます。

例えば、自殺教唆をしたLINEのやり取りが保存されているスマホを押収されているのであれば、罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれはないと主張できます。
被害者の方が亡くなっていることも罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがないことの主張に結び付くでしょう。
また、自殺教唆罪の容疑を認めているのであれば、罪証隠滅(証拠隠滅)や逃亡の動機もないという事情になり得ます。
こうした事件ごとの事情の数々を積み重ねて逮捕・勾留と言った身体拘束から解放してもらうための材料として主張していくためには、早期に弁護士に相談し、迅速に準備に取りかかる必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県蟹江市自殺教唆事件逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

暴力行為等処罰に関する法律違反事件を弁護士に相談

2021-06-15

暴力行為等処罰に関する法律違反事件を弁護士に相談

暴力行為等処罰に関する法律違反事件弁護士に相談したいというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、元交際相手のVさん(女性・20歳・愛知県豊明市在住)に、「ヤクザ使ってお前の家族つぶすぞ、お前の夢つぶすぞ」などと、暴力団の構成員を装って脅迫しました。
恐怖を感じたVさんが通報したことにより、Aさんは愛知県愛知警察署の警察官により暴力行為等処罰に関する法律違反の容疑で逮捕されました。
Aさんの家族は、まさかAさんが逮捕されるようなことをするとは夢にも思わず、逮捕の知らせを聞いてどうすればよいのか分からず困ってしまいました。
そこでAさんの家族は、ひとまず愛知県刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(2020年11月5日に神戸新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【暴力行為等処罰に関する法律違反とは】

暴力行為等処罰に関する法律は、集団的暴力・脅迫・器物損壊や、銃砲刀剣類を用いた傷害、常習的な傷害・暴行・脅迫・器物損壊などについて、刑法の規定よりも重く処罰するために定められた法律です。
この暴力行為等処罰に関する法律は、暴力団及びその構成員による暴行・脅迫行為等を取り締まるための法律であると考えられています。
以下では、刑事事件例のAさんの行為に適用されたと考えられる暴力行為等処罰に関する法律第1条の条文を検討していきます。

暴力行為等処罰に関する法律第1条
団体若は多衆の威力を示し、団体若は多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示し若は数人共同して刑法第208条(注:暴行罪)、第222条(注:脅迫罪)又は第261条(注:器物損壊罪)の罪を犯したる者は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処す。
(注書きは追記したものです。)

まず、Aさんの「ヤクザ使ってお前の家族つぶすぞ、お前の夢つぶすぞ」という発言は、刑法第222条の脅迫罪に該当すると思われます。
そこで、刑法第222条の条文を見ていきます。

刑法第222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第222条第2項
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法第222条の脅迫罪は、一般人であれば畏怖するのに十分な害悪の告知がなされた場合に成立します。
刑事事件例のAさんは、Vさんに対して「ヤクザ使ってお前の家族つぶすぞ、お前の夢つぶすぞ」と発言しているところ、通常人であれば自分や家族の生命、身体などに危害が加えられてしまうと畏怖すると考えられます。
よって、Aさんには脅迫罪が成立すると考えれます。

次に、(上記のようにAさんの行為が刑法第222条の脅迫罪に該当するとしても、)暴力行為等処罰に関する法律第1条の集団的脅迫が成立するためには、刑法第222条の脅迫行為が「団体若は多衆の威力を示し、団体若は多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示し若は数人共同して」なされる必要があります。

前述した通り、暴力行為等処罰に関する法律は、暴力団及びその構成員による暴行・脅迫行為等を取り締まるための法律と考えられています。
そのため、暴力行為等処罰に関する法律第1条の「団体若は多衆の威力を示し」とは、例えば、暴力団の構成員が所属している暴力団の威力を示すことをいいます。
また、暴力行為等処罰に関する法律第1条の「団体若は多衆を仮装して威力を示し」とは、例えば、暴力団の構成員であると装って威力を示すことをいいます。

刑事事件例のAさんは、「ヤクザ使ってお前の家族つぶすぞ、お前の夢つぶすぞ」と発言し、反社会的勢力を偽装して威力を示しています。
そのため、「団体若は多衆の威力を示し、団体若は多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示し若は数人共同して」脅迫行為がなされたといえると考えられます。

以上より、Aさんには暴力行為等処罰に関する法律違反の罪が成立すると考えられます。

【暴力行為等処罰に関する法律違反の刑罰】

集団的脅迫による暴力行為等処罰に関する法律違反をした者には、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます(暴力行為等処罰に関する法律第1条)。
この刑は、刑法第222条の脅迫罪を犯した者に科せられる2年以下の懲役又は30万円以下の罰金よりも重い刑罰となっています。

このような重い刑罰が規定されている集団的脅迫による暴力行為等処罰に関する法律違反で起訴された場合に、執行猶予付き判決を得たり刑罰を軽くしたりするには、被害者の方への真摯な謝罪と被害弁償を含む示談が重要です。
示談交渉では、被害者の方の気持ちに十分に配慮した上で加害者の方の真摯な謝罪の気持ちを示談交渉結果に反映させる必要があるため、刑事弁護士には刑事事件の専門的知識と豊富な経験が必要とされます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、数少ない刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
暴力的処罰行為に関する法律違反事件を起こした場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

強盗傷人事件で保釈を目指す

2021-06-11

強盗傷人事件で保釈を目指す

強盗傷人事件保釈を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県名古屋市南区の路上に停めたAさん所有の車の中で、SNSで知り合ったVさん(20代女性)の顔を殴り全治2週間の怪我を負わせた上、Vさんの財布が入ったバッグを奪ったとして、愛知県南警察署の警察官により強盗傷人罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「ホテルに行くのを断られたのでやった」と強盗傷人罪の容疑を認めています。
(フィクションです。)

【強盗傷人罪と強盗罪】

刑法236条は、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者」には、強盗罪が成立するとしています。
そして「強盗が、人を負傷させたとき」は強盗傷人罪が成立します(刑法240条)。

強盗傷人罪における「強盗」とは、強盗の実行に着手した者を指します。
刑法236条における強盗罪の犯人は強盗傷人罪における「強盗」に該当します。

以下ではAさんが強盗傷人罪における「強盗」に該当する強盗罪の犯人といえるかについて検討します。

強盗罪における「暴行」とは、強盗事件の被害者の反抗を抑圧するに足りるものである必要があるとされています。

刑事事件例では、Aさんは車内においてVさんの顔面を殴打しています。
この暴行は、男性であるAさんから女性であるVさんに対してなされたものです。
また、車内というVさんが逃げることが困難な場所においてなされています。
このような具体的な事情から総合的に判断して、捜査機関はAさんの暴行は強盗罪における「暴行」に該当すると判断したと考えられます。

さらに強盗罪における「強取」とは、財物の事実上の支配を強盗犯人が取得し、又は第三者に取得させることをいいます。
刑事事件例において、Aさんは強盗罪における「財物」たるVさんの財布の入ったバッグをAさん自身の事実上の支配下に置いています。
よって、Aさんの行為は強盗罪における「強取」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんは強盗傷人罪における「強盗」に該当する強盗罪の犯人であると考えられます。

【強盗傷人罪の成立】

強盗傷人罪における「負傷させた」とは、人に傷害を加えることをいいます。
そして強盗傷人罪における傷害は強盗の機会に生ずれば足りると考えられています。

刑事事件例において、Vさんの怪我はAさんによる強盗の手段である暴行から直接生じたものです。
そのため、Vさんの怪我はAさんの強盗の機会に生じたものであるといえます。
よって、Vさんに怪我を与えたAさんの行為は、強盗傷人罪における「負傷させた」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには強盗傷人罪が成立すると考えられます。

【強盗傷人罪と保釈】

現在Aさんは強盗傷人罪の容疑で逮捕されているところ、Aさんの身柄解放の手段の1つとして、Aさんの強盗傷人罪での起訴後における保釈(刑事訴訟法89条、90条)が考えられます。

保釈は、刑事訴訟法89条に規定された除外事由がある場合を除き、原則として許されるものであるとされています(権利保釈といいます)。
刑事訴訟法89条に規定された除外事由としては、死刑、無期または短期1年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるときがあります(刑事訴訟法89条1号)。

刑事事件例における強盗傷人罪の法定刑は無期又は6年以上の懲役であるため、刑事訴訟法89条における権利保釈は認められないことになります。
しかし、権利保釈の除外事由に当たる場合にも、裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(刑事訴訟法90条)。
弁護士としては、裁判所に裁量保釈を求めて保釈請求活動を行っていくことが考えられます。

保釈請求のためには、単に保釈金を用意するだけでなく、保釈をしてもよいと認められるための環境づくりやその環境を証拠化して主張していくことが求められます。
特に、今回のAさんの事例のような強盗傷人罪といった重い犯罪では、なかなか保釈も認められないケースが少なくありません。
だからこそ、刑事事件に強い弁護士に相談・依頼することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
強盗傷人事件保釈を目指したいとお悩みの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

児童虐待の傷害事件を起こしてしまったら

2021-05-25

児童虐待の傷害事件を起こしてしまったら

児童虐待傷害事件を起こしてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県刈谷市の自宅において、10歳の娘(Vさん)が口答えをしたことに腹を立て、Vさんの髪をつかんで引きずり倒すなどの暴行を加えて怪我をさせました。
翌日、Vさんが通う小学校の担任教師がVさんの顔にあざがあることに気付き、Vさんが「親から暴力を受けて帰りたくない」と話したことから110番通報しました。
愛知県刈谷警察署の警察官は、Aさんを児童虐待をしたことによる傷害罪の容疑で逮捕しました。
(2020年10月27日にテレビ朝日NEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【児童虐待防止法とは】

児童虐待防止等に関する法律児童虐待防止法)では、児童虐待の定義について以下のように規定しています。

児童虐待防止法第2条
この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
①児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
②児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
③児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
④児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

そして、児童虐待防止法では、「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。」(児童虐待防止法3条)と規定しています。
確かに、刑事事件例におけるAさんによるVさんの髪をつかんで引きずり倒すなどの暴行を加えて怪我をさせる行為は、児童虐待防止法における「児童虐待」に該当すると考えられます。
しかし、児童虐待防止法で罰則が設けられている行為は、接近禁止命令(児童虐待防止法12条の4)に違反した場合(児童虐待防止法17条)のみです。
すなわち、刑事事件例のような傷害事件において、Aさんが児童虐待防止法違反により直接的に罰せられることはありません。

それでは、Aさんにはどのような犯罪が成立するのでしょうか。

【傷害罪の成立】

刑法第204条は、傷害罪を規定しています。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪が成立するためには、創傷や擦過傷、打撲傷、めまい、嘔吐、失神など、身体の生理機能の障害が生じている必要があります。
刑事事件例において、AさんはVさんに対し、髪をつかんで引きずり倒すなどの暴行を加えて怪我をさせています。
このVさんの怪我は身体の生理機能の障害であるとして、傷害罪が成立する「傷害」に該当すると考えられます。

よって、Aさんには傷害罪が成立すると考えられます。

児童虐待といっても、虐待の態様によって成立する犯罪は様々です。
どういった犯罪がどうして成立するのかをきちんと把握しておくことは、刑事手続に臨むうえで非常に重要なことです。
まずは専門家である弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
児童虐待傷害事件を起こしてしまってお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

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