Archive for the ‘刑事事件’ Category

器物損壊罪

2021-02-18

器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、世界遺産に登録されている寺社の山門の壁に油性ペンで落書きをしたとして器物損壊罪の容疑で逮捕されてしまいました。これを聞いたAさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~器物損壊罪~

刑法第261条の条文は、「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者」について器物損壊罪が成立するとしています。
ここでいう「前3条」とは、公用文書等毀棄罪(刑法第258条)、私用文書等毀棄罪(刑法第259条)、建造物損壊及び同致死傷罪(刑法第260条)のことをいいます。
そうすると、器物損壊罪が想定する「他人の物」とは、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の物であるといえます。

上の事案では、寺社の山門の壁が目的物となっています。
ここで、寺社は建物であることからその山門の壁については「建造物等」であり、器物損壊罪における「他人の物」にあたらないのではないかが問題になります。

建造物等損壊罪における「建造物」とは、屋根があり、壁や柱で支えられ、土地に定着し、その内部に人の出入りが可能な家屋や建築物をいいます。
そして、建築物そのものではなく、ドアや壁など建築物に付随する物が「建造物」に当たるかどうかは、その物と建築物がどの程度接合しているのかやその物が建造物においてどの程度重要であるかなどを総合して判断されます。
過去の裁判例において「建造物」に当たると判断された物の例としては、天井版や屋根瓦、住居玄関ドアなどがあります。
他方で、「建造物」に当たらないと判断された物の例としては、ガラス障子や雨戸、竹垣や畳などがあります。
上の事案の寺社の山門の壁については、寺社という建造物の一部としてではなく、別個独立した物であると判断されたことから「建造物」ではないとされたものであると考えられます。
したがって、建造物損壊罪の「建造物」ではなく、器物損壊罪における「他人の物」にあたると考えられるのです。

器物損壊罪における「損壊」とは、財物自体の形状を変更したり滅尽させたりする典型的な破壊行為のみならず、事実上・感情上その物を本来の用途に従って使用できなくして本来の効用を失わせることをいいます。
典型的な破壊行為としては、例えば、他人の壺を割るという行為が考えられますが、これが「損壊」に含まれることに疑いはありません。

他方で、上の事案のような壁に落書きをする行為は、壁を破壊したわけではないので典型的な破壊行為とはいえません。
しかしながら、過去の裁判例においては、公園の公衆トイレにスプレーで落書きしたという事案について、落書きをしただけでは公衆トイレの効用を喪失させるとまではいえないものの、「建物の外観・美観を著しく汚損し、そのままの状態で一般の利用に供することを困難にするとともに、再塗装を要するなど原状回復に相当の困難を生じさせた」として器物損壊罪の成立を認めた裁判例もあります。
この裁判例に従うと、寺社の山門の壁に油性ペンで落書きをした場合、その壁の外観を著しく汚損することになりますし、油性ペンという簡単には消せないペンで落書きをしたことは原状回復に相当の困難を生じさせたとして、「損壊」に当たると考えられます。

そうすると、Aさんには器物損壊罪が成立する可能性があります。
この場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられる可能性があります。

~文化財保護法~

「損壊」の対象が、単に「他人の物」にとどまらず「特別に保護されているもの」に当たる場合、文化財保護法違反となります。
「特別に保護されているもの」には、たとえば有形・無形文化財や民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物や国宝などが含まれます。
上の事案の寺社は世界遺産に登録されているとのことで、「特別に保護されているもの」に当たる可能性があります。
そうすると、一般法である器物損壊罪ではなく、より刑の重い器物損壊罪の特別法である文化財保護法違反に切り替えて捜査が進められる可能性があります。
文化財保護法違反となった場合には、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金に処せられることがあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門の法律事務所です。お困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。

書類送検 

2021-02-16

書類送検について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

会社員のAさんは、SNS上で知り合ったVさん(17歳)に頼んで、Vさんの全裸の写真画像を撮ってもらい、それを自身のスマートフォンに送信してもらって楽しんでいました。そうしたところ、ある日、Vさんのスマートフォンをチェックした母親が、Vさんが見知らぬ男に裸の写真画像などを送っていたっことを知りました。Vさんの母親はVさんとともに警察へ相談に行きました。後日、捜査の結果、Aさんは児童ポルノ(製造罪)の被疑者として調べを受けることになり、事件は名古屋地方検察庁へ書類送検されました。
(フィクションです)

~児童ポルノ罪の製造罪~

児童ポルノ罪の製造罪は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下「法律」という)の7条3項,4項,5項,7項に規定されています。Aさんの行為は,法律7条4項の製造罪に該当しそうです。罰則は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。

法律7条4項

(略)児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。

~書類送検~

書類送検とは在宅事件(身柄を拘束されていない事件)が検察庁へ送検されたことを意味しています。
書類送検の根拠は刑事訴訟法246条に求めることができます。

刑事訴訟法
第二百四十六条(司法警察員から検察官への事件の送致)

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。

司法警察員は、当該事件の捜査を終え、事件関係の書類を整えた上で書類を検察官へ送致します。したがって、書類送検の時期は「司法警察員が捜査を終えた後」といことになります。いつ捜査を終わるかは、事件の内容、難易度、捜査機関側の都合などによって異なりますから一概に「いつ」になるかは分かりません。気になる方は、弁護人を通じてか、あるいは直接尋ねてみてもいいでしょう。

書類送検された後の流れは以下のとおりです。

① 書類送検

② 担当検察官が決まる

③ 担当検察官から電話OR文書で出頭要請を受ける

④ 出頭&取調べを受ける

⑤ 刑事処分

書類送検された(①)後、2~3日で担当検察官が決まります。担当検察官が決まると、担当検察官(又は補助の検察事務官)から電話OR文書で検察庁へ出頭するよう要請を受けます。要請を受けるタイミングは決まっておらず、検察官の判断に委ねられます。検察官は在宅事件と同時に身柄事件も同時に処理しており、身柄事件の方が時間的制約があるため、どうしても在宅事件よりも身柄事件の方の処理を先行しがちです。したがって、検察官が身柄事件の処理に追われるなどして時間を取られていると、出頭要請は遅れる可能性があります。①から数か月程度経って出頭要請を受けるということも少なくありません。出頭後は、検察官の取調べを受け、捜査を終えた段階で刑事処分が決まります(⑤)。正式起訴された場合は、後日、裁判所から起訴状謄本などの書類が送達されてきます。略式起訴される場合は、取調べ時に略式裁判を受けるかどうかの同意を求められます。不起訴となった場合は、検察官から通知する制度はありませんが、請求すれば不起訴にした旨の文書を発行してくれます。

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共同正犯と錯誤

2021-02-04

共同正犯と錯誤について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

AさんはBさんから、Vさん宅に立ち入って盗みをすることを持ちかけられこれを承諾しました。そして、Aさんは犯行日当日、BさんがVさん宅に立ち入って盗みをする間、警察などが来ないかどうか外で見張りをしていました。ところが、後日、警察にAさんとBさんによる犯行であることが発覚し、Aさんは住居侵入、窃盗罪、Bさんは住居侵入、強盗罪で通常逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~共同正犯とは~

2以上共同して犯罪を実行した場合を「共同正犯」といいます。

刑法60条
 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

正犯あるいは正犯者とは、犯罪(基本的構成要件)に該当する行為(実行行為)を行う者のことをいいます。刑法60条は、意思の連絡(共謀)の下に複数の者が関与した事案において、自己の犯罪を犯したと評価し得る重要な関与者を正犯とし、他人(Bさん)の実行行為及び結果につき、共同して行えば全て帰責される(刑事責任を負わされる)とう「一部行為の全部責任の原則」を認める規定です。

~共同正犯の成立要件~

それでは、共同正犯が成立するためにはいかなる要件が必要なのでしょうか?言い換えれば、他人が行った行為及びそれによって作出された結果を仲間内である共犯者にも帰責させるための要件とはいかなるものなのでしょうか?
共同正犯が成立するためには、主観的要件としての「共同実行の意思(意思の連絡=共謀)」、客観的要件としての「共同実行の事実」が必要です。

共同実行の意思とは、共同して実行行為をしようという意思のことをいいます。共同加工の意思ともいわれます。共同実行の意思は、2人以上の行為者全員が相互に持たなければなりません。したがって、甲がVに暴行を加えている間、甲の知らない間に乙がVの財布を盗んだという場合、窃盗罪(あるいは暴行罪)の共同正犯は成立しません。
共同実行の事実とは、共謀した行為者が実行行為を分担することであり、共同加功とか行為の分担ともいわれています。

~共犯正犯の錯誤とは~

ところで、本件では、Aさんは窃盗罪、Bさんは強盗罪と異なる罪で逮捕されています。
これは、Aさんは窃盗をする意思があった、Bさんは強盗をする意思があったという共犯者の認識の違いが原因です。
このように、共犯者(Aさん)が認識していた事実の内容(窃盗罪)と、正犯者(実行行為者)の実行(強盗)との間に食い違いがある場合を「共犯の錯誤」と呼んでいます。

では、「共犯の錯誤」があった場合、実務ではどのように処理、解決されているのでしょうか?
この点、判例は、共同行為者相互間の認識の不一致が同一構成要件内にあるとき、共同正犯の故意は阻却されないとしています。
他方、共同行為者間の認識の不一致が異なる構成要件にまたがるときは、原則として共同正犯の故意は阻却され、ただ、それぞれの構成要件が重なり合うときのみ、その重なりあう限度で共同正犯が認められるとしています。

本件の場合、後者の「共同行為者間の認識の不一致が異なる構成要件にまたがるとき」に当たります。構成要件とは、ここではとりあえず「罪」と理解してください。そして、Aさんは窃盗罪の認識、Bさんは強盗罪の認識であることから両者の認識に不一致が生じています。したがって、強盗罪の共同正犯の故意は阻却されますから、強盗罪の共同正犯は成立しません。次に、窃盗罪と強盗罪の違いは、その手段として暴行、脅迫を用いるか用いないかの違いだけで、後は同じです。つまり、両者は窃盗罪の範囲で重なり合っているといえます。したがって、共同正犯は窃盗罪の範囲でのみ成立することになります。

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現住建造物等放火で逮捕

2021-01-26

現住建造物等放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します.

会社員Aさん(35歳)は、亡父から相続した一軒家(築60年)に妻と二人で暮らしていました。ある日、お金に困っていたAさんは、自宅の築年数が古いことから、自分の家に放火して火災保険金を騙し取ることを思いつき、アパートを借りて、しばらくの間は、そのアパートで生活することにしました。そして、引っ越しを終えて荷物を運び出した後に、和室の畳に灯油をまき、火のついたタバコをその近くに放置して、しばらくすると灯油に引火して火災が発生するように仕掛けをして家を出ました。幸いなことに、火災が発生した直後に、近所の住民が火災に気付いて消火したため、畳一枚を焼損するにとどまったのですが、Aさんは非現住建造物等放火罪で逮捕されてしまいました。Aさんはその後の起訴されましたが保釈による釈放を希望しています。
(フィクションです)

~非現住建造物等放火罪~

放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物等を焼損した場合には、非現住建造物等放火罪が成立します。
非現住建造物等放火罪は、その客体を他人所有と自己所有とに分け、自己所有に係る非現住建造物等への放火については「公共の危険」が生じなかった場合には罰しない旨が規定されています(第2項)。
そうすると、上の事案において、Aさん自宅の周囲に人がおらず、他に建物などもない場合であれば、「公共の危険」がないとして、非現住建造物等放火罪が成立しないようにも思えます。

もっとも、刑法第115条は、非現住建造物等放火罪における物が自己所有に係るものであっても、差押えを受けたり、賃貸されたり、保険に付されたりしている場合には、他人の物を焼損した者の例によると規定します。
そうすると、たとえAさん所有の自宅であっても、これが保険に付されている以上、他人所有の非現住建造物を焼損したことになり、「公共の危険」が生じずとも、Aさんには、他人所有の非現住建造物等放火罪が成立する可能性があるのです。
他人所有の非現住建造物等放火罪の罰則は「2年以上の有期懲役」で、自己所有の非現住建造物等放火罪の罰則は「6月以上7年以下の懲役」です。

~保釈による身柄解放~

放火罪は重大な犯罪であるため、捜査機関に発覚すれば逮捕および勾留の可能性はかなり高いと言えます。
そして、もし勾留中に起訴されると、被疑者勾留が被告人勾留へと切り替わり、最低でも2か月は身体拘束が伸びてしまいます。

そうした事態に陥った際、身柄解放を実現する有力な手段として保釈の請求が考えられます。
保釈とは、裁判所に保釈金を納付することで、一時的に被告人を釈放する手続を指します。
保釈の最大の強みは、起訴前に釈放を実現できなかった事件において釈放を実現できる可能性がある点です。
保釈金は、逃亡を防止するための担保金の役割を果たします。
そして、罪が重くなればなるほど逃亡するおそれが大きいと判断されますから、罪が重たくなればなるほど保釈金も高くなる傾向にあります。

保釈されるためには、その前段階として保釈請求が許可される必要があります。
保釈請求に当たっては、法律の専門家である弁護士の視点が重要となることは否定できません。
ですので、保釈を目指すのであれば、保釈請求を含めて弁護士に事件を依頼することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

児童ポルノで逮捕

2021-01-21

児童買春・ポルノ禁止法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、SNSを通じて知り合った高校生Bさん(16歳)に対して、Bさんの裸体を撮影させたうえでその写真を送信させ、この写真を暴露すると言って脅し、さらに路上を全裸で歩く動画を撮影させて送信させたとして、中村警察署の警察官により児童買春・ポルノ禁止法違反(単純製造)及び強要罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)

~児童買春・ポルノ禁止法~

児童買春・ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)は、児童買春行為や児童ポルノの所持や提供、製造等の行為を禁じる法律です。

まず、児童買春・ポルノ禁止法における「児童」とは、18歳に満たない者をいい、男女を問いません。
上の事案におけるBさんは16歳ですので、男女のいかんを問わず、児童買春・ポルノ禁止法における「児童」に該当することになります。

次に、「児童ポルノ」とは、①児童を相手方とし、又は児童同士の性交や手淫・口淫など性交に類似した行為、②他人が児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触り、逆に児童が他人の性器等を触る行為で、性欲を興奮させ又は刺激するもの、③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態で、殊更にその性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部)が露出又は強調されており、性欲を興奮させ又は刺激するものといった児童の姿態を視覚で認識できる方法により描写したものをいいます。

上の事案においては、撮影された対象がBさんの裸体とBさんが全裸で路上を歩く姿であるため、③に該当する可能性があります。
これを写真や動画で撮影した場合には、この写真や動画を視覚で認識できる方法により描写したものであると考えられます。
これは、加害者が自ら撮影した場合のみならず、被害者本人に撮影させた場合についても同様です。
したがって、上の事案でAさんの指示により撮影されたBさんの写真や動画は「児童ポルノ」に当たると考えられます。

「児童ポルノ」については、自己性的目的所持、提供、提供目的製造等、不特定多数への提供、公然陳列等が禁止されています。
上の事案のAさんのように、撮影の対象であるBさん本人に自ら撮影させるるという行為は「製造」として禁止されています。
この場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることがあります。

~強要罪~

Aさんは、児童買春・児童ポルノ禁止法違反のほか強要罪でも逮捕されています。

強要罪は、生命、身体、自由、名誉、若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又はその権利の行使を妨害した場合に成立します。

まず、強要罪における「脅迫」は、人を畏怖させるに足る害悪の告知をいい、脅迫罪のいう「脅迫」と同義であると考えられています。
ここでの「害悪」の内容は、強要罪の条文にも書かれていますが、相手方又はその親族の生命、自由、名誉、財産に対し害悪を加えることに限定されています。

上の事案では、AさんがBさんに対して、Bさんが全裸で路上を歩く動画を撮影して送信しなければBさんの全裸の写真を暴露するという旨の脅迫を加えています。
これは、Bさんの自由や名誉に対して向けられた「害悪の告知」であると考えられますので、Aさんの行為は強要罪における「脅迫」に当たると考えられます。

次に、「義務のないことを行わせ」るとは、行為者に何らその権利・権能がなく、したがって、相手方にも義務がないのに、相手方に作為・不作為又は認容を余儀なくさせることをいいます。
ここでいう義務の内容は、恐喝罪(刑法第249条)、強盗罪(刑法第236条)、逮捕・監禁罪(刑法第220条)、職務強要罪(刑法第95条第2項)などのように他の犯罪に該当しないものをいい、これらの犯罪が成立する場合には、別途強要罪は成立しません。

上の事案では、AさんはBさんに対して、全裸で路上を歩く姿を撮影させるという「義務のないこと」を行わせていますので、この点について強要罪が成立する可能性があります。
この場合、3年以下の懲役に処せられることがあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

脅迫罪と報道回避

2021-01-19

脅迫罪と報道回避について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさん(20歳)は、Vさんのスマートフォン宛にLINEで「お前の親の車燃やしてやる」というメールを送りました。Aさんは脅迫罪の件で警察から呼び出しを受けたため、今後逮捕され、報道されてしまうのか不安になり刑事弁護士に無料相談を申込みました。
(フィクションです)

~脅迫罪~

脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知(害悪の告知)して人を脅迫した場合に成立する犯罪です。
罰則は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

脅迫は、一般に人を畏怖させる程度のものでなければなりません。ただし、本罪は危険犯と言われ、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば足り、それによって現実に相手方が畏怖したことは必要ではないと解されています。例えば、下記の例が脅迫に当たります。

生命・・・「殺すぞ」
身体・・・「怪我させるぞ」
自由・・・「帰れなくするぞ」
名誉・・・「さらし者にするぞ」
財産・・・「家、車を燃やすぞ」

もちろん、このように端的に告知しなくても、脅迫が行われるまでの経緯・前後関係などから総合して脅迫とされることもあります。

脅迫罪の相手は、被害者本人(刑法222条1項)又はその親族(同条2項)です。
よって、友人や恋人に対する害悪の告知は脅迫とはいえません。ただし、別に、友人や恋人に対する脅迫罪が成立する可能性はあります。

脅迫の方法に制限はありません。文書・言語・態度・動作のいずれによってもよいとされています。最近は、SNSやインターネットを経由した脅迫が多いです。

~報道回避~

報道されればその人が有罪か無罪かに関係なく、「逮捕された事実」自体が大きくクローズアップされます。
この「有罪か無罪かに関係なく」というところがポイントで、逮捕段階では無罪推定の原則が働いており、まだ逮捕された人を犯人と決めつけることはできないのに、世間一般の人は、逮捕=その人が犯人だとの印象を抱く傾向にあります。

そのため報道されれば、職場や学校などに事実が知れ渡り、職場や学校にいずらくなって結果的に辞めざるをえなくなるかもしれません。また、インターネット等の情報化社会の今日、ネットなどに実名でニュースが記載され、あっという間に情報は拡散し、将来、それを削除することも困難になります。
他方、残念ながら一部の事件を除いては、逮捕後の犯人の状況などについてはほとんど報道されることはありません。
ですから、犯人がはたして逮捕された事実を行ったのか、無実であったのかが不明確なまま、逮捕された事実のみが先行して世間に広まる可能性があるのです。

このような実名報道による不利益を回避するためには、何よりもまず逮捕を避けることが必要です。
児童買春の場合、逮捕を避けるには被害者と示談交渉し、警察が逮捕に動き出す前に示談を成立させることが必要です。
また、児童の連絡先などを知らず、そもそも示談交渉できないという場合は出頭、自首することなども検討し、逮捕される場合にそなえて報道しないよう警察に働きかけを行っていく必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、脅迫罪をはじめとする刑事事件専門の法律事務所です。脅迫罪で示談をお考えの方、その他でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

強制性交等罪

2021-01-18

強制性交等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、マッサージのため宿泊していたホテルの個室にマッサージ嬢Vさんを呼び込み、そこでVさんを羽交い絞めにして性交した件で警察署に強制性交等罪で逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたAさんの家族は、弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 強制性交等罪とは ~

強制性交等罪は刑法177条に規定されています。

刑法177条

 13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有機懲役に処する。13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。

改正前の刑法177条は

13歳以上の「女子」を姦淫した者は

と規定されていました。しかし,改正後は13歳以上の「者」と改められ,男子も保護の対象となりました。したがって,女子による男子への,男子による男子への性交等も処罰の対象となります。

一般に,「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使,「脅迫」とは人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいます。そして,強制性交等罪の暴行・脅迫の程度は

相手方(被害者)の反抗を著しく困難しらしめる程度

であることが必要とされています。
具体的には,相手方を殴る,蹴る,叩く,武器を使用して殴る,叩く,馬乗りになる,羽交い絞めにする,縄などで縛るなどが「暴行」に当たるでしょうし,言う通りにしなければ「殺すぞ」,「裸の写真をばらまくぞ,ネットに流すぞ」,「家に火をつけるぞ」などという行為が「脅迫」に当たるでしょう。

性交の他に,肛門性交(アナルセックス),口腔性交(オーラルセックス)も含まれます。性交とは膣内に陰茎を入れる行為,肛門性交とは肛門内に陰茎を入れる行為,口腔性交とは口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。
行為者が自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内,肛門内,口腔内に入れる行為(加害者:男性,被害者:女性又は男性)だけでなく,自己又は第三者の膣内,肛門内,口腔内に被害者の陰茎を入れる行為(加害者:女性又は男性,被害者:男性)も含まれます。

~ 今後の流れ ~

強制性交等罪を疑われれば,逮捕,勾留される可能性が高いといえます。
また,起訴され,刑事裁判で「有罪」と認定されれば,高い確率で「実刑」となるおそれがあり,その裁判が確定した後は,刑務所に服役しなければならなくなります。執行猶予付き判決を受けるには,裁判で「3年以下の懲役」の言い渡しを受ける必要がある(刑法25条1項)ところ,強制性交等罪は最低が「懲役5年」だからです。

強制性交等罪の弁護活動としては,まず,上記の「罪証隠滅行為」や「逃亡」のおそれを払拭して身柄を拘束された方の釈放を目指します。

事実を認める場合は、上記に加え,被害者との示談交渉に入ります。
上記のとおり,強制性交等罪で起訴されると高い確率で「実刑」となりますから,起訴そのものを回避する弁護活動が必要です。
事実を認めない場合は,被害者の供述の信用性が争点となりますから,被害者の供述の信用性に疑いを挟む事実・証拠を収集するなどして,まずは処分を決める検察官に意見書などを
提出して不起訴獲得を目指します。仮に,裁判になった場合は,被害者の供述の信用性を争い,無罪獲得を目指します。

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保護責任者遺棄致死罪で逮捕

2021-01-17

保護責任者遺棄致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

60代男性のAさんは、瀬戸市内の自宅にて重病を抱えた妻Vさんの看護に疲れてしまい、面倒を全く見ることなく放置していました。
その結果、Vさんが亡くなってしまったため、Aさんは保護責任者遺棄致死罪の容疑で愛知県警察瀬戸警察署に逮捕されることになりました。
(フィクションです)

~保護責任者遺棄致死罪とは~

まず、保護責任者遺棄罪について説明したいと思います。
保護責任者遺棄罪とは、幼児や高齢者、身体障害者、病人を保護する責任がある人が、保護すべき者に対して、遺棄したり、生存に必要な保護をしなかったりすることをいいます。

ここで言う「遺棄」とは、保護を要する子どもや高齢者などを保護のない状態に置くことにより、その生命・身体を危険にさらすことを指しています。
また、保護すべき人を場所的に移動させる行為(移置)だけでなく、置き去りのように危険な場所に放置する行為も含んでいます。
そしてさらに、保護すべき者に対して、生存に必要な保護をしない行為(不保護)もまた、保護責任者遺棄罪には含まれています。

今回の上記事例のAさんのように、「重病の妻Vさんの面倒を見ることなく放置する行為」は、保護すべき者に対して生存に必要な保護をしなかったという「不保護」に当てはまると考えられ、保護責任者遺棄罪に問われる可能性は高いでしょう。
そして、Aさんの「不保護」の結果、妻のVさんは亡くなっていますので、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性も十分に考えられるのです。

~殺人罪~

なお、犯行態様や故意(殺意)しだいでは刑法199条の殺人罪が成立する可能性があります。
殺意があるかどうかは、客観的・具体的な事実を基に判断されますが、長期的に食べ物を与えていない等の事実があれば、殺意があると判断されることもあるでしょう。

保護責任者遺棄致死罪の法定刑は、3年以上の懲役であり、起訴された場合にはこのような刑が科される場合があります。
また、殺人罪が成立する可能性もあるので、逮捕された場合には刑事事件に強い弁護士に無料法律相談や初回接見の依頼をすることをお勧めします。
弁護活動の内容によっては、逮捕・勾留に伴う身体拘束から解放されたり、執行猶予付の判決が認められたりする場合もあります。

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緊急逮捕

2021-01-16

緊急逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、会社の飲み会で大量にお酒を飲み、泥酔した状態で自宅の最寄り駅に着きました。そして、Aさんが駅の近くにあったVさん管理の自動販売機でペットボトル入りの水を買おうとしたところ、自動販売機が故障しており、お金を入れてボタンを押してもペットボトルが出てきませんでした。そのことに腹を立てたAさんは、右足で自動販売機の飲料の取り出し口を思いっきり蹴って取り出し口を壊し、周囲に「ガン」という大きな音を響かせました。その後、Aさんは自宅に向かって歩いていたところ警察官の職務質問を受け、通報内容と背格好、服装が似ていることなどから器物損壊罪で緊急逮捕されてしまいました。逮捕の通知を受けたAさんの家族は、Aさんとの接見を弁護士に依頼しました。
(フィクションです。)

~ 緊急逮捕とは ~

緊急逮捕とは、重大な犯罪を犯したと疑うに足りる充分な理由がある場合に逮捕状なしで逮捕し、逮捕後に裁判官の発する逮捕状を必要とする手続のことをいいます(刑事訴訟法210条)。「重大な犯罪」とは、

死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪

のことで、たとえば、

・殺人罪
・傷害罪
・強盗罪
・窃盗罪
・強制性交等罪
・強制わいせつ罪
・詐欺罪
・恐喝罪
・横領罪
・公務執行妨害罪
・住居侵入罪
・名誉毀損罪

などの罪がこれにあたります。
ちなみに、器物損壊罪は、法定刑が「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」ですから、「長期3年以上」に当たり(3年以下は3年以上に含まれます)、やはり緊急逮捕の対象となります。
他方、

・暴行罪
・脅迫罪

などは「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」に当たらず緊急逮捕の対象ではありません。

~ 告訴取消し、不起訴 ~

器物損壊罪は、告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができない罪で、これを「親告罪」と言います。
ですから、Aさんが公訴を提起されず、裁判を受けずに済むため(不起訴を獲得するため)には、Vさんに告訴を取消してもらう必要があります。

刑法264条
 第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

Vさんに告訴を取り消してもらうためには、まずはVさんに対し真摯に謝罪し、速やかに示談交渉に移る必要があるでしょう。
しかし、当事者間での示談交渉は感情のもつれなどもあって非常に困難を伴いますから、被害者との示談交渉はに弁護士に依頼することをお勧めいたします。
弁護士であれば適切な内容で示談を成立させることが可能であり、その結果、Vさんに告訴を取消していただき、不起訴という刑事処分を獲得できる可能性も上がります。
また、この場合、Aさんに前科も付きません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。

息子が万引きで逮捕

2021-01-07

 

万引きと留置場での接見について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

名古屋市中川区に住む大学生のA君はスーパーで万引きしたとして保安員に現行犯逮捕され、その後身柄を中川警察署の警察官に引き渡されました。Aさんは警察官とともに警察署へ行き、留置場へ収容されてしまいました。他方、A君の母親は警察署刑事課の警察官から「A君を万引きで逮捕した。」という連絡を受けました。逮捕の連絡に驚いたA君の母親でしたが、息子が元気でいるか確かめたいと思い、警察官に「息子と接見(面会)したい」と申し出たところ、断られてしまいました。そこでA君の母親は今すぐA君と接見してくれる万引き・刑事事件に詳しい弁護士にA君との接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~ 万引きと窃盗 ~

万引きは窃盗罪に当たります。
窃盗罪は刑法235条に規定されており、罰則は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。

万引きが発覚すれば逮捕される可能性は大いにあります。
なお、法律上、現行犯逮捕に限り私人(警察官などの司法関係者以外の者)でも可能です。
今回、A君は保安員により現行犯逮捕されています。
現行犯逮捕されるとその場から警察署に連行され、警察署内の留置場に収容されてしまいます。

~ 留置場とは ~

留置場は、全国の各都道府県警察署内に設けられた、主に被疑者の逃走、罪証隠滅行為を防止するための施設です。一定の場合(運動、診断、入浴等)を除き、8畳ほどの簡素な居室の中で生活することになります。規則正しい生活を強いられ、場合によっては共同で狭い居室の中で生活しなければなりません。また、食事は出ますが、警察署内に調理する場所はなく、専ら外注した弁当を配膳されます。当然、好きなもの、食べたいものが配膳されるわけではありませんし、冷めていて温めることもできません。入浴は、夏場は週に2回、冬場は週に1回とされていることが多いようです。
このよな生活であることから、留置された方にとっては相当な負担となることでしょう。

~ 逮捕後の接見(面会)は可能? ~

では、逮捕直後、ご家族は逮捕された方と留置場で接見(面会)することは可能でしょうか?
この点、逮捕から勾留決定が出るまでの逮捕期間中は、法律上、弁護士以外の方が逮捕された方との接見を認める規定はありません。
つまり、権利としては認められていない、ということになります。
ただし、一度、警察官に接見したい旨を申し出てみる価値はあるでしょう。警察官の判断で接見を認めてもらえるかもしれません。

しかし、多くの場合は接見を認めてはくれないでしょう。
そんなとき、どうしても逮捕された方と接見して欲しいという場合は弁護士に接見をご依頼ください。
弁護士であれば日時に関係なく速やかに逮捕された方と接見することが可能です。
また、当番弁護士と異なり、接見後、必ずご依頼者様に接見の報告をさせていただきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、万引きをはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

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