Archive for the ‘刑事事件’ Category

風俗嬢にデートレイプドラッグ

2020-10-04

風俗嬢に対するデートレイプドラッグについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

会社員のAさんは、デリヘル店のサービスを利用し、名古屋市緑区内のラブホテルで風俗嬢Vさんと待ち合わせしホテルへ入りました。ホテルの部屋へ入った後、Aさんは飲み物に強い睡眠作用のあるドラッグを混ぜてVに飲ませ、Vの意識が薄くなったのを見計らってVさんに対して性交しました。Aさんによる犯行後、Vさんは鈍い頭痛によって何らかの睡眠薬を飲まされたことに気づきました。Aさんは、Vさん及びVさんが所属する店から示談に応じなければ警察に被害届を提出するなどと言われています。
(フィクションです。)

~デートレイプドラッグと犯罪~

飲料に混入させ、服用した相手の意識や抵抗力を奪って性的暴行やわいせつ行為に及ぶ目的で使われる睡眠薬や抗不安薬等を「デートレイプドラッグ」と言い、昨今問題視されています。
その背景には、ネットのSNSや掲示板等を通じてデートレイプドラッグを入手しやすくなった環境や、デートレイプドラッグを混入させた酒であればコップ1杯で記憶や意識がなくなるとされる効果の高さがあります。

ところが、薬を使用した性的暴行は「準強制性交等罪」という非常に重たい罪に問われる可能性があることから注意が必要です。
準強制性交等罪は刑法178条2項に規定されていますから、まず、その規定の内容を確認しましょう。

刑法178条2項
 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

前条とは刑法177条のことを指します。

刑法177条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

「前条の例よる」とは、法定刑を177条と同様、

5年以上の有期懲役

とするという意味です。執行猶予付き判決は、「3年以下の懲役又は禁錮」の判決を受けることが条件ですから、「5年以上の有期懲役」とはつまり、起訴され、有罪の判決を受ければ、基本的に

実刑となる

ことを意味しています。このことから準強制性交等罪は非常に重たい罪であることがお分かりいただけるかと思います。

ちなみに、「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいい、例えば、熟睡、泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。
「心神喪失にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬、睡眠薬の投与・使用、催眠術の施用、欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。

~風俗トラブルと示談~

風俗トラブルで訴えられた、訴えられそうという場合は、刑事弁護士に無料相談を申込みましょう。
しかも、できるだけはやめに無料相談を申し込まれる方が得策です。逮捕されれば、家族や職場に事実が知れ渡ってしまうかもしれません。逮捕されてから弁護士を選んでも手遅れな場合があります。

当事者間に弁護士が入る意味は以下の点を挙げることができます。

1 示談交渉を円滑に進めることができる
⇒当事者間では感情の縺れなどもあってなかなあ上手く進めることができません。

2 適切な内容、形式で示談を締結できる
⇒内容や形式に不備があると、のちのちトラブルに発展しやすくなります。

3 毅然とした態度を取ることができる
⇒当事者同士だと、本番行為を行った弱みに付け込まれやすいです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

盗品等に関する罪と弁護活動

2020-09-23

盗品等に関する罪と弁護活動

盗品等に関する罪と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

愛知県瀬戸市に住むAさんは、知人から譲り受けた車を自宅の駐車場に停めていたところ、愛知県瀬戸警察署の警察官の職務質問を受けてしまいました。そして、Aさんは警察官から車が盗品であることの指摘を受け、盗品等保管罪で逮捕されてしまいました。盗品であることを知らなかったAさんは困惑し、弁護士にその旨話ました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

~ 盗品等に関する罪 ~

盗品と知りつつ、その盗品を他人から譲り受けるなどした場合は盗品等譲受け罪などに問われます。
刑法第39章には

盗品等に関する罪

の規定が設けられており、刑法256条には

盗品譲受け等

に関する罪の規定が設けられています。

刑法256条
1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

まずは、盗品等に関する罪ではどんな行為が対象となるのかみていきましょう。

= 無償譲受け =

無償で物の所有権を取得することをいいます。
単に、約束、契約があっただけでは成立せず、現実に物の受け渡しがあってはじめて成立します。

= 運搬 = 

運搬とは、盗品等を場所的に移転することをいいます。有償、無償は問いません。
移転の距離は、必ずしも遠いことを要しないとされていますが、少なくとも被害者の追求が困難となる程度の場所的移転は必要とされます。

= 保管 =

委託を受けて本犯(実際に窃盗などの罪を犯した人、本件ではBさん)のために盗品等を保管することをいいます。
無償譲受けと同様、単に、約束、契約があっただけでは成立せず、現実に物の受け渡しがあってはじめて成立します。
当初は盗品等と知らなかったものの、途中からそれと知った場合は、その日以降保管罪が成立します。

= 有償譲受け =
 
盗品等の所有権を有償で取得することをいいます。
有償契約をしただけでは足りず、現実に盗品等を受領したことを要しますが、現実に受領した以上は代金の支払いを受けていなくても成立します。

= 有償処分あっせん =

盗品等の売買などの盗品等の法律上の有償処分行為を媒介、周旋することをいいます。
たとえば、Bさんが、Aさんに、バイクを買ってくれる(有償処分)Cさんを紹介した、という場合などがこれに当たります。
なお、媒介・周旋自体は無償、有償は問いません。

盗品等に関する罪の本質については、

被害者の盗品等に対する追求回復、すなわち返還請求権の行使を困難ならしめる点にあるとする追求権説

と、

本犯によって作り出された違法な財産状態を維持する点にあるとする違法状態維持説

とが対立しており、追求権説が通説・判例とされてきました。
しかし、現在では、この両者の考え方を融合して新しい違法状態維持説ともいうべき考え方も登場しています。

いずれにしても、本犯はもとより、本犯を助長、援助する行為も処罰され得るということはしっかり覚えておきましょう。

~ 盗品等に関する罪の刑事弁護 ~

Aさんのように譲り受けるなどした財物が盗品であることを知らなかったなどと主張する場合は、その主張を裏付ける証拠を集めて検察庁や裁判所に提出します。他方で、全面的に罪を認める場合は、被害者に対する被害弁償、被害者との示談交渉がメインとなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

盗品運搬事件等の盗品等関与事件の逮捕にお困りの際は、お気軽に弊所までお問い合わせください。

刑法の脅迫とは

2020-09-15

刑法の脅迫について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

愛知県知多市に住むAさんは,交際していた女性Vさんのスマートフォンに,LINEで「俺と復縁しなければ,お前の家焼き払うぞ」などとメールを送りました。Aさんは愛知県知多警察署に脅迫罪で逮捕されました。Aさんの母親は、弁護士にAさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

~脅迫の意義~

脅迫は広義の脅迫、狭義の脅迫、最狭義の脅迫に区分されます。
広義の脅迫は恐怖心を起こさせる目的で、害悪を告知することの一切をいい、害悪の内容・性質・程度のいかんを問わないとされています。広義の脅迫で足りるとされている罪として
・公務執行妨害罪(刑法95条1項)
・職務強要罪(刑法95条2項)
・逃走援助罪(刑法98条)
・恐喝罪(刑法249条)
などがあります。
狭義の脅迫は、告知される害悪の種類が特定され、あるいは恐怖心を起こした相手方が一定の作為、不作為を強要されることが要件となっているものです。前者の罪として脅迫罪(刑法222条)、後者の罪として強要罪(刑法223条)があります。
最狭義の脅迫は、相手方の反抗を抑圧、または著しく困難にする程度の恐怖心を引き起こすことを要するものをいいます。前者の罪として強制わいせつ罪(刑法176条)、後者の罪として強盗罪(刑法236条)、強制性交等罪(刑法177条)などがあります。

~脅迫罪~

上記のとおり、脅迫罪の脅迫は狭義の脅迫に当たります。

脅迫罪は刑法222条に規定されています。

1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫したものは、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

害悪の告知は,一般に人を畏怖させる程度のものでなければなりません。
ただし,本罪は危険犯と言われ,人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知があれば足り,現実に相手方が畏怖したことは必要ではないと解されています。

また,害悪を告知する方法には制限がありません。その程度に達しているかどうかは、その内容を四囲の状況に照らして判断すべきとされています。しかし、これが真意にでたこと(本当に家を焼き払う気があったか、など)、相手が現実に畏怖したことなどを必要とするものではありません。
害悪告知の手段には制限はありません。直接言葉で伝えることはもとより、文書の掲示、郵送、最近では、事例のようにメール送信の他,SNS・ブログなどネット上への投稿で脅迫罪に問われた例もあります。

~脅迫罪において示談を目指す理由~

脅迫行為を認める場合は,被害者に真摯に謝罪し,慰謝の措置を取ることが必要不可欠です。これが脅迫罪において示談を目指す一番の理由です。その他,脅迫罪において示談を目指す理由としては以下の点が挙げられます。

=早期釈放が可能となる=
一般的に,示談意向=罪を認める=罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれはないと判断されやすくなり,早期釈放に繋がりやすくなります。

=不起訴獲得が可能となる=
被疑者に有利な情状として考慮され,不起訴獲得の可能性が高くなります。被害者から「被疑者を処罰しないで欲しい」などという宥恕条項を獲得できれば,その可能性はさらに上がります。

=執行猶予獲得が可能となる=
起訴され、仮に裁判になった場合でも、示談が成立していれば執行猶予獲得の可能性は高くなるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、脅迫罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。お気軽にご相談ください。

勾留と釈放

2020-09-11

勾留と釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

 

名古屋市中村区に住むAさん(28歳)は、Vさんと二人きりになったカラオケボックスの内で、Vさんに無理やりキスをしたり、直接Vさんの胸を揉むなどの行為をした強制わいせつ罪で愛知県中村警察署に逮捕されました。その後、Aさんは勾留され、20日間拘束された後起訴されました。Aさんは、起訴後も勾留されています。Aさんのご両親は、Aさんの身柄を釈放してもらうべく刑事事件に強い弁護士に刑事弁護を依頼しました。

(フィクションです)

 

~ 勾留 ~

 

「勾留」とは、被疑者または被告人の身体の自由を拘束する裁判及び執行のことをいいます。読みは同じですが刑罰の「拘留」(刑法9条)とは異なります。

勾留は、起訴される前の被疑者勾留と起訴された後の被告人勾留に分けられます。

 

= 被疑者勾留 =

 

被疑者勾留の場合、捜査の必要性の要素が色濃く出ます。

 

つまり、被疑者勾留は被告人勾留と異なり、裁判所(あるいは裁判官)の独自の判断での勾留は認められず、事件の全容を把握している「検察官の請求」を前提とします。そして、請求を受けた裁判官が勾留の許否を判断するのです。また、弁護人は勾留されている方と自由に接見できる(刑事訴訟法39条1項)のですが、公訴の提起(起訴)前に限り、弁護人接見に関し条件を付けられることがあります。これを接見指定といいます(刑事訴訟法39条3項)。

 

* 勾留期間 *

 

勾留期間は、検察官の請求のあった日から数えて10日間です。例えば、平成31年3月11日に勾留請求があった場合の勾留満了日(勾留が終わる日)は同月20日です。ただし、検察官が勾留期間を延長することにつき「やむを得ない事情」があると判断した場合は、勾留期間の延長を請求されることがあります。請求期間は原則として10日間で、請求を受けた裁判官は独自の裁量で延長期間を決めることができます(例えば、検察官が10日間の延長請求しても、裁判官の判断で8日間に短縮されることがあります)。

 

* 接見指定と接見等禁止 *

 

接見指定とは上記のように、弁護人あるいは弁護人となろうとする者が勾留されている方と接見するにあたって指定される条件のことです。他方、接見等禁止とは、弁護人「以外」の者と勾留されている方との接見等を禁止することで(刑事訴訟法81条)、法的には接見指定と別個のものと考えられています。なお、接見指定は公訴の提起(起訴)前だけにしかすることができないのに対し、接見等禁止は、必要があれば公訴の提起後にも付けられることがあります。

 

= 被告人勾留 =

 

被疑者から被告人となった場合、捜査の必要性は減退します。

 

よって、被告人の勾留は、裁判所(あるいは裁判官)の職権により行われます。通常、公訴の提起があったのと同時に勾留されますが、検察官が敢えて勾留をしたいという意思表示をしたい場合は、裁判官に職権の発動を促します。被告人勾留の場合、接見指定は認められません。

 

* 勾留期間 *

 

勾留期間は、公訴の提起があった日から2か月です。その後は、特に継続の必要がある場合に、決定をもって1か月ごとに更新されます。

 

~ 勾留と釈放 ~

 

勾留を解く(釈放する)ために、様々な対抗手段を講じることが必要です。ここでも、被疑者勾留と被告人勾留の場合にわけてご紹介いたします。

 

= 被疑者勾留 =

 

被疑者勾留の場合、まず、検察官に勾留請求しないよう働きかけたり、裁判官に勾留の決定を出さないよう働きかけることができます。ただし、これは法的な手段ではありません。法的な手段としては、勾留決定が出た後に勾留裁判に対する不服申し立て(準抗告)をすることが考えられます。なお、被疑者勾留の場合、被告人勾留と比べ身柄拘束期間が短いことから保釈請求は認められていません。

 

= 被告人勾留 =

 

被告人勾留の場合の主な対抗手段としては保釈請求でしょう。その他、勾留更新決定に対する準抗告、抗告の手段なども考えられますが、あまり例がないようです。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族などが勾留されお困りの方は0120-631-881までご連絡ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております

公務執行妨害罪、公文書毀棄罪と釈放

2020-09-03

公務執行妨害罪、公文書毀棄罪と釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは自動車をを運転中、非常点滅表示灯が点滅していなかったことから、パトカーを運転する愛知県一宮警察署の警察官に停止を求められました。Aさんは道路わきに車を止め、車から降りて警察官の職務質問を受けました。Aさんは、素直に罪を認め、はやく手続を終わらせたいと考えていましたが、警察官の態度があまりにも横柄すぎると感じたことから、警察官Aから交付を受けた「交通反則切符」をその場で破り捨てました。そこで、Aさんは公務執行妨害罪、公文書毀棄罪で逮捕されてしまいました。Aさんは、妻と二人で痴ほう症の両親の面倒を看ています。そこで、逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、一刻も早く釈放されることを願って刑事事件に強い弁護士に弁護活動を依頼しました。(フィクションです。)

 

~ 逮捕罪名について ~

 

まずは、Aさんの逮捕罪名である公務執行妨害罪、公文書毀棄罪から解説したいと思います。

 

= 公務執行妨害罪 =

 

本罪は、刑法95条1項に規定されています。

 

刑法95条1項

 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

 

* 破っただけで公妨? *

この記事をご覧になった方は、

 

・警察かに暴行、脅迫を加えてないのになぜ逮捕?

・切符破っただけで公妨?

 

などと疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか?実は、公務執行妨害罪の「暴行」とは、

 

公務員の身体に対して直接加えられる有形力の行使(直接暴行)に限られず、公務員に対して向けられてはいるものの、直接公務員の身体に対して加えられたものではない有形力の行使(間接暴行)をも含む

 

とされています。これは公務執行妨害罪が公務の円滑な遂行を保護することを目的としているからと説明されています。判例では、

 

・覚せい剤液注射液入りアンプルを足で踏み付け破壊する行為

・収税官吏が差し押さえた密造酒入りのカメを破壊する行為

 

なども「暴行」に当たるとされています。

 

= 公文書毀棄罪 =

 

本罪は、刑法258条に規定されています。

 

刑法258条

 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

 

「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいいます。「公務所の用に供する文書(公用文書)」とは、公務所で使用されるための文書をいいます。過去の裁判例(東京高裁昭和41年11月11日)では、交通切符をも「公用文書」に当たると判断されています。なお、犯人が署名する前など、文書として未完成のものであっても「公用文書」であることに変わりはないとされています。「毀棄」とは、共用文書等の本来の効用を害する一切の行為をいうとされています。破り捨てる行為も「毀棄」に当たるでしょう。

 

~ 本件と釈放 ~

本件の場合、犯罪を立証し得る直接証拠は犯行を現認した警察官Aの供述です。しかし、Aさんが釈放された場合、わざわざ警察署まで出向いてAさんを威迫し、自分に有利に供述を変遷させるなどの罪証隠滅行為に出ることは通常考え難いです。そもそも、Aさんとしては、Aさんの特定すらできないかもしれません。よって、本件の場合、罪証隠滅行為の現実的可能性は他の犯罪に比べ低いです。ですから、本罪では逃亡のおそれさえなくしてしまえば釈放される可能性はグンと高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、公務執行妨害罪、公文書毀棄罪などをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。ご家族の一日でも早い釈放をお望みの方は、土日・祝日、24時間受付中の弊所の初回接見サービスのご利用をご検討ください。

 

監禁罪と監禁致死傷罪

2020-09-01

監禁罪監禁致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

名古屋市港区に住む会社員Aさんはある会社の社長ですが、同会社に勤務していたVさんが同会社の売上金を横領したものと疑い、Vさん方へ行きました。そして、AさんはVさんを呼び出し、Vさんに車さんをのトランクに入るよう命じましたがこれを拒否されたため、Vさんの胸倉をつかむなどし、「もっと痛い目にあいたいか。」などと言って、Vさんを無理やりトランクに入れ込みました。そして、Aさんは誰もいない山中へ向け車を走らせましたが、Vさんがトランクの中から110番通報し、愛知県港警察署のパトカーにこれを発見されたことから監禁罪の現行犯で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ 監禁罪とは ~

監禁罪は刑法220条に規定されています。

刑法220条
 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすることをいいます。そして、監禁といえるためには、被監禁者の自由の拘束が完全なものであることを要しないとされています。したがって、一応、脱出の方法がないわけではないけれども、生命・身体の危険を冒すか、又は常軌を脱した非常手段を講じなければ脱出できないような場合であれば監禁といえます。また、監禁罪の監禁は「不法」であることが必要です。したがって、正当な監禁は違法ではなく処罰されません。不法かどうかは、社会通念に従って判断されます。

~ 監禁中に交通事故に遭ったら? ~

監禁中に交通事故に遭い、被害者に怪我を負わせたり、被害者を死亡させた場合は監禁致死傷罪が成立する可能性があります。

過去の判例では、自動車の後部トランクに人を監禁していた状態で、路上停車していたところ、たまたま後続の自動車が前方不注視で時速約60kmのまま追突したことが原因で、トランクに監禁されていた被害者が死亡した事案で、監禁致死罪の成立が認められています(最高裁決定平成18年3月27日)。

監禁致死傷罪は刑法221条に規定されています。

刑法221条
 前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

つまり、監禁致死傷罪は、①監禁罪を犯すこと、②人を死傷させること、③①と②との間に因果関係が認められること、によって成立する犯罪です。
「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」とは、致死罪の場合は「傷害致死罪」の例にならい「3年以上の有期懲役」、致傷罪の場合は、傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)と監禁罪とを比較した場合、上限は傷害罪が重く、下限は監禁罪の方が重いですから、「3月以上15年以下の懲役」に処せられる、ということです。

~ 取調べ対応なら弁護士に相談 ~

取調べは、プライバシー保護の観点からも第三者の目の届きにくい「密室」で行われます。取調べでは、取調官による怒号、威圧、人格を否定するかのような暴言、罵倒を浴びせるなどの行為が行われやすく、問題となることもしばしばあります。最近でこそ、取調べの録音録画といって、取調べの状況を録音録画し「取調べの可視化」への傾向は進みつつありますが、対象となる事件が一部に限られるなどまだまだ完全とは言えません。

このような中、ご相談者の中には、長時間の取調べ、繰り返される取調べによって精神的にまいってしまい、自分の意図したこととは違うことを話してしまったり、供述調書に書かれてしまったり、サインをしてしまったりする方もおられます。ただ、一度、供述調書にサインをしてしまうと、そこに書かれた内容を後で覆すことは大変な労力を必要とします。ですから、取調べ等に不安のある方は、一度、刑事事件の刑事弁護に優れた弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか??取調べに対するアドバイスはもちろん、正式な契約後は、警察に申入れを行ったり、場合によっては、実際に警察署まで付き添って取調べへの立会を要求したりします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、監禁罪監禁致死罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

強盗未遂の現行犯と身柄解放

2020-08-25

現行犯逮捕の身柄解放について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

~ケース~

名古屋市北区で一人暮らしをしているAさん(20歳・大学生)は,最近になってアルバイトの量が激減し生活に困窮するようになった。
Aさんは家賃の支払いや,両親に内緒で借りている消費者金融への返済ができなくなってしまった。
そこでAさんは何とかしてお金を工面しようと飲食店Vに強盗に入ることを考えた。
Aさんは午前2時に飲食店Vに果物ナイフを持ち強盗に入った。
Aさんが店員のXにナイフを突きつけ金を出すように要求したところ,たまたま来店したYによってAさんは取り押さえられた。
その後,通報により駆け付けた○○警察署の警察官にAさんは引き渡され,Aさんは強盗未遂の現行犯として逮捕された。
警察から息子が逮捕されたと連絡を受けたAさんの両親は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(フィクションです)

~強盗未遂と身柄拘束~

刑法236条

暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

強盗罪は刑法236条に定められており未遂も罰せられます(243条)。
刑事事件で逮捕された場合,特に身柄拘束が必要ないと考えられる場合を除いて逮捕から48時間以内に書類・証拠と共に検察官に身柄が送致されます。
送致を受けた検察官も同様に,身柄拘束が必要ないと考えられる場合を除き,送致を受けてから24時間以内に裁判官に勾留の請求をします。
勾留が認められた場合,原則として勾留の請求をされた日から10日間,やむを得ない事情がある場合に限り通算して10日を超えない限度で延長されます。

勾留が認められるには勾留の理由および勾留の必要性が存在しなければなりません。
勾留の理由とは,被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,被疑者が住居不定であるとき,被疑者に罪証隠滅のおそれがあるとき,被疑者に逃亡のおそれがあるときのいずれかに該当することをいいます。
勾留の必要性とは,事案の軽重等の起訴の可能性,捜査の進展の程度,被疑者の個人的事情などから判断した勾留の相当性をいいます。
今回のケースではAさんが犯したのは強盗という重大な犯罪の未遂であること,およびAさんが一人暮らしであることから逃亡のおそれがあると判断され,勾留が認められてしまう可能性は高いでしょう。

~初回接見と身柄解放~

刑事事件の被疑者として逮捕された場合,ご家族の方などが面会できるのは勾留が決定されてからになります。
一方で,弁護士であれば逮捕直後であっても被疑者の方と面会することが可能です(弁護士人になろうとするものの接見)。
弁護士による初回接見では被疑者の方から事件の詳細などを聴き取り,今後の見通し,取調べ等に対する助言などをお伝えます。
そして依頼者であるご家族の方等にも聞き取った事件の詳細や今後の見通しなどをお伝えします。

今回のケースでは,Aさんは現行犯逮捕されていますので罪証隠滅のおそれは低いものの,一人暮らしであり,Aさんが逃亡しないように監視・監督できる者がいません。
そのため,Aさんには逃亡のおそれがあるとして勾留されてしまう可能性が高いでしょう。
しかし,Aさんの両親が自宅でAさんを監視・監督すればAさんが逃亡するおそれは低くなります。。
Aさんの両親がAさんを自宅で監視・監督する,捜査機関には必ず出頭させことを約束する上申書を裁判所に提出することによって勾留請求が却下される可能性もあります。
また,勾留が認められてしまった場合でも,同様に勾留決定に対する準抗告を申し立てることによって身柄が解放される可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族の方が事件を起こしてしまい逮捕されてしまったというような場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
警察署などでの初回接見サービス・事務所での無料法律相談のご予約を24時間365日年中無休で受け付けています。

2度目の執行猶予はありうる?②

2020-04-14

2度目の執行猶予はありうる?②

執行猶予判決を2回受けることができるかどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】
Aさんは2018年3月に、コンビニでの常習的な万引きに関して、窃盗罪懲役2年執行猶予5年の有罪判決を受けていました。
しかし2020年4月、またもやコンビニで万引きをしてしまい、これを見つけた店員により通報、その後Aさんは逮捕・起訴されてしまいました。
Aさんは、実刑判決を避け、なんとしても執行猶予を付けて欲しいと考えています。
このような2回目の執行猶予は法律上可能なのでしょうか。
また可能とすると、どのような場合において可能なのでしょうか。
なお、現在期間中の執行猶予には保護観察はついていないものとします。
(このケースはフィクションです。)

~2度目の執行猶予~

前回は上記の事例について、刑法25条1項に基づいて執行猶予を得ることができるかについて解説いたしました。
2度目の執行猶予はありうる?①

今回は、25条2項に基づいて再度の執行猶予を得ることができるかについて解説いたします。
この条文は、まさに今回のAさんのような事例について定めてあります。

刑法25条2項
前に禁錮以上の刑に処されたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内にさらに罪を犯した者については、この限りではない。

読みづらい条文ですが、つまり、

①保護観察の付かない執行猶予期間中の者に対し、
②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合で、
③情状に特に酌量すべきものがあるときは、

再度の執行猶予判決ができるということになります。

執行猶予中に罪を犯した者はさらなる執行猶予は受けられないことを原則としたうえで、犯した罪が軽く、また情状的にも強い猶予の理由がある場合にのみ限定的に、さらなる執行猶予を与える、という趣旨です。

なお①について、執行猶予の期間を、保護観察所の助言・指導などの監督を受けながら生活するという保護観察が付いている場合には、その期間中の犯罪について再度の執行猶予を付けることはできないことになります。
保護観察は、執行猶予を付けるケースの中では比較的悪質な犯罪のケースです。
このような保護観察のもとでもなお犯罪を犯した者には、もはやさらなる執行猶予は与えない、ということです。

~今回は執行猶予を付けられるか~

では今回のAさんは、執行猶予を受けられるのでしょうか。

Aさんには保護観察は付いていませんから、①保護観察の付かない執行猶予期間中の者という条件は満たします。

しかし、②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合という条件はどうでしょうか。
通常、再犯者には前回よりも重い判決が出されます。
Aさんは前回、懲役2年の判決を受けています。
そうすると特殊な事情がない限り、今回は2年以上の懲役判決が下される可能性が高いことになります。

また、②と重なる部分がありますが、③情状に特に酌量すべきものがあるときという条件についても、よほど特殊な事情がないと認めてもらえない可能性が高いでしょう。

以上により、Aさんが再度の執行猶予を得ることは、理論上は可能ですが、実際は厳しいところがあります。

~弁護士にご相談ください~

この状況で執行猶予を得るためには、適切かつ有効な弁護活動によって、まずは刑を1年以下に抑え、加えて特に酌量すべき情状があることを裁判官に認めてもらう必要があります。
ただ、このような弁護活動は、結果的に執行猶予とならなかったとしても、懲役の期間を短くすることにはつながる可能性があります。

ぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。

私たちの事務所では、刑事弁護を専門とする弁護士を取り揃えております。
執行猶予を得たいという場合かどうかにかかわらず、刑事事件に関して何かお困りのことがあれば、無料法律相談初回接見サービスをぜひご利用ください。

2度目の執行猶予はありうる?①

2020-04-13

2度目の執行猶予はありうる?①

執行猶予判決を2回受けることができるかどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】
Aさんは2018年3月に、コンビニでの常習的な万引きに関して、窃盗罪懲役2年執行猶予5年の有罪判決を受けていました。
しかし2020年4月、またもやコンビニで万引きをしてしまい、これを見つけた店員により通報、その後Aさんは逮捕・起訴されてしまいました。
Aさんは、実刑判決を避け、なんとしても執行猶予を付けて欲しいと考えています。
このような2回目の執行猶予は法律上可能なのでしょうか。
また可能とすると、どのような場合において可能なのでしょうか。
なお、現在期間中の執行猶予には保護観察はついていないものとします。
(このケースはフィクションです。)

~執行猶予とは~

執行猶予とは、有罪判決がなされる場合に、情状を考慮して、刑の執行を猶予するという制度です。
根拠となる条文には刑法25条1項と同条2項があり、今回は1項について解説します。
2項についてはこちら→2度目の執行猶予はありうる?②
(なお、刑の一部の執行猶予という制度もありますが、ここでは刑の全部の執行猶予に焦点を当てて解説していきます。)

まずは条文を見てみましょう。

刑法25条1項
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することが出来る。
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者

つまり、25条1項により執行猶予を得るための要件は次の3つです。

①25条1項1号または2号にあてはまること
②今回、言い渡される判決が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金刑であること
③情状により猶予が相当であること

①についてさらに詳しく解説すると、25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」とは、禁錮以上の判決を言い渡されたことがないことを言います。

※ 「禁錮」という刑罰は、刑務所内で刑務作業をするかしないかは自由とされている他は懲役と同じです。「禁錮以上の刑」は、死刑・懲役・禁錮を指し、罰金などは含まれません。

純粋に前科がない者や、罰金しか受けたことのない者の他、前の裁判で懲役や禁錮の執行猶予判決を受けてその猶予期間を再犯せずに無事すごした場合も、判決言渡しの効果が消滅するので(刑法27条参照)、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に含まれます。

本ケースでのAさんは、2年前の裁判で懲役刑を言い渡されており、執行猶予期間の5年もすぎていないので、該当しません。

また、25条1項2号は、実際に懲役刑禁錮刑を受け、(ア)刑期満了による出所した時、(イ)仮釈放され残りの期間を無事過ごした時のいずれかの時点から5年間、再び禁錮以上の刑の言渡しを受けなかった場合などを指します。
しかし、今回のAさんはそもそも実際に懲役刑や禁錮刑を受けていないので、該当しません。

したがって、Aさんは25条1項を根拠として執行猶予を受けることはできないわけです。

長くなったので、25条2項による再度の執行猶予については次の記事で解説いたします。
→2度目の執行猶予はありうる?②

~お困りの方はご相談ください~

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない事件やすでに釈放された事件では、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

 

違法な捜索・差押えをされたら

2020-04-08

違法な捜索・差押えをされたら

違法な捜索・差押えをされた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【ケース】
Aさんが愛知県名古屋市内の自宅でBさんと遊んでいると突然、愛知県千種警察署の警察官が、捜索差押令状をもって乗り込んできました。
この令状は、被疑事実を「覚せい剤使用」、捜索すべき場所を「○○マンション104号室(A宅)」・差し押さえるべきものを「覚せい剤、注射器、パイプ、覚せい剤の入手・保管に関する情報の記載された文書、同情報の保管された物件、その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と記載されていました。
警察官は同令状に従いA宅を捜索しましたが何も出てきませんでした。
警察官は、A宅に居合わせていたBさんが捜索開始時からかばんを抱きかかえて離そうとしなかったことから不信を抱き、Bさんにカバンの提出を求めました。
Bさんが提出を拒むと警察官は令状の執行としてBさんから無理矢理カバンを奪い、その中を確認しました。
カバンの中からは覚せい剤やその使用に供したと思われる注射器が見つかり、押収され、Bさんは覚せい剤所持の罪で現行犯逮捕されました。
(このケースはフィクションです。)

~第三者の持ち物の捜索・差押え~

今回のケースでは、A宅の捜索・差押えの際に、偶然居合わせたBさんの持ち物の捜索・差押えがなされています。
このような、現場に居合わせた第三者の持ち物の捜索・差押えは適法なのでしょうか。

まず、捜査機関が捜索や差押えをするためには、裁判官に許可状(令状)を発行してもらう必要があります。
その令状には「捜索すべき場所、身体若しくは物」を記載しなければなりません(刑訴法219条1項)。
なぜなら、捜査機関が勝手に関係ないところを捜索して、国民の権利が害されることを防ぐ必要があるからです。
したがって、捜索は令状に記載された場所のみで行うことが出来ます。

今回のケースではA宅内のみを捜索することができるわけです。

ただ、A宅内とはいえ、たまたま居合わせた第三者の持ち物まで捜索してよいのでしょうか。

そもそも捜索は、事件に関係する証拠がある可能性が十分あるからこそ、裁判官が許可するわけです。しかし、偶然居合わせた第三者のカバンは、事件に関係する証拠は入っていないのが普通です。
そうすると裁判官も、居合わせた第三者の所持品まで捜索することは想定しておらず、許可を出していないといえます。

したがって、たとえその場に存在したとしても原則として捜索できないと考えられています。

~例外的に適法なケースも~

しかし、A宅に元々あった物をBさんが捜索時に持っていた場合には話が変わってきます。
例えばAさんとBさんが共犯者であり、BさんにとってもAさんの物が捜索・差押えされるのは不都合なので、警察の突入時にとっさに隠したような場合です。

もし第三者が適法に捜索・差押えできる物をカバンに隠した途端、捜索・差押えができなくなるとしたら、捜索・差押えの実効性が著しく損なわれます。
またこの場合、証拠が見つかる可能性が十分あるわけですから、令状を出した裁判官として捜索がなされることを想定していたといえます。

そこで、適法に捜索・差押えが可能な物をBさんが自分のカバンの中に隠したことが明らかな場合や、A宅にあったAさんのカバンをBさんが持っていたにすぎない場合などには、例外的に捜索・差押えが適法となる場合もあります。

~違法だった場合は?~

仮に原則通り、今回のBさんのカバンへの捜索・差押えが違法だった場合、押収された覚せい剤や注射器などの証拠は違法に収集された証拠であり、その証拠に基づいてなされた現行犯逮捕も違法ということになります。

この場合、見つかった証拠は裁判有罪とするために使うことが出来なくなったり、ただちに釈放しなければならなくなる可能性もあります。

ただ、違法であれば当然にそうなるというものではなく、その違法の内容や程度によってその結論は異なります。
その判断は難しいところですので、違法な捜査をされたのではと心配な方は、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
捜査の過程に違法な点がないかを検討し、早期釈放判決を軽くすることに向けて、弁護活動をしてまいります。

逮捕
されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら